そのとき橋には誰もいなかった 公演情報 オーストラ・マコンドー「そのとき橋には誰もいなかった」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ポップでアートな世界感
    だからって物語になってないかというとそんなことはない。だが、この演出は観客を選ぶと思う。斬新だけれど抽象的で更に尖がってる。だから老若男女だれにでも受け入れられる大衆さはない。物語は断片的ではあるがちゃんと繋がっていて、観客の目の前から向こう岸に架かっていると思われる大きな橋は観客と物語を繋ぐ橋でもある。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    主役のリュウは俳優希望の若者だ。日本人でニューヨークに夢を叶えるためにやってきた。そして彼は3人の女性を好きになるのだが、殆どがスーヒー(岡田あがさ)との恋愛を描いたものだと言い切っていいと思う。スーヒーは橋の向こうに住んでいてリュウはこの橋を渡って彼女に会いに行くのだ。

    スーヒーは銀行に勤めていてまずまずの暮らしをしていたが、一方でリュウは俳優としての仕事に恵まれない。真っ直ぐで真正直で傷つき易いスーヒーはリュウがたまにつく小さな嘘を受け入れられない。リュウは少しの見栄とスーヒーを失いたくないという思いから、小さな嘘を積み重ねていってしまうのだが、それだけスーヒーを考えているのか、というとそうでもない。自分の夢の実現の為に一生懸命のあまりスーヒーとの約束を忘れてしまったりするのだ。

    いつしかスーヒーの想いとリュウの想いが交錯してかみ合わなくなってしまう。いつもリュウを見ているスーヒーに対してリュウが見ているのはずっと遠くの未来だ。二人が見ている世界は違うのだ。そんなスーヒーを少しずつ重いと感じてしまうリュウの心を見抜いたようにスーヒーは自分から別れを告げる。

    リュウの前では冷静さを装いつっぱる。しかし陰で隠れて号泣するスーヒー。その身を引きちぎられるかのような泣き方だ。この時のスーヒーの心理状態が痛いほど解ってもらい泣きをする。

    その後、リュウは「絵画の中のエレナ」を自分の理想と重ね妄想の中で幻想的な恋をするが、もう一方でエレナを登場させる脚本を描いた陶子と恋に落ちる。陶子の仕事柄、リュウは役者としても本当の自分を高みに置く必要もなく、また偽りを演じる必要もなく素のままの自分で居られたのだった。

    橋の向こう側で泣く女。橋のこちら側で微笑む女。そして橋の中央ではひたすら自分を無償の愛で受け入れてくれる理想の女・エレナが微笑む。人の状況は変わっても橋はどっしりとその佇まいを変えずに行きかう人々を見守るのだ。

    岡田あがさが素敵だ。内なるエネルギーを放出するオーラが素敵だ。そうして感受性豊かに演じる技量はやはり素晴らしい!ズンズン響いた。

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    2010/11/08 23:25

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