リリーの方程式
9-States
OFF OFFシアター(東京都)
2010/09/15 (水) ~ 2010/09/20 (月)公演終了
満足度★★★
空調が寒すぎて集中できず
開演して20分も経たないうちに場内が寒すぎることに気づく。しかし、奥に座ってしまったため出るに出られず言うに言えず。我慢しながら観ているとそのうち、足が冷えて頭が痛くなってくるという最悪の環境で観た芝居。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
リリーを倒す事が出来たら、一つだけ願いが叶うらしい。などという都市伝説が囁かれていたボーリング場での出来事。物語は5本のオムニバスで構成されるも、それぞれ5本は少しずつ繋がっている。
序盤、ボーリング場で見るクラスターがセットされた舞台はなんだかワクワクして、更にそこに球が出てくるシーンは思わず笑ってしまった。
今回の芝居はこのリリーにちなんだ劇だったが、一番面白かったのが「社長と呼ばれてみたものの」だった。登場するキャラクターの立ち上がりが実に愉快で、特に社長こと月野木歩美が被り物を装着して登場するシーンは怖いというか宇宙人の襲撃かと想像したほど。また危ない輩から借金をした3人のキャラクターが実にお見事でマジで面白い。むしろこの「社長と呼ばれてみたものの」だけで全編を観たかったほど。
これ以後の短編はあまり面白いとは感じなかった。寒すぎてそれどころではなかったのだ。観客の観劇環境を整えるというのは基本中の基本なのだが・・。
ああ、今でも頭が痛い。風邪をひくのだろうか・・?
避暑に訪れた人びと
東京演劇アンサンブル
ブレヒトの芝居小屋(東京都)
2010/09/11 (土) ~ 2010/09/20 (月)公演終了
満足度★★★★
とにもかくにも本が最高
しかし、オーリガとサーシャの棒読みセリフに次いで、一部のキャストに噛みや演技力の低さが目立ち、この劇団のキャスト不足を想像してしまう。チェーホフ劇といえばワタクシの中では「東京ノーヴイ・レパートリーシアター」の右に出るものは今のところ、ないのではないかと思っている。それだけに今回の「東京アンサンブル」との比較を楽しみにしていたのだが、この二つの劇団の差はキャストの実力にあるとしみじみ思う。
上演時間3時間20分だったが時間の長さはさして気にならず、最初から最後まで途切れることなく集中出来た。たぶん、それは脚本のせい。笑)
どちらかというとチェーホフの色濃い作品。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
劇場に入るとそこは深い森をイメージした舞台セット。生い茂る葉の合間から木漏れ日のように射す陽射しを描写するような直線の照明。そこは荘厳あらたかな静まり返った鬱蒼とした場所。そんな静かな美しい場所に富裕層といわれる人達がバカンスにやってくる。弁護士のバーソフが大きい別荘を借り、建築技師のスースロフが小さい別荘を借りる。しかしこの二つの夫婦仲はあまり宜しくない。
彼らは何日もの間、ただただ暇をもてあましてはおしゃべりに高じ酒を飲み食事をし、嘆き愚痴をこぼしため息をついてるだけで何もしようとしないのであった。そんな中、暇を持て余した男女は既婚者だということを忘れたかのように、あちこちで愛を囁きあい、この別荘が密かな愛の巣になりつつあった。
以前からこんな生活に疑問を抱いていたヴァルヴァーラ(弁護士の妻)は女医のマーリヤの誰もが真実を知ることを求めるという原則的な考えを持って毅然とした態度に魅かれ感化されていくも、そんなマーリヤの考えと態度は、バーソフやシャリーモフ、スースロフ、リューミンらを苛立たせた挙句、「女という生き物は動物に近い。我々男が女を一から教育しなくては駄目だ。」とのたまう。
それを聞いたヴァルヴァーラは夫・バーソフの元を離れ社会貢献の為に学校を設立するというスースロフの叔父であるドッペンプンクトらと共に自立への道に旅立つのだった。残された男3人の「いったい何がヴァルヴァーラを怒らせたのか?」と不思議に思い、理解出来ないという態度が滑稽だった。
何もしようとしないで時間を無駄に浪費している生き方に異議を唱え、願望や理想に沿うように生きなければならないといったヴァルヴァーラの主張は、世の中をうまく渡り歩いて来て挫折も知らない無自覚で無関心な夫・バーソフに響くはずもなく、男女間の感覚の格差の描写がお見事な不条理劇だった。
ヴァルヴァーラを演じた桑原睦の演技力は絶賛するほどでひじょうに素晴らしかった。加えてバーソフの松下重人、シャリーモフの公家義徳が全体を引っ張っていた。セリフは少なかったものの、別荘番役の竹口範顕、三瓶裕史の演技が絶妙で彼らの吐くセリフが言いえて妙でもあった。笑
闘争×ホルモン TackleBagタックルバッグ
グワィニャオン
俳優座劇場(東京都)
2010/09/11 (土) ~ 2010/09/19 (日)公演終了
満足度★★★★★
頑張れ!おっさん達!
流石に構成が上手い。
しかもラグビーを知らない者が観ても解りやすい。そしてバックに流れる導入音楽にも懐かしさを感じる。音楽はその時代を生きた証しとともに積み重なって、しっかり思い出という宝石箱の中に仕舞い込んであるのだ。
ワタクシの観た回は空席が目立っていた。チケット代5000円はちょっと高いのではないのか。庶民の出せる金額とちゃうし・・。
そして惜しむらくは、うつみ宮土理の声域が狭い。セリフの所々が聞取り難いのだ。音量が少ないのかも知れないが舞台の広さによって声量を変えて欲しい。他のキャストのセリフの大きさに問題はなかったのだが・・。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
序盤、鹿浜商店街の情景を描写する。このやり方は「ギンガ堂」のようであったが舞台は似たような演出になることは良くある事だとも思う。更にラグビーの解説が始まった時には「あれ?やっちゃった?」なんて感じた。それというのも説明が長すぎるように感じたのと、序盤の出だしが静かすぎたのも、そう思う要因だった。
商店街を復興させるべく、店主の中年男達はいつものようにホルモン焼き「はるちゃん」に集まって思案にくれる。そんな折、牧野の提案で「皆でラグビーに挑戦し全国を目指そう」というのである。ラグビーで有名になればおのずと町おこしになるというのだ。「はるちゃん」のオーナーである大浦もかつては有名なラグビーの監督だったことから、その女将の晴江が監督になるという。
おっさんチームは衰えた肉体に鞭打ち、腰痛に堪えながら、ない筋肉を振り絞って練習に励むのだった。ここからの練習風景、おっさん達の奮闘ぶり、おっさんチーム対高校生の試合の様子をラグビーの解説とともに面白おかしく描写していくのだが、いつのまにかおっさんチームを応援している自分が居たりして物語にどっぷりのめり込んでしまっていた。笑
オヤジ達の生きてきた過去の情景に、つぶやきみたいなセリフでの導入も素敵だ。こういったちょっとした笑いと赤茶けた錆びた匂いのあるセンチなセリフは西村の上手いところだ。いつしかオヤジ達は「ホルモンズ」というチーム名で「勝てない相手じゃないよ!」という監督の勝利へ誘う呪文の言葉によって、勝ち進んでいく。
舞台上で見せる試合の展開、動き、走り、闘争、応援風景の演出がこれまた絶妙に上手い。上手すぎる。更に南武とのんちゃんの絡みも素敵で可愛らしい。のんちゃんの喜ぶ仕草がなんとも可愛くてついついうっかり笑ってしまうのだ。どんな場面でも人生の喜びは何かに夢中になれることだと思う。
「私のスーパーマン」と吐かせるセリフやホルモンズの練習風景の映像は舞台がそのままグラウンドになったかのような錯覚を抱き55人のキャストらの青春がそこにあった。
KOKORO=(ココロイコール)
Oi-SCALE
Glad(東京都)
2010/09/13 (月) ~ 2010/09/13 (月)公演終了
満足度★★
し、しまった!
ちょっと想像すれば解る事なのに想像力の欠如なのか、ライブとは煙草の煙をモロ吸うことだって気がつかなかった。気がついたのは入り口に入ってすぐのテーブルで茶髪のギャルがプカプカしていたから。
ぐはっ!(吐血!)
ここでまず早くも来た事を後悔。
以下はネタばれBOXにて
ネタバレBOX
更に一発目の歌は馬場陽太郎のボイスがノイズに消されて聞き取りにくい。でもって、その音楽はなんと~なく陰気で屈折した悪魔が地の底から這い上がってきたような暗さ。いあいあこれで盛り上がれ!っつーても無理な話ですわ。
そうして次はRICOのヒップホップ。しぇーン!!カムバッ~ク!!と叫びたくなるほどワタクシの好みから遠ざかる嗜好。
ついで、「アスファルト」というお題のリーディングを映像を駆使したらしい画像でもってリンクさせるのだけれど、この駆使した映像とやらが、ペットボトルや煙草や人間の指やボールペンや蝋燭やライターに光を当てて、その反射によって画像を作ってる裏方の様子は正直言ってちょっと興ざめしてしまった。何しろ、そこまでネタばれされると空想の世界が壊れてしまうと言う怖い現実でした。
アスファルトに横たわった、人間とバイクはまんま小さな写真を貼り付けて上からカメラで撮ってたし。。
朗読劇 私の頭の中の消しゴム
ドリームプラス株式会社
天王洲 銀河劇場(東京都)
2010/09/08 (水) ~ 2010/09/19 (日)公演終了
満足度★★★★★
絶妙なタッグ
レミゼのマリウス役、ミス・サイゴンのクリス役での実力派で知られる藤岡正明の演技は流石。リーディングといえど、お話だけで観客を号泣の渦に巻き込む力量はやはり、プロでした。そうして、あまり期待していなかった岡本玲。彼女の演技も実に素晴らしかったです。
二人で血の滲むような練習したのだろうと思わせるほど、息がぴったりで岡本の絶叫や儚く消え入りそうな声が藤岡の声にマッチして二人の世界を作り出してた。
会場は号泣に重なる嗚咽に包まれ心地のいい涙を流しました。
この二人の回はお勧めです。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
建築会社を営む社長の娘・かおるとその会社に勤める高原こうすけの純愛物語。
お互いの日記を読むという形で描写するリーディングだったが二人の感情の起伏の表現があまりにも見事で直ぐに物語の世界に誘われた。
二人は建築現場で出会い恋に落ちたが、かおるのひたむきで一途な愛を中々受け入れられなかったこうすけは、幼少の頃の暗い影を背負っていた。それは七夕祭りで母親に捨てられた過去が小さなこうすけの心を屈折させ愛に対して臆病にさせていたのだった。
人生は絶望の連続だったと言い切るこうすけの心を説得し正面から向かい合って幸せを掴むことを恐れないようにと、こうすけ自身を氷解させたのは他でもないかおるだった。
やがて二人は結婚し希望に満ち溢れていたが、そんな幸せも束の間、かおるは変頭痛に悩まされるようになる。同時にかおるは物忘れも酷くなる一方で、病院からは「若年性アルツハイマー」との診断が下される。しかし、こうすけを思い遣ってこの病名を打ち明けずに離婚を申し出るかおるに対してこうすけは深刻に悩んでしまう。こうすけと出会う前に付き合っていた不倫相手の和哉の影にも怯え疑心暗鬼になりながら鬱々と暮らしていたが、半年も経ってようやくかおるの病気を理解したのだった。
そうこうするうち、かおるの病気は進行するばかりだったが、かおるの傍でかおるの介護に明け暮れるこうすけは、決して不幸ではなかったものの、こうすけが帰宅すると「お帰りー、和哉さん。」というかおるの嬉しそうな言葉に深く傷ついてしまう。本当は和哉のことが好きなのではないか?と悩むこうすけ。
そんな生活の中、いよいよ記憶は遠のくばかりとなったかおるは、こうすけへの変わらぬ愛をしたためた一通の手紙を残して出て行ってしまう。こうすけは絶望し泣き叫ぶもかおるは戻らなかった。
さらに数ヵ月後、かおるからの手紙が届き、その住所から施設を探り当てたこうすけはかおるに会いに行くも、かおるは既にこうすけを覚えていなかった。落胆するこうすけの表情。しかし、かおるが描いている小学生のような図画にはこうすけの似顔絵が何枚も描かれていたのだった。
涙が枯れてしまうのではないか、と思うほど号泣して嗚咽した舞台だった。改めて二人のキャストの素晴らしさを実感したものの、客席は半分以上空席の状態。思うにチケット代が高すぎると思う。リーディング舞台なら集客できる金額は3500円までだと思うのだが・・。
歴女パーティー ~WAR・WAR・WAR~
劇団東京ドラマハウス
萬劇場(東京都)
2010/09/09 (木) ~ 2010/09/12 (日)公演終了
満足度★★★★
コメディかと思いきや、
しっかり反戦も唱え、尚且つ現代社会も風刺するというてんこ盛りの舞台だった。惜しむらくは終盤のシーンでの柳沢元教授が傘を振り回して武士の刀と戦う場面以降の展開は必要ない気がした。
舞台って止め処が難しいよね。しかし、これ以上続けたら、興ざめしちゃうって事がよくあるんだよねー。
それでも構成はしっかりしていたと思う。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
物語は柳沢元教授のいる研究室でのお話。
柳沢によると寺で見付かった古文書から上杉謙信は女だったという説を説き部下は教授の意向で奔走するも胡散臭く感じていた。
それじゃあ、本物を降臨させて話を聞いたらどうか?などと突飛な発想を思いつく。その名は「歴女パーティー」それでやってきたのが、これまた胡散臭そうな豊満なインド人みたいな女が登場し、霊を降臨させることが出来るという。
そうして女たちはまあるく円を描くように手と手を結び、マントラのようなまじないを始めるのであった。しかーし、降臨したのは新田義忠やら家来の堀田やら織田信長やら、蘭まるだった。笑)
歴史上の武将たちが降臨する際の音響、照明、演出は流石。これで太鼓や鈴の音でも鳴り響いたなら、歌えや踊れのお祭り騒ぎになるところだった。そんな折、女将と呼ばれた上杉謙信が降臨する。そんな戦国武将たちの御姿は凛々しくも勇敢であった。
更に織田が上杉に惚れていた経緯や天下統一の為に戦った戦国時代から現代の、世界のどこかで戦争は続いている状況はさして変わらないことなどを含め、日本の総大将である管直人の御器量を武将が問いかけるシーンなどは苦笑!ものであった。
そんな時空を超えたお話なのだが、意外に説得力があって解り易い。楽しく愉快な舞台だったが織田と謙信のセリフの混じり具合が絶妙で凛としていた。一番印象に残ったのは謙信の話し方の彩りだ。
魁!ヤンキー高校!
ぱるエンタープライズ
TACCS1179(東京都)
2010/09/10 (金) ~ 2010/09/12 (日)公演終了
満足度★★★★
喧嘩上等!
つまりはゆるくて楽しいアニメ的な世界観!
前説はチンピラ風味の二人のコントから始る。これで充分、客席を温めておいて本題に入る思考は流石。笑
全体的な風景はビーバップハイスクールのような流れでヤンキーたちのバカバカしくて、楽しい物語だった、。
以下はネタばれwBOXにて。。
ネタバレBOX
どうしてヤンキーってあんなに馬鹿なんでしょうか?笑)
そんなお馬鹿なヤンキーしか登場しないのだから、つまらないはずはない。そうしてケンカの毎日。まさしく闘魂!
そんな中で頓馬校の番長・志津也は栄華校の番長の妹・亜由美に禁断の恋をしてしまう。亜由美も志津也に一目ぼれなのだから相思相愛なわけだ。許せない栄華校番長の俊樹。俊樹は重症なシスコンの上に、ドMだった。そんなドMな俊樹の彼女・ユリが裏で俊樹を操る学園の総番長なのだから、世の中もヤンキーも今や、オンナに支配されているのかも知れない。笑
でもって、他校から恐れられてる喧嘩上等!の俊樹はユリを前にすると人格が180度変わってしまうドMなのだから、ユリに弄られ、蹴られ、殴られ叩かれて喜ぶという変体ぶりが愉快で観もの。舞台の合間合間にはアニメの映像で解説が入るという正しくワタクシ好みで、これはもういと可笑し。
そして地元のチンピラ・小松までもがケンカに介入し、さらに大混乱を極めるのだが、この小松が島田伸介似で、リーゼントのひさしがまるで軒下の雨よけみたいに長い。顔がまるっきり被さってしまうほど。笑
なぜ頓馬高校と栄華高校のヤンキーたちが喧嘩ばかりするようになったのかというと、頓馬高校の女子ヤンキーのアタマの京子と栄華高校の総番長のユリの間に色々あって、こういった因縁になり、両校が巻き込まれて争ってる形だ。こんな無駄な争いは止めたいと考えた頓馬校の番長・志津也が動いて無事、収拾はつくのだが、とにかく面白い。学園ものって闘争にしろ闘魂にしろ恋愛にしろ、なぜこんなに感動するのかとふと考えると、やはりあの頃が懐かしいのだと思う。
だから、こんな馬鹿馬鹿しい情景もあの頃の一ページに重なって苦くも甘い青春だったと振り返るのだ。
SUNらいず
劇団光希
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2010/09/08 (水) ~ 2010/09/12 (日)公演終了
満足度★★★★★
同情なんかいらない
真っ青な雲が棚引く夏の天高くを大きなカモメが羽を広げ風に乗って舞っていた。そんな故郷の海に帰ってきた直人、万亀男、彰介の同級生「浦部三馬鹿トリオ」が織り成す夏の思い出とは。サンセットが似合う大人の恋の物語。
「同情なんかいらない。」そう叫んだ蛍子と直人の場面から、号泣。果てしなく号泣。止まらぬ涙と鼻水でぐしゃぐしゃになりながらも、感動の嵐で帰路に着く道すがら、今、観劇した若人二人が「俺、この劇団初めて観たけど、やヴぇ~よ、マジでやヴぇ~よ。あの亀がやヴぇ~、クオリティ高すぎ!やヴぇーー!!」ともう一人の連れに向かって訴えていたけれど、ワタクシ、「やヴぇーのは君の語彙だ・・。」と言いたかった夏の出来事。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
海の家を経営する蛍子(森下知香)には一人娘の中学生がいた。蛍子はかつての同級生、直人に一本の電話をかける。その電話の声が気になった直人は同じく同級生の「浦部三馬鹿トリオ」の万亀男、彰介に声をかけて蛍子の様子を見にやってきたのだった。
故郷の海に帰ってきた3人は相変わらずのバカッぷりでまるでドラえもんに登場するジャイアンのようにはしゃぎ転げまわり、喧嘩をし、言い争いながらも夏の日に遊ぶ少年のように一時のバカンスを楽しんでいた。そんな能天気な3人と蛍子は学生から続いている4人の関係が壊れてしまうのが怖くて、蛍子と直人のお互いを想い合う感情を抑えていたのだった。
しかし、蛍子の病名(癌)を知った直人は蛍子にプロポーズするも断られてしまう。それは現況の蛍子を気遣って無理ばかりしてしまう、何でもない顔をして無理ばかりしてしまう直人に対してそんな事は直人にさせられない。と気遣う蛍子の思いやりからであったが、心とは裏腹に「同情なんかしないで。どうしてもっと早く来てくれなかったのよ。」と暴言を吐いてしまう。
お互いを気遣うあまり二人の恋は成就しないのだろうか?と悲しくなる一方で、「蛍子たちとずっと一緒にいることが俺の幸せだ。」と直人が告白しプロポーズする。
前半、海の家を経営する溌剌とした蛍子。周りの仲間に支えられて幸せそうな蛍子。後半での病みがちで今にもしゅるるる~~と空気が抜けてしまいそうにやせ細った風船のような蛍子。しかし、いまにも消えて無くなりそうな風船は静かに幸せそうだ。
蛍子は知っている。小さな小さな、取るに足らないほど小さな温かいことが一日のうちに1つか2つ、よくできた日なら3つか4つほど起こり、夜が来てその日が終わり、次の日になってまた1つか2つ起こり、次の次の日になって、一週間がたち、一月がたち、一年が過ぎ人は暮らしていく。それが何よりも勝る幸福であること。繁った葉の下にいるコロポックルのような、雁の羽に乗ったニルスのような小さな小さなサイズの発見や喜びや夢や嬉しさや期待の積み重ねがどんなに勇気付けられるかを。
やがて車椅子に乗った蛍子は永眠するも、彼女を支えた仲間たちは今日も夏の海で一匹の蛍に見守られてはしゃぎ騒ぎながら海でサーフィンをするのだった。
導入音楽、コミカルな情景から、やがてシリアスな場面へと移行し、終盤は重い空気を一気に払拭するように明るくにぎにぎしく幕引きさせる脚本の移動が巧みだった。更に森下知香が演じる蛍子の喜怒哀楽の激しい気性から一変し、一気に療養中の蛍子が背負う病弱さへの転換があまりにも見事だった。まるで手足の長い儚いトンボのような風情に落涙した瞬間だった。
MOTHER
オフィス・たま
「劇」小劇場(東京都)
2010/09/08 (水) ~ 2010/09/12 (日)公演終了
満足度★★★★
母なる大地
評価の情報が少ないなか、あまり期待しないで行ったのが正に当たりくじだった!笑
キャストらの演技もしっかりとソツなくコナシ職人芸の域。しか~し・・、上演時間2時間25分はちと長くないか?
ネタバレBOX
明治40年代は著名な文豪たちが活躍した時代でもあった。この物語に夏目漱石が登場してもおかしくないくらいの時代背景がある。
近代女流歌人の第一人者・与謝野晶子と、その夫で同じく歌人である与謝野鉄幹は当初、夫婦としてのお互いの立場は守られていた。それは鉄幹のほうが歌の腕も経済的にも晶子より勝っていたという条件だったからだが、そうこうしているうちに晶子のほうが歌人として売れっ子になってしまう。
夫婦の関係の機微というものは難しいもので社会的地位や環境によってもぶれてしまうのが常だ。ここでも晶子に仕事の依頼が増えると鉄幹は委縮し、卑屈になってしまう。それでも晶子は夫をたてて自分なりに愛し、鉄幹も自分なりに晶子を愛して止まないのだが、ここでは二人の夫婦の情景と二人を慕って集まってくる北原白秋・石川啄木・佐藤春夫ら文人たちとの交流と政治活動に身を投じた、大杉栄と平民社の菅野須賀子を登場させコミカルに描いていく。
なかでも『元始女性は太陽であった』を書いた平塚明子(平塚らいてう)と晶子とのやり取りは、実に面白い。婦人解放を解く平塚と独自の持論を説く晶子のそれは心の解放という意味において晶子のほうが解放されているのかも知れない。
包み隠さず何でも夫に話す直情型の晶子は、夫が晶子に隠し事をする事柄を「そんなのって夫婦じゃない。」なんて詰る場面もあるけれど、元々小さな水脈しか持ち合わさない鉄幹は敗北に似た感情を晶子に持ちながら、それでも、「こんなに美しい詩を書いて、こんなに素晴らしい女が僕の妻なのか・・、呆然としながらも誇りに思う。」と表現する。
鉄幹はヒモのように家事をこなしながらも、晩年、晶子との間に13人の子を儲け幸せに暮らしたのだから、不倫の末の結婚とはいえ、その人生は豊かだったに違いない。
序盤、鉄幹の吐くセリフの数々が美しい。その文体は脈々と流れる水のようで水面に映る数々の情景はキラキラと輝き透明だった。
FROG~新撰組Jade Keeper~
D'TOT
SPACE107(東京都)
2010/09/08 (水) ~ 2010/09/12 (日)公演終了
満足度★★★
あれ?手直しの方向が??
時田つかさ(鉢嶺杏奈)は修学旅行のさなかに幕末へタイムトリップし山崎烝(植野堀まこと)に出会う。彼は新撰組に入隊していたが諜報部である監察方に配属、密偵の仕事を任務していた。
今回のお話はこの二人にスポットを当て、「新撰組」が終わりを告げるまでの物語。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
前作「FROG」を観劇した時にはもっと内容が濃かったような気がするのだが・・。今回の物語は前作の本を大幅に書き直したようだ。なぜ書き直したかは疑問。
舞台は新撰組の成り行きを大雑把に説明したような物語だった。だからキャストらの出番は平均的に万遍なく出番はあったものの、いったい誰が主役で誰が脇なのかが、あいまい。幼稚園での運動会を観ているような感覚だ。「みんな~、手を繋いで仲良くかけっこしようね~。」みたいな・・。
だから、かけっこのゴールに順番はない。
ここでの主役が時田つかさと山崎烝なら、山崎に関しての背景をもっと押し出してくれないと、構成が物足りなく感じてしまう。更におちこぼれ4人組のネタももっとぶっ飛んでいいような気がした。際立ったキャラクターの立ち上がりが弱いことと、主軸となるキャラクターにスポットを当てきれず弱すぎるのだ。
更にもっと突っ込むならば、新撰組特有のチャンバラの見せ場が下手過ぎ。あんなんで人は切れんだろう・・。と失笑してしまうシーンが何か所もあり、剣先が刺客から50cmも離れてるのには唖然・・というより愕然!の域。
新撰組は年に何十本と観てるだけに、あまりにも雑すぎが目立った学芸会だった。それでも一部の、ほんの一部のキャストはきっちり演じてたので、☆3つとしたい。
ЖeHopмan【シャハマーチ】 池袋盤
電動夏子安置システム
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2010/09/07 (火) ~ 2010/09/12 (日)公演終了
満足度★★★★
Kバージョンを観た。
今回のゲームを彩る小芝居はタクシードライバーの奥羽のコント集。しかし、ワタクシの好みはMバージョンの仲居・愛后のコントだった。
ストーリーはMもKも同じ。違う部分は密室で繰り広げる参加者の作戦会議だ。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
なんだかんだいって、Kチームのジェナーの門倉のぶっ飛び具合が面白い。悪ふざけというか果てしなく大きな呆けっぷりというか、アニメ的なのだ。しかも趣味は漫画というのだから、どこまでもノー天気だ。笑
先が思いやられる・・・、なんてKチームの戦士らは本心を丸ごと出して包み隠す様子はない。そんな微妙なチクチク刺さる空気感も、門倉は「空気を読めないオンナ」っぷりを披露する。笑
しかもモニターに映った「折る」を「祈る」と読み間違えるジェナーっぷりはもう、笑うしかなかった。
昨日と同じシーンでまた笑うワタクシが居た。きっと何回観ても同じように笑うんだろうな・・。と考えるとこの物語はワタクシが考える以上に良く出来た作品なのかもしれない。
忘却曲線
青☆組
アトリエ春風舎(東京都)
2010/09/06 (月) ~ 2010/09/12 (日)公演終了
満足度★★★★★
全ての人に捧げる子守唄
物語は抒情詩的な描写で表現されていたが、家族の心理状態をキャストらが吐くセリフとそれらを結ぶ情景で絶妙に舞台を作り上げていた。導入音楽も素敵だった。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
作家で詩人のパパは交通事故で粉々になって死んでしまう。心底、夫を愛していた歌手のママは夫の「日記を書きなさい」との提言を実行していた。ママにとって日記は過去の悲しい出来事を忘れさせてくれるものだった。そして子ども達にも「日記を書きなさい。できるだけ丁寧に・・。」と口癖のように教えるのだった。
子どもたちはママの言葉通り、毎日、日記を紡ぐ。それらはいつしか習慣になっていったが、7年後の夏に今度はママが夫を追うように失踪してしまう。
残された子供達はママとの過去を忘れられず、ママと過ごした家からも離れることが出来ずに、悲しみと切なさと思い焦がれる望郷の上に人生を歩んでいた。
その後の4人の兄弟は必ずしも幸せそうではない。こういった物語の紡ぎ方が小夏の独特のセンスでもある。生きてる人達の多くが不幸せと幸せを絶妙なバランスで交互に綱渡りをしているようなものだと思う。誰でも生きてる人は、みなそこにある死に向かっているのだから、怖がらずに生きてる間は生きてるあいだを自分らしく楽しく過ごせばいい、とも思う。
ここで登場するママは娼婦のようなメイクで4人の母でありながら生身の女を印象付ける。このことから失踪した後の女としてのママの生き様をも想像できてしまう。そのママも彼女らの故郷へ帰ってきたようだったが、小さな猫をかばって交通事故に撒き込まれ夫と同じように粉々になって死んでしまう。
夏の思い出、それは潮風と共に突然やってきて、彼らの記憶を鮮明にさせるだけさせて、また突風のごとく走り去ってしまうのであった。
愛する人の死。それは二度と逢えなくてもそれで終わるわけではない。4人の子供のママ。世間と言うものは錯覚しがちだけれど、親になったとたん聖人に変身する訳じゃない。その人の性格というものはさして変わらない。個性だからだ。ママは女としての自分を捨てきれなかっただけだ。
私達はこれからも、そう変わらない人生を生きていくだろう。しかし未来は私達を見捨てない。
ЖeHopмan【シャハマーチ】 池袋盤
電動夏子安置システム
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2010/09/07 (火) ~ 2010/09/12 (日)公演終了
満足度★★★★★
Mバージョンを観た。
いあいあ、めっさおもろいわ~。。
フライヤーとサイトの説明からなんだか小難しいゲームのように感じて観る前に予習しちゃったほど!だけれど、始ってみるとゲームの合間にオムニバス調で繰り出す仲居の愛宕いずみの芝居がコメディだった。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
とある銀行の廃墟跡でKチーム6人とMチーム6人のゲームは始まる。ゲームをしている12人は至って真面目にゲームをしているだけなのだが、不審に思った警官に周りを包囲されてしまう形となる。中の12人は警官の気配を感じながら、ゲームに集中するというのが今回の背景だ。
まず今回のゲームについて説明しよう!笑
『ノルマ』は様々な命令を受け、その通りに行動しなければならないが『ノルマ』自身はどんな命令が与えられているのかを知らない。『ジェナー』は『ノルマ』に与えられている命令を知っていて『ノルマ』がその命令を達成するように仕向け誘導するのが役割。そして『ノルマ』と『ジェナー』を助け相手チームの行動を阻止する役割の兵(サルダー)が3人。
つまり1チームに『ノルマ』1人、『ジェナー』2人、兵(サルダー)3人の計6人で駒を進めるのだ。これは王様ゲームみたいなもので『ノルマ』を王さま『ジェナー』を妻、そして兵(サルダー)と考えたほうが解り易い。
早速、客席の眼の前に設置されたTV画面に「かく」「うつ」などの単語が命令として表示され、それを、KチームとMチームのどちらかの『ノルマ』が先にクリアしたほうがゲームの勝者となるのだ。だから『ジェナー』は必死の形相で、『ノルマ』を操ろうとするも、なまじ意思を持ったMチームの『ノルマ』は言うことを聞かないし、思い通りの動いてくれない。どちらかと言うと意志の弱そうなKチームの『ノルマ』のほうが扱いやすそうだ。笑
しかし、自分達のチームが負けた場合は『ノルマ』は開放されるも『ジェナー』が新たな『ノルマ』にならなければならず、ゲームの世界でも年功序列は生きているのだった。笑
このゲームは『ジェナー』の活躍がなくては達成できないという葛藤あり、軋轢あり、チームのスパイ疑惑も浮上し、チームの仲間同士が人間関係にひび割らしながら、疑心暗鬼の上で綱渡りのように渉っていき、挙句、いつのまにか王より強くなった妻『ジェナー』が王を支配してしまうというのもミソだ。笑
結局、ゲームはMチームの『ノルマ』の意思でクリアせず、Kチームの『ノルマ』がクリアしたかのように見えたが、外に出た瞬間に銃砲の音が響いて射殺されたかのような幕引きだった。
ゲームの合間に見せるコントのような芝居が実に愉快だった。ここのキャストってホント面白いよね~。笑)
ゲームを取っ払ったら、殆どコメディだと感じる楽しい舞台。Kバージョンもこうなったら観る!(^0^)
おにもつ
東京マハロ
笹塚ファクトリー(東京都)
2010/09/03 (金) ~ 2010/09/12 (日)公演終了
満足度★★★★
本の内容が薄い
場所は運送会社「安西運送」の事務所。
ここでの風景を描写した物語だったが、本の筋が断片的で繋がってないのが惜しい作品だった。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
配車係の飯島が面接に来た新人にやたら威張り散らすシーンから物語は始まる。笑
女子事務員2名、ドライバー5人のトップに立つ社長が運営する運送会社は小さなイザコザはあれど割と和気あいあいとしたムードだ。
鈴木演じる森田さとるはここでも(強調!)他者から弄られキャラクターだ。苦笑!) そしてフィリピン人のジェシカに結婚詐欺られ散々貢いでしまうというフテクサレ哀れな役を演じる。しかし鈴木はそういった毒のないキャラクター故に観客からひじょうに好かれている。ワタクシも鈴木ファンの一人だが、他にも「鈴木目当てに来た。」という観客がいらして、鈴木の人気ぶりを伺わせる。ハゲなのに・・。笑
安西運送に努める人たちはそれぞれ訳ありだが、「夢はなんだー?!」との社訓の元、今日も元気に働いている。しかし、配送係の飯島がトラックを運転中に奈美子を轢いてしまった挙句、怖くなってその場から逃げてしまうのだった。
飯島との連絡が取れなくなってしまった事務所は大騒ぎになるも仲間たちは飯島を心配し戻ってくるように無線で説得を続ける。この時に社長も飯島と同じように、かつて人身事故を起こした経緯をも説明する。「時代は繰り返す」などと奈美子の父に詰られるも、しかし、事故を起こした事と、飯島の逃げるという展開が飯島のキャラクターにどうしても合わない。これが森田なら妙に納得してしまうのだが・・。
結局薬局、飯島に「罪を償って来い。みんなで待ってる。」という収束の仕方だったが、あまりにも終わり方が無理無理でストン!!と蜥蜴のシッポを切ってしまったような感覚だ。中盤までがスピード感溢れコミカルな展開だけにひじょうに残念だ。それでもキャストらの個性的なキャラクターの立ち上げと演技力で楽しめた舞台だったが、本の練りこみが甘い気がするのはワタクシだけだろうか?
それでも十分楽しめたのだが、惜しい。と感じずにはいられなかった舞台だった。
ペン
劇団NLT
俳優座劇場(東京都)
2010/09/02 (木) ~ 2010/09/08 (水)公演終了
満足度★★★★
子の七光り
海外コメディらしい・・。笑
以前の公演でも池田政之がガブリエルというペンネームで書いてたのをみると、これも、池田のペンネームなのかと思いきや違った。池田はご自分の作品を多数のペンネームを使って書いてるんだよねー。フランス人が好きなんだろうか・・?むしろ、権佐衛門とか、仁右衛門とか鬼頭市とかのほうがウケると思う。笑
今回の本は無理に笑わせようとしないで自然な流れでのコメディだったため、センスがあって上質で楽しかった。コメディというより、コミカルな物語。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
ルジールの娘・ドミニクは父と違って天才作家だった。小説「私の心は真っ裸」で一躍有名になったドミニクは毎日がパーティ三昧で中々、書く暇がない。そんな時、新聞社のカメラマン・オリヴィエに恋をしたドミニクは彼とのデートを企てるも、ルジールに阻止されてしまう。
ルジールには父親特有の娘可愛さと、今や天才作家となった娘の作品を週刊誌に連載させると出版社に約束してしまった経緯からオリヴィエと付き合うことを許せなかったのだった。とにかく書かせなければ、・・と。
しかし、当のドミニクは将来の作家としての自分を見据えて、今は書きたくないという。理由は「『私の心は真っ裸』が売れてるのに何故、今また新刊を出さなくてはならないのか?出版社に踊らされる作家ではなく、着実に時期を見て発表したい。」という。また、「私は成功も富も恋も味わった。パパと私では役割が違う。」と主張し人生に於いて、それぞれの規律の中でポジティブに生きようとするドミニクが眩しいほどだった。
色んなことを経験して、それらを零すことなく吸収してしまうドミニクの強さと明るさと強かさ。逆に自分の人生は非の打ちどころがなかったと言い切るルジールの人生は、何も見ないで何もしないで、何もやらなかった。そんな親子の性格の対比とドミニクの弟がこれまた天才的な詩人とする物語は凡人にとっては輝かしい本だが、この子供二人が父の小説を出版化させるという展開は「子の七光り」そのもので、微笑ましい限りだが、それ故に父親のダメっぷりも露呈してしまう。笑
ファミリー人情劇だったが舞台はコミカルで愉快だった。笑いの殆どを祖母役の木村有理がかっさらったが、表情と目で演技する祖母のそれらは芸術の枠を超えた風格があった。素晴らしいと思う。なるべく前の方で観られると木村の演技が堪能できる。
生のひと 生いがいのひと
元東京バンビ
OFF OFFシアター(東京都)
2010/09/02 (木) ~ 2010/09/07 (火)公演終了
満足度★★★★
緩くておバカな狂想曲
妹・愛は恋人との同棲生活にトキメキを感じなくなって、姉の経営する「スナック・さわこ」に転がり込む。しかし、さわこの恋愛感覚はとんでもなく大胆に男と見ればエッチをしちゃう野獣のようだった。笑
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
さわこの現在の男遍歴は安岡力也風の男だったり、店員だったり、幼馴染の別府だったりする。二股三股は当たり前!自分を愛してくれそうな男なら誰でも良いなんて捩れた渇望する愛だった。
しかし、さわこのこの恋愛狂想曲にはさわこの幼い頃の生い立ちが関係していた。それは、愛が再婚相手の義母の連れ子だった為、さわこの父は実子でない負い目から愛ばかりを異常に可愛がったのだった。幼い頃から実父の愛情に飢え、誰からも愛されてないと感じていたさわこは父親の愛情を埋めるために男に走っていたのだ。
しかし、屈折した愛を持ち、簡単に男とエッチしてしまうさわこに対して真剣に恋愛する男は居ない。結局、誰からも愛されてないのだが、それでもさわこは独自の恋愛の定義をぶちかまし、意気揚々と男を狩るのだった。笑
登場するキャストらのキャラクターがホント面白い。釜風味あり~の、顔のでかい小さな巨人あり~の、なんだか動物ランドみたいなナリだ。笑)
それでも、さわこと別府との恋愛は「なんとなく付き合って、なんとなく結婚して、なんとなく子供を生んで、幸せな家庭をつくろうよ。」なんてセリフから、おお~、上手くいくんじゃないの?!なんつーて応援したくなったけれど、別府も旅人のようにさわこから離れてしまう。
結局薬局、妹の愛だけは地道に恋人と結婚するようだが、さわこはこのまま狂想曲するのだった。笑
さわここと、しまさきまちこのコミカルさが素敵だ。彼女のキャラクターがあったからこそ、この物語に色鮮やかになった。更に何言ってるのか解らない力也のキャラクターには大笑いした。
とんでもなくバカバカしくて楽しい舞台だった。
KUNIO07『文化祭』
KUNIO
こまばアゴラ劇場(東京都)
2010/09/03 (金) ~ 2010/09/06 (月)公演終了
満足度★★★★★
チョー楽しい!!
文化祭は色々あれど、今回ほどにぎにぎしくて楽しかった文化祭はないぞっと!!笑)
総勢35人くらい居たのだろうか??
舞台でワぁあああ!!と脱いで制服に着替えるシーンから金吹雪が舞い散る中、闘魂!する。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
3人の女子高生とピンク犬の着ぐるみが登場し文化祭は始る。生徒らの合唱のシーンでは「この広い大空に~♪」なんて希望と可能性が溢れる歌を歌いながら、屈折して羽が折れてそうなエンジェルメガネ男子が前の女子高校生にセクハラまがいの事をして逆にカツアゲされる。笑
この時のメガネ天使のセリフの間合いが絶妙!
かと思えば、仲良しの男子高校生らが、ホモ疑惑を受けて苛められ不条理にも仲たがいしてしまうシーンや、そのストレスから虐めの連鎖に繋がったりとシビアな面も描写する。
一方で相馬の応援団やらエロチカセブンをバックにプールのシーン、人形劇での告白シーン、不良が織り成す「ダルさ」の場面など、どれもこれも青春の1ページだ。だから、観客は自分のあの頃を振り返って懐かしさと同時に放課後の教室の臭いを思い出す。ああ、青春だったな・・・。などと。
中でも泣けたのは一見ヤンキーな女子高生・トウコと呆けた祖母の物語だ。
そうしてこれらの集大成のように「クラスで文化祭の催し物を決める」描写が実に可笑しい。男子委員長と、女子副委員長のタッグが妙にリアルだ。そして生徒らの態度も。笑)
どうにかこうにか、「演劇をやろうぜ!」なんつーって、ドロシーが大切なものを見つけに行く物語の展開がコメディなのだった!
わー!!祭りだ祭りだ~~。めっさ、楽しい文化祭ーー!!
ピープル・ゲット・レディ【公演写真アップしました!】
Minami Produce
小劇場 楽園(東京都)
2010/09/01 (水) ~ 2010/09/05 (日)公演終了
満足度★★★★
「Phosphorescence」という花
いったい太宰の「Phosphorescence」をどういじるのだろうか?と興味深々だった。現実と夢想の世界の両方に自分を置いて、その両方で生きてる男が主人公だ。しかし、この舞台では女が主人公である。序盤、宮沢賢治っぽい描写だなー。と思いきや、中盤には夏目の「こころ」も盛り込み、更に終盤は太宰というか、「本当は怖いグリム童話」みたいな世界で締めくくる毒さ加減。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
舞台には猫みたいな「あした」が現われる。だてあずみだ。ここでの主役は洋子なのだが、だてほど雰囲気のある女優は珍しいとも思う。
洋子はあしたときのう、つまり2つの夢を行き来する。ここでの「あした」と「きのう」は洋子の影だ。「あした」という夢の世界では他人が洋子と関わりあう世界。「きのう」は洋子の友人らが登場する世界。2つの世界は時間軸がずれて交差することはなかったが、徐々に二つの夢が近づいて一つになりつつある。
この夢の中で語られる「猫の車掌さん」やら「雲を千切って作るドーナツ」の話は童話的で可愛いらしい。更に猫話は九州で突然消えた田舎町での情景とも絡ませる。これを南が書いたのかと思うとなんやら顔をガン見してしまった。笑
更に物語は洋子の属性にも及び、洋子が男から受けてきた好意と言う気持ちを操ってきたこと。ナオと達也の間を画策したこと。男の気持ちを知りながら小さな棘のあるズルサを積み重ねて生きてきたこと。そういった洋子の手段をこの物語りで咎め後悔させるような舞台は観ようによっては女のずるさの代名詞とも受けとられてしまう。
すると「やっぱり女は怖い。」なんつって意気揚々と男達は語りまるで自分達が正義のようにされてしまうのも違和感を覚えてしまう。童話のもつ残酷性や口承の物語や近代以前の物語というのは、この話に限らずおしなべて残酷なものだが、この物語の洋子が女の持つ特性なんて思われたら、ワタクシ達は生きにくいじゃあないかっ!笑
Water-Cooler
天然果実
ギャラリーLE DECO(東京都)
2010/08/25 (水) ~ 2010/08/27 (金)公演終了
満足度★★★★★
「ゲームの名は獣奇的殺人!」
そんなタイトルが似合うかのような、ゲーム性の強い、アニメ感覚の世界観。暗転する際の音響の導入、照明、6人の高校生の薄暗がりでの佇まい。それはもう、映画の中のワンシーンのよう。
ほの暗い闇の世界から浮かび上がってくるような斬新な場面だ。閉じ込められた世界、身に覚えのない異次元の世界から彼女らの物語は始まる。
ワタクシのこりっち投稿「観てきた!」の数、1102舞台の中でも極めて経験のない描写だ。その映し方は演劇というより目の前で起こっている高校生らのゲームさながら。作家・広瀬格は勿論の事、津島わかなの演出の見事さに唸る。たぶん、この舞台を観た誰もが今まで経験したことのない描写に驚くと思う。
座席は最前列の桟敷席に座ると女子高校生の・・・、とても美味しい。笑
追伸:ホームページを作ったとの連絡があったため、こちらにもUPしてあげました。(やれやれ・・・苦笑)
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
序盤、6人の女子高校生が銃、斧、ナイフ、ロープ、カッター、ペットボトルを持ってちょっとガニマタで佇む。この演出に最初からやられる。この物語はもしかして「殺人ゲーム」なんじゃないかと。6人はそれぞれ自分が何故ここに閉じ込められて凶器なんか持っているのかが、さっぱり解らない。しかし、記憶を辿っていくと、10年前に学校であった獣奇殺人の情景を思い出す。
この6人の中に誰かによって殺された被害者と殺人鬼が居ることを漠然と理解すると、6人はお互いに疑心暗鬼になって殺し合いの模様を描き出す。いったい誰に誰が何で殺されたのか?凶器、殺人鬼、被害者で216通りのシーンがある。これは中学生の問題だ。6の3乗。
そして殺されるかも知れない恐怖に打ち勝つことが出来ない6人はヤラレル前に殺してしまう者、己の精神の限界についつい銃で撃ってしまう者。狂気の寸前で殺し合いの様になるが、殺された者が倒れるシーンの演出はまさにゲームのように静かにゆっくりと落ちてゆく。そして数秒後、また復活するのだ。まさにゲーム。
だから一般的なエンゲキという視点で観てはいけない。これはただの殺し合いというゲームではなく、犯人捜しのサスペンスの中に、仲間が先生によって殺された事を知ると、それに対峙して生徒が手に武器を持って戦うというホラー性もあり、更に殺人者と被害者が繰り返し反転することで観客もいったい犯人は誰か?などとドキドキしながらのめり込み、いつしか自分も物語の中に入ってしまうという高度なトリックも存在する。
正解を見つけないとここから出られない恐怖。ザアーザアー・・と止まない雨の音の演出。舞台ではブレイクダンスのようなゾンビダンスも盛り込み、連続猟奇殺人の犯人に仕立て上げられたプールの死体の謎と中原の呪い。喉が渇くというおぞましい罰から5人の同級生を殺してその血を啜るという吸血鬼のように変化した1人の生徒の終盤の展開と教師との対峙は想像だにしなかった結果で、その風景も新しく斬新だった。
この舞台に関わった彼らにとてつもない才能を感じて、演劇界の新しい夜明けを観ているかのようだった。素晴らしい。
衛星放送に殺意を、
ハイバネカナタ
劇場MOMO(東京都)
2010/09/02 (木) ~ 2010/09/05 (日)公演終了
満足度★★
なんだかんだいって・・・
ハイバネは2007年の「talent」から観ているが、、ワタクシの中で「talent」が一番良かった。今回は観客が寝てる風景が目立ったことと、キャストらのカツゼツの悪さが目についた。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
なぜ、こんなにも物語の風景が頭に入ってこないのだろう?想像できないのだろう?と公演中、そんなことを考えていたが、たぶん、キャストの声、セリフの起伏が少なく、ちょっとハイテンションのまま、ず~~っと一定にセリフが続くんだよね。
そのセリフの絶妙な間合いを取らないまま、単調な定音セリフが続くのだから、セリフが生きることなく耳から過ぎてゆく。突風のように・・。更に導入音楽はない。舞台は感情の見えないセリフの嵐が吹くだけ。
基本的に基礎から勉強した方がいいんじゃないのか?と感じた舞台。