1
クラッシュ・ワルツ
刈馬演劇設計社
再々演ですが、それゆえに役者の演技への練り込みが凄く、ただでさえ緻密な作品に益々深みが加わっていました。生の観劇でこそ感じれる微細な演出と演技が多くて、「これぞ小劇場観劇」を実感できる公演でした。
2
カナドール
星の女子さん
ドールシリーズ3作のトリを飾る作品で、そこまで蓄積して観客に刷り込ませた設定を活かしつつも、本筋のコンセプトを一大展開させて話に深みを持たせていた。大河ドラマすら感じさせつつも、予定調和では終わらないところが良かった。
3
黒塚
木ノ下歌舞伎
鬼気迫る演技と、舞踊と、照明と、音楽と、ありとあらゆる効果に圧倒されました。客席と舞台がほぼ一体の空間なので、臨場感抜群でした。
4
ただいま
劇団こふく劇場
モチーフはあくまで普通の人、日常の事柄。ところがト書きが\"語り\"しかもユニゾンとなって舞台に響き、能さながらの舞台美術や所作の様式美が添えられ、何やら異世界感すら漂う。それでいて、語りが丹念に情緒を紡ぐので、リーディングの様でもありながら、役者の演技を邪魔することなく、逆に相乗的に叙情を醸し出す。普通・日常だからこそ真に迫り、年甲斐もなく目頭が熱くなった。歌も良かったし、まさしく「沁みる」お芝居でした。
5
cocoon
マームとジプシー
純粋に演出のパワーは凄まじい。舞台を平面で縦横無尽に駆け回るのみならず、立体的に空間を使い尽くし、演劇とパフォーミング・アーツを同時に観ているようで、特に前半は少女達のリリカル感とも相まって不思議な空間を成す。そして後半、ただひたすら少女達の非業の顛末を繰り返し、繰り返し、繰り返し・・・、観客に反芻させる。ただ、結果だけを客観的に提示し続け、如何なる思想・意思・世情があったとしても、この結果を導いたことをお前は赦せるのか?と無言で冷徹に観客に問い掛けているようだった。
6
火星の人と暮らす夏
鳥公園
2人の役者さんが複数の人と時代を行ったり来たりしながら話が進む・・・ それ自体に目新しさはないけれど、役者さんの力量をこれでもかと見せつけられた。各々の役のハッキリとした演じ分け、それでありながら役の切り替えの自然さ。時代まで超えるのにまるでワンシチュエーション劇を観ているかのようで、お話の構成をより秀逸に体現してみせている印象でした。
7
だるい女
劇団あおきりみかん
ダイナミックな舞台転換は、前作「身辺生理」を進化させた感じ。マスゲームを観ているようでそれだけでもかなり楽しい。今が華々しく楽しいドタバタで進む一方で、昔のだるい話が刻々とシリアスな真相に近づき今と繋がる。思うところ色々あるけど、哀楽ともに味わいました。
8
フクロウガスム
梟企画
少年の悲劇をこんなにも多重に織り込んで纏め上げた構成は素晴らしいと思いました。そこに贅沢なキャスティングで集められた俳優陣入り乱れての熱演には目を奪われます。特に多重人格の演出と演技は私のツボにはまりましたし、子役の頑張りも見事で、あんなシーンさせてしまって大丈夫かと心配になるほどの好演でした。総じて、演出と演技には文句のつけようがないです。
9
逆しら
黄金山アタック
演出と体当たりの演技に衝撃を受けた… と言うのが全てになってしまうのかもしれない。舞台装置とかも印象的で緊張感溢れる舞台でした。
作品通じての意味付けと言うよりは、「人の多彩で魅力的名な業を他意無く示す」ことに意図があるような気がしてくる。
10
ガラスのエイリアン
空宙空地
神経症的な悩みと葛藤は一部共感あり、しかも周りの反応や対応も同様に共感ありなので、社会の難しさの縮図を感じる。分かるけど耐えられない、放置してあげたいけどこちらに累が及ぶ、とかくこの世は生きにくい…か。そんな難しいところを笑いとミステリーに包んだ秀作でした。