【本日千秋楽は15時から!!!】『そこで、ガムを噛めィ!! 〜The Baseball comedy! 2013〜』 (※当日券は全ステージ出します!!!)
8割世界【19日20日、愛媛公演!!】
テアトルBONBON(東京都)
2013/10/30 (水) ~ 2013/11/04 (月)公演終了
満足度★★★★
野球シーンの見せ方が巧み
マネージャー役の石田依巳架さんの大らかさが劇に和やかなムードを与えていて、とても楽しく鑑賞できました。
ダンスを交えたり、野球のシーンがショーアップされているうえ間延びせぬよう簡潔にまとめられているのも楽しく観られた一因か?
それにしてもピッチャー役の日高ゆいさんの投球フォームは様になっていた。普通はいわゆる“女投げ”になるものなのに…。
ダンスにもキレがあったし、日高さんの図抜けた身体能力を思い知らされた一作でもありました。
つかまえてごらんなさい、箸で
GORE GORE GIRLS
王子小劇場(東京都)
2013/11/01 (金) ~ 2013/11/04 (月)公演終了
満足度★★★★★
独身を貫けば素敵な存在になれる!?
異常者が正当ぶり、真っ当な者を異常視して吊るし上げるイカれた世界を今回も堪能。
いくつかのモチーフがあった前作と違い、結婚は是か非か、今回はこのワンテーマだけで約80分、最後まで引っ張り抜いたところが凄い。
しかも後半は思わぬ展開を重ねに重ね、“予想外も少し納得”な大オチに持ち込んでいてお見事!
前回公演の「観てきた!」コメントで苦言を述べさせてもらったせいなのかどうなのか、衣裳はグンと素敵に。とりわけ女優陣の衣裳に顕著でした。
Mr. Fujino
世田谷シルク
こまばアゴラ劇場(東京都)
2013/10/31 (木) ~ 2013/11/04 (月)公演終了
満足度★★★★★
こんな形で舞台化されるとは!!
魯迅による原作『藤野先生』を読んだ上で鑑賞したが、まさかこういう形で舞台化されるとは!
客席と段差のない地続きの演技スペースには長机と椅子が数組、そして天井から吊られた幾本かの竹があるばかりで、主舞台である学校をはじめ具体的な場所を思わせる大道具は一切なく、役者は魯迅役の人を除いてみな巫女をモチーフにした衣装で登場。
白いYシャツに女優は真っ赤なスカート、男優は真っ赤なズボンをまとって演技をするのだが、この演技がクセモノで、動きがマイムさながらにコミカルだったり機械的だったり、マイムが高じて踊り出したり、詩のようなものを群唱したり、リアリズムとはほど遠いもの。
ようは今流行りの抽象舞台で、抽象舞台なら男女の性差も無視してOK!とばかりに、作・演出に加え女優も兼ねる堀川さんが男性である藤野先生を演じちゃうのもご愛嬌!
しかも、当パンには原作の要とも言うべき「幻灯事件にスポットを当て」たとあるのに、幻灯事件に割かれる時間はごく短く、原発事故を起こした我が国を皮肉っているのが明らかな挿話や、魯迅の級友のおきゃんな妹が秘かに思いを寄せている魯迅の部屋に可愛いイタズラをして帰るコミカルでほほえましいエピソードなど、原作にない話がてんこ盛り!
事程左様に、原作軽視とそしられても仕方がない仕上がりなのだが、巫女の装いをした女優陣はやけになまめかしいわ、ダンサブルなBGMはカッコいいわ、どんどん加速する音楽に合わせて役者たちが発狂したようにしゃべりまくり踊りまくる終盤の群唱&群舞は狂いゆく物語とリンクして観る者をハッとさせるわ、パフォーミングアートとしての完成度はバリ高! 『藤野先生』の舞台化作品という以前に、一つの演劇ショーとしてとても楽しめる。
批判を恐れず大幅に原作を改変して刺激的な見世物へと昇華させたチャレンジングなその精神を評価して、星は5つ。
上に「原作軽視とそしられても仕方がない仕上がり」と書いたけれど、革新的で惹きつける演出をしないことには『藤野先生』などという古典は見向きもされない可能性もあることを考えると、この演出でよかったような気もする。
バルブとしては、本作の観劇をきっかけに世田谷シルクという集団への関心が急上昇! おそらくは次回作も観ることになるだろう。
【ご来場ありがとうございました!】退カヌコビヌカエリミヌヌ
ロ字ック
サンモールスタジオ(東京都)
2013/11/02 (土) ~ 2013/11/10 (日)公演終了
満足度★★★★★
コミカルとシリアスのバランスが絶妙!
スーパーの控え室を舞台に、パートタイマーたちの悲喜こもごもが展開。
初観覧のロ字ックでしたが、この悲と喜、シリアスとコミカルのバランスが絶妙でした。
アダルトチルドレンのようなキャラクターづけがなされた、クールでひねた暗めの女子が主人公のシリアスベースのお話ながら、コミカルなシーンがいいタイミングで折々に放り込まれ、喜怒哀楽、色んな方向へ感情を揺すられながら最後まで飽かず前のめりで鑑賞!
度肝を抜かれたのは小野寺ずるさん!!
今作では昔の篠原ともえノリのド天然なバイト大学生を演じて主にコミカル方面を受け持っていた彼女、グレかけたマジメ女子高生を演じたこゆび侍『きれいなお空を眺めていたのに』出演時とはイメージがまるで違っていて、その芸域の広さにびっくり! 思わず「反則でしょ!!」とツッコみたくなってしまった。
その小野寺さんはじめどの役者さんもスタッフさんも、さらには主宰の方までもがとても対応がよく、そのおもてなしの精神にも感動。
お陰でいい気分のまま劇場を後にすることができまし
た。
魔女の猫探し ご来場誠にありがとうございました!
劇団東京乾電池
アトリエ乾電池(東京都)
2013/10/28 (月) ~ 2013/11/04 (月)公演終了
満足度★★★★
演出不足?
いちおう魔女のお話なのだから、スモーク、おどろおどろしい効果音、凝った照明などによってもっと妖気を醸し出して欲しかった。お陰でいまいち劇世界に入り込めず。
でも、二人のベテラン役者の達者な演技により、別役実の原戯曲が持つ笑劇の部分はしっかり堪能できました。
と同時に、別役戯曲の舞台化がいかに困難かを感じたのも事実。
演じる際の力の入れ加減、間の取り方などに試行錯誤の跡がうかがえて、稽古はさぞや大変だったのだろうと思ってしまった。
ニッポンヲトリモロス
劇団チャリT企画
王子小劇場(東京都)
2013/10/25 (金) ~ 2013/10/30 (水)公演終了
満足度★★
現体制をおいそれと笑うなかれ
今から7年後、東京五輪イヤーに都心のホテルで次々起こるアクシデントを現体制が抱える問題点の暗喩として描き、「ああ、これはあれのことかぁ(笑)」と“気づきの笑い”を誘うだけの浅薄な劇。
砂の楽園
遊園地再生事業団
ザ・スズナリ(東京都)
1996/03/20 (水) ~ 1996/04/07 (日)公演終了
満足度★★★★★
無意味の向うに美が立ち上がる
ラジカルガジベリビンバシステム『亜熱帯の人』の一挿話を原形とする“砂漠監視隊”シリーズは、砂漠の監視という閑職に就かされた者たちが暇にあかして間抜けなことをし続けるお話で、エッセイなどで“人間の間抜けな側面”に光を当て続けてきた宮沢章夫という作家の資質が遺憾なく発揮された、その代表作と言っても過言ではない作品群。ナンセンスでバカバカしいだけでなく、本物の砂を用いて表現された「砂漠」で男たちが無為な行為に興じる様には頽廃的な美しさがあって、その“美”にもいたく惹かれたことを覚えている。
本作『砂の楽園』では、役者として出演した小玉和文がラストシーンでトランペットを演奏。朗々としていながらどこかもの哀しいその調べと、優雅に、泰然とペットを吹き鳴らす小玉さんの雄姿はいまだ忘れがたい。
未来を忘れる
文学座
文学座アトリエ(東京都)
2013/10/18 (金) ~ 2013/11/01 (金)公演終了
満足度★★★★★
大問題作!!
人類が生への、繁栄への野蛮なまでの執着をこのまま抱き続けたらどうなるか? その最悪のシナリオを描き出し、人類が今後進むべき道を問う大問題作。
引き込まれた!
野球
キ・カンパニー
北池袋 新生館シアター(東京都)
2013/10/22 (火) ~ 2013/10/24 (木)公演終了
満足度★
観たことを後悔
誰かが言わねば、との思いからあえて書く。
ひどかった。
役者勢演じる草野球チームが劇場内のあらゆる場所を使って練習や試合の真似事をし、役者の移動に合わせて客も移動するという上演形態はユニークだし、元気に掛け声を上げながらランニングしたり円陣を組んだり試合の真似事をする姿は“愛すべきバカ集団”といった風情で好感が持てるが、ストーリーは熱血スポ根マンガの粗悪なパロディでオリジナリティゼロ、センスが感じられるセリフは皆無、おまけに演技は素人だわ、長すぎる暗転が相次いでテンポも悪いわ、まるで苦行のような約90分だった。
70分予定の上演時間が延びる一因になった腕立て伏せのシーンにしても、みんなでガチで腕立て伏せをし、メンバーが一人また一人とへばって脱落していく様を面白がってもらおうという趣旨で、笑いとして極めて低レベル。
身内化したお客さんは大ウケしていたが、バルブはクスリともできなかった。
思うに、この“身内化”が問題。
客と役者が渾然となって劇場内を移動する上演形態は客と役者の一体感を生み出すが、半面、“客の身内化”を招くともいえ、旗揚げから1年少々の駆け出しの劇団にとってこれはまずい事態。
客を身内にして常連になってもらおう、との意図がこの団体には色濃くうかがえ、開演前に役者が客に気さくに話しかけたり、公演後に“アフターイベント”の名のもと客も交えた雑談会を開いたり、客を身内として取り込む努力をこの団体は惜しまないが、そんな努力は“何をしても笑うゲラな客”を生み出すばかりでお笑い寄りの劇団にとってなんのプラスにもならない。
そもそも本作、劇団員の誰かが大学時代に上演してウケた劇の再演らしいが、その際の客も身内がほとんどだと思われ、だとすればウケるのは当然。
さらに言えばこの団体、本作をもって“5か月5公演”を果たしたらしいが、他作品も本作と同水準で、なおかつ何でも笑ってくれる客がいれば“毎月1作”もラクラク可能だろうと思ってしまった。
客の身内化に力を注ぐのはもうやめて、“自分らを知らない人たち”を笑わせる努力を!
そのためには力のある作・演出家の発掘が喫緊の課題と言えよう。
ちなみに、公演前後にこのバルブにも話しかけてきてくれたメンバーの皆さんはみな温和で腰が低く、とても好感の持てる面々ではありました。
だから応援したい気もあるのだけど、このレベルの芝居を3000円で見せられるんじゃあリピーターにはなれません。。。
SEX,LOVE&DEATH~ケラリーノ・サンドロヴィッチ短編三作によるオムニバス~
公益社団法人日本劇団協議会
ザ・スズナリ(東京都)
2013/10/18 (金) ~ 2013/10/22 (火)公演終了
満足度★★★★★
唯一の新作はケラからの皮肉?
若手が演じるケラリーノ・サンドロヴィッチ短編集。
そう聞いて期待した通りのものが観られました(o^∇^o)ノ
当パンによればケラさんはスケジュールの都合で稽古への合流が遅れたそうで、3作とも途中までは演出助手とキャストのみによる自主稽古で作られたそう。
そのせいか、どの作品もフレッシュで、また伸びやかな雰囲気がありました。
「【作・演出】ケラリーノ・サンドロヴィッチ+ナイロン100℃」となっているのは、上の理由によるそうです。
①13000/2
風俗店の待合室が舞台。終始ドタバタしっ放しで愉快!
②死んでみた
これのみ新作。
リフレインを多用したリーディング風の劇。
流行りの2手法を茶化してこの上なくバカバカしいナンセンス劇に落とし込んでいるのが痛快!
新手法に無批判に飛びつく演劇人への、ケラからの痛烈な皮肉か?
これは方法に懲りすぎずに舞台を作り続けてきたケラだからできること。
③スモーク
ケラ流ダークファンタジー。
誤解が誤解を呼んで大事になる展開はアンジャッシュのコントのよう。
ロケに来て南国のホテルに泊まったTVクルーと出演者が酷い目に遭わされる。
本作固有の退廃的でクレイジーなムードは客席をも包み込んで、悪酔いしているようないけない気持ちよさを味わいました(笑)。
身振りでコミュニケートを図る、森本華さん演じるトンチキな黒人ボーイがハーポ・マルクスのようで可愛ゆしヽ(*^^*)ノ
上演時間は休憩込みで約130分と、ケラ作品としては異例の短さ。
自由席3000円でこれだけのものが観られてとっても得した気分でした。
夜明けに、月の手触りを
mizhen
北品川フリースペース楽間(東京都)
2013/10/17 (木) ~ 2013/10/20 (日)公演終了
満足度★★★★★
ノゾエ氏の推薦文に偽りナシ!
初観覧の団体。
ノゾエ征爾さんがチラシに寄せていた推薦文に釣られて観劇。
ノゾエさんは人がいいのか、いろんな若手演劇人の公演に推薦文を寄せているが、かつての教え子で団体の主宰者・金城ひとみさんについては本気で買っていることが文章からうかがえ、観てみて納得。
ノゾエさんが推すだけのことはありました。
向かい合った2つの客席の間の細長いスペースで表現されるのは、かつての「結婚適齢期」にあたる20代後半の女子5人の人生。
自分が演じる女の身の上を女優たちは時にマイムのようであったり、時にコンテンポラリーダンスのようであったりする妙な動きを交えながら独白によって表現するのだが、まずはこのダンスが秀逸!
ダンスは語りの内容にリンクした当てぶりのようなものもあれば意味不明なものもあったりと様々ながら、こちらの胸を打つような動きがしばしば繰り出され、ハッとすることたびたび。それらの動きがなぜ胸を打つのか、そのワケは言葉では説明しづらく、もどかしい限り。公演パンフレットには「振付け」のクレジットがなく、動きは演者と演出家によって創られたものと想像されるが、バリエーションに富んだあれらの動きを振付け師に頼らず自前で編み出したのだとしたら驚愕モノだし、完成形に持ち込むまでには相当な努力を要したに違いない。
女たちの独白もダンスと並んで高水準。
なかなかピリオドが打たれない息の長い言葉から成る独特のモノローグは豊饒なレトリックが耳に心地よく、時に詩情を帯び、時に哀愁を醸し、時にユーモアを滲ませ、人間の持つあらゆる感情をくすぐってきて、聞いていて飽きることがない。
かつて某演劇スクールで金城さんを指導したノゾエさんの推薦文によれば、金城さんは「生徒でありながら卒業公演にて積極的に書き、でもって独特なエネルギーとユーモアに溢れたとてもナイスな作品を仕上げた」そうで、お笑い好きな当方はユーモアを求めて本作を観たのだが、作品の性質からして爆笑シーンこそなかったものの、紋切型を嫌う金城さんならではの言語感覚が生かされた自嘲的な語りの数々はクスクス笑いをたびたび誘い、対面の客席を埋めるお客さんたちの顔も途中まではニヤニヤと緩みっ放し。
中でも、妹の結婚式用の服を買いにブティックへ来た女が女性店員とやり取りしている際の心の動きをつぶさに語るくだりは出色。服を買わせようと甘言を並べる店員の心の裏側を邪推する客の女のモノローグはいささかの被害妄想を伴いながらも的を射ていて可笑しく、思わず声を立てて笑ってしまった。
やがて5人の人生は緩やかに交わっていき、交わりの度合が強まるにつれ5人の女の“しんどい境遇”が明らかになっていくが、アパレル店員とフィアンセ持ちのマーケッターの人生がまさかああいう形で交錯するとは…。
アパレル店員が込み上げる悲しみを押さえつけてある男に贈った言葉、本作を締めくくるセリフとなった最後の言葉には胸を抉られた。
劇の中身と不調和なようで調和しているクラブミュージック風の音楽も素敵でした。
地下室
サンプル
こまばアゴラ劇場(東京都)
2013/01/24 (木) ~ 2013/02/03 (日)公演終了
満足度★★★★★
「おしぼり」「お仕事」…
ある閉鎖的コミュニティの異常性が明るみになってゆく過程を観察記録のごとく淡々と描いた密室劇。「おしぼり」「お仕事」…密室内で飛び交う隠語の意味に気づいた時の衝撃たるや! 何度でも再演されるべき傑作!!
旅のしおり2013
ブルドッキングヘッドロック
ザ・ポケット(東京都)
2013/10/09 (水) ~ 2013/10/14 (月)公演終了
満足度★★★
肝腎のものが伝わって来ず
ある女の、逃避行という名の旅の記録。
逃げる端緒になった出来事をなぜ女が起こしたのか、その動機が説得力を伴って伝わってこないので、いまひとつ劇世界にのめり込めなかった。
ストレンジストーリーズ
猫のホテルプレゼンツ 表現・さわやか
駅前劇場(東京都)
2013/10/03 (木) ~ 2013/10/14 (月)公演終了
満足度★★★★
原史奈さんがとにかく素敵!
ぶっちゃけ、原史奈が出ていなければ観ていなかったと思います(苦笑)。
一応、中世を舞台にしたショートスケッチ集。
ただ、ある伯爵が幼い孫娘を喜ばせるため周囲の者も巻き込んで愉快なことを仕掛け続けるという大枠の中で大概のスケッチが演じられるため、ただ笑うだけでなく、最後まで温かい気持ちで鑑賞でき、観劇後はほっこりした気分に(´ω`*)
顔芸や勢い頼みのギャグが多いのは頂けないけど、フェミニンなルックスとボーイッシュな声のギャップが素敵だった原史奈さんに免じて大目に見ます(笑)。
中野の処女がイクッ
月刊「根本宗子」
新宿ゴールデン街劇場(東京都)
2013/10/09 (水) ~ 2013/10/18 (金)公演終了
満足度★★★★
狂った女子を巧みに表現
登場人物の一人として心胆寒からしめるような気狂い女子を創造し、その常軌を逸した行動を生々しく描いてみせた根本宗子も根本宗子なら、その気狂いを演技臭を漂わさず、巧ささえも感じさせないほど自然体で演じてみせた某女優も某女優。ご両人ともあっぱれでした。
しかも、中野のメイドバーの控え室を舞台とし、メイド同士のねじくれた人間関係を描いたこの劇で、根本さんは相当に“イヤな女”の役を自身に振っていて、その潔さにも感服。役柄と同一視されたらイヤなので、役者も兼ねる劇作家・演出家の多くは自分にあんな役は普通振らなかろうに…。
などと書くと重いだけの劇だと思われそうですが、前半部は笑いも多く、かなり愉快((´∀`))
今、出来る、精一杯。
月刊「根本宗子」
駅前劇場(東京都)
2013/03/06 (水) ~ 2013/03/12 (火)公演終了
満足度★★★★★
重めの話なのに笑いも忘れず
かなり重い話なのに随所に笑い所をちりばめ、着実に笑いを取りつつ劇を進めていく手腕にあっぱれ!
度を超した吸引力に、ほぼずっと前のめりで観てしまった。。
やや長めの130分がアッという間でした。
保健体育
20歳の国
王子小劇場(東京都)
2013/10/03 (木) ~ 2013/10/08 (火)公演終了
満足度★★★★
人間性態図鑑
とある高校の教師や生徒、彼らの行きつけのカフェのスタッフなど、総勢14人の男女の間で織り成される不安定で乱脈でドロドロした色恋模様をクールなタッチで描いた、「人間性態図鑑」とでも呼びたくなる劇。
保健体育は人間の恋愛行動や性行動を客観的に捉え、体系化することを役割の一つとするが、本作も劇の書き手が特定のカップルに肩入れなどせず、現実に存在しそうなとてもリアルなカップルたちの有り様をできうる限り冷ややかに客観的に描いており、書き手のクールさは観客にも伝播するのか、こちらもクールに、冷静に、客席のあちら側の世界をまるで「観察」するような眼差しで見てしまう。
映画で言うロングショットのような引きの目線で見るからこそ、性や色恋の不気味さ、おぞましさがかえって鮮明に見えてきて、そこのところがとても面白かった。
しかし、痴話喧嘩を繰り返し、くっ付いたり離れたり浮気したりを繰り返すカップルたちを見ていると、一夫一婦制というものがいかに自然の摂理に反した人工的な制度であるかを思い知らされますなぁ(;´∀`)
五反田の朝焼け
五反田団
アトリエヘリコプター(東京都)
2013/09/23 (月) ~ 2013/09/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
お楽しみ会演劇の完成形
駄弁とドタバタから成る80分。
面白い。くだらなさが神がかっていた。
当パンによれば作・演出の前田司郎氏は「お楽しみ会の劇」をイメージして本作を作ったそうだが、まさしく“お楽しみ会演劇”の完成形を観た思い。それくらいしょうもなさが極まっていた。
震災報道と東京五輪をおちょくってるとしか思えない会名を持つ、ともに主婦が主宰する2つの慈善サークルの諍いが一応の話の軸。
諍いの中身もあまりに幼稚で噴飯ものなら、2つの会のネーミングも浅ましすぎて思わず失笑。
トホホな会名を知りたい方はぜひ劇場に足を運んでご確認下さい。
7人(8人?)の登場人物の中では、小さな体から温和な口調でぽんぽん毒を吐きまくる片方のサークルの長・望月さんがイチ押し!
いやはや、大満足の初五反田団でした。
ある役をハリボテに演(や)らせる確信犯的“お楽しみ会風演出”(バルブも小学生時代、出演者が足りない時にはこういう工夫をしたものだ)も◎。
バカバカしいのがお好きな人にはお薦めしますが、劇に笑い以外の何かを求める人には絶対お薦めできません。
なお、タイトルと内容はおそらく無関係。
三島賞受賞後もこんな劇を作っている前田司郎氏は本当に素晴らしい。
マチワビ
キリンバズウカ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2013/09/19 (木) ~ 2013/09/25 (水)公演終了
満足度★★★★
未解明の謎が気になる
話を荒立てた割には結末が小粒だったような…。
明かされずじまいの謎もいくつか。
それはこの物語がまだ完結していない証か?
“この先”を予感させるようなナレーションで終わったことだし、謎の解明と物語の大団円は多分作られるであろう続編に持ち越しということなのだろう。
とはいえ、何度もハッとさせられて何度も笑った充実の105分間でした。
二組の男女の間で同じようなやり取りが別々の場所で同時になされる終盤のワンシーンではハッとすると同時にホロリともして、とにかく序幕から終幕まで、喜怒哀楽のあらゆる方向へ心が揺すぶられっ放し。
人が人と関わる上で体験する“あるある”が劇の随所でリアリティを伴って描かれているので、バルブを含む観客は否でも応でも感情移入せざるをえず、場面場面で誰かしらの登場人物に自己を投影し、劇世界をあたかも我が事のように感じながら鑑賞するのでどうしたって心が動いてしまうのだ。
とりわけ、毎度ながら“上手いなぁ”と感心してしまうのが、“傍目には親しげに見えて実はギクシャクしている人間関係”の描写。こうした人間関係も“あるある”の一つと言えるが、前作『マッチ・アップ・ポンプ』でいえば田中こなつ演じる主人公と渡邊とかげ演じる商工会議所の女事務員がまさにそんな関係にあり、最終的に2人は衝突を起こすが、今作でもある女とある女がまさにそんな間柄で、観ていて心が痒くなるようなやり取りを苦笑しながら鑑賞。
苦笑とはいえ笑いを誘われるのは、こうしたやり取りがバルブの心をいくらか軽くしてくれるからに他ならない。
『飛ぶ痛み』のアフタートークでお見かけした登米裕一さんは観客からの質問に「ご質問ありがとうございます」と必ず前置きしてから答える誠実そうな男性でルックスも良く、物腰も柔かく、同性にも異性にも好かれそうな人望の厚い人物に見受けられたが、そんな登米さんでもこのようなギクシャクした人間関係を劇に描けるほど頻繁に体験しているのだと考えると、こういう人間関係は誰でも味わっているのだ、バルブだけではないのだ、と思えてきていくらか気持ちが楽になるのだ。
こういうギクシャクした人間関係をはじめ、我々が日常よく体験するあれやこれやを劇なり映画なりで表現しようと試みる“リアリティ志向”は性悪説と手を結びやすく、“リアル”を作風とする劇団なり映画監督は人間ならびに人間世界を露悪的に描くことが多いものだが、バルブが登米さんの作品に惹かれるのは性悪説と性善説が拮抗しているような世界を登米さんが描き、多くの作品が“性善説、一歩リード”の状態で幕を閉じる点にある。
続編が予感されるとはいえ、本作も単独で捉えるならばそのような終わり方をしていたし、登米さんの作品は大抵そのような形で幕を閉じる。
それは我々の生きるこの世界が悪よりも善を余計に含んでおり、それをそのままに写し取った結果というより、“悪より善がちょっとばかり強いはずだ”という登米さんの希望的観測、ないしは願望の表れであるはず。
同じくそうだと信じたいバルブはゆえにこれからもキリンバズウカを追いかけ続ける。
ジャンキー・ジャンク・ヌードット
good morning N°5
駅前劇場(東京都)
2013/09/20 (金) ~ 2013/09/25 (水)公演終了
満足度★★★★★
コント作家・澤田育子にも感服!
この団体は初めてでしたが、遊び心と自虐の笑いにあふれた愉快な90分を満喫。
“気軽に楽しめるバラエティショー”という体裁をとりながらも、メインコンテンツとなる数々のコントは緻密に作りこまれた佳作ばかりで、しかもそれぞれが緩やかにつながっているという構成の妙にも唸らされる。
こんなものをしれっと作って演(や)ってもみせる澤田育子という人は本当に凄いなぁ、としみじみ。
しかも40歳とは思えないほど美しい背面ヌードは見せてくれるわ、客入れ時にはハスキーな美声で歯切れ良くしゃべる軽快なトークで場を和ませてくれるわで、サービス精神の塊。元気をもらった!
次回作もぜひ観たい。