蛇と天秤 公演情報 パラドックス定数「蛇と天秤」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    3対3=1の構図
    会場の観客席には殆ど段差はない。お勧めは前列だ。だから早めに会場入りしないと前の方の頭で観づらいことに。大学病院のドクターと製薬会社の研究者らの攻防を描いた作品。野木さんの作でG-up 「棄憶~kioku~ 」を観てるが、これよりはライトな作品だったが見ごたえは充分な作品。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    会場に入るなり、ワタクシ達観客は大学の講座を受ける生徒になる。ワタクシ達はかつて受けた懐かしさと共に眼の前の講師らの講義と成り行きを見守る参加者だ。
    結核菌の講義から舞台は始る。しかし、製薬会社の諸川が聴講しにやってきた場面から物語は大きく変貌する。

    大学病院ではシルベセリンを投与して、8人の患者が死亡した。助教授・大城はこの薬の副作用が原因と、これを開発した製薬会社に責任転嫁しようと企み自分を正当化するために論文を発表してしまう。

    これに異議を唱えたのが製薬会社の研究員3名。しかし内1名(高遠)はこれを穏便にすまそうとするも、研究員らは病院側の医療ミスだと判断する。薬との因果関係を明らかにし論文そのものを訂正するようにと抗議したのだった。

    ドクターらに対する薬学研究者らのせめぎ合いが面白い。大学病院のドクターたちというのは個人経営者みたいなところもあるが、年功序列が完璧に醸成されてる場所でもあり、その上下関係は多少の歪みもあるけれど教授の下で着実に階段を登っていきさえすれば、その身は保障されている。

    だから彼らに失敗という言葉は許されない。判断ミスや経験不足は命取りなのだ。

    しかし、話が進んでいくうちに真実は少しずつ暴露されていく。結核の新薬を開発した高遠は大城助教授を通じて患者に新薬を投与し人体実験を行っていたのだった。助教授の支持で才原ドクター(講師)が飛鳥井助手に投薬を指示し、それをうけて飛鳥井助手は患者に注射した構図だ。要はドクターぐるみでこの件に関与し、結核菌を患者に植え付け新薬の効果のほどを試した実験だ。

    結果、患者は8人も死んだのだから高遠が作った抗結核菌は失敗ということなのだが、ここでの高遠も大城助教授も死んだ8人に対しての罪悪感はない。助教授は製薬会社ら3人に患者を提供してやったとのたまり、そして死んだ8人は医学に貢献したとも言う。

    これらの物語を観ている途中に気付いたことだが、ワタクシたち聴講生はまだ聴講している途中段階だ。だから眼の前の6人は多くの聴講生の前で悪巧みを暴露しているわけだが、この点がひじょうに矛盾ではあった。

    開発とか、研究とか、それに携わってしまうと留まるところを知らないのが世の中の常だとも思う。これは研究者としての性なのだろうが、人としての道徳を問う諸川とまったくかみ合わない高遠の歪み具合がオカシイ。

    才原を演じた西原のトボケタ強かさと雲を掴むような助教授への精一杯の抵抗心の表現が見事だった。そして世の中というものをすっかり悟ってしまっているような死んだような目も。

    毎回のことだがキャストらの演技力には安心して観ていられた。ちょっとした矛盾点があったことから☆4つとしたい。
    本自体は医学と薬学に関わる観点はよくあることだと思う。そういえば・・最近は豪華絢爛な学会はなくなったなぁ。やはり時代です。苦笑!





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    2010/11/11 13:13

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