「ベルナルダ・アルバの家」 公演情報 ウンプテンプ・カンパニー「「ベルナルダ・アルバの家」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    禁じられた反動
    お見事!の一言。キャストらの演技力といい、舞台装置といい、衣装、音楽、籠の中の文鳥、演出、どれもがまさに芸術の域。物語は名家、ベルナルダ・アルバ家を舞台に、そこに暮らす女たちの逃れられない悲劇を濃密なダイアローグ劇で成り立たせていた。人間が閉鎖的な土地に根ざして生きる矛盾や、それに立ち向かう力強さ、あるいは流されるさまを巧みに描写していた。物語は重い。しかし見事な演技力で観客を魅了した。お勧めの舞台だ。公演時間2時間30分。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    川のない、井戸水を頼りにする小さな集落というプライバシーもへったくれもない村社会で名家の誇りを捨てることが出来ない女主人・ベルナルダがいた。閉鎖的な社会の中で自分達の誇りや伝統を守る為にベルナルダは夫の死後、五人の娘に八年間の喪に服することを言い渡す。その間、外出やおしゃれは許されず、まるで監獄のような暮らしぶりだった。年頃の娘たちは抗えない抑圧にしぶしぶ従う。

    そんなおり、長女のアングスティアス(39歳)に縁談がもちあがる。姉妹の中で一番くすんだ、しかも父親にそっくりの女にだ。しかし長女だけには遺産が相続されるのだ。(今でもスペインの遺産相続順位は妻ではなく子供)
    夜ごと長女の部屋を訪れる若い男・ぺぺの存在に色めきだつ姉妹達。なかでも末娘アデーラ(20歳)はぺぺと逢瀬を繰り返し、陶酔と絶望を受け入れていくようになる。一方でそんな二人を羨望の眼差しで見つめる四女・マルティリオ(24歳)の執拗な嫉妬。

    母親に逆らうことを抑制され因習の中に生きる女たちが、にわかにどよめきだし、鬱屈した性が吹き出しはじめ、外の情景にも恋焦がれるようになり男に飢える。そして麦刈りの男たちにも色めきだってしまう。自由を奪われた女達の飢えた描写だ。その屈折さがぺぺに集中し姉妹達はぺぺを好きになってしまい、挙句、抱かれたいと思うのであった。

    これらを見て見ぬふりを決め込むベルナルダ。しかし、ここで逃れられない悲劇がベルナルダの家に訪れる。密通を交わしていたぺぺを銃で撃ったベルナルダを見て、ぺぺが死んだと勘違いをしたアデーラは絶望のあまり自害してしまうのであった。それでもベルナルダは「いいかい、アデーラ生娘のまま死んだんだ。決して外に漏らすんじゃないよ。」と口封じをする。荒れ狂う姉妹達の屈折した恋と体裁を重んじるアルバ家の物語。

    「極道の妻」顔負けのド迫力、新井純の演技が神がかりだ。そして家の女中頭を演じた坪井美香、アデーラ役の薬師寺尚子も素晴らしい。彼女は「サルとピストル」で観ていたが、あの時よりも今回の方が実力を発揮出来たといえる。勿論、どのキャストの演技力は秀逸だった。美しく鳴り響く生演奏が舞台を崇高にさせ、籠の中の文鳥はまさに彼女らの象徴だった。

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    2011/09/02 19:24

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