臘月記
虚飾集団廻天百眼
こまばアゴラ劇場(東京都)
2014/06/29 (日) ~ 2014/07/03 (木)公演終了
満足度★★★★
妖しい世界を堪能!
女優主体の役者たちが和装をして繰り広げる、“昭和猟奇浪漫”ともいうべき妖しい物語を堪能。
劇団員の知り合いなのか熱烈なファンなのか、前方席にはセーラー服姿のうら若き女子たちがスシ詰め状態で陣取り、熱気ムンムン(絶滅語)のなか公演はスタート。開演前の物販タイムではセーラー軍団のお目当てである美しき女優たちが元気な口上とともに威勢よくグッズを売りさばき、このノリのまま本番に突入するのかと思いきや、役者陣は幕が開くなりモードを切り替え、修辞を尽くした理生流のきらびやかでエロティックな長ゼリフを自在に繰り出し合いながら上述の如き妖しい劇世界を醸成。丸尾末広氏の漫画を彷彿させる退廃的で倒錯的なその世界に、氏の漫画をそのむかし愛読していた当方はグイグイ釣り込まれた。
このなまめかしい劇世界を構築したのが平均年齢24歳の若手集団だなんて、にわかには信じがたい。。。
ただ、その世界は完全なる作り事の世界。虚構性が強すぎるあまり我々の生きるこの現実との接点が感じられず、閉じられた耽美世界を万華鏡を覗くが如くに楽しんでいる感覚にとらわれ、その点に物足りなさを感じたことも率直に記しておきたい。
満点にしなかったのはこれも一因。
なお、男役の大半は女優陣が男装をして演じています。
桜の森の満開の下
千賀ゆう子企画
こまばアゴラ劇場(東京都)
2014/06/25 (水) ~ 2014/06/27 (金)公演終了
満足度★★★
俳優も客も人間
語り手たる俳優に黒子と楽師、その他には舞台上に誰もいない、実質的な一人芝居。
一人芝居は演者をも観客をも緊張させ、場を極限まで張りつめさせ、そこではちょっとした破綻が命取りとなるが、俳優も観客も人間、俳優も時には過ち、客は客で生理活動に伴う物音は立てざるをえず、完全無欠に劇が運ぶことはかなわなかった。
一人芝居の難しさを痛感した次第。
少年期の脳みそ
玉田企画
アトリエ春風舎(東京都)
2014/06/20 (金) ~ 2014/06/29 (日)公演終了
満足度★★★★
観ながら幸せな心地に…/約95分
懐かしく、甘酸っぱく、「あるある(笑)」と共感できる笑いに満ち、観ていて幸せな気分に浸れる一作でした。
告知文ほど“性の目覚め”に寄せた内容ではなかったけれど、楽しかったのでそこはさほど気になりませんでした。
臭う女(黒)~におうひとノワール~
劇団野の上
こまばアゴラ劇場(東京都)
2014/06/20 (金) ~ 2014/06/23 (月)公演終了
十九歳のジェイコブ
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2014/06/11 (水) ~ 2014/06/29 (日)公演終了
満足度★★★★
松本雄吉ワールドに陶酔/約120分
松本ワールドを初体験。
松本雄吉という人はこういう演出をするのかぁ…
スタイリッシュで抑制を効かせた演出が緊迫した劇世界を作り出し、登場人物のセリフの一つ一つ、一挙手一投足がビンビンと胸に響いて、最後まで前傾姿勢のまま夢中で観入っってしまった。。。
話の鍵を握る三人の男たちそれぞれの狂気が劇世界を食い破るようにして客席までひしひしと伝わってくるのも、この抑制の効いた演出のゆえだろう。
むろん、狂気を表現する俳優陣の演技も素晴らしく、ことに、高木直一郎のイカれっぷりを生々しすぎるほど生々しく表現した某熟年俳優の鬼気迫る演技は圧倒的!
主人公ジェイコブのやさぐれた生活、鬱屈した心象を描きながら、時にハッとするほど美しいシーンが挟まれるのも効果的。
照明や音響、そして構図の妙が作りだすそれらのシーンの妖しさには息を呑んだ。
平田オリザ・演劇展vol.4
青年団
こまばアゴラ劇場(東京都)
2014/05/31 (土) ~ 2014/06/15 (日)公演終了
満足度★★★★★
働く私/星新一に似て非なる世界
観ながら思い出したのは中学時代によく読んだ星新一のショートショート。
ロボットと人間の交流を扱うところも星新一なら、ちょっとブラックな味わいも星新一。ただ、ラストシーンに色濃く漂う叙情性は星新一にはないもので、この終幕こそ本作の肝。
2体出てくるロボットは本物のロボットが演じていて、そのなめらかな動きに加え、顔がクシャッとなったり、目が泳いだり、黒目が収縮したりして、微細な表情まで作れることに度肝を抜かれた。
平田オリザ・演劇展vol.4
青年団
こまばアゴラ劇場(東京都)
2014/05/31 (土) ~ 2014/06/15 (日)公演終了
満足度★★★
ヤルタ会談/2人トークが醍醐味
チャーチルとルーズベルトとスターリンが第二次大戦の戦後処理について秘密裡に話し合ったあの会談を戯画的に描いた会話劇。
何度かある、1人が席を外して2人トークになるくだりを私は面白く鑑賞。外れた1人に配慮して言わずにおいたあれやこれやを互いにぶっちゃけ合う展開になり、ハジけた面白さがありました。
平田オリザ・演劇展vol.4
青年団
こまばアゴラ劇場(東京都)
2014/05/31 (土) ~ 2014/06/15 (日)公演終了
満足度★★★
忠臣蔵/武士編に軍配!
武士編、OL編とも鑑賞。より引き込まれたのは今演劇展のために作られたという武士編のほう。
大石内蔵助ら赤穂藩の武士7名が藩主の起こした刃傷沙汰とそれに伴う切腹を受けて今後の身の振り方をざっくばらんに話し合う会話劇なのだが、それぞれのキャラが立っているうえ会話にドライブ感があって、とてもノれました。
とりわけキャラが立っていたのは一同の長である大石内蔵助。ある熟年男優が演じた大石は飄々としていて親しみやすい反面、どこかに貫録も。この人になら皆がついていくに違いないと思わせる魅力があって、大石を議長とするこの会議劇に多大なる説得力を与えていました。
武士たちが忠臣蔵の時代にはありえない現代的アイテムを携えて登場する演出にどんな意図があったのかは最後まで分からずじまいでしたが、意図不明ながらも面白かったです。
言うなればゲシュタルト崩壊
MCR
駅前劇場(東京都)
2014/06/04 (水) ~ 2014/06/08 (日)公演終了
満足度★★★
初脱落。話を見失ってしまった…。
櫻井さんの脚本はとても込み入っていて理屈っぽく、置いてけぼりを食らうまいと毎回気を張り詰めて鑑賞しているMCR。これまで観た数作品は話にギリギリついていけて、なんとか理解できたという安堵感と理解できたがゆえの感動を味わえたが、今作ではとうとう、途中で話を見失ってしまった。
こういうことがあると、結構めげるもんだなぁ。。。
それでもそこそこ楽しめたのは、MCRという劇団の地力ゆえか?
旦那er’s High!!
タンバリンステージ
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2014/06/04 (水) ~ 2014/06/08 (日)公演終了
満足度★★★★
かなりドタバタ寄り。約90分。
私の期待した、結婚生活の奥深さに迫るようなお芝居ではなかったものの、コメディとしては面白かったです。
ただ、ちょっとこぢんまりしすぎていた感も。
もうひと波乱、ふた波乱引き起こして、もっともっとハチャメチャなストーリーにしても良かったか?
キャベティーナ
劇団鋼鉄村松
d-倉庫(東京都)
2014/05/28 (水) ~ 2014/06/01 (日)公演終了
満足度★★★★
自由!
劇団初見。文学的セリフが込み入りすぎていて、咀嚼するのにやや難儀したものの、その文学的セリフの応酬やバカバカしくも感動的なストーリー展開に魅入られました。面白かった。
後藤のどかさんの役はアテ書きしたのか、誰にも代役は務まるまいと思えるくらい、可愛くて薄幸でどこかすっとぼけたキャロライン役がハマっていました。
こんにちわハワイ
かのうとおっさん
小劇場 楽園(東京都)
2014/05/28 (水) ~ 2014/05/31 (土)公演終了
満足度★★★
有北氏のキモキャラに頼りすぎ?
バカな話をややオーバーな演技と音響で。面白かった。
ただ、「おっさん」こと有北雅彦さんのキモキャラ・非モテキャラを打ち出し過ぎの感も。お蔭でどのネタも似た印象になってしまっていたので、そうしたキャラに頼り過ぎないコントも観てみたい。
短編コント4編に幕間の一人芝居が3編。それに嘉納さんと有北さんによる前説トークが加わって約90分。
ゴーストシティ
青年団リンク・RoMT
こまばアゴラ劇場(東京都)
2014/05/22 (木) ~ 2014/05/28 (水)公演終了
満足度★★★
8人の役者の語り芸を満喫
作者のギャリー・オーウェンとは何者なのか?
本作はいつ頃、どんな経緯で書かれ、どんな様態で上演され、本国の観客にどう受け止められたのか?
…といった背景を知りたくて出がけに急いでネット調べをするも有益な情報は得られず、ほとんど予備知識のないままに観劇。
それでも結構楽しめました。
案内文には、「都会に生きる人々の“25”の確かな声によって綴られた、とある街のスナップショット集」との記述。
8人の役者が独白スタイルで届けるこの“声”が実際に街で拾われたものなのか、作者の創作によるものなのか、よく分かりませんでしたが、大なり小なり何らかの憂いを抱える街の人たちに役者たちが扮し、それぞれの身の上を抑揚豊かな口ぶりと動きで伝える一人芝居には役者の持ち味が色濃く染み出し、こんな言い方はナンですが、「役者図鑑」的な面白さがありました。
また、境涯の断片を切り取った“語り”の数々は、全てが言い尽くされていない分、想像力をかきたて、各人のバックボーンに思いを馳せる楽しさが。
それぞれの語りが相互につながっているような、そうでもないような、その微妙な感じも良かった。
なお、太田宏さんによる前説によれば、
作者はイギリスの人なんだそう。
上演時間は約140分。長丁場ではありましたが、刺激的なひとときでした。
ペテカンのコント『諸々そこんところ2』
ペテカン
コア・いけぶくろ(旧豊島区民センタ-)(東京都)
2014/05/23 (金) ~ 2014/05/25 (日)公演終了
満足度★★★
テレビのスタジオコントのノリ
「芸人さんのコントでもなければ
役者さんのコントでもないそれは“ペテカンのコント”」
この惹句に嘘はなかった。
芸人がネタとしてやるコントも、ギャグセンスの高い劇団がやる笑劇も、もっと練られていて面白い。
そのどちらでもない“ペテカンのコント”の味わいは、テレビのスタジオコントに近かった。
ワンアイデアでさっくり終わるショートネタが多いのも、オチの弱さを照明や音楽でごまかすところも、残念なコント番組にそっくり。
もっと粘り強く話を引っ張ってうねりを生み出し、何度も何度も笑いを誘うような、そんな大ネタが一つくらいは観たかったな。。。
アイデアをどう“展開”するか。笑いの肝はここにあります。
星は2つか3つか迷いましたが、冒頭とラス前のコントが好きだったのと、演者さんが楽しげだったことに免じて3つとします。
約90分。
【無事終演しました】荒川、神キラーチューン【ご来場ありがとうございました!】
ロ字ック
サンモールスタジオ(東京都)
2014/05/14 (水) ~ 2014/05/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
小野寺ずるの神演技が光る傑作!
客演陣では堂本佳世さんとレベッカさんがとりわけ魅力的。2人の演じるキャラクターとヒロインとの皮肉な巡り合わせをこの上ない生々しさで描き出し、ハンパない切迫感で観る者を圧倒する凄まじい舞台でした。
胸に痛い青春の劇としても、一種の心理ホラー作品としても出色の出来映え!!
それにしても小野寺ずるさんは凄い。
観に来てくれた知り合いと終演後にしゃべっている姿なんかを見ると、気さくで明るい普通の娘さんなのに、舞台に立つと神がかる。
もし小劇場界にそういうものがあるのなら、今作での演技は本年度主演女優賞モノ。
役が憑依したようなリアル度120%の演技に震撼させられた。。。
グレイトハンティング
劇団HOBO
駅前劇場(東京都)
2014/05/20 (火) ~ 2014/05/25 (日)公演終了
満足度★★★★
楽天的な世界観は相変わらず
私にとって2回目のHOBO。
主要キャストではこいけけいこが最年少という、平均年齢の高い座組は相変わらず。
この座組だから成立する、落ちついた大人のコメディを全身の力を抜いて楽しみました。
とはいえまったりしているばかりではなく所々にドタバタシーンが入るところや、ヒッピー思想に支えられた楽天主義が劇世界の基調を成しているのも相変わらずで、前作同様、観ているうちにいくぶん気持ちが楽に。
とても良い、心の換気ができました。
有川マコト演じる、胡散臭いダメ男が可笑しかった。
ルーシアの妹
ライオン・パーマ
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2014/05/15 (木) ~ 2014/05/18 (日)公演終了
満足度★★★★
チラシの印象通り
硬質な文章と滑稽なイラストが同居する、チラシの印象そのままの舞台。
シリアスからコミカルへ、コミカルからシリアスへのスルリとした移行が繰り返されつつ進んでいく独特の劇を、大変面白く鑑賞しました。
初見の劇団でしたが、毎回こういう作風なのでしょうか?
話はやがてシリアスな方向へと収束していきますが、物語が緊迫の度を増していっても、張りつめた空気が緩みきらない程度にときどきギャグを差し挟んでくる飽くなきサービス精神にも好感。
ルーシーの妹・エミリー役の女優さんが可愛かった。
へんしん(仮)
快快
こまばアゴラ劇場(東京都)
2014/05/09 (金) ~ 2014/05/19 (月)公演終了
満足度★★★★★
ショー的要素の濃い思索的娯楽作
見事な音響・照明ワークに支えられた、妖しく、楽しく、深遠な劇世界を堪能。
いのちとは?
魂とは?
死ぬって…?
生きるって…?
こうした問いへの快快なりの回答をエンターテイメントに昇華させ、五感に訴えかけるようにして分かりやすく示してくれる体感演劇。
総合芸術としての演劇の底力をまざまざと思い知らされた。
一オッチャン客としては、大道寺梨乃さんの小悪魔的魅力にメロメロに。。。
彼女を含む三俳優が体をクネクネさせながらなまめかしく舞い踊るダンスシーンには恍惚としてしまった。
フサエ、100歳まであと3年
小松台東
OFF OFFシアター(東京都)
2014/05/08 (木) ~ 2014/05/13 (火)公演終了
満足度★★★★
オール宮崎弁は言わずもがな
みんなイイ大人なのに、なんやかやと小競り合いを繰り返す娘や孫たち、その周りの人々……。お婆さんを囲むけして完璧とは言えない面々が、器のデカいお婆さんの広い広い心によって赦され、守られているような気分にさせられる、とても温かい劇でした。…なんて書くと辛気臭い劇のようだけど、むろん今作もライブ感あふれる松本演出が作り出した笑い所が満載。
笑ったりウルッときたり、この劇団を観た後は、いつもより人間らしい心持ちで小屋を後にする私なのです。
バカにふりそそぐ木漏れ日の温度
GORE GORE GIRLS
王子小劇場(東京都)
2014/05/08 (木) ~ 2014/05/12 (月)公演終了
満足度★★★★
本当にアレの話!
一お笑い好きとして、ほぼ笑いだけを追究しているこの劇団が「観てきた!」にランクイン(2014年5月11日現在)しているのは喜ばしい限り。
私も遅ればせながらながら拝見し、「モンドセレクションを描ききる」との案内文にたがわぬ中身に驚いた。
座組のマイナーチェンジはありながらも、シリアス演技でバカをやるスキルは作を追うごとにアップしていて、今回も随所でクスクス、時にゲラゲラ。
ただ、不条理劇といえども、前々作の“過疎地と都会”、前作の“結婚”のように、テーマは身近で切実なもののほうが取っつきやすいかな?