満足度★★★★
狂人達の物語
意外にこういった構図は一般社会そのもののようだと思う。ただ、ここまでは濃く激しくなくとも、似たような薄さで存在する人間関係があるのが今の社会だ。だから、社会を風刺したような舞台とも取れる。それぞれが内に秘めた闇や傷を持ちながら、残りの人生を弱火のまま過ごそうとしている人たちの町に引っ越してきた家族の物語。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
外部からの集合体のような町に元警官の家族がやってくる。夫は警官をクビになったが未だに昔の栄光や威厳を忘れられない男だった。そんな鬱積したものを抱えながらこの町を統制しようとする。その妻と娘は不満ながらも夫と一緒に引っ越してきたのだった。
しかし、この町の住人らは元警官からみると不審者ばかりだ。そんなことを考える元警官も既に精神疾病者だ。
町の住人らはこんなだ。
妻を亡くした男とその男をヒモにして変態プレイを楽しむ尺子。尺子のスナックで働くヌエは美人だが首の骨を折る悪食を持ち、堪らず手から涎を出す癖がある。
×4男だがメッポウモテる男、ヒステリーで自分に見合った男を追求する独身女、その独身女の下着の匂いを嗅ぐ男、両親を知らない男、自らの手のひらを切り流血で絵を描くバイト男、弟が亡くなった傷を抱えたままの男、多重人格障害者、これらの中で実は一番大人なホームレスら。
序盤、ホームレスらが話すエピソードが素敵だ。また個々の事情をホームレスが説明する場面での演出がお見事でとにかく解りやすい。ホームセンターでの店長と店員の会話はコメディかと勘違いするほど不条理満点でむしろ愉快だった。
抱えた傷の程度はそれぞれだが、元来、人間はどこかしら欠けているのだから、既に狂人なのだけれど、それを理性と言うベールで隠しているだけに過ぎない。だとしたら舞台の上も下も大差ないな、とも思う。
物語は完結しないでストン!と途中で幕が下がってしまった感はある。だけれどこれらの狂人達に「ああ、そうかい。」なんつってこちらが理性的ベールをまとって同情する価値はある。
満足度★★★★★
ピュアな想い
舞台セットは何もない。あるのは椅子とテーブルに見せた箱だけ。しかしそんな簡素なセットとはうらはらに実に重厚で感動的なエンゲキを観た。ワタクシはその刹那に落涙し、終演後の観客の拍手は鳴り止まなかった。その光景を見て自慢げに頷く宮澤が印象的だった。公演時間は1:15分。濃密なひと時。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
水野は幼少の頃、発達障害を持っていた。知能は高いが感情のコントロールが上手く計れなく、ついつい暴れてしまうため友人もいなかったが唯一の心のよりどころは並木紀美子という幼馴染だった。
水野は並木が勤めるスナックに頻繁に行き、二人で飲み歩くようになったが並木には一緒に住んでいるヒモがいた。並木は今の幸せではない状況を水野に愚痴り、それを真に受けた水野は一緒に逃げようと口約束を交わす。
水野はそんな約束を頑なに守り、今でない何処かに幸せを求めて彼女と一緒に逃げる為にコンビに強盗を決行してしまう。そしてとりあえずの隠れ家として吉沢家に訪問するも、ナイフで脅し、そこに居合わせた直美を人質としてとるが、ここで直美の恋愛事情も知ることとなる。
女の言葉を信じて強盗をした水野。妻子もちの男の言葉を信じて付き合っていた直子の二つのピュアな心が痛々しい。水野の要請で並木を迎えにいった父・和夫の表情もぐっと身につまされ、物語は一つの部屋に集った5人の時間で架橋を迎える。
チック症のように顔を歪める水野を庇って絶叫する直子の訴えるもの、妻子を思い遣る日下、直子を愛している父、並木を慕う水野のそれぞれの感情が激流のように交錯し物語はクライマックスを迎え、そうして並木の言葉に絶望した水野は自らの頭を打ち抜いて果てる。
その後の全員のスローモーションな動きはまるで人が死ぬ前の一場面のようだ。暗くて空しい空洞は観ている方の心にもポッカリと穴をあけ、目の前の壮絶な死に様を観ていた。男と女の関係は百の夜が明け千の日が暮れても変わらないようだ。
舞台は序盤の演出からワタクシを引きつけ放さなかった。約束を守ってもらえなかった男の最後が悲しくも切ない物語。
満足度★★★★
N観劇。なんちゅー面白さ!
いやはやマジおもろい。大声出して笑った笑った!
3話めはなぜか二人がかみ合わなかった。理由は相方のセリフが飛んでしまったのか、その埋め合わせにアドリブを投入したのか、だから安藤がマジ笑いしたのか知る由もないが、それでも十分楽しかったのさ。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
1話ー浄水器を販売するテレフォン営業と客との会話コント。終盤、客だと思っていた人物が実は浄水器の社長で、二人でシュミレーションをしていたというオチ。笑
2話ーとある公園のベンチに座ると黄泉の国の逢いたい人に会えるという噂からやってきた吉田は、そのベンチをねぐらにしている安藤と出会う。安藤は吉田の会いたいという相手になりきって演じるから、満足したらとっとと帰ってくれと言う。早く安息な暮らしに戻りたいのだ。
3話ー金魚すくいに3万もつぎ込んだ安藤は吉田の部屋にやってきて一匹の金魚を水槽に入れるまでのコント。終盤、浄水器に大枚をはたいて購入した安藤は騙されたと知ると浄水器を窓から海にめがけて投棄してしまう。その後、金魚も海に放してやると「しまった!金魚は淡水魚だった!」と慌てるも、先に投棄した浄水器が稼働していて海の水を浄化させていたというオチ。笑
コント1と3がオムニバス調に繋がっていて企てとしては実に面白いと思った。終盤で必ずオチに持っていく構成は基本中の基本なのだろうけれど、そのオチは予想もつかない展開でお見事だった。
二人の衣装を担当したのが浅利ねこ(劇団銀石)だが、衣装さんとしての浅利をあちこちで見かける。こういった楽しみ方もまた楽し。
満足度★★★
掴みどころのない情景からの今
たぶんこれは評価が割れる。序盤、その描写はあまりにも曖昧。パンチがない舞台だ。しかし後半からは、ああ、今を生きる現代人の描写だったのだろうか?と曖昧に理解できる。両者の曖昧さはこの舞台の吐き出す世界感で好きか嫌いかに割れる。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
姉は好きだった過去の男を忘れられずに強度な自己愛を表現しつつ生きる。一緒に暮らしている弟は中学生からの引きこもりだったが、姉はこの弟に好きだった男の幻影を重ねて弟を自分の思い通りにがんじがらめにして閉じこもらせる。
一方で河童寿司を経営している河童くんはアルバイトの憂子にお熱をあげるもまったく相手にされない。実は河童を好きな夢子もいるが河童はちょっと違う、と思っている。
弟や憂子は中学生の頃の虐めや引きこもりなどの過去を引きずりながら今の世界を淡々となるべく他人と深く関わらないように生きていくさまが、物悲しいが、傷を持った者はとかく自分の殻の中で静かに生きようと考えているきらいがある。
それが正しいかどうかは解らないが、そういった心の機微を描いた作品だったように思う。彼らの内なる世界はあのころより、どんどん他人がいなくなっていく世界だ。決して広がらない世界だけれど、そこに居ることが幸せだったなら、それでいいとも思う。そういう曖昧さを表現した舞台だったように思う。
しかし、こういった舞台の表現の仕方は後にそれなりの試練も味わうとも思う。誰にでも受け入れられる芝居ではないからだ。それも熟する前の一歩なら数年後の相馬の舞台を観てみたい。
満足度★★★
まだまだ青いかなー・・
そこそこの受けないギャグ、キャストらのそこそこの演技力、本も盛りだくさんの内容を押し込めてしまった為、逆に雑になってしまったきらいが。たぶん、ワタクシ自身がこれまでに素晴らしい舞台に恵まれすぎていた為、評価が厳しくなってるのかも知れないけれど、残念ながら響かない舞台でした。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
児童養護施設で育った神野ら3人が織り成す人生劇。ここでの3人の三角関係なる恋愛に重点が置かれてしまったために物語りがライトになってしまったように思う。
カンナは特殊な能力を持ち合わせている。この能力を利用しようとする教団や保坂家の病んだ家族関係、保坂に嫁いできた真紀子が捨てた子供らの様子、を描写しながら、全体的に幸福のゆくえを探ったような舞台だった気がする。
割に重いテーマなのだけれど、それを軽いタッチで描写しちゃったものだから、ずしん!と心に入ってこない。
例えばカンナの力が多くの人を救うのなら、そちらに重点を置いたほうが良かったような・・。ただただ恋愛や愛情にだけ重点が偏ってるものだから、世界感が広がらない。要はちっさな自分達のテリトリーのなかであたふたとざわめいてるような感じだ。
出来たならこの力をもっと壮大な物語で占めるなら美しく悲しい感動もあったろうに、と惜しまれる。女性の脚本家は世界が狭いといわれているが、それならば繊細な感覚を逆手にとって勝ちにいってほしいと思う。ガンバレ!女性たち!!
満足度★★★★★
奇怪で不思議な物語
「マインドトリップサスペンス」とあるが、観てるほうもサスペンスだった。序盤、川崎が幽霊なんじゃないか?と勘繰ったほど。笑)・・、相変わらずセットの作りこみが圧巻で素晴らしいです。よくもまあ、あんな風に作ったものだ。ものすっごく拘ってるなぁ。物語は病院での一室での出来事。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
前説で林が色々しゃべるが本当に不思議な人ですわ。この世の者とは思えない不思議さ。笑
病院のベッド数は5つ。5人が入院している。主役の川崎は雑誌の編集をするリーマンだったが救急車にはねられて、ついでに救急車で運ばれてきた合理主義者でもあった。そんな彼が入院した先の部屋ではそれぞれの事情を抱えた4人が入院していた。4人とも闇を抱えた患者らだ。
当初、5人の患者らは仲良くそれぞれのポジションを守りながら入院生活を楽しんでいたかのようだった。しかし、彼らは一人ずつ死んでいく。そうしてその死んだかつての隣人に川崎が乗り移ったかのように隣人の家族や環境もそっくり受け継いでしまう。
何がなんだか解らなく納得出来ない川崎は自分の家族に聞いてみるが家族も、後輩も、そして入院患者らも川崎の今の環境が元からあったように受け入れている。
だから隣の厚木が死ぬと、そのまま厚木の部下が自分の部下となり、そのまた隣の中井が死ぬとそのまま中井の妻も引き継ぐ形だ。要は元の川崎が持っていた環境、境遇を他人にトリップしながら、他人になり切って他人の人生を生きてみる、という思考のようだ。これは川崎の欲する条件を生き返りの度に与える、という試みのようだが、前作の「サイゴ」でも取り上げた命や死についての後編みたいなものだった。
他人の持ってるものや家族。他人になれたら満足できるのか?という問答と共に今の自分を見つめなおす物語のようだとも思う。
劇中、椅子取りゲームの展開があったが、このゲームのように一人、またひとり・・と、いなくなっていくさまは末恐ろしい光景でもあったが、割にコミカルなシーンも多く、コメディの要素もかなり強い。他人の人生を背負うような展開がなんとも不条理だったが、人間は本来自分が持ってる器があり、そこから零れるほどの水はやはり必要ないのだとも思う。
きっと考えすぎると生きるという基本的なことは楽しめないのかもしれない・・。なんて単純なワタクシは思うのだった。まあ、好きなことやってへらへら笑って、ちょっとだけ鈍感なほうが生きやすい世の中なのだ。笑)
キャストらの演技が絶妙だった。特にはやし大輔がいい。
満足度★★★★
調和を奏でる
満月の夜だけ開けるホテル「マダムグラッセの家」
ここに迷い込んだ、迷える大人たちの優しい童話。
ワタクシの観た回は小川紀美代さん演奏によるバンドネオン。アコーディオンに似たこの楽器を初めて見ました。音色もアコーディオンに似てる・・。アルゼンチンの風景を思いめぐらすような素晴らしいひと時でした。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
クロスケはサラリーマンだ。若いころは天文学を勉強し星を観ながら暮らすことが夢だった。しかし現実はどうだ。中学生の初恋の相手とも結婚したが夫婦関係はぎくしゃくし気まずい。そんなクロスケは会議の途中で抜け出し屋上に上がっったことから、いつの間にかホテル「マダムグラッセの家」
に迷い込んでいた。
一方で妻・ユリ子も日々の生活に疲れていた。買い物の途中にふらふらと迷い込んだホテル「マダムグラッセの家」。ここで夫のクロスケと会い、お互いの中学生の頃の幻を夢のように見る。輝く夢と希望に満ち溢れていたあの頃。青い星と赤い星の逸話。
夫婦はあの頃の純真さを思い出し、二人で歩いてきた道のりも思い出す。妻は決して不幸ではなかった。幸せだと心の内を吐く。お互いきちんと向き合えば夫婦はきちんと愛し合っている事にも気づくのだ。忘れかけた大切なもの。それを彼らはここで拾ったのだ。
ホテル「マダムグラッセの家」はこうして迷える人間たちを癒し元通りにさせる効果のあるホテルだ。このホテルに住みつく売春婦や老教授はいわば、おまけだ。笑
ワタクシはどちらかというとマダムグラッセと支配人の夫婦関係を羨ましいとさえ思った。
毎回のことながら花美術のセットは草月流華道家の横井紅炎さんの作品。とにかく素晴らしい。さらにメルヘンの香り漂う舞台セットはやはり童話の世界だ。こういった視点から劇団大樹の舞台は総合芸術の世界だと思う。調和のとれた世界。
満足度★★★★
精神病棟で
前半はコメディ。後半は人間の本質や優しさにふれた物語だった。客席は空席が目立ち、大丈夫かなー??なんつって不安だったが始ってしまうと中々面白い展開の舞台だった。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
男子の部屋と女子の部屋の二つの部屋を実際は一つの部屋で見せるのだけれど使い分けの見せ方が上手いし、それぞれの部屋で起こった状況を暗転した後に繋がせる技が巧みだった。
男子の部屋に入院している外山は脚本家だったが、精神病棟の本を書くために作病と見せかけて入院をしたはずだった。しかし、外山は多重人格障害で入院しているというのが事実なのだ。そのことを本人に隠す友人。
外山は隣の部屋からときおり聞こえてくる女子の声(加奈)に恋をして逢いたいと思うようになっていた。しかし、加奈は精神病の患者だ。その女に恋心を打ち明けるまでのいきさつをコメディ的にコミカルに貢いでいくのだが、本当の真実が解るまでにそれぞれのキャラクターが絶妙にコメディとして演じているものだからけっこう、笑える箇所は多い。
しかし、外山は自分が多重人格患者で、恋をした加奈が健常者だったと知ると、告白したものの身を引こうと決めるが加奈は、そんな外山を受け入れる、という恋愛ものだった。
外山の病気を思い遣る熱い友情も垣間見せながらの温かい物語だと思う。
加奈の恋路を邪魔しようと企む唯の攻勢が笑えたし加奈の思いもよらぬバク転も良かった。面白楽しい芝居だった。
満足度★★★★
3対3=1の構図
会場の観客席には殆ど段差はない。お勧めは前列だ。だから早めに会場入りしないと前の方の頭で観づらいことに。大学病院のドクターと製薬会社の研究者らの攻防を描いた作品。野木さんの作でG-up 「棄憶~kioku~ 」を観てるが、これよりはライトな作品だったが見ごたえは充分な作品。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
会場に入るなり、ワタクシ達観客は大学の講座を受ける生徒になる。ワタクシ達はかつて受けた懐かしさと共に眼の前の講師らの講義と成り行きを見守る参加者だ。
結核菌の講義から舞台は始る。しかし、製薬会社の諸川が聴講しにやってきた場面から物語は大きく変貌する。
大学病院ではシルベセリンを投与して、8人の患者が死亡した。助教授・大城はこの薬の副作用が原因と、これを開発した製薬会社に責任転嫁しようと企み自分を正当化するために論文を発表してしまう。
これに異議を唱えたのが製薬会社の研究員3名。しかし内1名(高遠)はこれを穏便にすまそうとするも、研究員らは病院側の医療ミスだと判断する。薬との因果関係を明らかにし論文そのものを訂正するようにと抗議したのだった。
ドクターらに対する薬学研究者らのせめぎ合いが面白い。大学病院のドクターたちというのは個人経営者みたいなところもあるが、年功序列が完璧に醸成されてる場所でもあり、その上下関係は多少の歪みもあるけれど教授の下で着実に階段を登っていきさえすれば、その身は保障されている。
だから彼らに失敗という言葉は許されない。判断ミスや経験不足は命取りなのだ。
しかし、話が進んでいくうちに真実は少しずつ暴露されていく。結核の新薬を開発した高遠は大城助教授を通じて患者に新薬を投与し人体実験を行っていたのだった。助教授の支持で才原ドクター(講師)が飛鳥井助手に投薬を指示し、それをうけて飛鳥井助手は患者に注射した構図だ。要はドクターぐるみでこの件に関与し、結核菌を患者に植え付け新薬の効果のほどを試した実験だ。
結果、患者は8人も死んだのだから高遠が作った抗結核菌は失敗ということなのだが、ここでの高遠も大城助教授も死んだ8人に対しての罪悪感はない。助教授は製薬会社ら3人に患者を提供してやったとのたまり、そして死んだ8人は医学に貢献したとも言う。
これらの物語を観ている途中に気付いたことだが、ワタクシたち聴講生はまだ聴講している途中段階だ。だから眼の前の6人は多くの聴講生の前で悪巧みを暴露しているわけだが、この点がひじょうに矛盾ではあった。
開発とか、研究とか、それに携わってしまうと留まるところを知らないのが世の中の常だとも思う。これは研究者としての性なのだろうが、人としての道徳を問う諸川とまったくかみ合わない高遠の歪み具合がオカシイ。
才原を演じた西原のトボケタ強かさと雲を掴むような助教授への精一杯の抵抗心の表現が見事だった。そして世の中というものをすっかり悟ってしまっているような死んだような目も。
毎回のことだがキャストらの演技力には安心して観ていられた。ちょっとした矛盾点があったことから☆4つとしたい。
本自体は医学と薬学に関わる観点はよくあることだと思う。そういえば・・最近は豪華絢爛な学会はなくなったなぁ。やはり時代です。苦笑!
満足度★★★★★
静かで確かな演技力
「素晴らしい!」のひとこと。夫婦の心の機微を綴った物語だったが全てのキャストの演技力がオニ素晴らしい!まったく欠点の無い舞台でした。観られて幸せ。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
佐伯夫婦の夫は教師をしていたが退職が決まり小説家一本で今を凌いでいるが家賃は滞り経済的に厳しい。妻は余命3ヶ月と診断され、妻には内緒にしているものの、妻は自分の命の期限を既に知ってるようだった。夫は元編集担当者の女性・多田と関係があったが、これも黙ってはいるが妻は知っている。
現在の夫の編集担当者・吉岡は二人の過去の関係も熟知し、時折、佐伯に多田の現況を報告しながら、何かと佐伯の相談にのってきた。
妻は夫の秘め事を知りながら静かに我慢をし素知らぬ風を決め込むが心は穏やかではない。妻は燃えるような感情を自ら押し隠した分、転勤となった多田が佐伯家に挨拶に来ると、一気に妻の感情は噴出し湯のみを落として震えてしまう。夫の腕を掴み、その腕を放さない激情は「ねぇ、(うちが死んでも)うちんこと忘れたらいけんでよ・・。」と吐くが、そのセリフは夫の心にズシリ!と、まるで大きな杭を打ち込んだようなせき止め方だ。
こうして何事もなかった様に妻は亡くなったが縁側の外でははらはらと細雪が舞い落ちる。サラサラ・・サラサラ・・・
一人で食事をしながら夫は「おい、雪が降ってきたぞ。」とひとりごちる。不貞をはたらきながらも妻という大きな存在は夫の中で今も生きているのだ。人は死んだからといっても、そこで終わるわけではない。夫の中でいき続けている妻は今頃、虹の上を歩いているのだ。
物語はけっして大げさな描写や爆弾はない。人が生きとし生ける心理を描写した物語だ。しかしズン!と心に響く繊細で美しい物語だ。
佐伯夫婦の近隣に住む大家の瀬戸山夫婦の関係性も素敵だ。下町の人情味溢れる情景をまんま引き受けたかのような夫婦だ。瀬戸山剛史を演じた佐藤誓の表情のみの演技が絶妙だった。とても素晴らしい。
演出、導入音楽、構成、どれも素敵だ。次回も観たいと心から思う。全員に拍手!
満足度★★★★
ポップでアートな世界感
だからって物語になってないかというとそんなことはない。だが、この演出は観客を選ぶと思う。斬新だけれど抽象的で更に尖がってる。だから老若男女だれにでも受け入れられる大衆さはない。物語は断片的ではあるがちゃんと繋がっていて、観客の目の前から向こう岸に架かっていると思われる大きな橋は観客と物語を繋ぐ橋でもある。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
主役のリュウは俳優希望の若者だ。日本人でニューヨークに夢を叶えるためにやってきた。そして彼は3人の女性を好きになるのだが、殆どがスーヒー(岡田あがさ)との恋愛を描いたものだと言い切っていいと思う。スーヒーは橋の向こうに住んでいてリュウはこの橋を渡って彼女に会いに行くのだ。
スーヒーは銀行に勤めていてまずまずの暮らしをしていたが、一方でリュウは俳優としての仕事に恵まれない。真っ直ぐで真正直で傷つき易いスーヒーはリュウがたまにつく小さな嘘を受け入れられない。リュウは少しの見栄とスーヒーを失いたくないという思いから、小さな嘘を積み重ねていってしまうのだが、それだけスーヒーを考えているのか、というとそうでもない。自分の夢の実現の為に一生懸命のあまりスーヒーとの約束を忘れてしまったりするのだ。
いつしかスーヒーの想いとリュウの想いが交錯してかみ合わなくなってしまう。いつもリュウを見ているスーヒーに対してリュウが見ているのはずっと遠くの未来だ。二人が見ている世界は違うのだ。そんなスーヒーを少しずつ重いと感じてしまうリュウの心を見抜いたようにスーヒーは自分から別れを告げる。
リュウの前では冷静さを装いつっぱる。しかし陰で隠れて号泣するスーヒー。その身を引きちぎられるかのような泣き方だ。この時のスーヒーの心理状態が痛いほど解ってもらい泣きをする。
その後、リュウは「絵画の中のエレナ」を自分の理想と重ね妄想の中で幻想的な恋をするが、もう一方でエレナを登場させる脚本を描いた陶子と恋に落ちる。陶子の仕事柄、リュウは役者としても本当の自分を高みに置く必要もなく、また偽りを演じる必要もなく素のままの自分で居られたのだった。
橋の向こう側で泣く女。橋のこちら側で微笑む女。そして橋の中央ではひたすら自分を無償の愛で受け入れてくれる理想の女・エレナが微笑む。人の状況は変わっても橋はどっしりとその佇まいを変えずに行きかう人々を見守るのだ。
岡田あがさが素敵だ。内なるエネルギーを放出するオーラが素敵だ。そうして感受性豊かに演じる技量はやはり素晴らしい!ズンズン響いた。
満足度★★★★
内容の濃い素晴らしい芝居でした
戦時中の新聞社を舞台にした物語。初見でしたが正当な舞台でしかも素晴らしい出来でした。花丸!
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
日の出新聞編集部記者の大久保は内務省検閲局の役人・鳥越が北海道カモイダケに陸軍の軍事演習上を作ろうと目論んでいることを知る。ブンヤとしての誇りからこれを阻止し鳥越に対抗すべく為に同僚を巻き込んでまでも、正義を貫く彼らの戦いを描いた作品。
大久保は海軍に鳥越のしようとしている事を暴露し、なんとか鳥越の野心を阻止することは出来たが、日の出新聞そのものを抱き込んで国民を欺き誤報を打たせようとした鳥越にこれ以上、日の出新聞社を利用させないために新聞社そのものを廃業申請してしまうという大胆不敵な終わり方。
この行動はあっぱれだったが、同時になんとも言いがたい不条理を感じた。
その後、編集部の坊やと呼ばれ可愛がられた早稲田の大学生は大学を退学し新聞社で働こうと決めた矢先、赤紙が来てしまう。
戦時中の動乱を新聞社の編集室の極めて情報が集りやすい部屋での出来事だったが、キャストらの演技が実に優秀だったこと。ともすれば硬く重苦しい内容になりかねないが、一部のコメディアン的なキャラクターの立ち上げで割にコミカルさも加味した分、救いがあったこと。大久保の妹の話や橋爪の赤紙通知で落涙した場面もあったことなど盛りだくさんだった。
良い芝居を観ました。
満足度★★★★
まるでTV放映の笑劇場さながら
ベタで解りやすい基本的なコメディ。ワタクシは存じ上げなかったがこの劇団は相当な老舗らしい。だから出演者の方々も老老若男女!笑)観客も老舗固定客がついてるような風景。肩肘張らずに酒でも飲みながら炬燵に入って観賞するような芝居でした。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
フェドー劇場代表の中村秀利が演じる中林生命社長の中林が主軸の芝居である。部下には恵まれず、見た目も実力も相当強そうな妻を持つ恐妻家でもある。しかし、そんな恐妻を持ちながら金のある男は必ずといっていいほど浮気が定番みたいな世相同様、中林もこれに準じる。
妻の目を盗んでは隙あらば浮気をしたいなんつって見た目はゼツリンそうでもないのに気持ちだけが高ぶるのはなにも年齢は関係ないらしい。なにしろ女談義にウツツをぬかすのは鈴木田銀行会長と中林の加齢極まる二人の密談だからだ。要は金もあれば人生という年輪も充分にある二人なのだ。
そんな二人が「クラブ永遠の処女」のママに入れあげたり、中国旅行のときに現地でHしちゃった中国女・アグネスが押しかけてきちゃったものだから、さあ大変。
しかし物語の内容は「クラブ永遠の処女」のママは鈴木田銀行会長の現女だが、中林の元女でもある。更にアグネスは中林の今女だが、中林の取引先の桜葉商会社長と婚約をしている。つまり人類みな兄弟ってわけだ。笑
そんなしょもないぐちゃぐちゃな人間関係を更に滑稽に見せた芝居だった。特に笑えたのが医者・三谷役の長嶺辰也だ。セリフは忘れるわ、自分が登場するシーンに登場しないわ、登場したかと思えば領収書を持参するのを忘れるわで素で焦ってた。そんでもってもっと焦ってたのは彼と終盤に絡む中林だ。「ここで医者が登場するはずなんだが・・」とか「ここで領収書を出す手はずだ・・」とか、一人つぶやいてた!笑
アクシデントは蜜の味!笑
満足度★★★★★
ザ・プレミアム
「白の章」を観た。短編とは言いがたい濃厚かつ芳醇な物語だった。とっても素晴らしいと思う。ともすれば、1時間公演として1本で立ち上げてもなんら問題ない舞台を2本も観られるのだから、お得感、満載なのだ。
それにしてもちっさい身体で主役をハル川添美和の体力たるエネルギーはいったい何処から?こちらは集中して観てるだけでへとへとだった。笑
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
第一話H+(トランスヒューマニズム)
舞台の中央に設置された赤い枠の大きなキャンパスが衝撃的。斬新かつ壮美だ。舞台そのものが一つの生きて蠢く絵画なのだ。エゴンの絵画に描かれた人たちが絵から抜け出して一人歩きし、勝手に物語を貢いでいくが、その描写はコミカルな鼓笛隊でも観賞しているようなさまでとりわけ楽しい。
そんなエゴンが描いた裸婦像「ナジャの肖像画」にすっかり魅せられて魂を鷲掴みされてしまったロベスピエールは、今まで高潔すぎるほど潔癖に生きて来た己の人生を否定するかのような自分のエロティシズムの心を発見し戸惑うのであった。しかし肖像画のナジャはロベスピエールを誘惑するかのようにいつ観ても魅惑的で妖しいのだ。
彼はナジャが発する言葉や行動を夢想するのだが、そんな世界に嵌りそうになる自分自身を律するためにもエゴンを断頭台に送ってしまう。
エゴンの心の葛藤を描いた物語。演出も導入音楽も素晴らしい。そして描く世界感は芸術的だった。
第二話ニヒリズムの肖像
大学のマドンナだったアグリルは処刑人一族と婚約すれば爵位が与えられ貴族としての生活が保障されるという理由からザッヘルと婚約するも、アグリルの強すぎる正義感から、その地位を失ってしまう。アグリルは元来、性根の腐った貴族を嫌っていたが自分が貴族になることで世の中を少しずつ変えようとしていたのだった。
しかし状況はアグリルに不利になり理不尽ながら処刑されるはめに陥ってしまう。牢に監禁されたアグリルを肖像画に残そうとルイは描き始めるが、この時のアグリルの心境とアグリルを密かに想い続けていたルイの心境の交錯が絶妙だった。思わず落涙。ルイは後に政治家になってアグリルに約束したように世の中を変えようとする。
以上、物語2つ、ひじょうに濃密な時間だった。あまりにも有意義な時間を過ごして本当に幸せな気分!
お勧め!
満足度★★★★★
もっとコメディ的な舞台なのかと
誤解していた。だって出演がハロプロでしょ?そうしたら、すんごく嬉しい誤解だったことが判明!
10月30日、私立女子小学校6年生のクラスで起こったことを描写した作品だったが実に真摯な内容だった。終盤は泣けた。何度もハンカチを目に当てて泣いた。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
物語は今井先生を軸に構成。今井先生は窓から教え子らがうさぎを二階から紐で吊るしているのを発見する。うさぎは無事だったが、先生は命についてコンコンと生徒に教え諭すが当の生徒らは反省もなければ罪悪感もない。遊びの一環なのだ。
この事件をきっかけに今井先生は「子供が可愛いと思えたのは最初の一か月だけだった。」と主任教師に告白し悩む。退職も視野に入れているようなそぶりだ。一方で悩む今井をしり目に中里教頭は生徒の保護者の方に関心がいく。「あまり大げさに生徒を怒るな。今井先生は厳しすぎる。」というのだ。
これらの事も含めて教師らは放課後に会議を催すがこの会議の情景はまるで小学生そのものだった。笑)
更に教頭の妻である理事長は瀬尾先生と不倫の仲にあり会議の始まりと終わりに人目を忍んでキスして抱擁する。机の上に押し倒された理事長を観ているワタクシのほうが「生徒が入ってきたらどうするねん!」なんつってスリルとサスペンスを味わう。苦笑!
そんな密な時間もつかの間、瀬尾は教頭に「すべてを知っている。俺の女房と寝るんじゃない。もう二度と会うな」と迫られ、挙句、理事長にもあっさりと別れを告げられる。生甲斐を失ったかのように絶望する瀬野は号泣するも、教室に戻った生徒の樋口は瀬野を労わる。どっちが教師なのか。笑)更に樋口は母親を亡くしたばかりだ。
また生徒達の学校が全て、友達が全て、といった特有の感情を表現しながら、なんとかみんなの中に紛れ込んで普通なふりをしていたいという孤立しない願望にしがみつく生徒。そのためには人と違うことをしないこと。教師からの特別扱いを避ける生徒。要は人より目立ってはいけないのだ。
一方でそういった空気に溺れることなく自分の意見を主張し正義感の強い樋口。孤独が怖くないのだ。しかし孤独が怖くない理由も母を亡くしたことで既に孤独となっている現況に我慢していたようだった。終盤で「おかあさ~ん」と叫んで泣くシーンは完璧にやられて一緒に泣いた。
教師の仕事も大変そうだけれど、一つの教室で30人の生徒と向き合う生徒らも大変なのだ。とにかく上手くやって行かなくてはならない。人が人と共に生きる限るどこかでせめぎ合い、どこかで摩擦を起こし、どこかに歪みが生じるのは仕方がないのだが、なにしろ、30人も居るのだ・・。
やがて、生徒らの行動に対し「先生、あんまり解ってないね。」と樋口に言われ自信を失った今井は「退職願」を書いていたが愚鈍そうにみえた春山先生が、それを止める為に吐くセリフに心が打たれる。
そして放課後、うさぎを吊るした主犯格の未来に樋口が「生き物はすぐに死んじゃうんだよ。お母さんだってあっという間に死んじゃった。だから一生懸命生きなきゃダメ。」と諭し「おかあさ~ん」と泣きじゃくる。その途端、今井先生は生徒たちが色んなことに無理をし我慢していた事に初めて気づき「二人ともごめんね。そんなに急いで大人にならなくてもいい。」と二人を抱きしめるのだった。
学園ものっていつ観てもいいな・・。と思う。この舞台をみながら「あの頃」を思い出すからだ。あの頃の残酷さや楽しさや孤立感や連帯感、ざわめきや土埃の匂いや賑わいを、振り返り過ごした時間は愛おしい時代だったと思う。
思い出は当時よりも美しく光り輝いているのだ。
素晴らしい舞台だった。生徒たちと向き合い悩む、生真面目な女教師を主役に配置したのはやはり秀逸だったと思う。生徒たちの演技もさながらキャストらの演技力でも魅せた。そうしてやはり、本が素敵だ。
満足度★★★★★
「黒の章」男性には前席がお勧め
まず海賊ハイジャックの初のオムニバスということなので、こちらも相当に気合を入れて「アンドレ・ブルトン」の人となりを熟読し、代表作である「ナジャ」も読んだ。で、あくまでもワタクシの想像ですが、海賊ハイジャックのベースは「アンドレ・ブルトン」と「フロイド」なのだな・・、と感じた次第だ。
毎回の公演に夢や狂気に焦点を当てた海賊ハイジャックはまさにブルトンで、当然のようにフロイドにも接近していく。
同時に自由な精神を希求したブルトンを描写する海賊ハイジャックは一般の観客から観ると偏狭さが前面に押し出されてしまうため、理屈抜きで好き嫌いが割れる舞台なのかもしれない。そう、観客の好みも白黒はっきり分かれてしまうように・・。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
ハイジャックの舞台に良く登場するセリフ=意外な言葉と言葉がありえない場で出会うことにより詩が立ち現れるというシュルレアリスムの表現は、なんだか理解出来ない場合もあるが、『ナジャ』を読むと、脚本を書く宇野の頭脳も少しは解る気がする。笑
これは不思議に満ちた作品で、ミステリアスな世界観だ。理論的には『シュルレアリスム宣言』が読むに値するが、文章はかなり癖があるし、内容も難解だ。そしてブルトンのお気に入りの作家にマルキ・ド・サド(サド・マゾのサドで有名な作家)がいるが、同じようにハイジャックの舞台はサディズムをベースにしている作品が多い。
極めつけは、ブルトンのお気に入りにアルトナン・アルトーがいて、この人は精神に異常をきたして、精神病院に入院しながら詩や戯作を書いていた人物だが『器官なき身体』というフランスの哲学に大きな影響を及ぼした言葉もアルトーの言葉だ。
ここまで調べるとなんとなく海賊ハイジャックの世界観が見えてくる。すると、第一話の、少女の生き血を浴びることが究極の美だと信じて疑わなかったバートリの狂気や、第二話の殺人鬼アンドレイの獣奇的な狂気、第三話の軍人として殺戮を繰り返してきた殺人鬼の終わることのない狂気と末路。
これらの短編は観ているとおぞましいが、独特な演出で美しい絵画のようにも観えてしまう、第一話の赤い血糊をイメージした4人の少女の身体。観ようによっては裸体が想像できるし、また裸に近い赤い布をまとった演出はエロいが艶めかしくて美しいのだ。個人的には痣と傷のある少女らの身体を想像したが、ハイジャックの演出は美しい描写に留まった。
どの短編も破壊力はある。主人公の狂気を描写した作品だからだ。けれど必ず人間の弱さ、脆さ、優しさも分析し悲劇へと誘う。そこにロマンを感じるのだ。好みはあると思うがワタクシは好きだ。
次は「白の章」を観る。
満足度★★★★★
めっさオモロイ!
笑った!笑った!
何が面白いって、構成がバカ馬鹿しくて笑える。まるでアニメだー。。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
会沢はエロ本収集マニアでダッチ(寝るだけ女)はいるわ、借金はあるわ、筋肉はあるわで、ナイナイ男にとっては実に羨ましい限りなのだが、そんな男が清楚な女・静香に恋をした!ひと目あったその時にビビビッときた!なんつって聖子ちゃんみたいな事を言う。
その彼女を部屋に呼んで、結婚を申し込む。という荘厳新たかな大それた気持ちを持つ。それにはまず部屋を綺麗にして床下に大量に収納してあるエロ本も隠したいところだが、そんな会沢の目論見を払拭するかのように悪友や、近所のエロママや最強ローンの取立てや、愚人警官などがなだれ込む。
そんなだから静香と二人っきりになれないどころか、ダッチ女はエロママと会沢が一緒に住んでると勘違いしたのをきっかけにナイフまで持ち出して振り回し大騒ぎになってしまう。笑
しかし、会沢が清楚な女と思っていた静香は実は男だったのだった。
ドタバタとバカ馬鹿しいけれどキャラクターの立ち上がりや窓の外のシーンなど見せ場が多く、愉快な舞台だった。お勧め!
満足度★★★★
コメディですな。
実直な感想はみんな良い人すぎる。人間の根底に潜む悪の根源のような描写もあったら、この物語は完璧だったように思う。それでも充分に笑えて楽しめる。
粗筋は説明に載ってるので補足をネタばれにて。。
ネタバレBOX
退職させるべく一人の上司を決める会議に集った彼らは、中々本心を吐かない。日本人はアクドイ上司を退職させたいと心の中では思いながら、それを口にする人間を白い目で見る。本音と建前を使い分ける民族の陰湿さだ。
全員が貝のように寡黙な会議の中、どうにも決まらず、口火をきったのは本荘だ。投票で決めようという。しかし大多数が中々煮え切らない。もし投票したその名前が後に退職となってしまったら、自分が一人の上司の人生を左右してしまった罪悪感で心が張り裂けそうになり、生涯、その呪縛から逃れられずに永遠の安息も保障出来無くなるからだ。
人間とは実に弱い生物なのである。
しかし社長命令によって、誰か一人を決めないと、代わりにここに集った6人のうちの一人が退職しなければならないという過酷な条件も付けられている。つまりは身代わり退職だ。良心の呵責どころではない。笑
こうなってくると、どいつもこいつも運勢の弱そうな顔に無理無理に笑顔を作って、これまた無理無理に投票するわけなのだが、この経過をみてると4人は良い人すぎる設定だ。その中で光るのは郡山こと葛木英。一人だけ悪玉のような役割だったが、とにかく面白いのだ。これこそが演劇だと思う。。そんでもって顔がちっさい!!!!
それでも郡山や本荘は人間社会では普通なのだと思う。だからこそもっとはちゃめちゃな人物が居てもよかったとも思う。結局薬局、セクハラ棟方部長の首が飛び、ARBの社員たちは今日も日常を生きるのだ!
全体的には楽しめる。笑いの要素があちこちに散りばめられていて実に面白い。
仏教は優しい慈悲を施すだけでは救うことのできない愚かな衆生のために、破壊神・不動明王を用意した。今回の破壊神的役割の本荘と5人の愚かで滑稽なお話。
満足度★★★★
号泣しました。
物語の描写は「劇団光希」と似ている。違うところはエキゾチックなダンスの導入部分。決して悪いと言ってる訳ではなく、要するにツボって泣いた、泣いた!
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
17年前に解散した伝説のバンド「ポトラッチ」の生き残りメンバー3人のうちのアリサとエドはアリサの子供を見守りながら家族のように暮らしていた。一方で友子は結婚したものの、自分の生き方に疑問を持ち夫の元から飛び出して、17年ぶりにアリサの家に来ていたのだった。
ありさの娘・りんごと同級生の純の悩み多き将来を絡ませながら、それぞれの家族の想いを綴った作品だった。
今回の「演劇集団 太陽の遊園地」は前公演より格段にレベルUPしていて、観客を泣かせるツボも心得、同時におかま役のエドに吐かせるセリフの数々が絶妙に面白かった!おかまって何であんなに言葉が巧みなんでしょ。今回、梶山潤也が全体の中だるみを締めていた。素晴らしく愉快千万でした。
前半は笑い転げ、後半は号泣するという舞台に感心しながら、シャングリラという理想郷は誰でもが望むところで、だけれど現実にはありえない桃源郷でもあり、現実に息づく人々が迷いながらも自分らしく生きていくという原点を見つめた芝居だった。
自由奔放にりんごを育てているアリサと教育ママ的な河野道子の対比がこの物語をうねらせたとも思う。「それでも特に才能も無くやりたいことも無かったら、勉強するしかないんじゃないの。」とも思いながら、一方で「子供が、今、生きてる事を喜んでたら、それでええ。」とのセリフにも納得できる。子供にもやりたいことをやらせ、自分たちも「ポトラッチ」を再結成して純も加わりヒットを飛ばせるさまは、やはり後味が良いものだ。
本日、初日ということもありセリフが自分のものになってないキャストも居たが、後半は良くなるはず!笑
満足度★★★★
第五話でうるうると泣けた。
第五話でうるうると泣けた。
まず当日パンフに千野ありささんのコメントが載っております。かいつまんで、「夫婦でこの演劇を作っている事、出産して家族が増えたこと、子供が生まれてからは毎日がお祭りだが、よく考えてみたら夫婦二人でも十分毎日がお祭りだったこと、これからもこんな感じでずっと毎日楽しく過ぎていくんだなぁと思う。ばたばたしているがハッピーだなぁと思っている。」とありました。
こうコメントがあると観なくても劇が想像できるような温かな気持ちになりました。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
五話の短編集。物語特に繋がっているわけではないが、それぞれの短編にそれぞれの登場人物が絡み合うことからオムニバスとなっている作品。
第一話フリーマーケット
姉はバッグを病的に買いまくるバック依存症だ。一方で姉の友人は3年前に恋人に振られてから摂食障害になった。姉と同居の弟はバックが氾濫した部屋を少しでも整理整頓するべくフリーマーケットを開催するも全く売る気がない姉と友人はお互いの満たされない心をカバーすべく同居を決める。そのために追い出されることになった弟は何のためにフリマをしたのか解らない結果に。
第二話絵本画家のアトリエ
絵本画家・麻美と絵本作家・渡は同居していたが同居記念日の1000日目を渡が忘れたと思い込み険悪な状態になった二人を編集者が取り持つが、二人の話を聞くうちに家賃は麻美持ちで、家事は渡が担当していたことが暴露される。しかも渡は麻美から借りた金でパチンコにもつぎ込んでいた。しかし一日遅れの宅急便の中身を見た麻美は渡が記念日を忘れていなかったことに感動する。編集者を無視して二人は温泉旅行に行ってしまう。笑
第三話どんぐりの木の下で
クヌギとカシワはどんぐりだ。しかしどんぐりとして川に落ちた時にドジョウに見られると人間として生まれ変わってしまう。なんとかしてどんぐりに戻りたいカシワは人間に「自分はどんぐりの妖精」だということを信じてもらうか、ミラクルどんぐりを見つけるかしないとどんぐりになれない。しかしクヌギは人間界に友達が出来たから人間のままでいたいという。クヌギの思いとカシワの悩みが考えさせられる芝居。
第四話ランチタイムの公園
サラリーマンと彼が小学生だった時の先生との会話劇。
リーマンは無職になってしまった。しかし家族にはそのことを言えないでいた。公園のベンチに座ってパンをかじっているとかつての教師が現れる。教師はいなりずしをリーマンに食べさせるもとにかくまずい!ヨクヨク話を聞くと給食として食材に拘ったいなりずしを出したいという。先生は調理師の免許を持っているリーマンを学校の調理師として雇うことに。
第五話どんぐりファミリー
これが一番好きな作品だった。
父は大学で清掃員として働いていたが、息子が幼いころ、父はどんぐりに詳しいことから「どんぐり博士」と呼んでいた。そのまま大きくなった息子は青年になっても、父は大学でどんぐりの研究をしていると思っているだろう息子に中々本当の事が言えない父。息子に落胆されたくないのだ。しかし息子は父の本当の職業を知っていて「お父さんが自分から話してくれるのをずっと待っていた。ずっとずっと待っていたら大人になってしまった。」と打ち明ける息子。
父の心を思い遣る息子の心に感動して泣けた。もちろんここまでに沢山の描写が加味されて泣けたのだが、第三話と第五話は父が幼少のころにみた「どんぐりの妖精」が親子二代に亘ってリンクされててとても美しい光景だった。心が洗われた。そうなんだよね、大人になると子供のころの透明な心をついつい忘れてしまいます。