紐育に原爆を落とす日 無事千秋楽終えました。沢山のご来場ありがとうございました。
獏天
Geki地下Liberty(東京都)
2011/09/17 (土) ~ 2011/09/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
Zバージョンを観た
序盤、キャストらのダンスから始まるが、毎度の如く、これが獏天フィルム演劇企画部のエンタメ性溢れる出だしなのだが、箱のキャパ以上に声量が大きくて煩い。特に那須野恵の声がでかすぎ。苦笑! それでもここのキャスト陣の優秀な演技力には毎回、感服させられる。五十嵐康陽などは登場した瞬間には役作りが完成されており、今から始まる演劇の悲壮感までもが表情に見えるのは流石! また、浜谷康幸の独特の引き裂かれるような魂の叫びは観ていて圧巻だった。今回、浜谷康幸は天才物理学者彦坂だが、マッチョで雪駄を履いてる物理学者ってどうよ?!笑
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
物語は昭和20年、広島に原爆が落とされる以前と以後広島を描写する。
新型爆弾=原子爆弾の開発中であった孤高の天才物理学者彦坂は理論は完成していた。しかし、その理論はアメリカ物理学会に横取りされた挙句、弾かれ、日本でも重用されなかったのだった。彦坂自身、原爆の恐ろしさを充分に熟知していたので、これを使用することに大きな懸念を抱いていたのだ。
一方で乾家の小さな日々の積み重ねの毎日が原爆を落とされたことで一変し、何もかも失ってしまう。赤みを帯びた何もない大地、子供の墨のような遺体、爛れた皮膚、呻き叫ぶ声にならない声、これらの地獄絵図を見た二人の物理学者、彦坂と漆原は意見を対立させる。
婚約者を投爆によって失った漆原は、原爆を開発してアメリカに復讐投爆することが、この国を救うことである。恨みの炎でアメリカ全土を焼き尽くしてやる。と主張し、一方で、彦坂は崩壊のスパイラルから抜けられらくなる。押しとどめろ、と説得する。この物理学者二人のやり取りは日本人の倫理として物語を浮かび上がらせるが、一方でアメリカの倫理も想像する。いつの世も、倫理の主張は置かれた立場によって多少、変わってくるものだ。
終盤の「忘れましょう」の繰り返しは日本の未来の為に、とあったが、この独白は彦坂のものだ。忘れ難いほどの絶望的な経験をしてからの己へのバイブルだ。しかし、ワタクシたちは決して忘れてはいけない。中島みゆきの「アザミ嬢のララバイ」の選曲が舞台にマッチし臨場感が溢れていた。そしてフィニッシュは孤高の天才物理学者彦坂を中心に配置し、キャスト全員で歌うパロディだ。これは現在の日本人としてのギャップをあからさまに見せつけ、観ていて何故か不条理な思いに打ちのめされた。こういった仕掛けはイデヨシフサの上手いところだ。
次はAバージョンを観る。配役がガラリと変わるようであるいみ、役者泣かせだ。笑
熱闘!臥龍小学校!!
爆裂団
武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)
2011/09/16 (金) ~ 2011/09/19 (月)公演終了
満足度★★★
少年ジャンプの世界感
アニメヲタはたぶんこの手の描写はハマルはず。笑
始まりのドーーン・・ドーーン・・の太鼓の音でなんだかファイターのような高揚感になる。ついで導入音楽がいい。「北斗の拳」のテーマ曲が流れた場面はドッキドッキしたほど。音響・竹田雄。更に格闘のシーンでの効果音も抜群だった。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
物語は臥龍小学校での「番長」争いを綴ったもの。転校してきた勇一(5年生)は、臥龍小学校の絶対番長、十常侍(6年生)と出会う。十常侍は、絶対的な権力として臥龍小学校の頂点に君臨していたが、彼の噂は邪悪なものだった。これを倒そうと反旗を翻すも、本当の悪玉は金田だったのだ。
金田に改造された十常侍は金田軍団の改造人間として手下に収まるも、勇一らの努力によって本来の十常侍に戻り、晴れて絶対番長の座を勇一に譲るという物語。登場人物のキャラクターも殆どアニメ。田中瑞穂役の中村真弓は本当に小学生に見えちゃうから、役者ってホント、凄い。金田(玉井翔大)のオカマっぷりも堂に入っていて口の開き具合やカマ風味を勉強されてて実に素晴らしい演技だった。
惜しむらくは中盤にテンポがだらけて助長になった場面があったこと。女子同士のくすぐりマッチも、まったく笑いは取れてなかった。コメディで突っ走って欲しかった舞台。
連結の子
文学座
吉祥寺シアター(東京都)
2011/09/09 (金) ~ 2011/09/23 (金)公演終了
満足度★★★★★
鉄繋がり
流石に全てのキャストが安定した演技力で魅せる。ちなみにフライヤーのデザインと、今回の物語の内容は全く違う。苦笑!
なんでも本が出来上がる前にフライヤーをデザインした為、違ったものになったとのこと。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
とある地方都市の高原直哉が住む一軒家が舞台。ここに服役していた孫の由紀夫がやってくる。由紀夫の両親が身元引き受けを拒否した為だった。ここに身内が集って由紀夫を囲むも、よそよそしくぎこちない会話が続く。直哉は東武日光線の運転手をしていたが、今は隠居し一人暮らしだった。この直哉の影響で子供2人は鉄マニアで、孫の由紀夫も鉄マニアだった。
閉鎖的な田舎の一軒家、直哉と由紀夫の暮らす家に保護司の下園がちょくちょくやってくることから、由紀夫の服役の事実が近隣の噂となって大きく膨れ上がってしまう。犯罪を犯すと自分だけでない、家族も犯罪者の家族としてそれに巻き込まれてしまう負の連鎖を描写しながら、悲劇と喜劇の表裏一体として笑いに転化していて、シリアスな舞台なのだけれど、笑える箇所もあった。
由紀夫はかつて引きこもりだったこともあり、性格的にも負のスパイラルから逃げ出すことが出来ない。だから家族から差し伸べられた手を素直に握れなかったりする。しかし三世代に亘って鉄マニアの男たちは「電車ごっこ」をしながらも、由紀夫に生きる為の逃げ道を作るのだ。この物語に白黒はない。結末もない。しかし、とにかく生きてみようか。という気持ちにはさせられる。三世代の連結の物語だ。
ハワイに行ったという近所の斉藤姑が色黒で帰ってきた場面は演出家のお茶目なところ。笑
テノヒラサイズの人生大車輪2011
テノヒラサイズ
南大塚ホール(東京都)
2011/09/17 (土) ~ 2011/09/19 (月)公演終了
満足度★★★★★
笑った、笑った!
地下室に監禁された七人の男女が脱出を試みるが、何故、監禁されることになったのか、その謎を探る為、それぞれが独白していくと・・・笑
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
7人の職業は、別れさせ屋、本マグロと偽ってハマチを撃っていた魚屋、占い師、刑事、暴力団の下っ端、元ホステス、俳優だった。彼らが監禁されるまでに辿ってきた人生を
それぞれ独白しながら、なぜ、自分たちが監禁されなければならなかったかを、その回想に秘められた接点を探るのだが、一人一人の秘密の暴露が面白い。これらを数個の椅子を巧みに使って、ジェットコースターや山や、水上サイクルなどに見立てて見せる演出が素晴らしかった。
結局薬局、彼らを監禁したのは、暴力団の下っ端だったのだ。彼が余命いくばくもない明美と出会えたのは彼らのお陰だと、その繋がりを説明し、お礼を言いたかったのだという結末。ちょっと無理無理こじつけた感はあるものの、何も監禁しなくても・・という彼らの疑問の中、人生に絶望していた恩人を、一種のショック療法でもって生きる気力を与えたのだという。笑
コメディだけでは終わらない物語だったが、キャストらの動きから、相当、練習したように思える。7人のキャストの演技力は秀逸だったが、その中でもキャラメルボックスの稲野杏那の照明を利用した一瞬の表情の魅せ方が上手い。
楽しい舞台だったが、このホール自体のキャパが広い為、空席が目立つ。客席に、「面白くなくても面白かったと声を大にして宣伝してください。」との泣きが入ったが、いあいあ、物凄く面白かったよ。
恋、ほのか ~何年後かのI love you~
Knocturn
六行会ホール(東京都)
2011/09/16 (金) ~ 2011/09/19 (月)公演終了
満足度★★★★
思春期の恋
保木本真也(コメディユニット磯川家)の本だけあって、笑いが満載だった。プラットホームのセットがリアルで素晴らしい。美術:福島奈央花。また、芝居の中に組み込まれている映像(関口裕二)も素敵だ。物語の舞台は駅で始まり駅で終わる。駅の風景が田舎町の長閑な場面を想像できて、そこも温かみ。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
小さい頃からずっと一緒で幼馴染の純(渡辺大輔)と智子(岩井七世)はお互い、ずっと好き合っているのに、素直にそれを言うことが出来ない。素直になれないことから、お互いにすれ違い、好きでもない相手と付き合ってしまう。それでもお互いにお互いを大切におもいながらも現況を切なく思ってしまう。
こうして二人はくっついたり、離れたりしながらを繰り返し、煮え切らない思いだけが増幅し、想いだけがつのる。その恋は一見、ほのかな恋のように思えそうだが、実際はそうではない。お互いに肝心なところで意地になって素直になれないばかりに、最終的には智子は医者と結婚してしまうのだ。自分の気持ちに未消化のまま。だから、大人になって何年後かの「好き」を告白したとしても、気持ちが空回りして一緒になることはない。
それは甘酸っぱく、もどかしく、いじらしくも切なく甘い初恋ラブコメなのだが、最初にボタンの掛け違いがあると、中々、素直になれない感情ってあるよね。素直になれないって、凄く損しちゃうわけだけれど、大人になれない精神がそうさせるのだとしたら、やはり幼稚な感情のまま発展しない二人は結ばれないよな・・なんて感じてた。
千恵役の川面千晶のキャラクターが絶妙!実に素敵だ。
初恋ラブコメよりコメディの部分がイカシテル!
夢みた景色の描き方 flag.1 ~青い春が止まらない~
モエプロ
参宮橋TRANCE MISSION(東京都)
2011/09/15 (木) ~ 2011/09/19 (月)公演終了
満足度★★★
想像していたエロっぽさはない
恋多き高校生・恋多郎が入った『青春部』。ここは青春を謳歌するための部活だ。物語はこの部活を中心に巻き起こる恋バナ。案外、濃厚な恋の場面展開はなく、あっさり系。萌えを売りにしているせいか、一部の女性キャストが舌足らずでカツゼツが悪く、口が回っていない。演技面でも素人っぽい。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
高校一年の青羽光莉は青春を謳歌したいがごとく、何かしなきゃ、見つけなきゃいけないと焦っていたが、何もしたいことがなく、本当にやりたいことがなかった。それで、とりあえず恋をしなきゃ、と勝手に思い込み恋多郎に「私と付き合うふりをして。」と迫る。
恋多郎は押されるままとりあえず付き合い、青羽光莉に振り回されながらも、恋多郎も光莉も、なんとなくお互いがお互いを本当に好きになってしまったようだった。しかし、光莉は恋多郎をふってしまう。恋することに臆病な光莉と、振り回されながらもいつしか好きになってしまった恋多郎らの青春を描いた舞台だった。
やりたいことが見つからなく何でもかんでも手を出していた光莉だったが恋多郎を好きになってキュンキュンして、生きてるだけで青春!みたいな終盤だったが、高校生の淡い恋というよりも、アニメチックな恋バナでした。高校生を演じるにはちょっと無理がある年齢でした。
明烏 -Akegarasu-
ブラボーカンパニー
恵比寿・エコー劇場(東京都)
2011/09/14 (水) ~ 2011/09/19 (月)公演終了
満足度★★★★
マジでバカバカしい。笑
キャストによってはセリフはカミまくるは、忘れるは、間合いのとり方がなってないはで、練習不足を自ら暴露しちゃったような舞台だったけれど、それよりも何よりも、ソレって仕方がないよな~・・とか許せちゃうくらいの面白さ。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
上地春奈のアドリブなんだかセリフなんだか、よく解らない早口しゃべりは普段、耳慣れていないせいかついていくのが精一杯なワタクシ。個人的には、あの漫才的なしゃべりは観客からの笑いを取ろうと必死なあまり、やりすぎた感があり、何者かに憑依されたような、魂を乗っ取られた感覚さえするような一人コントは好きではなかったが、ジンの父親ゴロー役の佐藤正和の演技が絶妙!笑った!笑った!
とあるホストクラブを舞台に3人しか居ないホストらの事務所での情景を綴った物語。あくまでもホストの表舞台は描写しない。そういう意味では楽屋裏のお話なのだが、NO3のホスト・ジンが1000万円を金融会社から借金したことから始るシチューエーションコメディだ。ジンは競馬で当てた金で借金を返そうとしていたが、その高揚した気分のままホスト仲間と事務所でドンペリを浴びるほど飲んで意識を失う。次の日、目が覚めるとあったはずの大枚がなくなっていた。慌てるジン。しかし、何処を探しても誰に聞いても知らないという。
借金の期限が迫る中、困り果てるジン。そんな折、一人の女が金も持たずにホストと騒いで事務所に連れられて来たのだった。きつく叱れというNO2のノリオに対し、他人に説教するほど自分自身が高みではないと思うものの、とりあえずは叱る。しかし、その説教の仕方がまるで自分自身を叱咤しているような感覚にさえなってくるのであった。
一方で、返済の当てもなく追い込まれたジンは死を考えるも、一人で死ぬのはカッコ悪い。道連れに、この女、アキコと心中しようと企むも、ジンの父親が田舎からやってきたのだ。彼は「北の国から」のゴローの物まねをしながら、博多からやってきたという。ゴローは「北の国から」のゴローが大好きで改名までしちゃったツワモノだ。笑
物語はゴローと借金取りとアキコとホストらが入り混じり、ドタバタと繰り広げられるが、結局薬局、1000万円は返済しまるく終始する。
序盤から間合いの取り方が空きすぎているせいか、なんとなくテンポが遅いのが気にかかったが、ゴローの登場辺りからテンポの波が絶妙に変わり始める。そんなゴローの一人舞台のようなジェットにすっかり乗り切って「口に金魚が飼えますわ!」みたいに大口を開けて笑ってしまった緩く可笑しい舞台だった。
気楽に観られて、何も考えずに楽しめる舞台。
興す人々
劇団熱血天使
Route Theater/ルートシアター(東京都)
2011/09/14 (水) ~ 2011/09/19 (月)公演終了
満足度★★★★
扶氏医戒
幕末から明治維新にかけての適塾が舞台。盟主は緒方洪庵。蘭方の医者、学者であり、教育者でもある。洪庵は大阪・船場に塾を開き若き人々の教育にも多大の精力を注いでいた。その力量を知る幕府は、江戸に召しだし奥医師とすると同時に西洋学問所の頭取としたのである。洪庵不在の時期も義弟や子息、門下生達は塾を守り、さらに分塾をするほどに発展したが、明治新政府の教育制度の整備と共に発展解消し、大阪医学校、府立医科大学、さらには大阪大学、慶應義塾大学の源流の1つとなった。
適塾は全国から駆けつけた塾生にあふれ、談論風発の気風はその後の明治維新の激動の中、日本の運命に大きく貢献した多くの人材を輩出している。そんな塾生らのうち、今回は福沢諭吉、大鳥圭介、長与専斎などにスポットを当てたお芝居。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
物語は洪庵と塾生、洪庵の家族とお手伝いを絡め適塾での勉学の様子や人間関係を描写したものだった。まず、キャストらの演技力は期待以上。舞台の序盤の見せ方も絶妙だった。適塾という場所が舞台なので、お堅い物語かと思いきや、福沢諭吉を少年のようにコミカルに演出していたのは演出家の意図するところかと察する。
芝居とはあくまでも虚構の世界なので、何でもありなのだと常日頃から思っているワタクシには、こういった実に楽しげな適塾は観ていて愉快千万だったのだ。また、若い塾生には欠かせない揺れる恋愛沙汰も描写しながら、衣装、舞台美術でも魅せられ、視覚的にもひじょうに楽しめた。
ただ一つ、場面転換に投入されるダンスだが、小道具を移動する際にこういったパフォーマンスで、観客の目を楽しませる効果を狙ったのだと考えるが、時代劇という設定にそぐわず、折角、温めた場の空気の流れを壊してしまうのだ。空気が乱れれば、観客はそれを修正し、立て直すのだが、それが何度も何度も遮断されると、やはり辛くなる。単体でのダンスはとても素敵で美しいのだが、やはり、この芝居には必要なかったように感じる。
肝心の本だが、「扶氏医戒」の心得を用いて何かを興すという根底にある心意気は充分に伝わり、解りやすくて大満足な舞台だった。ポイントは4,5レベルだが、ダンス投入で空気が中断されてしまったので4とした。しかし、この劇団は今後も期待できると思う。次回も観たいと心から。
背水の孤島
TRASHMASTERS
笹塚ファクトリー(東京都)
2011/09/09 (金) ~ 2011/09/19 (月)公演終了
満足度★★★★★
311事件のその後
昼割で観劇。この舞台で3300円は良心的だ。
一幕「蝿」二幕「背水の孤島」からなる3時間20分休憩ナシの公演だったが、全く飽きずに、むしろ飲み込まれるように観た。TVの映像で客観的にしか見ていない東日本大震災だが、被災者家族を主軸にTVクルーとの見る側と見せる側の演出構成とエネルギー問題を取り上げ二部構成にまとめた社会派劇だ。相変わらず、暗転後のガラッと変わる
舞台美術(福田暢秀)が素晴らしい。まるでマジック。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
舞台は石巻市郊外。被災して納屋で暮らす貧しい一家・片岡家にテレビの取材が入る。テレビ局はドキュメンタリー用に一番貧しい家を選び、貧乏暮らしをアピールして視聴者から同情の声を拾おうとし、片岡家の家族を利用して美談に仕立てようとする。しかし、様々なトラブルや缶詰工場からの略奪、不倫など、美談を裏切る出来事が次々と起こる。
一方で片岡家の主は補助金を貰い多くの人々の善意に甘えて、それにすがって生きて働こうとしない。こうした人の心の腐った部分に蝿がたかる。 震災直後の混乱に乗っかって何をやっても許されるという、人の心の汚さ、穢れた人間の業を描き出した美談の裏に潜んだ矛盾を描写した問題作だ。蝿の羽音、ブーーン・・ブーーンが音響で流される。
後半は近未来の東京・永田町。原発を推進する大臣と石巻市郊外で関った人たちが反原発派として登場する。TRASHMASTERSの近未来の設定はいつも出世した人々が登場するが今回も相変わらずだ。汚い政治の世界を全て背負ったような大臣に立ち向かう、かつての片岡家の長男の交渉術(放射能爆弾で脅すなど)があまりにも見事だった。また、大臣の吐くセリフ、「人名より統治」は政治の世界では、それが正義なんだろうな・・。などとリアルに思える。
エネルギー政策に関して、樹木の太陽光発電機は凄くいいアイデアだと感心し、表現者として物申す姿勢は中津留章仁ならではだ。政治の腐敗と日本経済、被爆者の問題を取り上げた舞台だった。字幕で「希望などない。それでも生き続ける。」はドカン!と心に響き、涙する場面もあった。見応えのある3時間20分。時間のある方は是非に。素晴らしい舞台です。
追伸:役者全員の演技力が素晴らしい。セリフ噛みもあったが、この長丁場、致し方ないと思う。問題は当日パンフだ。できたら役柄も載せて欲しい。メモ取るのが大変なんだってばっ!笑
もんぞもんぞ
ジャイアント・キリング
Geki地下Liberty(東京都)
2011/09/08 (木) ~ 2011/09/12 (月)公演終了
満足度★★★★
夏に相応しい妖怪民宿
劇場には不思議な美女目当てにコアな観客がいらして、不思議な空気を醸し出していたから、舞台上と同様、客席もそれなりにヲタ臨場感満点だった。笑
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
物語は心に闇を持ち、独特のやる気ないオーラを醸し出しながらも、どういう訳か中途採用された5人の男たち。 負のオーラ満点で自称「ツイてない男」という彼らの新人研修の合宿所は民宿「おがる」。 いつものようにダラダラとナマケモノのように動かない彼らだったが、彼らの前に現れた美しい女・もののけ達に、右へ左へと振り回される。
妖艶で透き通るように美しいユキノ扮する園田綾香のメイクが、妖怪メイクで実に素敵だ。また動作といい所作といい、まさに妖怪!笑
一方で猫妖怪キャラのタマエに悩殺されたヲタ男・アカシ(ゴブリン串田)の気色悪いキモさの演技力はお見事だった。美女だらけの女性キャストに、なんとなく影が薄くなってしまった男優たちだが、一夜の夢物語に酔いしれる表情はやはり秀逸な演技力に尽きるのであって、これらをしっかりと束ねる、おばばを淡々と演じた、はじり孝奈の存在も見逃せない。
夜な夜な美しくも妖しい妖怪たちが徘徊する民宿は繁盛していないものの、覇気のない男たちに人生の教訓を引き水しながら一夜の夢を与えたのだ。民宿に寄食する妖怪たちと5人の男たちの一夜物語。
緩くて楽しい舞台だった。セットの作りこみが上手い。またキャラクターの立ち上がりにインパクトがあったせいかこれらを観ているだけでも飽きない。凄く愉快な舞台だった。
メシアンピーポー MESSIAHN PEOPLE
ナックルボーラーズ
劇場MOMO(東京都)
2011/09/08 (木) ~ 2011/09/11 (日)公演終了
満足度★★★
選ばれし者がいっぱい!笑
物語は救世主というほどのものでもない、こじんまりした出来事からなる、コネタの数々で終始する。だから世界を救うなんちって大げさなものじゃあないけれど、コメディとしては面白かった。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
まず、客席誘導が下手。前から詰めて座ってください。とは言ってるものの、観客を椅子まで誘導しないものだから、無駄に空席が出るも、その空席はそのまま。苦笑!
また、公演中に子供のぐずる声が聞こえ、親が出たり入ったりと激しくドアを開け閉めする。コメディだからいいようなものの、シリアスな舞台だったなら、完全に世界感に入れずドン引きしたと思う。劇場に2~3歳の子供を連れてくるのは子供にとっても過酷だし、他の観客にも迷惑なのだから、考えたほうがいい。また、子連れの観客を指導するスタッフの対応も未熟だった。そして、携帯電話うんぬんの前説もないから、公演中にメールを見るわ、モード音が鳴り響くわで、しかも、そういったマナーのない客に限って出演者の母親だったりする。
さて、本題の「メシアンピーポー MESSIAHN PEOPLE 」だが、合コンの場面が一番、楽しかった。オカマ・セリナ役の川原佑介のカマ風味が絶妙の面白さだったし、テンポも良かった。吐くセリフの数々で笑いこけた。この情景がこのまま、ずっと続けばいいな・・なんて正直思っていた。
内容は解りやすくベタではあるが、もうちょっと魔力のある展開も欲しかったところ。でもってメシアを飲みまくる客が殆どで、なんとなく妖しいカクテルのメシア、というイメージが安い酒になっていた。苦笑!
退魔夜行カレン
IDEALKINGDOM
d-倉庫(東京都)
2011/09/08 (木) ~ 2011/09/11 (日)公演終了
満足度★★★
アニメな世界感
ボニータコミックスの「カルラ・変幻退魔夜行」のような描写。時は王朝時代。愛し合ってる二人、東郷ミチルと成田チヅルのチヅルが、白の集団に利用され、これを食い止めようとする退魔夜行の戦いを描いた作品。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
セットが素晴らしい。また衣装、それぞれのキャラクターの立ち上がりも絶妙だった。機械人形ユリアは、まんまアニメチックで面白い素材だが、人間と同じ動きをする為、もっと機械的でも良かったような気がする。すばるの腕の筋肉が意外にあって素敵!笑
物語の全体的な描写はベタで、アニメそのもの。しかも東郷と成田の恋愛事情は結構クサイ。この臭さとアニメキャラが嫌でなければ楽しめるし、そうでなければ、見方によっては幼稚に感じるかもしれない。
社会の底辺で下賤の者として迫害されてきた白の集団。彼らはこの世界のあらゆるものの契約を変える事が出来るという魔法の書物「契霊ノ理」(財閥家・東郷所有)を手に入れる為に、東郷の婚約者である成田チヅルの奇形才能を利用し、差別のない国を作ろうと策略するも、国に雇われている退魔夜行がこれを阻止し戦う物語。
契約社会の根絶の為に戦う白の集団と、古の時代から魔を退ける生業を担う、『退魔夜行』のどちらが正義なのかと問われると、回答し難い物語だが、二つの集団と二人の男女の理不尽な想いを浮き出した本でもあった。カレンこと川渕かおりのチャンバラがお見事。一方でトウコこと升望の格闘シーンがイマイチ。殺陣を勉強していない様子が観客にもみえみえでちょっとシラケル。
わりにありきたりの作品だ。ってか、ワタクシ自身がアニメで読んでる。笑
ベタだけれど、解りやすくて楽しめた。
めろす
チェリーブロッサムハイスクール
こまばアゴラ劇場(東京都)
2011/09/10 (土) ~ 2011/09/14 (水)公演終了
満足度★★★★
メンバーのみのチェリーブロッサムハイスクールらしくない公演
これははっきり言って好き嫌いに割れる舞台だ。
これまでの全てを疑い、「何だかよくわからないもの」の為に演劇をつくってみようという、云わば実験的公演のようなもの。「正直に言うとやってきたことに少し飽きてきちゃったんです」との言葉通り、コメディとパフォーマンスをミックスしたような舞台だった。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
物語の筋は「走れメロス」だ。ここにちょっとばかり猥雑な肉付けをし、秘密クラブ・キャッスルなんて登場させたり、現代の世相を肉付けして劇団員がそれぞれ10役以上のキャラクターをこなす。この怒涛でスピーディーな展開に乗り遅れた観客は、ぽか~ん!!とお口を開けてついでに眠りこけることになる。笑
役者全員がとにかく走る。走る。疾走する。そんなだから王様との約束と親友の命の為に、めろすはそれ以上に走るわけだ。民衆の家を土足で駆け抜け、集合体を蹴散らし、森を駆け抜け、はたまた人間どもを蹴散らして疾走する。ずっと走りっぱなしのめろす(野田)は自身がよれよれになってしまっているものだから、肝心の格闘シーンでは疲れてて、はぁはぁ状態!笑
森の神・オリザは本当にオリザに似てるし、いつか見たオリザ人形にも似ちゃってるから、荒川はもしかしたらオリザの子供ではないかい?みたいな疑いも出てきちゃう。笑
結局薬局、この舞台は役者の体力を消耗させる公演なのだが、このスピードについてゆく観客も案外、疲れるとも思う。
楽しめたもの勝ちな舞台。コメディとしての口語は楽しめると思う。
ぶどう畑に落ちた流れ星
メガバックスコレクション
阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)
2011/09/08 (木) ~ 2011/09/11 (日)公演終了
満足度★★★★★
Bバージョンを観た
ラッセル共和国とイーオスという二つの小さな国の戦争を背景に兵隊のリーダー・トゥルーという軍人の葛藤を描いた作品。相変わらず滝一也の本が冴え渡る。彼の書く本はファンタジーを含みながらも人間の内面を奥深く描写するので、それに答えて深層心理を表現する役者の技量を観るのが好きだ。滝の本と役者らの絶妙なコンビネーションが優秀な作品を作り上げるのだ。そして今回、シェリー役の吉野成美の演技力に度肝を抜かれる。あまりにも自然で気負いがない。妹を守りながら淡々と孤独に耐えながら生きる少女の孤高さに酔いしれた舞台だった。ひじょうに素晴らしい。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
ある夜、四人の敵兵(イーオス軍)は隠された無線施設(パンドラスボックス)があるワイナリーに舞い降りる。そこにははまだ幼き姉と妹が住んでいたがトゥルーは少女に銃口を向けることが出来なかったやがて、彼は一つの提案をして少女の捕虜となり、この場所で過ごすこととなった姉妹と敵兵。しかし、彼らの任務は23時間後の奇襲開始時にここを破壊することだった。
この間、ラッセル共和国の兵隊ウオッカがワイナリーに訪れ完全に四人の敵兵は捕虜となるも次第に打ち解けてワインを飲み交わす仲となる。こうしてトゥルーは戦争と言う大義名分の下に置かれた自らの身の上と本来の持つ人間らしさの狭間で葛藤し揺れ動くのであった。その心圧で幻聴(アイツ)が聞こえるようになり、それは常に自問自答した囁きとして脳裏に存在するのだった。
一方で少女・シェリーは本当は素直で明るい女の子だったが、戦争と言う過酷な状況に身を置かなければいけなくなった時から人を信じなくなって今は妹を守る為だけに、銃を使いワインを熟成させて勇敢に寡黙に生きていた。
この物語は少女と兵隊達の友情の物語だが、戦争反対をセリフに忍ばせ滝の意思を主張させる。やがてトゥルーは長く深い葛藤の時を乗り超え、自らに課せられた任務を破棄する。こうして彼らはそれぞれの生きるべく道を見出したのだった。
相変わらず、役者の演技力が素晴らしい。特に吉野成美の天才的な演技力に舌を巻く。云わば戦争ものなのだが、悲壮感はなく、むしろ観終わった時に人間らしく生きるという課題を投げかけてくれる舞台だ。素晴らしい芸術作品。
東京
江古田のガールズ
OFF OFFシアター(東京都)
2011/09/07 (水) ~ 2011/09/12 (月)公演終了
満足度★★★
劇団初観
いあいあ、こういった嗜好の劇団だったのね。笑
酒でも飲みながら緩やかに観るべき芝居。入場すると、カッパとビニ袋と怪しい粒の入った袋が客席に置いてある。ナニこれ、スプラッシュマウンテンかよ。笑
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
すると前説で塗れるといけないのでバック等は袋に入れて口を縛ってください。カッパは前を被ってください。生きものも登場しますので、・・・・
ワタクシ、この生きものにピクン!!と反応。なんすか、生きものってなんすか!なんすか。
もしかしたら、イグアナとかイモリとかトカゲとかそういった爬虫類的なぬるっとしたもの?もしかしたら、被り物をお召しになったブーフーウーみたいな?とか想像は膨らむばかりで、膨らめば膨らむほど、なんだか息苦しくなってはあはあ、状態!
つまり、生きものっつーだけで、やけに興奮しちまったわけよ。
ほんの少し、ドラマチックな時間を味わいたければカフェへ行こう。ってなキャッチなのだけれど、こちらはそれどころじゃなくなって、ワクワクドッキドッキ。そうこうしているうちになにやら香ばしい香りがぷ~~んと漂う。
で、暗転後、床にコーヒー豆を敷き詰めてあるのが判明。そしてオカマが登場。このカマ風味が三軒茶屋ミワさんなわけで、もしかしたら、生きものってのは彼女のことなのだろうか?なんて思っていたら、コーヒー豆で滑るわ滑るわ滑りまくり、役者らが転倒するシーンが多い。笑
物語は芝居半分、アトラクション半分でエンターテイメントとして観れば楽しいし、確かな演技力を期待しちゃったら好みに反するかもしれないが、内容は本当にバカバカしい。笑
谷合りえ子が痩せてキュートになっていた。小林光に関しては裸族になったり、生蛸を弄びながら奮闘していた。笑
もうちょっとコメディ色が強いほうが好みだったが充分楽しめた舞台だった。笑
はじめてのにんげんがり
劇団桃唄309
テアトルBONBON(東京都)
2011/09/07 (水) ~ 2011/09/13 (火)公演終了
満足度★★
難しい
カフェを舞台に、ここに訪れる人間模様を描写した物語だったが、正直申し上げて、うねりのない平坦な舞台だった。序盤、オーナーがカフェを開店するにあたっての心得を習得する描写から始まり、開店後の来客との交流みたいな光景を淡々と綴っていた。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
ワタクシはこの物語を理解しようと努力はしたが、なんとなく解ったのは来客する人たちの一部がどうやら人間ではないこと。あるいは、人間でもいつかはその命を抹消される者たちだということ。スーツを着て黒い鞄を持った男は死神らしいということ。つまりはここはあの世とこの世の狭間のような場所で上に行くか下に行くかをここで査定しているようだ。タイトルから察すると主役は死神のようだ。
全体的に静かに物語りは流れる。カフェには人が出たり入ったりの繰り返しで、たぶんこれは作家と演出家の意図なのだろうけれど、上記のような、・・・らしい。と捉えることが出来たのが中盤になってやっとだった。笑える箇所はあまりない。これをコメディといえるのかどうかは微妙だが、現在と過去を交錯させて行ったり来たりさせる回数が多すぎた。
脚本に懲りすぎたせいか、物語自体に明白さが薄れよく解らない舞台だった。
徐々に明かされる人間でない者たちの種明かしもされないまま、終盤となり、釈然としない舞台だった。死神も新人育成されるらしく、オーナーだったマスターが狩られた後に死神になって戻ってくる場面は、まさに「はじめてのにんげんがり」なのだけれど、ワタクシはこのタイトルから勝手にもっとオドロオドロした舞台を期待していただけに、ちょっともの足りなく感じた。
ドリームダン第6回 『キサマが地獄に堕ちるまで』
散歩道楽
サンモールスタジオ(東京都)
2011/09/07 (水) ~ 2011/09/11 (日)公演終了
満足度★★★★★
めちゃくちゃ面白い
今回の散歩道楽の公演はものすっごく面白かった。その描写はちょっと不思議な感じなのだけれど、過去と現在を交錯させながらも、序盤と終盤に訪れる風景は原始的でもあり、はたまた、起こりうる未来予想図を想定させ、迷い込んだジャングルの中での妄想劇のようでもあった。ワタクシの大好きな菊池美里が相変わらず素敵だ。ぽわわ~ん・・とした不思議なキャラクターは立ってるだけで、ひどく可笑しみを感じてしまうのだから、やはり凄い。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
ジャングルにいそうな鳥の鳴き声が木霊して響く。朝もやのような霧の風景。その描写はたっぷりと観客を異次元の世界に導く。
伊達部品廃工跡にやってきた岸和田(郷志郎)。彼は殺された工場長・伊達(久我真希人)の復讐をする為に野呂覚(安東圭吾)を探していた。一方でかつての事務員・山口薫(菊池美里)は今は野呂夫人に収まり、夫の野呂は病に臥せってはいたが、この廃工跡で暮らしていた。そして岸和田は野呂を見つけると戦いを挑む。
格闘しながら過去の情景にフラッシュバックする。そこはかつて賑やかで活気溢れる部品工場。いわゆる下町風情の緩やかで人情味帯びた人間臭さが存在する。そこでやけにエロ可愛い喪服の女・森美月(笹峰愛)に伊達や片桐(立浪伸一)らが関わった事で、伊達が殺されるに至るのだが、美月は誰とでも寝る女で、まるで寄生虫のように男を利用しながら、利用価値が無くなった伊達を殺してしまうのだった。
そんな事情を知らぬ岸和田は死んだ伊達の近くでナイフを持った野呂を犯人と決め付け、追うことになる。違う!と言いながら逃げる野呂。かくして岸和田は「キサマが地獄に堕ちるまで」野呂を追い続けることになるのだが、現在、過去、そして現在、と描写しながら、終盤では現在と過去の交錯、つまり登場人物をダブルに配置させる巧妙さが秀逸だった。
そして合間に、コミカルな情景をたっぷりと投入し、笑いに溢れ楽しかった。ターザンになった二人は、これからの未来に起こりうる風景を予想させ、ファンタジーな絵図も想像することが出来た。五代雪之の丞の登場はただただコメディなのだけれど、これに絡む菊池の表情が楽しい。
仕込んでいこう!~新宿編~
円盤ライダー
SPACE107(東京都)
2011/09/06 (火) ~ 2011/09/11 (日)公演終了
満足度★★★★
あにめちっく
流石にキタムラトシヒロ(演劇集団Z団) の演出・ 脚色だけあってヤマ場(ピッザ)での照明、音響の使い方が絶妙!たかがピッザくらいであんなに戦闘的な情景はないだろ。みたいな・・笑
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
物語は3つの劇団が同じ日に劇場をダブルブッキングしてしまったから、さあ、大変!
多重契約をしてしまった劇場側と小屋入りしてしまった3つの劇団側が大揉めに揉めるなか、それぞれの劇団が演劇に対する熱い情熱を語りだした辺りから、お互いに協力し合って合同公演と称して公演することに決定する。
最初に小屋入りした「劇団Oh!Yeah~」はまともだが次に小屋入りした「劇団流行病」はどいつもこいつも怪しい面々で特にクリリンみたいな主宰・藤堂はピッザの場面でいい仕事をしていた。
一方で、最後に小屋入りした「ラ・マン美少女歌劇団」などはもっと妖しい風情でバニラクイーンのキャラクターはお蝶夫人みたいなナリで、ってか白鳥麗子みたいなキャラクターで、妖しい動きをしながら完全に舞台を支配していた。苦笑!
このバニラを演じた川村りかがひじょうに素敵だ。
一糸乱れずのセレブクイーンっぷりはある意味、薔薇の花そのものなのだが、反転して、訛りまるだしのイナカッペぶりも絶妙だった。
全体的にコメディなのだけれど、流れは中盤からテンポが崩れ助長的になったものの、終盤の三体合同のステージは完全に絵になって見事だった。物語としてはベタでクサイ。しかしその中にも見どころは沢山あり、ワタクシは楽しめた舞台だった。
渡部将之,川村りか,田中伸一,重住綾, 飯田卓也,右近良之の演技力が秀逸でキャラクターの立ち上がりも見事だった。演劇集団Z団がスタッフとして来ていたせいもあって、観客は女子が多い。ワタクシも演劇集団Z団、BB団は好きな劇団だ。
4つの駒-THE FOUR PIECES-
アポロ5
青山円形劇場(東京都)
2011/09/03 (土) ~ 2011/09/08 (木)公演終了
満足度★★★★★
デッド・ゲーム
アイドル、若手俳優、声優、お笑いなど、様々なジャンルから集まった出演者による本格サスペンス「4つの駒」。
スーパー戦隊シリーズ・ゴーオンジャーのゴーオンブラック役=海老澤健次、同じくスーパー戦隊シリーズ・ゲキレンジャーで妖艶な悪役メレを演じていた平田裕香、元AKB48で秋葉原のAKB劇場オープニング時のメンバーでもある折井あゆみ、第7回全日本国民的美少女コンテスト・マルチメディア賞受賞、歌手女優として活躍中の松下萌子、元ジャニーズJrとして滝沢秀明らとリーダー格で活躍されていた浅倉一男(旧芸名・浜田一男)らが出演とあって役者としてどうよ?なんつって観に行ったが、これが中々魅せた。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
デッド・ゲームを劇場で観るのは年に数回。意外に多いのだが、この手のゲームは観客にも手に汗握る緊張感があってドキドキの連続だった。極限状態の人間が究極の選択を強いられた時にどんな行動を起こすのかもこの舞台の見どころだ。
プレイヤーは最愛の人を駒にして、その駒が本気で殺しあうのを楽しむのがこのゲームだ。だが、プレイヤーは駒を特に「最愛の人」とは考えていない。「死んじゃったらしょうがない。」その程度だ。しかし、誘拐され手錠をされ空間に閉じ込められた駒は自分の最愛の人が言う誘拐されたという言葉を信じて、彼らを助ける為に自らの命を張るのだ。
彼らは駒の妻や、妹や、兄や、恋人だ。しかし彼らはプレイヤーとしてこのデッド・ゲームに興じ繰り広げられるゲームという名の殺人を楽しむ。つまり駒は籠の中の二十日鼠だ。
時間制限のあるなか、駒たちは本気で殺しあい、残った一人がこのゲームの勝者となるルールだ。しかし、なかなか殺し合わない。そんななか、それぞれの駒たちは自分の最愛の人たち(家族、元妻など)とプレイヤーのどちらの命を選択するかを強いられる。選択されなかった方は射殺されるのだ。
プレイヤーは自分を選ぶように嘘や欺瞞を吐き、駒が自分を選択するように仕掛けるのだ。駒はまんまとその嘘に騙され苦悩しながらもプレイヤーを選択してしまう。結果、誘拐されてきた実の姉や元妻、弟、恋人は射殺されてしまう。怒号と暴力と銃声が飛び交う箱を見ながらプレイヤーたちの嬉々としてゲームを楽しむ情景が恐い。やがて駒はお互いを殺し合い、残った一人がこのゲームの勝者となる。
しかし、これだけでは終わらない。ここが今までのデッド・ゲームと違うところだ。
残った勝者の駒は自分が利用され、駒として遊ばれたのだと感づいてしまう。
やがて新たなデッド・ゲームが始まるがそこにはかつてのプレイヤーたちが駒として閉じ込められていたのだった。そしてプレイヤーはかつて駒として残った一人だ。まさに復讐のデッド・ゲームだ。
キャストらの演技力が素晴らしい。特に駒として閉じ込められた空間での濃密で緊張感溢れる極限状態の演技が秀逸だった。魅せられた舞台だ。
謎の球体X
水素74%
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2011/09/02 (金) ~ 2011/09/11 (日)公演終了
満足度★★★★★
めちゃめちゃ可笑しいブラックコメディ
当日パンフの田川の挨拶文が可笑しい。思わず笑ってしまう。そして舞台も。舞台客席は対面式。割に広い「星のホール」を小劇場のように小さな作りにしてるものだから、このまま、アゴラでも芝居が出来そうだ。星のホールだからといって大きなセットを作らないところも田川らしい。笑
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
登場人物の全員がどこか病んで屈折している。その歪みっぷりは想像を絶するのだが、噛み合わない会話劇や捩れた描写がコミカルなのだ。
キチガイと都市伝説のように他者から噂される健児。お人よしで殆ど他者に流されっぱなしの妻。父親に近親相姦されながらもそれを愛情だと勘違いしている妻の妹。弱い相手を見つけては可哀想だと同情し、その心もちに優越感を感じる大家。そして畳のしたからやってきた怪しげな男。
舞台の上は捩れた人間模様が織り成す群像劇なのだが、役者に吐かせるセリフが相変わらず巧みな田川マジック。これはもう、この芝居を観ない事には、どうやって説明したらいいのか解らないほどオモチロ可笑しいのだ。
その可笑しみは人間の鬱積した部分を裏の裏まで穿りだすようなある意味、サイコなコメディだ。だから、観客達はここで笑うと役者に対して失礼だぞ、とか思いながらも、ついつい堪えきれなくなって吹き出してしまうのだ。そういった吹き出す笑いが劇場のあちこちで聞かれ、実に楽しい舞台だった。
本当に観て良かったと大満足だった。お勧めの舞台。