LUCK BANK
プロデュースユニット四方八方
ザ・ポケット(東京都)
2011/08/31 (水) ~ 2011/09/04 (日)公演終了
満足度★
最低最悪!キレル
プロデュース方式をとっているユニット「四方八方」だが前作の舞台がワタクシの好みのど真ん中だったので、今回の舞台は個人的にとっても楽しみにしていた。ところがだ、開演が押して入場した観客3人(男2人女1人)が開演直後、暗転した暗がりの中でここぞとばかり、「プシュッ」と缶を開ける音がして、グビグビと喉を鳴らす音、そして「プハぁ~。」やがて酒の臭いが漂ってくる。ここで注意すれば良かったのだけれど、こちらも大人、ちょっと我慢する。そのうち・・・、
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
がさごそと音がしてつまみの封を切る音。ピーナツなどを齧る、かりこりという音。他のつまみの封を開ける音。流石にワタクシ、堪忍袋の尾が切れて、「ブチッ!」とキレタ。
常日頃から日夜、4回も歯を磨き研いでるのはこういうときに敵をかみ殺す為だ。笑
当然の如く注意したが、敵はおなざりに謝罪したものの、止める気配なし。こういった場合、特に女は図太い。ここのユーザーの男性諸君もご存知のように、女という人種はか弱いように見えてタフだし、根性は太いのだ。勿論、女性ユーザーもご存知だろうが・・。
この女が延々と、飲みまくる食べまくる飲みまくる。こんな状況で芝居に集中できるはずもなく今回の観劇は観劇至上、最低最悪の結果となった。
そこでこんな質の悪い観客を連れてきた、客演の高野アツシオ(俳優倶楽部サイアン)の人間性も疑う。演劇なんかどうでもいいわ、みたいな態度の観客を友人に持つ高野自身も同等なのだ。その人のレベルは友人やとりまく環境や属性が左右するといっても過言ではないのだ。
ついでに言うなら、プロデュースユニットの場合、さまざまな役者を客演として迎える為に、役者自身に劇団を背負っているという意識が薄く責任もないところが弱点なのだ。また公演中、スタッフを客席管理に配置しなかったのも、上演中の飲食やマナーについての前説がなかったのも、このユニットの汚点だ。
空調の管理、観客の配慮が出来ないユニットの公演に素晴らしい公演ができるはずがない。
舞台とはワタクシにとって聖地だ。そんな場所に酒帯びて来場する観客は言語道断だし、ましてや、公演中に酒を飲む観客はクズだ。高野には次回から居酒屋で公演してもらいたい。
HELLO!
表参道ベースメントシアター
表参道GROUND(東京都)
2011/09/02 (金) ~ 2011/09/04 (日)公演終了
満足度★★★
インパクト薄
喫茶店を営む酒井家の群像劇なのだけれど、将来への不安や様々な事情をわりにあっさりと描いていた。特に大きなうねりはなく、猛の挫折といっても死ぬほどの大した挫折ではなく、一方で姉の挫折も挫折といえるのかどうか微妙なところ。淡白な群像劇。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
ザンヨウコの定番となった母親役が実にいい。自然に演じられる実力は流石。
訳あって高校生活半ばにして、退学になった猛。猛の姉・絵里子も東京で働いていたが退職し突然実家に帰ることに。そんな中、猛の同級生だったななみは東京で女優デビューし活躍していたが急に売れっ子になった事に不安を感じ失踪してきてしまう。
一方で母には再婚話が持ち上がる。
家族を軸に描いた物語だったが、特に挫折を乗り越え成長する少年とその家族ってほどでもない。だから、感動したってほどでもなく、そこそこ楽しめたけれど、喜びに満ち溢れたほどでもない。緩くそこそこな物語。
観劇に適した舞台ではない。縦長の箱で客席に段差はなく観づらいのは確か。場内が暑く数人の観客がセンスで仰いでる状況に何も感じないスタッフの感受性を疑う。そこそこなスタッフ。
レジデント
Gooday Co.
戸野廣浩司記念劇場(東京都)
2011/08/31 (水) ~ 2011/09/04 (日)公演終了
満足度★★★
うじうじぐずぐず
序盤コメディのようなタッチだったけれど、それほど笑えない。かくして三角関係ならぬ五角関係な展開でまるで昼ドラを観てるよう。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
こう見えてもワタクシ、案外男っぽい性質でして、つまりは女らしくないのかもしれないけれど、ウジウジした恋バナは苦手。しかも副編集長の麻衣が恋人の年下ヒモ男・悠基を養ってるにも関らず、このヒモはかつての同級生で親友の妻にうつつを抜かしているという誠実のなさ。そんな風にぐらつくヒモ男なんて、とっとと、しばいて殴って踏んづけて噛み殺して捨ててやればいいものを、麻衣は中々それが出来ない。
一方でそんな麻衣に甘えて寄りかかってるくせに、自意識とプライドだけはマウンテンで、挙句の果てに人妻の前で麻衣を、「姉です」と紹介する下心みえみえの悠基。
結局薬局、麻衣のヒモながらも、以前から好きだった玲子が悠基の親友・琢也と結婚した後でも、ずっと忘れる事が出来ずに想い続けていたのだから、物語はぐちゃぐちゃになっちゃう訳よね。更に、麻衣を好きな大吾まで登場させちゃうドラマな展開は昼ドラそのもの。
女性特有の「待つ」という繊細な心の襞を描写したかったようだけれど、男性が書く女性の描写は大抵、時代錯誤だったりする。これが大正時代や昭和のテキストならば、すんなりと受け入れられたかも知れない。
いったりきたりすれ違い~・・・まぁ~つ~わ、私、まぁ~つ~わ。
「ベルナルダ・アルバの家」
ウンプテンプ・カンパニー
シアターX(東京都)
2011/09/01 (木) ~ 2011/09/04 (日)公演終了
満足度★★★★★
禁じられた反動
お見事!の一言。キャストらの演技力といい、舞台装置といい、衣装、音楽、籠の中の文鳥、演出、どれもがまさに芸術の域。物語は名家、ベルナルダ・アルバ家を舞台に、そこに暮らす女たちの逃れられない悲劇を濃密なダイアローグ劇で成り立たせていた。人間が閉鎖的な土地に根ざして生きる矛盾や、それに立ち向かう力強さ、あるいは流されるさまを巧みに描写していた。物語は重い。しかし見事な演技力で観客を魅了した。お勧めの舞台だ。公演時間2時間30分。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
川のない、井戸水を頼りにする小さな集落というプライバシーもへったくれもない村社会で名家の誇りを捨てることが出来ない女主人・ベルナルダがいた。閉鎖的な社会の中で自分達の誇りや伝統を守る為にベルナルダは夫の死後、五人の娘に八年間の喪に服することを言い渡す。その間、外出やおしゃれは許されず、まるで監獄のような暮らしぶりだった。年頃の娘たちは抗えない抑圧にしぶしぶ従う。
そんなおり、長女のアングスティアス(39歳)に縁談がもちあがる。姉妹の中で一番くすんだ、しかも父親にそっくりの女にだ。しかし長女だけには遺産が相続されるのだ。(今でもスペインの遺産相続順位は妻ではなく子供)
夜ごと長女の部屋を訪れる若い男・ぺぺの存在に色めきだつ姉妹達。なかでも末娘アデーラ(20歳)はぺぺと逢瀬を繰り返し、陶酔と絶望を受け入れていくようになる。一方でそんな二人を羨望の眼差しで見つめる四女・マルティリオ(24歳)の執拗な嫉妬。
母親に逆らうことを抑制され因習の中に生きる女たちが、にわかにどよめきだし、鬱屈した性が吹き出しはじめ、外の情景にも恋焦がれるようになり男に飢える。そして麦刈りの男たちにも色めきだってしまう。自由を奪われた女達の飢えた描写だ。その屈折さがぺぺに集中し姉妹達はぺぺを好きになってしまい、挙句、抱かれたいと思うのであった。
これらを見て見ぬふりを決め込むベルナルダ。しかし、ここで逃れられない悲劇がベルナルダの家に訪れる。密通を交わしていたぺぺを銃で撃ったベルナルダを見て、ぺぺが死んだと勘違いをしたアデーラは絶望のあまり自害してしまうのであった。それでもベルナルダは「いいかい、アデーラ生娘のまま死んだんだ。決して外に漏らすんじゃないよ。」と口封じをする。荒れ狂う姉妹達の屈折した恋と体裁を重んじるアルバ家の物語。
「極道の妻」顔負けのド迫力、新井純の演技が神がかりだ。そして家の女中頭を演じた坪井美香、アデーラ役の薬師寺尚子も素晴らしい。彼女は「サルとピストル」で観ていたが、あの時よりも今回の方が実力を発揮出来たといえる。勿論、どのキャストの演技力は秀逸だった。美しく鳴り響く生演奏が舞台を崇高にさせ、籠の中の文鳥はまさに彼女らの象徴だった。
ジャンヌ・ダルク―ジャンヌと炎
東京演劇集団風
レパートリーシアターKAZE(東京都)
2011/09/01 (木) ~ 2011/09/05 (月)公演終了
満足度★★★★★
ファンタジーな描写
まったくもってワタクシの好みのど真ん中!放浪役者の一行が語り、演じるという劇中劇。だから舞台の始まりに放浪役者らが語るプロローグがあり、これから始る、いや、もう始っているのだが、舞台の導入の仕方としては絶妙でコミカルだった。あくまでも個人的な感想だが、白根有子のキャラクターは炎の戦士・ジャンヌを演じるには迫力が少々、欠けた。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
一行はジャンヌの物語を人形劇から始める。そこにはフランスで制作した人形らしく、鼻の高い、ボンソワール。ふらんすめていてそう・・みたいな顔と、これまたフランスの貴族らしい洋装のドールが飛び出す。そんな風景に風船に顔を書いただけの国王を登場させるのだから、その茶目っ気たっぷりなセンスに思わず、微笑んでしまう。
全体の構図はジャンヌの物語なのだけれど、ジャンヌそのものは物語に断片的に登場させ、むしろジャンヌを取り巻く司教やシャルル国王、その母、王妃、皇帝、伯爵、公爵らの行動や会議の情景を強く押し出していたように思う。そして彼らには必ず彼らの道化たる存在(人形)が登場し、人形たちが大きなテーブルの上で会議を押し始めるのだから、観ていてたまらなく可笑しいのだ。白い一角獣や大きな3体の人形の登場や滑稽でコミカルな会議はまるで夜のカーニバルのように、はたまた、幼い頃、夢の中でみたような絵本の中の1ページだ。
殿下に至ってはカマ風味満点の殿下なのだから、どんだけ楽しいんだよ、なんつってワクワクしながら魅入ってしまった。今回の舞台は演出と衣装が特に素晴らしい。芸術的な舞台だった。そして後半に入ってジャンヌの衝動と奇跡を起こした経緯。なぜ、彼女は火刑されなければならなかったのかをシリアスにまとめ、政治・社会の歪みと民衆の行動を淡々と綴っていた。
ヨーロッパでは美術館の広場で、あるいは公園で、日曜や祭日に人形劇を見ることができる。道化師たちが操る人形劇だ。それを思い出しとても楽しかった。もう一回観たいくらいだ。
恋シテ、乙女!
イマカラメガネ
OFF OFFシアター(東京都)
2011/08/31 (水) ~ 2011/09/04 (日)公演終了
満足度★★★
勘違いな恋
目立ちたがり屋で姉御肌、相手が自分を好きだと勘違いした挙句、殆ど瞬間的に好きになってしまう動物的な女。そのくせ他人から認めてもらいたい願望が強く、なのに案外素直になれないメンドクサイ女の物語。笑
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
ノリがよくて笑い上戸、つっこみ上手、つっこまれ上手な女で会話が弾む。とくれば男性にとっても魅力的なはずなのだけれど、男性にもノリや話力のある人とそうでない人がいるはずで、それらのKYがまったく出来ないばかりか、タブーなオヤジギャグと早口でもって話が飛びまくり、ついでに話題を独占しちゃう女ってどうよ?みたいな風景。笑
つまりは友達にはなれても彼女には出来ない女の恋物語なのだ。
しかしながら、綾乃は1人の相手を想い続けるロマンティックではない。統計的にモテる人には“諦めが早い”という共通点があり、ダメそうなら早めに手を引き、ほかの人に目を向けるフットワークの軽さ&割り切りのよさは、恋の相手候補を増やすために重要なことらしいのだが、綾乃のフットワークの軽さ&割り切りのよさは抜群だ。だから常に誰かに恋しているのだが、肝心の相手からは恋の対象にされない。
物語は社員旅行の企画案についてチームを組むことになった場面から。
綾乃自身がリーダーとなってホワイトボードに詳細を書き込みながら張り切る。この時点で既にリーダーは自分と決まっており、副リーダーも勝手に決めてしまう。もうこの時点でおばさん根性丸出しなのだが、ここで登場する男たちのダメっぷりも著しい。笑
女子との効果的な距離の詰め方もなってないし、自意識過剰な男たちだ。更に大抵の女子がひく自慢話を連打する男。無意識にモテない行為をやって、いつまでたっても女子との距離を縮められない男。場の空気を読んだり、女子に対する配慮ができない男。自分が取ってる行動で、女子がどう思うかを考えてない男。すべてが、ひとりよがりな男。自分の話ばかりで言動すべてが自意識過剰などのナルシストな男。次いで、いい年して、やたらと言葉遣いが若い、アタマ悪そうな男。←これ最悪!
要はダメそうな男とモテナイ女の協奏曲だった。たぶん記憶には残らない舞台だ。ちょっぴりコメディ。ちょっぴり切なさをはらんだ綾乃と彼らの人間模様。
秘祭
ダモアエムシープロモーション
こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)
2011/08/30 (火) ~ 2011/09/04 (日)公演終了
満足度★★★
因習もの
好みとしてはわりに因習ものは好きだったりする。おどろおどろした情景とアングラな香りに惹かれるのだ。今回の物語はそういった意味では祭り、隠された因習、巫女・・と、よくあるベタな内容なので解りやすい。しかし何かが足りない。それは音響に迫力がないことや流される音楽が舞台に合ってないことも大きな理由だが、演出面でも雑だったような気がする。また主演の川島なお美に秘密を握った女の悲壮感や謎めいた表現力が乏しかった。とっても残念。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
すでに、説明に半分以上のストーリーが書かれてあるので、書かれていない物語を引き継ぐ形で。
高峰は巫女としてのタカ子が使命のように代々受け継がれてきた秘密を知ってしまう。それは無差別に島の男の子共を孕むことであった。そうやってこの島は島の人口を維持してきたのだ。巫女は自分の子を育てることは禁じられ島の子として、他の家族に育てられる。そんな因習の繰り返しによって血が濃くなった子供は奇形として生まれ、島にはそんな子供らがいた。ここで思ったことなのだが、奇形を防ぐ為に、むしろ島の外から来た人間の子供を孕ませたほうが物語りとして、しっくりくるように感じたのだが・・。
また、高峰は自分の前任者・井上の死について、島の秘密を知り過ぎた理由で殺されたことも知ってしまう。そんな中、島の村長に決着を付けるべく村長宅に訪問した高峰自身も村長に毒を飲まされ殺されてしまうのだった。海辺には殺された二人を奉った墓が人魚の墓としてある。そんな折、またこの村にリゾート開発の為に人材が送られてくるのだった。
島のしきたりや慣わしに背くことなく脈々と受け継がれる因習を題材に、美しい巫女に心を奪われた外島人が次々と犠牲になっていく物語。島に住む人々の共有した秘密や罪はより一層、島人の結びつきを強固なものにする。その罪が深ければ深いほど、外部に漏れることはないのだ。今回は照明、音響をもっと駆使してくれれば、物語に一層の闇が深まったのだと思う。すごく惜しい。
美しの水
AND ENDLESS
THEATRE1010(東京都)
2011/08/20 (土) ~ 2011/09/04 (日)公演終了
満足度★★★★★
後半から号泣(REDを観た)
頼朝のために平家を討ちながらも、実の兄に追われ義経は、愛する静御前を連れて仲間と共に北方へ向かい、運命の平泉・衣川でクライマックスを迎える「Red」。今回で全てのバージョンを観ることが出来たのだが、なんといっても「White」と「Red」があまりにも秀逸な舞台だった。この2作では観客のすすり泣きが会場に木魂し、まさに舞台と観客が一体化した場面だった。
義経の宿命を描くこの3部作に対して、次回は渋谷金王丸、平教経、木曽義仲、藤原泰衡を主役に据えてそれぞれの宿命を描く短編オムニバス「Purple(黄金・御伽)&Puple2(息吹・願い)」を公演するがスケジュールの関係でどうしても、観られない。その代り、合計15時間にも及ぶ壮大な物語を締めくくるエピローグ「Purple(大地)」は観たいと今から考えているのだ。【ブログやツイッターをやられてる方は2000円で観られる制度があります。】
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
今回の「Red」は「White」よりも号泣してしまった。もう体中の水分がなくなってカラカラに渇いちゃうんじゃないかと心配したくらいだ。
実の兄を慕って、兄・頼朝のために平家を討ちながらも、実の兄に追われることになった義経。義経のめざましい戦歴に恐れおののいたのと同時に、平氏残党の娘を妻に迎えるなどの大胆不敵なふるまいに激し、更に義経を陥れる九条兼実の陰謀も加わった。そして、後白河法皇の義経に対する過度の優遇さも頼朝と兼実の嫉妬を買う羽目になったのだった。
このまま京にいることに危険を感じた義経は、西国支配の宣旨が下されるのを待って、西方を目指すことにしたが、頼朝の追跡の手が更に厳しくなることが予想されたため、義経は家来の行く末を案じ多くをゆかりの地へ帰還させ、自身は、静や弁慶・佐藤忠信らわずかな手勢とともに吉野山を目指すこととなった。静を伴って吉野に着いてはみたものの、義経の子をはらむ身であったので、義経は静を京に返す決心をし、家来をつけて山を下らせた。しかし、頼朝に実の母親の命を奪うと脅されていた家来は静を、吉野から鎌倉に連れて行ったのだった。やがて、静は男子を出産したが、生まれたばかりの赤ん坊は、頼朝の命により殺されてしまう。
悲しみに沈む十九歳の静は、あまりの絶望に気が振れて自身を失ってしまうのだった。
一方、吉野を下った義経主従は、その後、頼朝方の目から逃れるため奈良や京都で散り散りに身を隠したが、このまま隠れ居を続けても事態を好転できる望みがなく、義経は奥州平泉へ逃げることを決意した。頼朝が敷いた広く強固な包囲網のため、義経の逃避行に用意された地は藤原秀衡が統治する平泉を措いて他になかった。秀衡は義経主従の平泉入りをおおいに歓迎し、義経を大将にいただき頼朝と一戦を交える覚悟があることを諷した。頼朝は、脅し文句を綴った書簡を送り付け平泉を牽制したが、秀衡は動じることなく義経をかくまい続けた。しかし、その秀衡も死を迎えるのであった。
今回の舞台は後白河法皇が義朝に瓜二つの義経を見つめる慈愛に満ちた眼差し。その背後で嫉妬の炎を燃やす九条兼実。義経と頼朝の間で静を奪い合う愛憎を主軸に「愛」を強く押し出した作品だった。
「お前に命を預ける奴が現れるまで一人で生き抜け」と後白河法皇の初恋の相手・義朝が後白河法皇に放った言葉。その義朝が欲しかった「判官の位」を後白河は頼朝を差し置いて義経に与えようとする。相変わらず、後白河法皇役の塚本千代の演技が見事だ。セリフを発する間が実に絶妙なのだ。後白河というポジションを熟知した堂々とした演技力だったが時折垣間見せる義経への想いの表現も見事だった。
今回はキャストらの吐く言葉に泣かされ、悲恋の場面で泣かされ、静の絶望で泣かされ、義経の正義や静を一途に想う心で泣かされた。そして静の「私はあなたの為に生まれてきたの。」のセリフはクサイ。クサイけれど真っ直ぐに耳に届く言葉だ。
今回、北条政子役の窪田あつこが壊れた!笑
しかし、あの弾けっぷりはやはりサービス精神の一環だ。お嫁に行けない弾けっぷりだったが、その勇気を称えたい。笑
アンチゴネー
テラ・アーツ・ファクトリー
イワト劇場3F(東京都)
2011/08/26 (金) ~ 2011/08/28 (日)公演終了
満足度★★★★
解りやすく面白い
ギリシア三代悲劇作者の一人ソフォクレスのあまりにもよく知られた戯曲『アンチゴネー』。敢然と禁令に背いて死罪を適用されるアンチゴネーの相関図をワタクシ達の目の前でアニメ絵と一緒に役者が書き込んで、説明していたのでひじょうに解りやすかった。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
実は『アンチゴネー』はギリシャ神話の中で読んだ物語だ。
テーバイの王オイディプスの4人の子女のうち、男子のエテオクレスとポリュウネイケスは、父王の退位後、1年交代に王位につく約束が守られないことから、激しい不和を生じて、国を追われたポリュネイケスは、アルゴスに赴いてその王アドラーストスの女婿に迎えられ、やがて知友縁戚を語らって王位を恢復しようとテーバイへ来攻する。
しかし、アルゴス勢は潰走するが、兄弟は互いに刺し違えて共に死ぬ。後を継いだ彼らの叔父クレオンは、テーバイを守って立ったエテオクレスは手厚く葬ったが、来攻したアルゴス方の死者、ことに首謀者のポリュウネイケスには、葬儀を禁じて、野に棄てておく。彼らの妹のアンチゴネーがこの禁令に反いて、兄の屍に埋葬の儀軌をおこない、捕らわれて死罪に宛てられることに。
クレオンの末子ハイオンが、かねて許嫁の間であったアンチゴネーを助けようとして果たせず、父を恨んで自刃し、この報せを聞いて母のエウリュディケーも死に、そしてクレオン自身も死を選ぶのだった。
ただのリーディングではない。しかし、キャストらは普段着でリーディングしていた為、衣装もそれなりの衣装が欲しかったところ。林英樹のクレオンは案外滑稽な感じで楽しかったが、滑舌が悪いのだろうか?聞き取りにくいセリフがあって残念だった。横山晃子のテイレシアス役は予言者の雰囲気を醸し出していて絶妙だった。終盤、新聞紙を床にばら撒き散らし、ゴミのように扱う場面は、民衆の噂や動向やざわめきを表現したものだったのだろうか。
面白い舞台だった。
PRIDE2011
48BLUES
d-倉庫(東京都)
2011/08/26 (金) ~ 2011/08/28 (日)公演終了
満足度★★★★
めちゃくちゃオモロイ!
まさに掘り出し物の劇団!突如として始るハイテンションな導入音楽とともに殺陣で魅せまくる。ワタクシ、ニヤニヤ状態!格闘技の『PRIDE』さながら、殺陣『PRIDE』バージョン!元来持って生まれた血が騒ぐというか、血が逆流しそうにノリノリになる。こうなったらもう、どいつもこいつも食い殺したろか、みたいな。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
物語は「赤穂事件」を背景に、繰り広げられるチャンバラなのだ。キャストらはツバ吐きまくり、汗流しまくりの大熱演。観ているワタクシもアッチッチ状態なのだが、よせばいいのに、そんなカッチョイイ刀捌きの合間にどうしたわけか、笑いのコネタを仕込んじゃってる。しかもそのコネタがまたまためっさ、古っ!
着ぐるみの犬とか、アンパンマンとか、牛とか、鳥とか・・笑
演じる役者は見たところ一流どころなのに、ネタが昭和なものだから、お前はドリフか、はたまたタケシかよ。みたいな・・。苦笑とか失笑とかの類。
これらの小細工ネタは無いほうがいい。むしろ、言葉で笑わせてあとはストレートパンチでも充分にイケル。ってかそれだけの実力はあるわけよね。でもって着物姿もイケテルのに、後半はスーツに着替えて戦ってる。どうやら「キルビル」みたいなシーンを想定させたかったようだけれど、「キルビル」自体も古いってばっ!笑
やはり、「忠臣蔵」は和服で徹して欲しかった。
討ち入りのシーンで「やれんのか!?」と堀部安兵衛。よくやった!君たちはよくやったよ。この劇団は次回も観たい。
よつあしダディ 2011 【ご来場ありがとうございました】
らちゃかん
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2011/08/26 (金) ~ 2011/08/28 (日)公演終了
満足度★★★
佐伯家で巻き起こるコメディ劇
人情味溢れる家族を主軸に、それぞれの事情を綴った物語。肩の力を抜いて緩く観られる芝居ではあったが、この日は小さな女の子が母親と入場しており、舞台が始ってもそのお口は閉じられることなくずっと母親と話していた。だから役者のセリフが聞き辛い箇所(女の子も案外大きな声でしゃべっていた)があり、集中出来なかった。こういった生の舞台の場合、スタッフが事前に母親に注意を促し、「お子さんがおしゃべりされるようでしたら、速やかに退場してください。」くらいは言うべきだ。それよりも何よりも母親自身が楽しんでいて、他の観客の迷惑を考えない姿勢にも驚いた。母親の親の顔がみたい。そんなわけで評価は-1とした。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
相変わらず高野ちん太朗のオーラがいい。確実にパジャマを着たおっさん役なのだが、その姿もおちゃめな感じがして可愛いらしい。笑
そんなちん太朗演じる佐伯圭三は佐伯家の頑固オヤジという設定。圭三の妻・加奈子、長男・健介(フリーター)、その妻松子、長男の娘・望、長女・桜の6人家族だ。
健介は仕事が続かず直ぐ辞めてしまう不甲斐ない男、これを支える絵描きの松子なのだが、何故か家事は一切やらず、義母の加奈子が娘と同じように食事を用意してやっている。ある意味不思議な光景なのだが、これでこの家族は上手く回っていた。
ある日、突然、父・圭三の体に異変が起こる。それは「エンリケマルチネス症候群」というヘンテコな病気で、これに感染すると一年以内に犬になってしまうという。つまり、人間が犬に退化してしまう病気なのだが、ちん太朗が時折、犬化して動き回る格好は、どことなく違和感がなくて、ありえるな・・。なんつって不思議な肯定感が育ってしまうから、ちん太朗という役者はとことん素晴らしいと思う。つまり、動物役も違和感なくこなせる世にも珍しい貴重な役者だ。笑
毎回のごとく、笑いを盛り込みながら人情味溢れる物語は観ていてこちらの心まで温まる舞台だ。しかし、個人的にはドンタコスの一発芸はいらない。ソコ、面白くなかったし・・。
Subway to Venus
ザッパー熱風隊
ワーサルシアター(東京都)
2011/08/26 (金) ~ 2011/08/28 (日)公演終了
満足度★★★
ラップコント
この劇団の特徴として、リズムにのせたショートコメディらしい。その表現はラップなリズムなのだけれど・・・。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
先にショートコント芝居があり、いきなりリズムにのせた手法へと変えていく表現なのだけれど、ラップリズムはかなり絶妙に導入言葉を乗せないとそのリズムにのれずに、詰まったり間があいたりと会場の空気を損なう恐れもある。
相当練習したようだが、その成果があまり表れてなかったように思う。ワタクシ的には普通のショートコントのほうが断然面白く、ナンセンスコメディな描写で好みだったが、ラップなリズムに変換されると、どうしても、今までの芝居が中断されて、ぶつ切りのような状態になってしまうのが、気になった。
舞台の中盤に「お題」と題してアドリブコントがあったが、これがまったく面白くなく、ウケナイ。本日のプログラムの中では、「ご挨拶」「リーモーティーチャー」が好みだった。
「エダニク」「サブウェイ」
真夏の極東フェスティバル
王子小劇場(東京都)
2011/08/25 (木) ~ 2011/08/28 (日)公演終了
満足度★★★★
「サブウエイ」を観た
舞台はかなり抽象的だ。序盤、なんとなく、むちゃくちゃでコント集のような感覚に陥るが、終盤にかけて、彼らの言いたいことはなんだか、神、世界の創世記、バベルの塔を引き合いに出し、観客にエラク壮大に感じるように騙す手法は、案外、レベルが高いのではないかと感じた。笑
舞台は初心者向きではない。好き嫌いに激しく分かれる表現だ。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
舞台の描写は風変わりだけれど、世界の情勢や世相を映し出す。映し出す、と書くとまるで映像として画面を見るように受けてしまうが、画像は一切ない。役者がスクリーンに映る映像のごとく演じるのだ。どんだけアナログなんだよ。と突っ込みたくなるほどアナログ丸出しだが、表現する情報量は膨大だ。しかもものすっごく早口なので、ワタクシの耳が追いつかない。
こりゃあ、楽しむ他ないな、とか考えて、腕組なんかしちゃって、ついでに足投げ出して、まるで姐御が若いもんを叱咤してるような体制。笑
こなると異様なほどの迫力がある、らしい、ワタクシ。(緊張するらしい。(ある役者の後日談))
そんなこんなで役者らは必死の形相で、一日目から七日、月曜日から日曜日までを台本どおりに演じ、虚構をまるで現実のように表現していた。
ワタクシが好きだったのは図書館員とじいさんのとぼけた会話劇だ。このとぼけた感じがずっと続けばいいな・・。なんて腕組しながら上から目線でド迫力で観ていたが、新聞紙の紙ふぶきが舞ってきた時には、「やっぱりアナログだ。」なんて妙な親近感を覚えちまったよ。
明けない夜 完全版
JACROW
シアタートラム(東京都)
2011/08/25 (木) ~ 2011/08/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
2008年からの快進撃
縁あって以前から拝見させて頂いてるJACROWの舞台だが、ワタクシの中では2008年11月公演の「紅き野良犬」からの公演快進撃は凄まじいものがあると確信している。
毎回、秀逸な公演でヒットを飛ばし安定感のあるキャストらの起用、そして本当に心から嬉しいのは蒻崎今日子が押しも押されもしない女優に育ったことだ。一観客として役者が育つのを見続けるというのは、至福感と同時に充実感にも似た感情があるのだ。親心みたいな・・。更に毎回のことながら脚本にもシビレル。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
再演なので、ワタクシも再見。しかし今回の「明けない夜 完全版」は警視庁捜査一課と亀有所刑事課の裏事情に重点を置いていたような気がする。つまりちょっと改訂してあったようだ。
1963年、工場を営む裕福な家庭・和田家の一室に一本の脅迫電話がかかってくる。経営者の一人娘・里美が誘拐されたのだ。これをきっかけに、急遽、誘拐事件捜査陣が組まれる。刑事達の確執や体面、保身を上手く絡ませながら刑事の勘と綿密な捜査、事情聴取によって段々と核心に迫っていく。
一方で3ヶ月前の家族と社員の風景、2ヶ月前の風景、事件当日の風景を回想シーンとして描写させながら幸せだった風景が蘇り、と同時に現在の緊迫したシーンと重なり、複雑な心境になる。
事件は和田秀人(社長)が女性社員に手をつける癖が原因となって里美が殺されてしまうのだが、これを世間に隠したいが為に、和田は区議会選に立候補することを匂わせ、刑事課長に「私の個人的な事情は一切外に出さないように。課長さんの将来を潰したくないので。」と釘を刺す。これを聞いてびびりまくる課長。笑
物語は愛人一号、二号の切羽詰った心情をえぐり出しながら犯行に及んだ動機も炙り出す。愛人二号役のハマカワフミエが、和田のような禿げオヤジとディープキスをしたり、抱き合ったりするシーンはハマカワが穢れるような気がして、なんとなく嫌だった。笑
脇を固めるキャストらの演技力もしっかり。
終盤、泣き崩れる妻・峰子(奥さん)に従業員の三好が宗教を薦める。頷く峰子。
絶望のあまり藁をも掴む心理状態の隙間に宗教がそつなく入り込む構図だ。
初演から2年。あどけなかった里美が成長して同じ舞台に登場する。時の流れをひしひしと感じた公演だった。初演とはまた違った角度で物を見ることが出来るのも、再演ならでは。
今回の舞台セットで玄関引き戸の枠の框上部が役者の立ち居地によって顔が見えない。勿論、観客の座る位置によってだが、これがまた、蒻崎今日子の玄関での演技シーンが多いので、ちょっと残念だった。それから玄関屋根も役者の顔と被る。セットを作る場合、こういった環境も考慮して欲しかった。
それ以外は大満足だった。
「エダニク」「サブウェイ」
真夏の極東フェスティバル
王子小劇場(東京都)
2011/08/25 (木) ~ 2011/08/28 (日)公演終了
満足度★★★★
「エダニク」を観た
流石に横山拓也(売込隊ビーム)の本だけあってナンセンスコメディカラーの強いオモチロ可笑しい芝居だった。役者3人も熱演だったけれど、夏がすこぉ~しだけあがっていたような感じ。原真の演技力が素晴らしい!
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
序盤、元ニートのいかにも軽そうな茶髪男・伊舞(夏)が「屠場一日体験」と銘打って、職人たちの休憩所にもなっている研磨室に現れる。腕に自信のある職人2人はそんなちゃらちゃらしたイマドキ男を叱咤すべく説教じみた会話になるも、このイマドキ男こそが、伊舞ファームの跡継ぎ御曹司だということを理解した沢村(原真)は態度を豹変し、今までの暴言を詫びて急に遜ってしまう。笑
俗に言う強弱の世界なのだが、世の中というものはそんなもんだ。
伊舞とは3歳しか違わない沢村のしっかりした考えとニートだった伊舞のジェネレーションギャップな会話が可笑しい。ある意味、不毛な会話劇なのだが、価値観も考え方も真逆な二人に会話が成り立つはずはなく、その隙間だらけの絶妙さが実に面白いのだ。伊舞自身も自分の御曹司という立場を熟知していて、段々と少しずつゆっくりと偉そうになっていく態度。それに反して恐縮しまくり、縮こまる沢村。
しかし、玄田(緒方晋)だけは、大きな取引先の御曹司だろうとなんだろうと考えを曲げない、遜らない。笑 この3人の不毛なまでのバカバカしい会話が楽しかった。
また屠場という場所設定も、解らないことだらけで興味深々だった。専用屠場の話、工場ライン、別屠室、解体、屠畜銃の話など内容はエグイが、知らない世界を知らされるというのは、観客にとってワクワクドッキドッキな秘密基地を見ているようで新鮮だった。
文句なしに面白い!こうなったら「サブウエイ」も一見の価値ありでしょ。観に行く。
Caesiumberry Jam
DULL-COLORED POP
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2011/08/20 (土) ~ 2011/08/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
チェルノブイリ原発事故のその後を題材に
舞台には湿った土が盛ってあり、この土が壁をスクリーンに見立てた映像に見事にマッチしてリアルな雰囲気を醸し出す。映像なくして物語は成立しないほど、時の流れの残酷さを描写していた。登場人物の名前から察するとやはり場所はロシアの片田舎ナジロチ。原発事故から30km離れた村での情景を綴った物語。クリニカ演じる中村梨那の子供子供した元気溌剌な表情や行動がとっても素敵だ。ナターシャ役の石丸さち子のおっかさん的な演技力が群を抜いて秀逸。惜しむらくはジーナ役の加藤泰子が少々あがってたようでカミが目立ち、ギクシャクしていた。後半は良くなると思うが・・。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
前半、コメディかと勘違いするほど、笑いのネタ満載。後半はゆっくりと弧を描くようにシリアスになっていく。こういった構成は相変わらずお見事だった。
1986年5月、原発事故は起きた。そこから30km離れたナジロチでも禁止区域のようだが、ここにこっそり数家族が暮らし、自らで学校のような場所を確保して子供たちの教育もしていた。舞台の始まりは元気な彼らが和気あいあいと暮らす情景を描写し、いかにもヨーロッパ的な香りで舞台を満たす。
そんな彼らを使者(保健省の小役人)が視察し指導をするのだが、言う事を聞かない住民はいつものように数種のベリーを採取してジャムを作り食し、木の実でワインを作り飲んで人生を謳歌していた。タイトルのセシウムベリージャムは、高濃度に汚染されたベリージャムという意味だろう。
クリニカは六指の手を持ち、うさぎは片足の奇形が生まれ、やがて誕生した新生児は、無脳症だった。無脳症児は妊娠26日くらいにビタミンAの大量投与、葉酸の摂取不足が一因と言われているが、セシウムでもなるのだろうか?
やがて、彼らはひとり、またひとり・・といなくなってゴーストタウンと化してしまう。愛していた夫を失ったリューダの想いや彼らと関わった思い出をカメラマンの記憶として描写した劇だったが、悲惨な景色や獣奇的な風景はない。ただただ淡々と綴っていった物語だ。人々がそこで暮らし、笑い、酒を飲み、幸福だったそれらが崩壊していくさまをまるでドキュメンタリーのように描写していた。その写しには作家の意図は何も感じられない。また訴える言葉もない。けれどその静かなる叫びはそれで充分なのだ。
美しの水
AND ENDLESS
THEATRE1010(東京都)
2011/08/20 (土) ~ 2011/09/04 (日)公演終了
満足度★★★★
「Blue」を観た
まだ出自を知らぬ若き遮那王が生まれてきた意味を告げられ、その言霊と成長し、平家を討つまでを描く「Blue」編。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
1175年、平家全盛の頃、源家の生き残り鎌田正近は16年の歳月をかけ御曹司・遮那王をみつけ想いを託す。奥州平泉に逃れた遮那王は多くの出会いを通し義経となり平家への復讐を進めていく。富士川の戦いから壇ノ浦での平家滅亡を描いた編。
今回の舞台は全体的にパフォーマンスが多く悪乗り気味だった。源氏に綾かって光ゲンジの物まねをしたり、歌を歌ったりと・・。苦笑。
そんな中、鎌田正近役の徳秀樹と、後白河法皇役の塚本千代の演技が実に見事だった。特に「ホワイト」で見せた後白河はまだ小娘でオドオドした様子を巧みに演じ、コレと打って変わって今回は、16年の歳月を脈々と感じさせる堂々とした演技力だった。後白河の「奥州にくだり源氏を監視せよ。」と命を出すセリフにはシビレてゾクゾクしたほど。素晴らしいです。
鞍馬の山にひっそりと暮らしていた義経が奥州の野に放たれ、そして平家を倒すまでが今回の物語だったが、次回は兄弟での宿命のような争いを描写するRED。これも観なけりゃアカンでしょう。笑
プール・プール・プール【終了しました。ご来場ありがとうございました!!】
演劇ユニットC720
タイニイアリス(東京都)
2011/08/19 (金) ~ 2011/08/21 (日)公演終了
満足度★★★
舞台はプール。ってはずなので
ものすっごく期待して観に行った。いったいあのタイニイアリスの小屋にどんなふうに水を張るのか、勿論キャストらは水着でしょ。みたいなワクワク感とパラダイスな気分のまゝ小屋入りしたわけよね。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
ところがさ、ところがよ?
入ってみたら、あらびっくり!そこには水飛沫はおろか、プールなんて代物水物はいっさいないわけよ。ここでプチがっくし・・。
でもって舞台が始まってもオナゴ、モトイ、おんな、モトイ、役者はなかなか脱ぐ気配もなけりゃあビキニもない。当然のことながら水着もない。
ありゃりゃ・・・、これどーしてくれんのよ。
折角座りづらい最前列桟敷席にかぶりつきで陣取ったオヤジの気持ちはどーしてくれんのよ・・。なんつってオヤジ達の代弁をしちゃいたいくらい、オヤジ達が哀れだった。
それでも終盤までまだまだ希望の光を消さない消したくないオヤジ達。だから頑張る。頑張って腰痛になりかねない体制で必死に喘ぐ。しかしその喘ぎもむなしくおんなはトレーニングウエアのまま。
いあいあ、舞台をみてるよりオヤジ達を観ていたほうがより楽しめる舞台だったわけだけれど、物語はフィットネスクラブに通う人たちの本音やカミングアウトを綴ったもの。彼らはプールに入った時だけ心の中に澱のように固まった感情を吐き出すことができるという設定なのだが、プールは精神科医のドクター的役割でもあり、飛沫から聞こえてくるそれぞれのつぶやきは彼らの本当の声だ。
父親の介護を余儀なくされるフリーターの最後の言葉がずしん!と胸に響く。物語に結論はない。場所をプールに置き換えただけで良くある話だ。役者の演技力がもう一つといったところ。河辺もなみがグッド!
これは僕が神様になりたかったけれどなれなかった話で、僕の彼女が実は地球だったってオチが待っている話なわけで、
劇団エリザベス
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2011/08/19 (金) ~ 2011/08/21 (日)公演終了
満足度★★★
夢の中?
全体的にラブコメというよりコント集を繋いだような劇。自由が丘ハイスクールが舞台。
序盤、すやまが寝ているシーンから始まり、終盤もすやまが寝ているシーンで終わるこの舞台はきっとすやまが見た夢の世界の出来事を描写したものなのかな、とも思う。その妄想劇ともいえる世界観はアニメ。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
中性的な魅力のすやまは、草食系を通り越して既に蜜食系な女声で「自殺しても死ねない」なんてのたまう。どうやら思春期特有の自殺願望手前の「死んでもいいかな」程度の思いなのだ。時折、すやまはナイフで自らの胸を刺したりして自害するも、なかなか死ねない。そんなすやまには海の中の気泡のような女神・美希が憑いていてすやまを守っていたのだった。
自由が丘ハイスクールが舞台なので当然、同級生の男女、教師も登場するが、これらのキャラクターたちがイッチャッテル。笑
特にあいちゃん演じる真鍋建史が異様な色気で背後から紫の煙のようなものが立ち上ってるような感覚にさえ感じた。笑
学園に新たに蔓延るメルト。それは人間以外の地球外生物のようだが、姿かたちははっきりしない。メルトとは地球の白血球みたいなもんで雑菌を排除しているのだが、これに感染すると、進化しなかったサイヤ人ごとくゴリラのように毛深くなったり(ドラゴンボールかよ)それぞれのキャラクターたちは、人間離れしていってしまう。
すると人間そのものが雑菌かよ。なんつって突っ込みたくなるようなオチなのだが、林の自虐ネタなアドリブには笑えたけれど、それ以外のネタがあまり面白くない。また役者がこの日はカミまくり、その都度、現実に引き戻され物語に浸れる度合いも浅かったように思う。全体的に練習不足な印象。
全ては僕の世界そのもの、つまり、すやまの脳内物語のようなものなのだが、すると君と過ごした時間もすべては夢ってことで、それは僕が夢の中で描いた物語なわけで、メルトは僕が排除したい人間なわけで、あとやっぱりそんななかでも僕は普通以下の人間なんだと思ってるのだけれど、だがしかし、
それでも僕は、あがいていかなければならなくて、
他の生物になりたい、なんて思ってしまうわけで・・。
・・と、蔵ラのため息が聞こえてきそうな物語。笑
不識の塔
劇団野の上
こまばアゴラ劇場(東京都)
2011/08/19 (金) ~ 2011/08/21 (日)公演終了
満足度★★★
一号二号三号
実在する不識塔というのは、世界遺産「白神山地」の一角の山中に立っている不思議な形をした塔。レンガ造りで、高さは20.8m。まるでタイやミャンマーなどの寺院に見られるような三層の円筒形をしていて、頂上には宝珠の飾りがついている。不識塔の形は、「主」という漢字をかたどっているのだとか。これは、この塔を建てた権藤主の名前だ。彼はその辺り一帯を開拓し開拓記念として自らその塔を建てた。今回のお話は津軽に現存する塔と実在した人物をモデルに、劇団野の上独自のフィクションだ。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
大正の中頃、自らの死期を悟った主は、友人で医師の工藤に遺書を託す。その遺書にはなんと、本妻の他に一号二号三号と妾がいたことも明らかにし、ついでに遺産分配も記録してあり、その遺産分配の条件に、塔に身内を集め最後の願いとやらを託していたのだ。
その願いと言うのが突拍子もなく、大きな木樽に酒を注ぎいれ死んだ自分を酒漬けにして保存するというものだった。遺族は遺言どおりにして、事実、50年の間、酒漬けした遺体を保存していたらしい。そんな描写をするためにアゴラ劇場には大きな木樽が運び込まれておりその中に入った水に役者を突き落とすシーンが観られた。苦笑
舞台はどちらかというと笑いを狙ったシーンがいくつかあり、全体的にコメディを狙っていたみたいだが、大爆笑はなかった。また津軽弁が殆ど理解できなかったので、その部分が全く理解不能。
権藤主が抱く女の処女を追い求める幼稚さや、死ぬ間際に腹の中に戻りたい、という意識の幼稚さにも苦笑しながら、緩く楽しめた舞台だった。
ナヲ(主の本妻)の言動で会場を沸かせる案だったのだろうが、逆に引いてしまった感があり、もっと絶妙なセリフセンスで笑いをとって欲しかった。