バルブはFB認証者優遇に反対!!の観てきた!クチコミ一覧

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臘月記

臘月記

虚飾集団廻天百眼

こまばアゴラ劇場(東京都)

2014/06/29 (日) ~ 2014/07/03 (木)公演終了

満足度★★★★

妖しい世界を堪能!
女優主体の役者たちが和装をして繰り広げる、“昭和猟奇浪漫”ともいうべき妖しい物語を堪能。

劇団員の知り合いなのか熱烈なファンなのか、前方席にはセーラー服姿のうら若き女子たちがスシ詰め状態で陣取り、熱気ムンムン(絶滅語)のなか公演はスタート。開演前の物販タイムではセーラー軍団のお目当てである美しき女優たちが元気な口上とともに威勢よくグッズを売りさばき、このノリのまま本番に突入するのかと思いきや、役者陣は幕が開くなりモードを切り替え、修辞を尽くした理生流のきらびやかでエロティックな長ゼリフを自在に繰り出し合いながら上述の如き妖しい劇世界を醸成。丸尾末広氏の漫画を彷彿させる退廃的で倒錯的なその世界に、氏の漫画をそのむかし愛読していた当方はグイグイ釣り込まれた。

このなまめかしい劇世界を構築したのが平均年齢24歳の若手集団だなんて、にわかには信じがたい。。。

ただ、その世界は完全なる作り事の世界。虚構性が強すぎるあまり我々の生きるこの現実との接点が感じられず、閉じられた耽美世界を万華鏡を覗くが如くに楽しんでいる感覚にとらわれ、その点に物足りなさを感じたことも率直に記しておきたい。
満点にしなかったのはこれも一因。

なお、男役の大半は女優陣が男装をして演じています。

ネタバレBOX

舞台にはタテ長の蚊帳のようなものが2つ。それぞれの中にこもったドラマー2人が叩き出すビートに合わせて和装の妖しき美女たちが歌い踊る合間合間のパフォーマンスのカッコよさにはシビれました。

こうしたパフォーマンスをもっと増やし、今公演よりもっともっとレビューショー的色合いを強めたほうがファンもおそらく喜ぶし、たぶん私も喜ぶと思います(笑)。
桜の森の満開の下

桜の森の満開の下

千賀ゆう子企画

こまばアゴラ劇場(東京都)

2014/06/25 (水) ~ 2014/06/27 (金)公演終了

満足度★★★

俳優も客も人間
語り手たる俳優に黒子と楽師、その他には舞台上に誰もいない、実質的な一人芝居。

一人芝居は演者をも観客をも緊張させ、場を極限まで張りつめさせ、そこではちょっとした破綻が命取りとなるが、俳優も観客も人間、俳優も時には過ち、客は客で生理活動に伴う物音は立てざるをえず、完全無欠に劇が運ぶことはかなわなかった。

一人芝居の難しさを痛感した次第。

ネタバレBOX

岸田理生が舞台用にまとめ直した安吾作の話を、俳優の千賀さんは随所で動きを交えながら時に声色まで変えて抑揚たっぷりに語り、黒子は彼女を適切に補佐、楽師は妖しく深遠な音色を放つ和製打楽器の数々で演じ手を盛り立てていたが、こうして舞台化されることであの捉えどころのない小説がストンと腑に落ちるのではないかという密やかな私の期待は結果かなうことはなかった。


それはネタバレ外に記したことが原因ではなく、ひとえに原作小説それ自体が持つ説明不足によるものだろう。


だからといって、過剰な加筆により話を合理化しようものなら原作小説の醍醐味である謎めきが失せてしまう。


ならば、山賊、その妻、そして女中にそれぞれ役者をあてがうストレートプレイ仕立てにし、妻が興じる“首のままごと”のくだりをはじめ小説で視覚的に描かれている場面を美術家と道具方が腕をふるって極力リアルに表現していたならどうなっていただろう、少しは“腑に落ちた”だろうかと、そんな興味が湧いた。
少年期の脳みそ

少年期の脳みそ

玉田企画

アトリエ春風舎(東京都)

2014/06/20 (金) ~ 2014/06/29 (日)公演終了

満足度★★★★

観ながら幸せな心地に…/約95分
懐かしく、甘酸っぱく、「あるある(笑)」と共感できる笑いに満ち、観ていて幸せな気分に浸れる一作でした。
告知文ほど“性の目覚め”に寄せた内容ではなかったけれど、楽しかったのでそこはさほど気になりませんでした。

ネタバレBOX

卓球部合宿でひと騒動持ち上がる展開は前作『臆病な町』と一緒(!)。
ただ、その騒動が前作ほどまがまがしくなく、ある男生徒の片想いにからむ可愛らしいものなので、後腐れなく楽しめる。


とはいえ、ラストはちょっぴり切なく、誕生祝いのサプライズプレゼントとして高級ラケットを先輩女子から贈られた女生徒が一度もそれを使うことなく退部するのかと思うと淋しい限り。。。
夏の終わりを感じさせる、花火大会の音をバックに演じられたこのラストが、本作をより味わい深いものにしていました。


いちばん印象深いキャラクターは、本作を可愛い失恋譚にした張本人であるところの津田なる男生徒(大山雄史)と、その幼なじみで卓球部仲間でもある「ちいちゃん」こと栗山知恵(井上みなみ)。
すでに2人とも高校生、いくら幼なじみとはいえ互いを異性として意識してもよさそうなものなのに、しじゅう罵り合ってばかりいる腐れ縁の2人の間柄がなんともほほえましかったです。

なお、念のため書いておくと、津田が想いを寄せて玉砕した女の子は当然ながらちいちゃんではありません。
この「ちいちゃん」なる女の子、おきゃんでなんとも可愛らしいのに、童貞の津田にはまだその魅力がわからないのだ。。。
臭う女(黒)~におうひとノワール~

臭う女(黒)~におうひとノワール~

劇団野の上

こまばアゴラ劇場(東京都)

2014/06/20 (金) ~ 2014/06/23 (月)公演終了

満足度★★★

終盤が
も少しコンパクトにまとまっていれば。。。
長すぎて、緊張の糸が途中でたるんでしまった。

約90分。

十九歳のジェイコブ

十九歳のジェイコブ

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2014/06/11 (水) ~ 2014/06/29 (日)公演終了

満足度★★★★

松本雄吉ワールドに陶酔/約120分
松本ワールドを初体験。
松本雄吉という人はこういう演出をするのかぁ…
スタイリッシュで抑制を効かせた演出が緊迫した劇世界を作り出し、登場人物のセリフの一つ一つ、一挙手一投足がビンビンと胸に響いて、最後まで前傾姿勢のまま夢中で観入っってしまった。。。

話の鍵を握る三人の男たちそれぞれの狂気が劇世界を食い破るようにして客席までひしひしと伝わってくるのも、この抑制の効いた演出のゆえだろう。
むろん、狂気を表現する俳優陣の演技も素晴らしく、ことに、高木直一郎のイカれっぷりを生々しすぎるほど生々しく表現した某熟年俳優の鬼気迫る演技は圧倒的!

主人公ジェイコブのやさぐれた生活、鬱屈した心象を描きながら、時にハッとするほど美しいシーンが挟まれるのも効果的。
照明や音響、そして構図の妙が作りだすそれらのシーンの妖しさには息を呑んだ。

ネタバレBOX

これは原作小説にも感じたことだが、ジェイコブの父殺しの動機づけが弱い。

女子高生役の奥村佳恵がなまめかしすぎてセーラー服姿がしっくりこない。

ジェイコブ役の石田卓也が少しだけ話す関西弁がぎこちない。

以上の点が少々残念でした。
平田オリザ・演劇展vol.4

平田オリザ・演劇展vol.4

青年団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2014/05/31 (土) ~ 2014/06/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

働く私/星新一に似て非なる世界
観ながら思い出したのは中学時代によく読んだ星新一のショートショート。

ロボットと人間の交流を扱うところも星新一なら、ちょっとブラックな味わいも星新一。ただ、ラストシーンに色濃く漂う叙情性は星新一にはないもので、この終幕こそ本作の肝。

2体出てくるロボットは本物のロボットが演じていて、そのなめらかな動きに加え、顔がクシャッとなったり、目が泳いだり、黒目が収縮したりして、微細な表情まで作れることに度肝を抜かれた。

ネタバレBOX

ある夫妻に仕える男女のロボットの物語。

ロボットのお約束通り、彼らは美を感じられず、ベランダに出て夕焼けの美しさに見とれる夫妻に羨望を覚えながら、男ロボット・タケオは人間だけが美を感じられるワケを次のように語る。

「例えば夕焼けは、2人で見るからいいらしいんだ。1人で見ても、誰かと2人で見た時のことを思い出すから、夕焼けを美しいと感じるんだ。だけど僕らは、まだそこまで進化していない…」

それでも、女ロボットのモモコと夕焼けを見にベランダへ繰り出してみるタケオ。

すると2人を、淡いオレンジ色の光が包み込む…。オレンジの光に包まれた2人は、オレンジという色の効果で、互いに照れているようにも見えて…。

ロボットが美に、そして恋に目覚めたことを暗示するかのようなこの幕切れの胸にクること!

御大には悪いが、星新一にこんなシーンは作り出せまい。
平田オリザ・演劇展vol.4

平田オリザ・演劇展vol.4

青年団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2014/05/31 (土) ~ 2014/06/15 (日)公演終了

満足度★★★

ヤルタ会談/2人トークが醍醐味
チャーチルとルーズベルトとスターリンが第二次大戦の戦後処理について秘密裡に話し合ったあの会談を戯画的に描いた会話劇。

何度かある、1人が席を外して2人トークになるくだりを私は面白く鑑賞。外れた1人に配慮して言わずにおいたあれやこれやを互いにぶっちゃけ合う展開になり、ハジけた面白さがありました。

ネタバレBOX

全員が男である3国首脳の演じ手2人が女性だったり、3人とも演技がおどけていたり、そうしたことに多くを負って笑いを取っていたのが残念。
そうしたケレンを排し、各人の名の書かれた全身黒タイツ姿の3人が淡々と戦後処理について話し合うといったドライな作りにしたほうが、会話自体のおぞましさがより際立って良かったのではあるまいか?
平田オリザ・演劇展vol.4

平田オリザ・演劇展vol.4

青年団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2014/05/31 (土) ~ 2014/06/15 (日)公演終了

満足度★★★

忠臣蔵/武士編に軍配!
武士編、OL編とも鑑賞。より引き込まれたのは今演劇展のために作られたという武士編のほう。
大石内蔵助ら赤穂藩の武士7名が藩主の起こした刃傷沙汰とそれに伴う切腹を受けて今後の身の振り方をざっくばらんに話し合う会話劇なのだが、それぞれのキャラが立っているうえ会話にドライブ感があって、とてもノれました。
とりわけキャラが立っていたのは一同の長である大石内蔵助。ある熟年男優が演じた大石は飄々としていて親しみやすい反面、どこかに貫録も。この人になら皆がついていくに違いないと思わせる魅力があって、大石を議長とするこの会議劇に多大なる説得力を与えていました。

武士たちが忠臣蔵の時代にはありえない現代的アイテムを携えて登場する演出にどんな意図があったのかは最後まで分からずじまいでしたが、意図不明ながらも面白かったです。

ネタバレBOX

OL編の脚本が武士編とほぼ同一だったのにはびっくり! 「ならば一方は観るまい」と考える人のためにも、両作の脚本に大差がないことは事前に告知したほうが良かったのではないだろうか?

いや、その前にそもそも、大差がないこと自体に問題がある。

武士編は良いとして、もう一編は「OL編」と名づけた以上、忠臣蔵のストーリーをOL社会にアジャストするよう作り変えるべきだった。OLの世界で起こりうる“忠臣蔵的事件”を創作し、それを軸に話を回すべきだったのだ。
ところが、実際に上演された作品は、武士編とほぼ同じやり取りをスーツや事務服のOL7人が社員食堂でランチしながら交わすというある意味シュールなもので、彼女たちが自分たちはOLであって武士ではないという現実に目をつむり、“武士としての大変後の身の振り方”を「仕官」「討ち入り」「籠城」などの言葉を使って議論しても真実味など出るわけがなく、最後までノれなかった。

いや、大変後の身の振り方を真面目にでなくざっくばらんに語り合うところに平田版忠臣蔵の眼目があることは理解できるし、“ランチ中のOL”という設定が会話にざっくばらん感を出すために作られたものであることも分かるのだが、それでも、OLコスをした女たちが社食で上のようなことを語り合っても説得力は極薄。
OL編しかなかった今までは百歩譲ってこの作りで良かったとしても、正編とも言うべき武士編が作られた以上、OL編は上に示したようなものに改作されるべきである。
言うなればゲシュタルト崩壊

言うなればゲシュタルト崩壊

MCR

駅前劇場(東京都)

2014/06/04 (水) ~ 2014/06/08 (日)公演終了

満足度★★★

初脱落。話を見失ってしまった…。
櫻井さんの脚本はとても込み入っていて理屈っぽく、置いてけぼりを食らうまいと毎回気を張り詰めて鑑賞しているMCR。これまで観た数作品は話にギリギリついていけて、なんとか理解できたという安堵感と理解できたがゆえの感動を味わえたが、今作ではとうとう、途中で話を見失ってしまった。
こういうことがあると、結構めげるもんだなぁ。。。

それでもそこそこ楽しめたのは、MCRという劇団の地力ゆえか?

ネタバレBOX

よく知る文字をずっと見ているうち、そこから意味が失われ、ただのフォルムとしか認識できなくなる“ゲシュタルト崩壊”現象。
その対象が人間の容姿にまで及んだ結果、カノジョの顔までがただのフォルムにしか見えなくなるという状態にたびたび陥り、そのたびカノジョの顔が新鮮味を帯びて感じられ、“可愛い!”とあらためて思ってしまう…。

これのお蔭でカノジョに飽きずに済んでいる(と思い込んでいる)男性主人公が、やがて、触れ合ったどんな女もカノジョにしか見えなくなるという症状を呈し始める。

この変化がどのようないきさつで、どのようにして起こったのか、これがよく理解できず、結果、話が見えなくなってしまった。

気を張って観ていたのにこのようなことになってしまい、無念至極。。。

主人公がかつて入れ上げていたバンド活動と、主人公の認識障害。両者の因果関係に話が及んできたあたりから、徐々に話がつかめなくなっていった。

もし可能なら脚本を読み込んで、モヤモヤを晴らしたい気分。。。
旦那er’s High!!

旦那er’s High!!

タンバリンステージ

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2014/06/04 (水) ~ 2014/06/08 (日)公演終了

満足度★★★★

かなりドタバタ寄り。約90分。
私の期待した、結婚生活の奥深さに迫るようなお芝居ではなかったものの、コメディとしては面白かったです。
ただ、ちょっとこぢんまりしすぎていた感も。
もうひと波乱、ふた波乱引き起こして、もっともっとハチャメチャなストーリーにしても良かったか?

ネタバレBOX

いちおうミステリー仕立てになっているが、ダンナーズハイのあるメンバーの奥さんが浮気をしてないこと、そして夫殺害を企てていないことはライトでほのぼのした作風からして明らか。
無実が作風から読めてしまえるのが少々残念でした。
ただ、巧みに仕組まれた天丼ギャグの数々には感服。
一度笑いを取った諸々が、のちのちさらなる笑いを誘う劇構造はコメディのお手本。
キャベティーナ

キャベティーナ

劇団鋼鉄村松

d-倉庫(東京都)

2014/05/28 (水) ~ 2014/06/01 (日)公演終了

満足度★★★★

自由!
劇団初見。文学的セリフが込み入りすぎていて、咀嚼するのにやや難儀したものの、その文学的セリフの応酬やバカバカしくも感動的なストーリー展開に魅入られました。面白かった。

後藤のどかさんの役はアテ書きしたのか、誰にも代役は務まるまいと思えるくらい、可愛くて薄幸でどこかすっとぼけたキャロライン役がハマっていました。

ネタバレBOX

キャロライン(後藤のどか)が“キャベツの妖精”の座を相撲に勝って守り抜いたり、強くてカッコいいガンバさん(ムラマツべス)がダメ男・まさくに(村松かずお)の弱さに憧れたり、様々な“不自然”が文学的セリフの力によって一定の説得力を帯び、客はモヤモヤを抱えることなく劇を楽しめる。
その脚本力に感服!
こんにちわハワイ

こんにちわハワイ

かのうとおっさん

小劇場 楽園(東京都)

2014/05/28 (水) ~ 2014/05/31 (土)公演終了

満足度★★★

有北氏のキモキャラに頼りすぎ?
バカな話をややオーバーな演技と音響で。面白かった。
ただ、「おっさん」こと有北雅彦さんのキモキャラ・非モテキャラを打ち出し過ぎの感も。お蔭でどのネタも似た印象になってしまっていたので、そうしたキャラに頼り過ぎないコントも観てみたい。

短編コント4編に幕間の一人芝居が3編。それに嘉納さんと有北さんによる前説トークが加わって約90分。

ネタバレBOX

美人なのにさっぱりしたキャラクターの嘉納みなこさんは4編中2つのコントに男子学生役で登場。美女の男装姿に萌えがちな私にとってはたまらない配役でした(笑) 。
ゴーストシティ

ゴーストシティ

青年団リンク・RoMT

こまばアゴラ劇場(東京都)

2014/05/22 (木) ~ 2014/05/28 (水)公演終了

満足度★★★

8人の役者の語り芸を満喫
作者のギャリー・オーウェンとは何者なのか?
本作はいつ頃、どんな経緯で書かれ、どんな様態で上演され、本国の観客にどう受け止められたのか?
…といった背景を知りたくて出がけに急いでネット調べをするも有益な情報は得られず、ほとんど予備知識のないままに観劇。
それでも結構楽しめました。

案内文には、「都会に生きる人々の“25”の確かな声によって綴られた、とある街のスナップショット集」との記述。
8人の役者が独白スタイルで届けるこの“声”が実際に街で拾われたものなのか、作者の創作によるものなのか、よく分かりませんでしたが、大なり小なり何らかの憂いを抱える街の人たちに役者たちが扮し、それぞれの身の上を抑揚豊かな口ぶりと動きで伝える一人芝居には役者の持ち味が色濃く染み出し、こんな言い方はナンですが、「役者図鑑」的な面白さがありました。
また、境涯の断片を切り取った“語り”の数々は、全てが言い尽くされていない分、想像力をかきたて、各人のバックボーンに思いを馳せる楽しさが。

それぞれの語りが相互につながっているような、そうでもないような、その微妙な感じも良かった。

なお、太田宏さんによる前説によれば、
作者はイギリスの人なんだそう。

上演時間は約140分。長丁場ではありましたが、刺激的なひとときでした。

ネタバレBOX

ある女優演じる若い娘が、自分からの愛情に相応の愛で報いてくれないカレシに苛立ち、男女が付き合うということがどれだけ奇跡的で尊いことかを宇宙論から説き起こして熱弁するパフォーマンスが役者の力演も手伝い、とても楽しかったです。
ペテカンのコント『諸々そこんところ2』

ペテカンのコント『諸々そこんところ2』

ペテカン

コア・いけぶくろ(旧豊島区民センタ-)(東京都)

2014/05/23 (金) ~ 2014/05/25 (日)公演終了

満足度★★★

テレビのスタジオコントのノリ
「芸人さんのコントでもなければ
役者さんのコントでもないそれは“ペテカンのコント”」
この惹句に嘘はなかった。
芸人がネタとしてやるコントも、ギャグセンスの高い劇団がやる笑劇も、もっと練られていて面白い。
そのどちらでもない“ペテカンのコント”の味わいは、テレビのスタジオコントに近かった。
ワンアイデアでさっくり終わるショートネタが多いのも、オチの弱さを照明や音楽でごまかすところも、残念なコント番組にそっくり。

もっと粘り強く話を引っ張ってうねりを生み出し、何度も何度も笑いを誘うような、そんな大ネタが一つくらいは観たかったな。。。

アイデアをどう“展開”するか。笑いの肝はここにあります。

星は2つか3つか迷いましたが、冒頭とラス前のコントが好きだったのと、演者さんが楽しげだったことに免じて3つとします。

約90分。

ネタバレBOX

三十路3女優(失敬!)がも○○ロの曲に合わせてそれっぽいミニスカ衣裳で踊るコントは、羞恥プレイを観ている気分でいい心地でした。

【無事終演しました】荒川、神キラーチューン【ご来場ありがとうございました!】

【無事終演しました】荒川、神キラーチューン【ご来場ありがとうございました!】

ロ字ック

サンモールスタジオ(東京都)

2014/05/14 (水) ~ 2014/05/25 (日)公演終了

満足度★★★★★

小野寺ずるの神演技が光る傑作!
客演陣では堂本佳世さんとレベッカさんがとりわけ魅力的。2人の演じるキャラクターとヒロインとの皮肉な巡り合わせをこの上ない生々しさで描き出し、ハンパない切迫感で観る者を圧倒する凄まじい舞台でした。
胸に痛い青春の劇としても、一種の心理ホラー作品としても出色の出来映え!!


それにしても小野寺ずるさんは凄い。
観に来てくれた知り合いと終演後にしゃべっている姿なんかを見ると、気さくで明るい普通の娘さんなのに、舞台に立つと神がかる。
もし小劇場界にそういうものがあるのなら、今作での演技は本年度主演女優賞モノ。
役が憑依したようなリアル度120%の演技に震撼させられた。。。

ネタバレBOX

ずるさんってどれだけ芸域が広いのか?
前作で篠原ともえを彷彿させる陽気な天然少女を演じたかと思ったら、今作では真逆のイメージの自閉的マンガヲタ少女を怪演。

今作は、このずるさんをはじめとする女優勢の優れた演技が、ただでさえ深みのある物語にさらなる奥行きを与えていた印象。

小野寺ずる扮するクラスの日陰者・ショーコと共作マンガを手がけるモジャ髪のヲタ少女・百瀬を演じた山田佳奈さんも、演じ手が山田さんだと終演後に配役表を見てようやく気づいたくらい役になりきっていたし、大森茉莉子さんの悪女役もとても板についていた。

そして何より、堂本佳世さんとレベッカさん。
いじめられっ子のショーコに優しく接する担任・水野先生役に癒し系のムードあふれる堂本さんはぴったり。
心身の不調から体育をサボったショーコに堂本さん扮する担任教師が菩薩さながらの慈悲深い笑みを浮かべて話しかけるくだりは本作一の名シーン。
そんな優しい先生が痴情沙汰に巻き込まれて水死させられる羽目に陥るなんて悲しすぎます。。。
レベッカさんは、クラス一かわいくて華やかな反面、家庭環境からくる影を隠しきれない女生徒役を妙演。
宗教狂いのイカれた母に虐待されている彼女が「神様なんていない!」と世を呪うショーコにシンパシーを感じてお近づきになろうとするくだりはレベッカさんの迫真の演技が生きて、並々ならぬ説得力がありました。
このレベッカさん扮するシオリが、ショーコにとって光であるシオリが、母と愛人二人に監禁されたすえ殺されたと判った時の戦慄たるやありませんでした。。。

長じて母校の教師となった10数年後のショーコを演じた円山チカさんの演技も秀抜。
殺された水野先生に己の境遇が似てきていることに気づき、戦々兢々とする女教師をじつに生々しく演じていました。
グレイトハンティング

グレイトハンティング

劇団HOBO

駅前劇場(東京都)

2014/05/20 (火) ~ 2014/05/25 (日)公演終了

満足度★★★★

楽天的な世界観は相変わらず
私にとって2回目のHOBO。
主要キャストではこいけけいこが最年少という、平均年齢の高い座組は相変わらず。
この座組だから成立する、落ちついた大人のコメディを全身の力を抜いて楽しみました。
とはいえまったりしているばかりではなく所々にドタバタシーンが入るところや、ヒッピー思想に支えられた楽天主義が劇世界の基調を成しているのも相変わらずで、前作同様、観ているうちにいくぶん気持ちが楽に。
とても良い、心の換気ができました。

有川マコト演じる、胡散臭いダメ男が可笑しかった。

ネタバレBOX

南の島の民宿が舞台だった前作に対し、今作の舞台は山岳地にある喫茶店。
両作はとても似ていて、どちらも夫婦者が切り回していること、それぞれの場所を拠点にコミューンのようなものが出来ており、出入りするメンツの多くが都会暮らしに疲れて僻地に逃げてきた者であることなど、多くの点で共通している。

ただ一つ大きな違いは、本作が社会派の色を強めている点。劇は1999年の夏から始まり、一同で9.11のニュース映像に驚きながら見入るシーンを山場として収束へ向かう。
舞台となる高地がダム建設の影響でさびれゆく限界集落であることも社会派色を強める一因になっていて、この限界集落の問題は今日ますます深刻の度を増している。

時代が変わったことを言いたいのだろうが、私見を言わせてもらうなら、過度に社会派色を打ち出すのはユルフワなHOBOの世界をぶち壊すと思う。

個人的には、社会派の劇に仕立てるために費やした結構な時間を、前作にあったような“大人の恋の詳細な描写”に充ててほしかった。
本間剛と小林さやか演じる男女が“一線を超えた”ことをほのめかす前作のあの場面は今でもはっきり記憶に残っている名シーン。
本作でもふた組の“大人のカップル”が誕生するが、親密になってゆく過程がまるまる省略されているのは正直もの足りない。
ルーシアの妹

ルーシアの妹

ライオン・パーマ

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2014/05/15 (木) ~ 2014/05/18 (日)公演終了

満足度★★★★

チラシの印象通り
硬質な文章と滑稽なイラストが同居する、チラシの印象そのままの舞台。
シリアスからコミカルへ、コミカルからシリアスへのスルリとした移行が繰り返されつつ進んでいく独特の劇を、大変面白く鑑賞しました。
初見の劇団でしたが、毎回こういう作風なのでしょうか?

話はやがてシリアスな方向へと収束していきますが、物語が緊迫の度を増していっても、張りつめた空気が緩みきらない程度にときどきギャグを差し挟んでくる飽くなきサービス精神にも好感。

ルーシーの妹・エミリー役の女優さんが可愛かった。

ネタバレBOX

幕切れがやや淡白。王になったエミリーを一同が歌で寿ぎ、もっと盛大にバカバカしく終わっても良かったか?

それから、エミリーは“最後の関門”とやらを突破したのでしょうか? 国王になったからにはクリアしたのでしょうが、そのくだりは端折らずきっちり描いて欲しかった。
それとも、エミリーが図らずもそうしたように、“不正や妥協を引き受けて大人になる”事が最後の関門だったとか??
そこら辺りがよく分からなかったです。
へんしん(仮)

へんしん(仮)

快快

こまばアゴラ劇場(東京都)

2014/05/09 (金) ~ 2014/05/19 (月)公演終了

満足度★★★★★

ショー的要素の濃い思索的娯楽作
見事な音響・照明ワークに支えられた、妖しく、楽しく、深遠な劇世界を堪能。
いのちとは?
魂とは?
死ぬって…?
生きるって…?
こうした問いへの快快なりの回答をエンターテイメントに昇華させ、五感に訴えかけるようにして分かりやすく示してくれる体感演劇。
総合芸術としての演劇の底力をまざまざと思い知らされた。

一オッチャン客としては、大道寺梨乃さんの小悪魔的魅力にメロメロに。。。
彼女を含む三俳優が体をクネクネさせながらなまめかしく舞い踊るダンスシーンには恍惚としてしまった。

ネタバレBOX

人が死んで魂になるまでを、大道寺さんが詩的な言葉で語って聞かせる最終盤の独白には、それこそ魂を震わされた!!
フサエ、100歳まであと3年

フサエ、100歳まであと3年

小松台東

OFF OFFシアター(東京都)

2014/05/08 (木) ~ 2014/05/13 (火)公演終了

満足度★★★★

オール宮崎弁は言わずもがな
みんなイイ大人なのに、なんやかやと小競り合いを繰り返す娘や孫たち、その周りの人々……。お婆さんを囲むけして完璧とは言えない面々が、器のデカいお婆さんの広い広い心によって赦され、守られているような気分にさせられる、とても温かい劇でした。…なんて書くと辛気臭い劇のようだけど、むろん今作もライブ感あふれる松本演出が作り出した笑い所が満載。
笑ったりウルッときたり、この劇団を観た後は、いつもより人間らしい心持ちで小屋を後にする私なのです。

バカにふりそそぐ木漏れ日の温度

バカにふりそそぐ木漏れ日の温度

GORE GORE GIRLS

王子小劇場(東京都)

2014/05/08 (木) ~ 2014/05/12 (月)公演終了

満足度★★★★

本当にアレの話!
一お笑い好きとして、ほぼ笑いだけを追究しているこの劇団が「観てきた!」にランクイン(2014年5月11日現在)しているのは喜ばしい限り。
私も遅ればせながらながら拝見し、「モンドセレクションを描ききる」との案内文にたがわぬ中身に驚いた。
座組のマイナーチェンジはありながらも、シリアス演技でバカをやるスキルは作を追うごとにアップしていて、今回も随所でクスクス、時にゲラゲラ。
ただ、不条理劇といえども、前々作の“過疎地と都会”、前作の“結婚”のように、テーマは身近で切実なもののほうが取っつきやすいかな?

ネタバレBOX

若手から中堅までの売れないお笑い芸人たちがモンドセレクションを受賞したお菓子類に異常なまでにはまってしまって相方らにいさめられ、「笑いを取るかモンドを取るか」という大騒動に発展する毎度ながらのイカれた劇。
モンドセレクションという主題には正直はまれなかったのですが、「笑いかモンドか?」がテーマになる中盤以降は一お笑い狂として前のめりで見入ってしまった。
だから、モンドを捨てて笑いを取った長身の漫才師が逆の選択をした某芸人を相方と一緒に殴りにいくラストにはジィ~ン!
実際には殴りはせず、その芸人をマイクに見立てて元気よくハツラツと漫才の出だしの挨拶を始めるのだが、それを観ていっそう目頭が熱くなりました。。。
というか、正直に申し上げれば、長身の漫才師が笑いへの一筋縄じゃあいかない思いを赤裸々に語る前段のシーンで、「感動ポイント間違えてるかも」と思いながら早くもウルッときてたのですが…。
あれは西山さんがコメディに寄せる思いを代弁してたのか!?
ゴアゴアガールズに初めて感動させられた。

最後に。
「俺もブルース・リーのモノマネ一本でやっていけるとは思ってないし…」
やめた芸人が残したこの言葉が、本作でいちばんツボったセリフでした(笑)。

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