みさの観てきた!クチコミ一覧

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守り火(まもりび)

守り火(まもりび)

FINE BERRY(ファインベリー)

ザ・ポケット(東京都)

2010/05/25 (火) ~ 2010/05/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

泣いちゃったよ!
家族とは何も血の繫がりばかりを言うのではない。ここでの桐島家のお母さん役の松本紀保がひじょうにいい。家族の中で常に太陽のような存在なのだ。そして、グワイニャオンの尾形雅宏の演技も相変わらず素晴らしい。言い知れぬ無言の圧力を醸し出し、立ってるだけで絵になる。勿論、他のキャストの演技力もあってのこと。
導入音楽も独特の郷愁を誘い、照明は魅せた。

以下はネタばれBOXにて。。


ネタバレBOX


「守り火」という、松明の火で人形を燃やし悪霊を追い払い、町の安泰を願う、その土地伝統の祭りはその昔、村に災いをもたらすといわれた捨て子を焼いていたと言い伝えられていた。そしてこの土地には何故か昔から捨て子が多い土地だったのである。

そんな地域でゴミ収集業を営む夫婦の妻・志津子は4回も流産してしまう。夫婦は生まれて来なかった4人の子供の代わりに4人の女の捨て子を拾って育て、愛しむ。こうして家族は貧しいながら幸せの形を築くのだったが、時は流れ、事業は借金が膨れ上がり志津子は入院してしまう。志津子の入院費やら借金の清算の為に、父・啓次郎はヤクザが絡んだ不法投棄に手を染め、ドンドン深みにはまり込んでニッチモサッチモいかなくなってしまう。

そんな折、志津子は入院先で亡くなり、一家は家を燃やして、ヤクザの手から逃げるという末路だったが、終盤の描写は追い詰められた家族が手を汚しながら、更に人をも殺しかねない状況になっていくさまは、ハラハラドキドキの連続でまさに追い詰められた鼠は猫をも襲う心境だ。

舞台は過去と現在の落差を繰り返しながらも、その見せ方は上手い。特にここでの照明が大活躍だった。春夏秋冬の移り変わりの演出も素晴らしい。風が吹いて窓からゴミが入ってくるシーンは、もうお見事としか言いようがなく、藁人形のそのふくよかな形もなんとなくリアル感があった。

個人的にこういった因習ものは好みということもあり、そしてそこに家族が崩壊していくさまや、崩壊しそうになりながらも、亡くなった母が「子供たちを守ってあげて」と吐くセリフなど、終盤はホロリとさせられ涙ぐみながら観ていた。独特の描写、色あせ、くすんで湿ったような赤茶けた鉄の匂いのする舞台だった。素晴らしい!!

『あぁ、自殺生活』 ~ ありがとうございました。次回は下北沢楽園にて6/1(金)&6/20(日)に上演致します。

『あぁ、自殺生活』 ~ ありがとうございました。次回は下北沢楽園にて6/1(金)&6/20(日)に上演致します。

劇団夢現舎

新高円寺アトラクターズ・スタヂオ(東京都)

2010/05/13 (木) ~ 2010/05/26 (水)公演終了

満足度★★★★★

「後半戦」を観た
観客の意見を吸い取って物語を部分的に変えてるところは流石。前半のラストが後半で、あんな風に変わってしまうと、物語そのものの意味も変わってくるのか・・と納得した舞台だった。とってもセンスのいい会話劇で相変わらずワタクシ好みの作風だった。良く勉強されてて秀逸な演技力もさることながら、二人芝居というのは物凄いエネルギーだと思う。とにかく汗ダラダラ・・。
今、思い出したが、ここの劇団の作風ってフランスの「ギィ・フォワシイ」に似てる。

個人的に、このような妖しい雰囲気の、「遺失」と「蟻」もそうだったがちょっとねじれた陰鬱とした中にも破壊力のある物語は劇団夢現舎でなければ表現できない情景だと思う。黄泉の国と現世の狭間のような・・。つまりはワタクシ好み。笑

以下はネタバレBOXにて。。

ネタバレBOX

前期の公演で気が付かなかったこと・・、生真面目な会社員は会社の皆にイビラレ苛められていいように使われた挙句、成績も悪い事から、解雇されてしまう。絶望のどん底に陥った会社員は飛び込み自殺を図るが、一人の貧乏神のような老人に助けられる。

老人は自殺道について、会社員に話しかけ、話を聞き、肩を抱いて身体を密着させながらもうんちくを述べ、更に会社員の話を聞く。ここで解った事は、会社員は会社で孤立して誰からも話かけられず、また話しかける相手も居なくて孤独だった、という事だ。だからこんな風に自分の話や主張を引き出して延々と話し込む。というのは最近ではなかったに違いない。「都会の奴ら、他人のことなんか皆、気にしちゃ居ないんだよ。皆、冷たいからなー。」と吐くセリフで納得させられる。

人間は衣食住の基本の他に「人間同士の会話」がなかったら、生きてるけど死んでるのと同義だと思う。人間は自分の意思を何らかの方法で常時、発散させていなければ、退屈や淋しさ、物足りなさ、不愉快さを消す事は出来ないからだ。

会社員は老人にほろ苦いコーヒー牛乳を頂く。その表情はこれから死ぬというのに、「ああ、上手い。なんて上手いんだ、生きてて良かった!」とでも呟くような表情をする訳だ。笑  この展開で会社員は本気で死ぬつもりなんかないんだと思う。なのになんだか自殺しなければいけない雰囲気になって、意固地になりながらも、いざっていうときに土壇場になってビビリまくるのだ。とにかく可笑しい。

で、結局薬局、老人は最初から会社員の自殺を止めさせたかったのではないだろうか・・、会社員は会社員でそんな老人に親近感を抱き、友情が芽生えてしまう。「今、ここでこの老人を手放したら、今度はいつ自分と会話してくれる人が現れるだろうか・・。また一人になっちまうじゃないか・・。」とでもいいたげな表情だ。会社員はそんな恐怖にも似た心持は味わいたくないのだと思う。だから、「俺はあんたが居なかったらダメなんだ」と叫ぶ。貧乏神のような老人は今の会社員にとっては神様のようなものなのだ。人と人との繫がりが稀薄になってる世の中だから、こういった風景が心に響く。

何回観ても素晴らしい。。

日の出温泉のW杯

日の出温泉のW杯

ZIPANGU Stage

萬劇場(東京都)

2010/05/19 (水) ~ 2010/05/24 (月)公演終了

満足度★★★

毎回のベタさ加減!
毎度のことながら、ここの劇団の芝居は結果が想像できることだ。笑)
そういった意味では物語に大きな暗転も安易な想像を気持ちよく裏切られる結果もない。じゃあ、どうして観に行くの?ってことだけれど、出演者に愛着があるからだ。新田のはにかみや、佐土原の禿げ具合や、宮本ゆるみの壊れ具合を確認しに行くと言っても過言ではない。笑)

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

物語は岡田屋旅館の一室での出来事。不倫という設定の男女が社長の居ぬ間にHしようとするのだが、しようとするも、邪魔が入り、続々と集まってきちゃう。笑

ワタクシは不倫の経験はないが、まあ、そんなに恋愛の経験もないのだが、男女の問題は、ああしてこうしてこうなって、と割り切れるものでもなく、どちらがいいとか悪いとかいう問題でもない。だから、不倫という道は行くにも戻るにも逃げだそうにも、あがけばあがくほど深みにはまりこむ泥沼のような道なのだろうと思う。

そんな不倫カップルのところに集まってきた輩は、借金を抱えた旅館の主とその娘を好きになってしまった年の差カップルと、取り立て屋の暴力団風金髪男と、他の部屋の連中だ。こやつらが毎回のごとくハチャメチャな暴挙を繰り返しながら、サッカー観戦の結果によって、別れる別れないのさじ加減を決めちゃうというのだから、人生をスロットゲームのような位置づけにしちゃうわけよ。笑

そんなどーでもいいような軽い人生そのものがコメディな訳だけれど、どちらかというと佐土原や長野耕士のほうが暴力団風にみえちゃったりもする。宮本ゆるみに至っては旅館の元女将というよりも、「姐さん」に見えちゃうものだから、これらは既に「妖怪の宴」とか「動物ランドの宴」そのもので、腐れ外道が集まっためくるめく大人世界。大人による大人の為の大人の遊びが繰り広げられてるような体をしている。しかしその心は幼稚。笑

観客席にいるワタクシは目をパチパチ、白黒させながらも、むん!と胸張って観ていたけれど、物語の流れになかば目眩を感じた刹那、無理無理に日本を勝たせちゃうという緩い結末。

「なんじゃこりゃー!!(明言)」

はこういう時に使うもので、力の入れどころを激しく間違ってる芝居だったが、「欲しいもの」はやっぱり「欲しい」のであって今にも死にそうな婆さまのお言葉には鎮座したい気持ちになったのでした。まあ、年寄りの言うことは聞くものです。何を言われようとほっときゃそのうち死んじゃうから・・・。ワタクシの毒舌も暖かい目で観てやってください。ほっときゃそのうち死にます。



ユーフラテス/Euphrates<舞台写真を少しずつ公開し始めました>【公演終了いたしました。ご来場頂きました皆様、どうもありがとうございました!!】

ユーフラテス/Euphrates<舞台写真を少しずつ公開し始めました>【公演終了いたしました。ご来場頂きました皆様、どうもありがとうございました!!】

一徳会/鎌ヶ谷アルトギルド

atelier SENTIO(東京都)

2010/05/20 (木) ~ 2010/05/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

銀の魚
ユーフラテス川の底でゆらゆらと泳ぐ2匹の銀の魚。神話を組み込みながらの人間の業を描いた作品だと解釈するが、その表現の仕方が相変わらずの狂気!

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX


舞台の中央に置かれた盛土。その横には水槽が一つ。助教授の狂気(悪)の部分を演じるのが手にシャベルを括りつけて麦藁帽子に白い箱を背負った男だ。この男と助教授が交互に入り混じれての演劇になるのだが、ここでは殆どが狂気の部分、シャベルマンのような男と妻との会話劇と言っていい。

男はアニマとの不倫が妻にばれて相当に詰られ罵倒される。この部分は現実の妻が夫を詰り、ソレに対して夫が頭低尻低に謝罪するような光景を物語っていて実に可笑しい。夫に飽きられた存在の妻は女と夫のセックスの回数までを白状させ、嫉妬に狂い、アニマの殺害を夫をけしかけて殺しに加担する。

ここでのアニマ役の沖渡がカマ風味をその強靭な肉体でもって表現するのだから、なんとも妖しいのだが、泥にまみれた白いハイヒールがししゃものようなふくらはぎとヤケニ絶妙にマッチしちゃうのが、すんごく可笑しいのだった。彼は「龍を~」の時にも、その人間離れした怪しさにワタクシは、ばばりまくりながらも、思わずキンチョールをかけてしまおうか?なんて考えたものである。

そのキンチョールをかけ損なった男が、今度はアニマになって富士見壮で、白いハイヒールを履いたまま何度も先生に抱かれた。来る日も来る日も・・・っつーんだから、こりゃあもう、そんじょそこらの正当なセックスではなく、マニアってるでしょ?男女の業が入り乱れての浮気うんぬんは妻が入院している病院の娯楽室を舞台に繰り広げられてるさまも、やっぱイッチャッテル舞台!笑

そんな怒涛の激情から離れてユーフラテス川の川底でアフロディーテとエロスのように銀の魚になってのーんびりと考えたい。なんて終わらせるあたり、助教授の心情を物語っていて、なんとも切なく悲しい。。

ああ、この世にたった二つの魚しか存在しなければ、愛憎劇なんてないものを!笑


めぐるめく

めぐるめく

KAKUTA

シアタートラム(東京都)

2010/05/21 (金) ~ 2010/05/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

だから家族
姉妹を軸に家族を表現した物語だったように思う。その描写の仕方は温もりがあって涙が溢れた素晴らしい舞台だった。セットの高さがあるのでこれから観に行かれる方は、座席は中央が宜しいかと。。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

好みの物語だった。交通事故で昏睡状態になり11年間も入院していた長女・陽子は、ある日突然目覚める。姉は他の3人の姉妹・れいこ、みきこ、ロミに呼びかけをして、当時交通事故で亡くなってしまった夫の墓参りをしようと持ちかけ、旅行方々決行される。まるで墓参りの為に陽子の意識が戻ったかのような感じだ。

一方で陽子の息子の立を11年間引き取って面倒をみてきたのはロミだったが、立が思春期になって難しくなると、どうやって接していいのか解らないロミとロミを母代わりとしていた立の心情の描写も見事だった。ロミが吐く言葉の毒はロミの本心とはうらはらで痛々しくもあり生き方が下手な代表選手のようだった。優しい言葉はかけられない。そんな温い言葉はロミにとって、こっ恥ずかしい以外の何物でもないのだ。しかし立に対するハートは熱い。

そんなロミの恋人のような存在だった陽子の亡き夫の弟・木崎は姉の介護士として親身になって付き添っていた男が実はあのおぞましい交通事故の原因を作った男だったと知り、介護士を責める。それを受ける介護士の心の葛藤の場面が涙ナシでは観られない。

そして前後するがこの介護士が旅先で入るお風呂のシーンの描写はコミカルで絶妙だった。コメディそのもの。

次女のベストセラー作家のれいこと、その担当者の出版編集者の微妙な近しい関係性もある意味、崇高だったと感じる。「家族のように近い関係というのは何も恋愛や体の関係がないからという問題じゃない。」と吐く編集者の言葉がやけに響いて、ズシン!と奥の部分に木霊する。

三女・みきことフリーターの夫の関係もなんだか微笑ましい。

それぞれのどこか傷を負った人たちが自らの温もりを発し、その体温が確実に伝わってくるような芝居だった。もしこの芝居をサイボーグが観たらどんなだろう。「人間とはこんなにも優しいのですね。」と感じてエネルギーが充電されて動くのだろうか。地球を気に入ってくれるのだろうか。地球という大地に根っこを張り巡らせて根付いてくれるだろうか。

頑張ろうと思った。


『妖怪レストラン 2D』

『妖怪レストラン 2D』

THE 黒帯

アイピット目白(東京都)

2010/05/20 (木) ~ 2010/05/23 (日)公演終了

満足度★★

幼児向き
学芸会みたいな妖怪芝居。構成が散漫過ぎるのと、ストーリーとキャストらの演技もぐだぐだで緩い。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

物語は「泣いた赤鬼」を主軸に、「ぐりとぐら」「ウオーリーを探せ」「あらしの夜に」などから拾った内容を取り入れながら、絵本の世界で妖怪レストランで失くしたアイテムを取り返していく。という構成。

まあ、妖怪という設定なのだけれど、そういったおどろおどろしさはなく、ファンタジー的な想像は愚か、幻想的なシーンでもって観客を魅了する設定が稀薄だった。

この芝居に料金を払って観た観客を尊敬する。そんなレベル。

寸劇役者に花道を

寸劇役者に花道を

LIVES(ライヴズ)

笹塚ファクトリー(東京都)

2010/05/20 (木) ~ 2010/05/23 (日)公演終了

満足度★★★

集大成なのか?
[Dear My Hero][ROPPOHGI NIGHTS]と重なる部分はあるものの、全体的に楽しめた。LIVESの公演は殆ど観続けてきたものだから、過去に公演した作品を一部でも再演されると、ワタクシとしては興味が削がれてしまうのは否めない。石橋のかちゅぜつが問題。会場は大入り満員でパイプ椅子が出るほどでした。

以下はネタばれBOXにて。

ネタバレBOX

「不知火」
映画「メモリー~失いたくない記憶~」の長澤まさみの恋人役オーディション会場にやってきたおっさん!履歴書もイケメンの写真も偽っての面接だった。面接官ははなから「こいつはダメだ」と思ってそれを言葉にしているのに、食い下がる己を知らぬおっさん。


「ファイナルラウンド」
Dear My Heroと殆ど似ている。引退試合をする弱そうなアマゾン長崎選手の為に、アマゾンが好きだというみさちゃんを会場に招待したが、当のみさちゃんが来られなくなってしまった。会長は、アマゾンのファイトを気落ちさせない為にそのことをひた隠しに隠して嘘で塗り固めるも、結果ばれてしまう。今度はアマゾンにガウンをプレゼントしたものの、バックのロゴが「長崎チャンピオン」ではなく「長崎CHANPON」と美味しい名前にミスってあった。もう最後には戦う気力を失くしたアマゾン長崎を担いで会場入りさせるというブラックコメディ。


「宴」
今日で閉店するというナイトクラブのホステスらの生き様を描いた作品。ここでのウエイターが小澤真悟。頭のてっぺんを剃りあげての意気込み。笑
その剃り方がサゴジョウのごとく縦剃りなもんだから、気合は入ってるものの、哀れというよりおっさん化現象!笑


「エンジェルデビル」
閣下のような悪魔のなりしたトウのたったロッカーが引退を決意するも、賑やかな女子ファンにもてはやされて己の実力を忘れて引退を取りやめる。しかし、一人のロッカーの恋人の両親が公演を観に来たから、さあ大変。そこから始まるどたばた騒ぎ。夢と現実の葛藤。笑


「寸劇役者に花道を」
前回の「寸劇役者に花道を」のガン病棟での再演。これは何度観ても涙が流れるが相変わらず、山田のクソ爺ぶりがドウに入ってる。山田ほどに爺役をやらせたら右にでるものは居ないと思う。



下北沢でたまに会う山田は腰の低い好人物だ。大浜も素で見るとひじょうにカッコイイ。しかし、彼らは舞台に上がると汚い爺に変身しちゃタリ、イカレタおっさんに変身しちゃうのだから、役者というのはつくづく面白いと思う。役者の醍醐味はこうして様々な人物に化けられるということだと思う。きっと普通の人の何倍も苦労はあるのだろうけれど、何倍も楽しんでるんだろうなー。とも思う。
全体的に前作の「寸劇役者に花道を」よりは笑いは少ない。前作があまりにも最高傑作過ぎたのだ。
月夕~GESSEKI~(満員御礼!ご来場ありがとうございました!)

月夕~GESSEKI~(満員御礼!ご来場ありがとうございました!)

どて劇団

テアトルBONBON(東京都)

2010/05/19 (水) ~ 2010/05/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

想像を絶する結末
今までの観劇人生の中でこのような始まりの暗転があっただろうか?終盤になって序盤に撒かれた伏線が想像を絶する結末への仕込みだったことに気付き、愕然とする。その描写はあまりにも強烈だった。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

聡と光一は工場の社長に給料未払いの抗議をしている場面から舞台は始まる。しかし舞台は真っ暗で何も観えない。3人の争う声と、光一の妹・夕貴の恐怖の声しか聞こえてこない。そして金属バットを叩きつける音。絶叫する声。泣き叫ぶ声。人が倒れる音。そして入り乱れる声。声。声。

このように目の前の抗いを声だけの演出でのみ表現する方法は実に効果的だと思う。目の前で起こっている状況を声を頼りに想像するしかないからだ。そうして誰もが、聡が社長を殺してしまったかのように想像した。

その事件から15年たった今、刑務所から出所した男は光一だった。この時点で光一が聡の身代わりになって服役していたかのように思わせる。やがて光一は服役後、故郷に帰ると状況は一変していた。かつての自分たちの仕事を奪ったナルミグループの御曹司との結婚を控えた妹。そしてその妹は光一の元恋人・香奈枝の現在の男を「お兄ちゃん」と呼ぶ。

15年前の真実を知る幼なじみの聡は真実を打ち明けてしまいたそうな表情をするも光一はこれを止めて頑なに秘密を守る。そして光一は妹の結婚の邪魔にならないよう、他人のフリをして生きることを決意するのだったが、そこにかつての刑務所仲間の男が現れてから、一気にデンジャラスな香りが漂い始める。

さまざまな真相や人間関係が霧が晴れたように明らかになっていく中、一番のクライマックス、15年前に社長を金属バットで殴り殺してしまったのは当時4歳だった夕貴だったのだ。序盤に撒かれた伏線が魔術のように繋がる瞬間だ。

後半から終盤にかけてのさまざまな人間関係の描写は涙なしでは観られない。誰かを守るということ。誰かを思いやるということ。想うだけで愛しさが溢れるということ。その人がこの世に生きているというだけで癒され安心し満たされるということ。大切な誰かがこの先悲しみに泣くことのないように全ての涙を吸い取りたいと考えること。

これらの描写は目の前に広がる想像の海のごとくキラキラと眩しく輝いていた。波の音も潮の香りもあまやかにさえ思える。優しげで温かみがあって愛情に満ちていた舞台だった。
そうしてワタクシの目には、うっすらとガラスの膜がかかったようにとめどもなく涙が張られるのだった。その波に揺らぐ舞台の幕引きはあまりにも美しい。

新・八犬伝

新・八犬伝

劇団Spookies

新宿シアターモリエール(東京都)

2010/05/19 (水) ~ 2010/05/23 (日)公演終了

満足度★★★

キャスト、総勢35人!
もう、何がなんだか。これだけのキャストで芝居をするならストーリーは誰にでも解るように単純にしなければいけないような気がするのだが・・。
しかも一部のキャストがここぞというクライマックスでカミまくり、かちゅぜつは悪いは、チャンバラはイマイチだは、だはだはなのだった。衣装と照明は絶妙!

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

「八犬士」と呼ばれ、邪悪を封じ世に平和をもたらした、「伝説の八犬士」とその末裔、里美家の末裔が入り乱れての物語。

平和な時代になって、人ならざるモノ「鬼」が現れた。この「鬼」は里美家の業が、怨念が「鬼」を呼びこの世に現れたものだった。そんな折、鬼退治の任務を任されたのは八犬士の子孫達。が、彼らは何の力もなくただの若造達であった。鬼に太刀打ちできるのは仁義八行の玉をもった伝説の八犬士だけ。という設定から、伝説の八犬士は登場するも・・・、かつての勇敢な面影はなく、皆、死にそうな爺、婆になっていた。

たぶん、この爺婆を登場させることで、笑いを起こすつもりだったのだろうけれど、痛いかな・・・、笑いの次元が低すぎる。他の部分でも笑わせよう、笑わせようとの努力は伝わるのだけれど、いかんせん面白くない。

子供時代のあずさとまさゆきを登場させ、後に夫婦になった二人とリンクさせながら物語を貢いでいく風景は素晴らしいと思う。時代を遡る蜜月な空間が美しいとさえ思ったのだが、しかし、あずさが邪悪な怨念によってたまずさに蘇る瞬間は一番のクライマックスだから、もうちょっと音楽なり、稲妻のような照明でパンチを放ってもよかったような気がした。

中盤のセリフに無駄な部分が多くて本にまとまりがないようにも感じた。もうちょっと内容をスリムにしたほうが濃密で締まった気がするのだが・・。一部のキャストにはもうちょっと練習して。といいたい。終盤のシーン、幼い二人と夫婦の二人の上に舞い落ちる桜の花びらは、幻想的でもあり、淋しくもあった。一枚の絵画のように美しい描写。
さつきだけが正雪の罪も背負って生きていくのだが、こういった場合、死んでいく者より、生きる者のほうがその試練は何倍も辛い。そういう哀しい終わり方。
自由を我らに

自由を我らに

劇団俳協

TACCS1179(東京都)

2010/05/19 (水) ~ 2010/05/23 (日)公演終了

満足度★★★★

お見事!
キャストの演技力といい、衣装といい、音楽といい、素晴らしい舞台だったと思う。しか~し!

以下はネタばれBOXにて。。


ネタバレBOX

1946年、GHQから提示された【日本国憲法】を、口語文にするため、10人の一般人が集められる。皆、物書きたちだった。言葉のプロといえば、そうなのだけれど、コヤツらのやる気のなさったらハンパない。

憲法全文を『誰にでもわかる日常語に直す為に与えられた時間は、たったの2時間。この2時間という制限時間を聞いただけで「無理ムリムリムリーーー!!」とケンシロウの如く抵抗しまくって無駄に時間が流れていく。中でも戯曲家などは【日本国憲法】自体を読んできてない。という感心のなさで、いったい、こんな人たちに日本の重大な憲法を論議させる発想そのものがオカシイんじゃないの?!って感じで観てた。

しかしながら、一人の広告文案家の発言の元、気を取り直した他の文筆家たちは、3人の政府役人の司会を筆頭に会議を始める。するってえとどうだ!まるで下町の井戸端会議のなり。緊迫感はないは、脱線に継ぐ脱線、おちゃらけちゃってるものまで現れる。

それでも誰かがどーにかこーにか修正させながらも、憲法第9条や12条、13条と曖昧な文章を疑問していき戦争放棄の文面に至っては、かなり白熱して物語の山場を迎える。更に政府役人の早乙女貞子が【日本国憲法】についての説明や、マッカーサの意図や、自分なりの主張を述べるが、ここでの文筆家たちよりも、よほど学習しており、一番の見所だったと思う。

殆どがテーブルについての会話劇だから、中盤、ちょっとだけ飽きもくるが、1946年という時代に女性である早乙女に、これだけの知識の主張をさせ、戦争放棄については「正義の勝利を力強く示している」と訴える場面の脚本にとても意義があったと考える。震えるほどの濃密な場面だった。

観てよかったと思う。ちなみにタイトルの「自由を我らに」は新しい日本の標語として舞台で登場させた言葉。


笑う魔女の罠~Traps of the Laughin' Witch~

笑う魔女の罠~Traps of the Laughin' Witch~

劇団三年物語

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2010/05/16 (日) ~ 2010/05/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

コメディばりばり!
笑いが満載でとぉ~~っても楽しい舞台だった。そんでもって笑いのネタにセンスがある。ホラーて程でもないけれど現実と幻想の世界を交差させるお芝居。

以下はネタばれBOXにて。。


ネタバレBOX

中園は3年目のOLだ。しかし、ミスが多く仕事は出来ず何をやっても上手くいかない。同僚に対しても自分の意見を明確に言えないダメダメOLだった。そんな彼女は上司からも叱責され、同僚や後輩からも見下げられていた。彼女は思い通りにならない現実を絶望し、更に有能なOLに対しても妬み、嫉み、羨みを抱いてしまう。「今日をいくら積み重ねても幸せになれない。」なんて弱音を吐き心に闇を抱えていた。

そんな中園は、自分を苛めた上司や、密かに好意を寄せていた西野に彼女が居る事が解ると「殺したい」と思うようになり、それを彼女が見る夢の世界で実行するのだった。

中園が夢の中で作った意識の世界は悪趣味なおどろおどろした世界で魔女やら女バイオハザードやら、夜勤男やら、怪しい踊り男が君臨していたが、こやつ等がとにかくバカバカしいのなんのって!(^0^)
で、よってたかって上司や西野を殺そうと企むが、こういう場面では必ず、救世士が登場するのが世の常なのだが、この救世士もコメディそのもの。

でもってこの終わりなき悪夢から解放される為に、意識の中で中園の思い通りに殺させちゃった方が、彼女のこれからの人生を健やかに生きる為には、いいんじゃないか。なんて結論づけるけれど、結局薬局、またまた会社で嫌な事が起こると夢でソイツを殺すようだから、何処まで行っても変わらないのであった!!笑

中盤、お好み焼きのヘラのシーンなど無駄な場面もあったし、少し長かったように感じた。もっとすっきりそぎ落とすと完璧だと思う。
こんな風に舞台を通して自分を見つめたり、その感動から自分を律したり、娯楽であると同時に、もう一つの物語として力を与えられ、それを素直に受けいられる舞台が好きだ。
今回のようにコメディ色も強いけれど、その中で人間の心をえぐり、中園の葛藤を強烈な破壊力で表現していたように思う。人は誰でも「触れられたくない」部分を幾つか持っているものだが、そういった鬱の部分をイヤになるほどの的確さで取り上げていた。
だからといってそれをそのまま表現しないで中園の意識の中で素直にさせるという案と全体的なコメディの要素を押し出しての湿り気のない終幕はこのうえもなく素晴らしい!
西野のイタブラレシーンはやっぱ、ツボ!(^0^)


かもめ‐愛を紡ぐ人‐」

かもめ‐愛を紡ぐ人‐」

六舎企画

シアターX(東京都)

2010/05/11 (火) ~ 2010/05/16 (日)公演終了

満足度★★★

かみまくる主役
むしろ脇役の演技が秀逸!

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

美しい湖のほとりにある伯父ソーリンの田舎屋敷が舞台。
そこへ著名な作家トリゴーリンを連れて、モスクワから有名女優である母アルカージナが華やかな空気と共に帰ってくるところから始まる「かもめ」のストーリーは知らない方は居ないと思うので割愛。

「かもめ」の最大の見せ場は苦悩だ。だから、心理劇にふさわしい物語の舞台化を何度となく観ている。
トレープレフの苦悩は、アルカージナやトリゴーリンが少々の才能で華々しい成功を収めていることに対する不満と、自分の愛するニーナがそのアルカージナやトリゴーリンにあこがれて自分を捨ててモスクワへ行ってしまったことを主な内容としているが、彼は変化のない草深い田舎でこの単純な不幸に繰り返し浸っていただけでこれ以外何も経験することがなかった。

雑誌に取り上げられて小説家として、そこそこ有名になってはいたが、ともかくこういう環境の中で書斎にひきこもり、ニーナに対する愛情だけをたよりに生きていたトレープレフは妄想と幻影の混沌のなかをふらついて、ただただ、出口のない単調な苦悩で神経をすり減らしてしまったのだった。

今回はこの主軸となるトレープノフ役のセリフの噛み(とちり)が多かった事と演技力がまだ未熟だったことから、その世界観に浸れなかった。しかし、脇に徹するキャストらの演技が秀逸だったので、救われた舞台だった。
『あぁ、自殺生活』 ~ ありがとうございました。次回は下北沢楽園にて6/1(金)&6/20(日)に上演致します。

『あぁ、自殺生活』 ~ ありがとうございました。次回は下北沢楽園にて6/1(金)&6/20(日)に上演致します。

劇団夢現舎

新高円寺アトラクターズ・スタヂオ(東京都)

2010/05/13 (木) ~ 2010/05/26 (水)公演終了

満足度★★★★★

自殺の哲学
駅のホームベンチにたまたま隣り合わせになった二人の男。この二人が織り成す会話劇だが、セリフの一つ一つにユーモア溢れまくって、とにかくニタニタ、ケラケラ笑った。次にどんなセリフが飛び出すのかが興味津々で、観ていると、お尻からライオンの尻尾が生えてブランブランさせちゃいたいような感覚だった。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

自殺しようと頼道は意気込んでいたが、その空気を察知した隣の男は自殺幇助のように頼道を励ます。励まされるとなんだか自殺し辛くなってしまう。なのに男はいよいよ白熱さながら、哲学的でもあり、へんてこな自殺論をぶちかます。この場面でのセリフが実にオモチロ可笑しい!笑

完璧主義でもあり、生きてゆくのが苦手な頼道は男の自殺論に感心しながら完全に男の主張の世界にまんまと引きずりこまれてしまうも、「さあ、飛び込んで。」なんて催促されると躊躇してしまう頼道だった。

中々死ねないで居ると、今度は男の方が「殺してくれ!」と叫ぶ。このまま年老いてボケてぐずぐずになる前に死にたいと訴える。結局薬局、男も死にたがっていたのだ。笑  しかし男に対して不思議な友情が芽生えてしまった頼道は「嫌だ。俺、あんたがいないと生きていけない。」なんつって、恋人に告白するようなセリフを吐く。笑

一方、男は「どんなに人生が不条理だろうとそれを恨むな。人間はゼロのように孤独で野良犬のように一人なのさ。」と解ったような解らないような哲学的なことをのたまって、満足そうにしている。笑

頼道は「一人は寂しいよー。恐いよー。」と言いながら、男が去った後、電車に飛び込もうとした瞬間で暗転するも、どうやら列車のブレーキの音が聞こえなかったから自殺しなかったようにも思える。

社会を風刺したような物語だったが、二人の友情らしきものも垣間見えてヨーロッパのおしゃれなセンスのある舞台のさまだった。二人芝居だったがキャストの秀逸な演技力と、フランスで観た舞台の情景が思い出されて、懐かしくもあった。センスは抜群だと思う。

「ユー・アー・マイン」

「ユー・アー・マイン」

クロカミショウネン18 (2012年に解散致しました。応援して下さった方々、本当にありがとうございました。)

駅前劇場(東京都)

2010/05/12 (水) ~ 2010/05/16 (日)公演終了

満足度★★★★

ごちゃごちゃし過ぎる感も・・
物語は説明にあるとおり、相手方の家族と食事会をするため 自分の家族を呼んでしまっていたことから起こるドタバタコメディ。

ネタバレBOX


田端幸太と加瀬千郷らの家族は食事会をする設定で動いてしまっていたことから、今更、キャンセルなんて出来ない。二人はやむなく新築ツインタワーマンションのモデルルームで食事会を開催してしまう。ここで加瀬千郷が苦しい策を練って偽装家族を作ってまでも無理無理に決行してしまうから、なんやら話は矛盾だらけになってしまう。それでもどーにかこーにか、辻褄を合せる為に、更に偽装家族が入り乱れて偽装、偽装のオンパレードと化してしまう。笑

そんな偽装家族はカマ風味の母親だったり、とんでもなく若い女子が60歳の母親という設定になったりと、パロディのようななんちゃって家族になっちゃうものだから、もはや、何が何だかわからなくなってしまう。笑

偽装家族のアイデアのほとんどは加瀬千郷が指示を出し、小細工するが、その小細工が過ぎて観てる方もとんと解らなくなってしまう。ちょっと練りこみ過ぎの感はあるものの、終盤はどうにかこうにか収まりをつける。笑
疑心暗鬼になって別れるはめになった恋人たちはめでたく誤解も解けて元の鞘に収まるものの、一方で加瀬千郷の恋人・西園哲也は更に小細工をして加瀬千郷を失うはめに。

シチュエーションコメディ! と謳うだけあって笑いどころも満載だったが、人間関係が複雑すぎて、ややこしくなった感は否めない。それでも楽しかったのには違いない。もうちょっとすっきりさせた方が更にオモチロ可笑しかったと思う。
リバースヒストリカ

リバースヒストリカ

演劇集団Z団

六行会ホール(東京都)

2010/05/08 (土) ~ 2010/05/16 (日)公演終了

満足度★★★★

女信長が凛々しい
アクションコメディという触れ込みだけれど、物語はきちんと筋立ててありロマンを感じた。本能寺裏バージョンといった感があり楽しい舞台。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX


歴史探訪ツアー客の目の前に現れた自称、霊媒師。「歴史上の人物に会いたくはありませんか?」などと歴史好きをくすぐるようなオイシイ話にとびついたツアー客の面々は降臨をお願いするも、降臨された信長、明智光秀、豊臣秀吉らは戦国真っ盛りの戦いの戦士だった。笑

戦国武将と語り明かしたいとの願望も遠くかなた、ツアー客らは刀を振り回され追われるはめに。そのうち、織田家四天王までも登場し、本能寺の主要武将の面々は碁の目のように揃っちゃったからさあ大変。

しかし、当時の武将が揃ったということは、本能寺の謎も解かれ、観ていて楽しくロマン溢れる舞台だった。極めつけは信長が降臨してしまった身体は美しいオナゴときてるから、コミカルながらも、殺陣のチャンバラは相当練習されたのか、観ていても凛々しい限り。しかも声までもドス効かせちゃって「アネサン」さながら。笑

泰平の世の為に動いた武将たちの正義を絡めながらも脇役が笑いをトルシーンも絶妙で見事な舞台だった。導入音楽も○
長い坂のある家

長い坂のある家

ふくふくや

「劇」小劇場(東京都)

2010/05/07 (金) ~ 2010/05/16 (日)公演終了

満足度★★★★★

コメディかと思ったほど
殆どが笑えるシーン。その中でも山野八重子のキャラクターは登場しただけで、その爆発力に思わずヤラレル!笑
キャストらの演技は秀逸で終盤にかけての観客を泣かせるツボの押さえ方は流石!

以下はネタばれBOXにて。。


ネタバレBOX


先祖代々、殿様のお家柄を継ぐ佐竹家は地元では一目にも二目にも置かれる存在だ。長女の八重子はそんな家に縛られて自由がなかった。今は亡き殿の仕え精神を頑なに守る宇佐吉は佐竹家に侍従して八重子の面倒を何かとみている。

佐竹家の次女、三女、四女はそれぞれ好き勝手に生きていたが、姉・八重子の噂を耳にして久しぶりに佐竹家に集まったのだった。物語はここで始まる八重子とその周りの人たちの人情劇なのだけれど、とにかくコメディかと確信しちゃたほどの面白さ。とにかく内容がコミカルなのだ。

しかし、物語は姉妹それぞれの八重子に対する善意と自分可愛さを交差させながらも、姉の夫を寝取った竹乃の心情をも露呈させていく。かつての同級生らの友情も織り交ぜながら、本当の思いやりとは何か?生きてる意味とか、人間が持つ本来の弱さとかを提示しながらも、観客を落涙させる。

そうして更に幕引きの間際にコメディに仕立て、笑わせて降幕させる技は流石だった。
楽しくてオモチロ可笑しいけれど、痺れた舞台!



北と東の狭間

北と東の狭間

JACROW

サンモールスタジオ(東京都)

2010/05/07 (金) ~ 2010/05/16 (日)公演終了

満足度★★★★★

外伝!~それぞれの事情
本編を観ればいいや。なんて考えてるとヤラレル。つまりこの外伝こそがオモチロ可笑しいからだ。だから毎回、この外伝を楽しみにしている感もある。
今回の外伝のヒットは文句なしにヤクザ・加藤の「カウンターとボトルの狭間」だった。コメディそのもの!大笑い!

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

どうして本編ではこうしたか?みたいな解説演技をみせる外伝。本編で解らなかった部分を外伝で描写する。本編でうやむやにされた、レイと加藤は死んだのか?という疑問はここで解消される。

つまり霧がかった物語を更に透明にする役割の外伝では角度の違った芝居を演じる。だから、それぞれのキャストが実は・・・みたいな人間関係をも露呈される。

野村の哀愁的カラオケは抜群だったし、岡田刑事のもう一つの隠された顔もよかった。極めつけの加藤は野村に刺された横腹が痛いとおかあちゃん(妻)に電話をかける。(苦笑!)  ついでに「昨日、おかあちゃんに貼ってもらったサロンパスのところにナイフが刺さったから、そんなに傷は深くない。」と甘える。笑
とことんな奴だがとことん可愛い。そんなサロンパスヤクザの外伝は全てがコメディだった!一見の価値あり!
北と東の狭間

北と東の狭間

JACROW

サンモールスタジオ(東京都)

2010/05/07 (金) ~ 2010/05/16 (日)公演終了

満足度★★★★★

ありそな風景
何が素晴らしいかってキャストの演技力に尽きる。特に野村秀次役の谷仲恵輔が素晴らしいです。う~~ん。。と唸るほど気負いがない。更に本の内容も素直にドカン!と胸に入ってくる内容。ストレートプレイだからこその突き抜け感が堪らない。そうして前列に座ると女優のパンちらも堪らない。笑

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

中国人スナック「クラブ牡丹」ではチャイニーズママと二人のチャイニーズホステス、ボーイが働く。チャイニーズホステスは就労の為にビザが欲しい。社長・志垣の愛人のチカは社長の半ば命令によって遠藤との偽装結婚をさせられ、一緒に住むことになる。遠藤は社長への借財のかたに戸籍を売った形だ。ついでに生命保険をかけさせられた遠藤をジワジワと殺すために、食事に毒を入れろとチカに指示する社長。

そんな中、遠藤のチカに対する誠実さにチカは少しずつほだされていくのだった。

一方で「クラブ牡丹」を仕切ってるヤクザ・加藤はボーイの野村から借金という肩書でアクドク利子金をせしめとことんしゃぶり尽くす。そのアコギな醜態は留まることを知らず、ママの夫の借金もママに支払わせる。そんな夫に愛想を尽かしたママは夫の食事に毒を混ぜてジワジワと殺すことにする。

登場人物は借金を抱える男、ホステスに溺れる男、金の為に働くホステス、そうしてこれらを餌に食らいつくスッポンの様な輩。闇に住むものはどこまでいっても闇からは逃れられない鬱積した世界だ。詐欺と暴力とが渦巻くなかでチカと遠藤の物悲しい愛が光る。

終盤、チカと遠藤が絡むシーンがあるが、今までの遠藤が気弱で誠実なキャラクターだったのが、いきなり少し強引さが増したキャラに変貌していた。ライブ的カオスなシーンだ。この部分は二人のキャストに任せたらしいが、ワタクシにはすこーしだけ違和感があった。それにしても・・さ迷えるチャイニーズホステスらの感情が胸を打ち、言いしれぬ感情がわいた。同情とも違う。二胡という楽器の調べを聞いた時の様な感覚だ。更に導入音楽も素晴らしかった。
ギィ・フォワシィ演劇コンクール

ギィ・フォワシィ演劇コンクール

ギィ・フォワシィ・シアター

あうるすぽっと(東京都)

2010/05/05 (水) ~ 2010/05/07 (金)公演終了

満足度★★★★

「橋の上の男」Company空
会場はがら~ん。宣伝力が足りないのだ。後援は豊島区、(財)としま未来文化財団、みらい館大明、豊島区舞台芸術振興会だから、まあ、区の税金でもって第三セクターがとりあえず活動してますよー。っていう名目が大切な訳だ。笑


以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX


セーヌのアルマ橋から自殺しようとした男を見つけたフォト兼ジャーナリストは、男に自殺の再現を強要する。きわどい写真を撮らないと上司に怒鳴られるという。最高の自殺の瞬間画像を撮るべく、ジャーナリストは男にあれこれ注文を付ける。

そのうちに、男は気が変って今日は自殺しないと言い、これに対してジャーナリストは激しく抵抗する。どうしても最高傑作を撮らなくてはいけないのだと主張するジャーナリスト。そしてもみ合ってるうちに男を橋から突き落してしまう。「助けてくれ~~!!」と叫びながら落ちていく男に「違うー!!!、ギャーーーーー!!だろぉー。」と注文を付ける。


素晴らしい演技だった。不条理な表情が巧みな演技力でダークさを色濃く醸し出していた。自殺しようとする男にあれこれ注文を付ける傲慢さも見事に表現していた。秀逸な舞台。


ギィ・フォワシィ演劇コンクール

ギィ・フォワシィ演劇コンクール

ギィ・フォワシィ・シアター

あうるすぽっと(東京都)

2010/05/05 (水) ~ 2010/05/07 (金)公演終了

満足度★★★★

「ストレス解消センター行き」SPPTテエイパーズハウス
会場はがら~ん。宣伝力が足りないのだ。後援は豊島区、(財)としま未来文化財団、みらい館大明、豊島区舞台芸術振興会だから、まあ、区の税金でもって第三セクターがとりあえず活動してますよー。っていう名目が大切な訳だ。笑

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX


この町では叫ぶと国外追放になってしまう。だから人々は憎悪の叫びを発することができない。欲求不満を解消できない人の為に「ストレス解消センター」はある。

バス停でバスを待ちわびるオンナ3人は叫びたいのを我慢してあれこれと愚痴る。「夫は忙しい。夜は、TVとネット。それもイヤラシイやつ。だから私も昼間こうやって大勢の恋人とセックスするの。」

そうこうしているうちにバスは遥かかなたからやってくる。しかし一つ手前で大勢の男達を乗せたバスは満員で3人の前でストップしない。

「ああ~、あ~。。」と落胆する彼女らを見張っていた研究者は「実験は失敗ね。」とこちらも落胆する。3人はモルモットだったのだ。

面白かった。この劇団は毎公演、拝見させて頂いてるが演出のコミカルさが抜群で楽しかった。舞台の前にちょこんと置かれた3体の人形も功を奏した。


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