みさの観てきた!クチコミ一覧

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ここは世界の果てっぽい。【ご来場ありがとうございました!!】

ここは世界の果てっぽい。【ご来場ありがとうございました!!】

バジリコFバジオ

OFF OFFシアター(東京都)

2011/02/02 (水) ~ 2011/02/07 (月)公演終了

満足度★★★

幸せになりたい
極寒の土地、香深島で暮らす「最北端の姉妹」がいた。
「最北端の姉妹」なんてゴロはなんとなく演歌の世界を想像するが、この舞台はあながちド演歌そのものだ。笑
いつものように、人形達が前説をする。これが実に楽しい。

以下はねたばれBOXにて。。

ネタバレBOX

その他、芝居の最中にも人形達や影絵も登場し、なんだかとっても楽しい気分に陥るが、そのうち、熊や河童、いあ、河童は出てこない。河童のような役者が居ただけ。その上、きちゃない神様や改造人間阿藤が登場し、物語はめちゃくちゃな状況になって、中盤、ぽっかーん!!としてしまったが、終盤で一気にその散らかした伏線を拾い集めるように収束していた。

嘘をつきまくりながら恋人とロシアへの密航を画策する長女オリエ。その嘘に支配されながらも旅人と儚い恋愛を繰り返す次女マサエ。オリエの嘘のおかげで自分を男だと思い込む三女イリエ。

彼女達はちょっとずつ罪深いが、その罪は母が家出してしまったのが原因のようだった。よくよく考えれば三人姉妹を正面から愛してくれる男達もいる。幸せは眼の前にあるのに、そこを見ていない姉妹たちは常に「幸せになりたい」という欲望の果てで、えいえんを求めて、ただただ踊っているように見えた。

今回の芝居は中盤までがあまりにも散らかり過ぎて奇妙に感じた場面が多かった。それらを終盤で収めたが、そこに行きつくまでまで観客の忍耐も必要だったような気がする。

次回も観たい。初心者には解り辛いかも。。
ニーナ

ニーナ

東京演劇集団風

レパートリーシアターKAZE(東京都)

2011/02/01 (火) ~ 2011/02/06 (日)公演終了

満足度★★★★

「かもめ」の続編のような
亡命作家マテイ・ヴィスニユックが、ワタクシの観た回でいらっしゃってました。今回の作品は「かもめ」を観たことがない観客にも解るように「かもめ」の筋を織り交ぜながら説明し、咀嚼していたから誰にでも解る内容だった。
上から吊り下げられた大きな振り子を見ていると、巨大な催眠術師が振ってるように感じてなんとも眠くなってしまうのはワタクシだけだろうか・・。苦笑!

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

コースチャーの恋人だったニーナは人気作家トリゴーリンとともに女優を目指してモスクワへ発ち、トリゴーリンとの間に子供をもうけたが死産だった。その間、二度の自殺を図ったコースチャー。

しかし、15年前に離れたコースチャーの家をニーナは訪れる。ニーナを追ってトリゴーリンも現れる。ニーナに翻弄される二人の男と、彼らを手玉にとるニーナの会話劇だ。

元々が自閉症のコースチャーはニーナの言葉通りに自らを動かしてしまい、同じくニーナを愛しているトリゴーリンもニーナによって振り回されてしまうのだが、ニーナ自身は自分以外は誰も愛していない、という感情が見え隠れし深層心理のやりとりが面白くもあり危険でもあった。

ニーナの情熱は常に自分に向けられ、自分自身の成功のためには二人の男を利用し犠牲にしてでも這い上がるという気質に満ち溢れていたが、元来、他力本願なところがあり、そういった哲学しか持ち合わせていないニーナは行き着くところは、ただの落ちぶれた女優なのだった。

コースチャーはニーナだけを想い続けて15年もの時をプラトニックラブだけで過ごし、そんな彼が書く作品は自分自身の為に書いたような作品で自己愛やエゴが散乱し、読者の心を掴むことが出来ない。

コースチャーの家の中で過ごす三人は彼らにとってここがユートピアなのだと思う。

マテイ・ヴィスニユックはフランスの作家らしいが、まさにチェーホフが書き下ろしたような作品で、その描き方は独特の不条理を放っていた。舞台で吐かれるセリフの一つ一つに哲学的な要素が含まれており、いちいち感心して観ていた。
公演時間2時間だったが、途中休憩15分があり、3時間もの公演時間のように長く感じたのは何故なのか、未だに不思議だ。キャストらの演技力は流石。

雨と猫といくつかの嘘.

雨と猫といくつかの嘘.

青☆組

アトリエ春風舎(東京都)

2011/01/30 (日) ~ 2011/02/08 (火)公演終了

満足度★★★★★

2008年12月の公演
と殆ど変わらない今回の再演は、風太郎がなんだか哀れで仕方がなかった。二度観ということもあって余裕で観られた分、全体の構図が浮かび上がってきて、無性に物悲しく感じたのだった。

それにしても、今回の「観たい」書き込みの人気ぶりは凄い。2008年は10人程度だったのにだ。素晴らしい!

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

父親って、あれだね。晩年になって妻と離婚しちゃあいけないね。子供とも疎遠になってしまうのだから、孤独感が沸々と湧き上がってきちゃうわけよね。

水野風太郎、60才、独身。一人暮らし。
風太郎の母がノックするシーンから、彼の小さい頃の家族との記憶が蘇る。風太郎と母との関係。母とは結婚していない父との関係。 風太郎が大人になってからの妻との関係、子供達との関係は多少の問題はあったものの、温かくて賑やかな幸せの時だ。

しかし60歳になった風太郎の誕生日を実際は誰も覚えていないという現実は、父親ってその程度なのだ。彼はそれなりに一生懸命に生きて来たはずなのに。

家族と離れて暮らすアパートの片隅でカップラーメンをすする孤独な風太郎。生きるって、歳を重ねるって、楽しいばかりじゃないぞ。と思う。

それでも人生の終盤では家族と笑って過ごしたいと思うのだ。めくるめく時代も、やがて、そのすべてをついえてゆく時が来る。もし自分の人生を好きになれたら、生まれて良かったと思えるのだ。

そんなふうに思わせてくれる舞台だった。
大戦死遊園

大戦死遊園

サイバー∴サイコロジック

OFF OFFシアター(東京都)

2011/01/26 (水) ~ 2011/01/30 (日)公演終了

満足度★★★

とことん!
どういうところがナンセンスなのかは良く理解出来ないが、バカバカしいのは確か。
何を走らせるでもない大学予備校の中を突き抜けるジェットコースターのセットやそれらを組もうと考える発想が素敵!笑


以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

合格率0%の予備校で噂される都市伝説は隣の遊園地でジェットコースターに乗るとその先で待つのは死のみで、二度と帰れないというものだった。現に過去にそうして戻って来た生徒は居ないという。そんな風に聞くとこちらとしてもワクワクドキドキしそうなものだけれど、そんな風にワクワクドキドキ感をまったく感じさせないほど緩くてフザケタ芝居だった。笑

更に登場するキャラクターがあまりにもアニメ的。笑
結局薬局、仮面浪人だったお姉さん自身が受験に失敗した腹いせに受験生にカドミウム入りの水を飲ませ続けた結果、予備校生がジェットコースターに乗ると骨が粉々に砕けて死に至るというものだった。

とことん、バカバカしいお話。笑

アルファ

アルファ

パセリス

東京アポロシアター(東京都)

2011/01/29 (土) ~ 2011/01/30 (日)公演終了

満足度★★★★

今までと打って変わったコメディ
今回のショートコメディは進歩した佐々木の本。とでも言いたくなるような掴みどころのない笑いがいい。不条理のようなアニメのような失笑とか苦笑とかの類でシュールだった。ワタクシの観た回は満員御礼状態で通路にまでパイプ椅子を出していたが、スタッフワークが悪すぎ。あんな風に要領の悪い誘導は久しぶりだった。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

1.ダンスのように
こちらは残念ながら大石洋子のセリフが音楽にかき消されて詳細を掴めなかった。

2.ロマン
恋に恋する中堅OLが勝手に空想するラブストーリー。脚本家の佐々木ほど女心を熟知してる男も珍しいんじゃないか、と思えるほどの乙女ちっくな内容!笑

3.テリトリー
その場所が欲しい人と譲らない人の二人は同じ出身で同じ誕生日たっだ。かみ合わない二人が織りなす不条理コメディ。俺がお前でお前が俺。

4.リズムオブマジック
いつもと変わらない日常を過ごしていた3人のうちの一人が「時の砂」の砂時計を逆さにしたばっかりに時は一番最初に戻り、永遠に繰り返されるという末恐ろしい物語。

5.フィクション2
女は自分の他に二人の自分を作り、それでドラマを始めるが、女の気分次第でそのフィクションを終わらせる。殺すも生かすも自分次第。笑


森きゅーりがひじょうにいい。素直そうで嫌味もない。こいつは伸びるな。と思う。今後も頑張って欲しい。全体的にテンポのいい素晴らしい舞台だった。

Dogrunner’s High 千秋楽満員御礼にて終了致しました。ご来場の皆さまありがとうございました!

Dogrunner’s High 千秋楽満員御礼にて終了致しました。ご来場の皆さまありがとうございました!

junkiesista×junkiebros.

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2011/01/25 (火) ~ 2011/01/30 (日)公演終了

満足度★★★★

junkie brosを観た。
sistaと筋は同じ。中盤のコネタがちょっと違う分、junkie brosの方が断然、面白い!ワタクシはダンスではド素人だが、大村とMAEDAが抜群に上手い!ということは解った。素晴らしいダンスだった。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

茨城の暴走族「激団死光輝」はおにゃんこクラブと並走するのを夢見て、走り続けて20年。既に暴走族というよりも、ただの暴れオヤジ的な感じなのだけれど。笑

ストーリーはsistaと全く同じだから、違う部分をチョイスすると、まず、sistaのマスコットガールが居ない代わりにカマ風味満点の原田。そして今回、中盤に登場させる杉田の家族の描写に菊造というじいさんが加わり、これが実に面白くて絶妙だった。

また暴走族というフィクションの世界でずっと夢見ていたゾッキーたちが現実に目覚め個々の目的に向かうために解散していく姿は、君たちやっと大人の仲間入りだね。みたいな気持ちになった。

ただ、 sista x bros共、間延びした箇所が何箇所かあり、それは脚本の練の甘さやテンポの悪さ加減が、舞台で演じられれている世界にどっぷりと浸かりたいこちらの気持ちを阻害していた。この部分が☆4つに。

勿論、ダンスもダイナミックでこんな感じのダンスならダンス公演も観てみたいと思えた。

『Prism』

『Prism』

*rism

ギャラリーLE DECO(東京都)

2011/01/25 (火) ~ 2011/01/30 (日)公演終了

満足度★★★★

童話の世界
むかしむかし・・と始る日本の童話ではない。海の向こうの代表的な童話4篇集だ。それらは残酷だ。しかし、ワタクシ達がちっさいころ読んだアンデルセンやイソップや他の童話は海を渡って日本に入ったときに、内容を子供向けに優しく変えられた内容ばかりだ。だから、あっちで原作を読むと、殆どが残酷なのだが、そういう土壌で育ったガイコク人を羨ましいとも思う。サイドで観るのがお勧め。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

例えば、シンデレラの原本は、継母やその子供達からさんざん苛められ、酷い仕打ちを受けてきたハイカブリの子が、王子の妃になってめでたく幸せになりました、という本ではない。きちんと仕返しをするのだ。継母たちはシンデレラの命令によって焼かれた熱い鉄の靴を履いて踊りくるって死ぬという、なんともオゾマシイ物語だ。

童話の中には必ず復讐、戒め、憎悪が含まれており、それらはなんだかキリストの「七つの大罪」に似てるんじゃないかと常々、思っている。

今回の物語りもやはり恩を仇で返す人間の悪を描写しながら、全体的に「本当は怖い童話」みたいな内容だった。脚本はそれぞれ著名な童話を少しいじりながらも原作の面白みを表現していて好みの内容だった。

一話と二話の合間に全く休憩がなくいきなり次の物語に入っていたが、迷わず充分に堪能できた。女優人もきっちり演技していたが、雪乃ちゃんは噛んでたり、セリフが聞こえなかったりでちょっと残念だった。体調が悪かったのだろうか?待機中、眠そうだったし、色々やってた。笑
やはり子供なんだな・・。と感じた次第だけれどむしろ安心した。子供らしい子供で。

糞尿譚

糞尿譚

劇団俳小

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2011/01/22 (土) ~ 2011/01/29 (土)公演終了

満足度★★★★★

役者の演技力に感動する
糞尿譚」は、火野葦平作の短編小説だから、案外日数を要しないで読めた。
一般家庭の便所から糞尿を汲み取って買い上げ、それを農家に肥料として売ってわずかな口銭を得る…そんな商売が成り立っていた頃のお話。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

主人公の彦太郎は糞尿汲み取り業の経営者。家運が傾いた豪農の息子である彼はトラックを購入するなどして近代的な事業としての肥え汲み業を始めるも、事業は思うようにいかず、山林田畑は抵当に入り、同業者との諍いや町内の政治的な対立などに頭を悩ますことが多い。

対立部落の人間から「ほれ見い、糞男が行くぞ」などと揶揄されもするが、「事業を守るため」いかなる卑屈も甘受し、町の顔役からの資金的な援助を取り付けてどうにか商売を続けていた。

ここで登場する少年はそんな彦太郎がある日見た夢の描写で、彼の鬱屈した心情や酒や女に逃げる弱い心をもう一人の自分・少年によって励まされ癒されるという表現だったように思う。

さて、彦太郎が我慢に我慢を重ねていたのは、近い将来この事業が市営となり、その暁には相当の額で買収されるであろう、という目論見があるからだった。そして遂に市営化が決定するのだが・・買収額の大半を途中で出資した顔役とその婿に持っていかれることになってしまう。字が読めなかったばっかりに・・。

失意の彦太郎が肥料として売り物にならない糞尿を捨てようと、市が指定した捨場にトラックでやってくると、以前から因縁のあった部落の男達がおり、罵りながら土砂をぶっかけるなど激しく抵抗するも、遂にぶちキレた彦太郎は糞壷から柄杓で糞尿をすくい絶叫しながら振り撒き始める!逃げ惑う男達!!

柄杓から飛び出す糞尿は敵を追い払うとともに、彦太郎の頭上からも雨のごとく散乱したのだった。自分の身体を塗りながら、ものともせず、彦太郎は次第に湧きあがって来る勝利の気魄にうたれ、憑かれたるもののごとく、糞尿に濡れた唇を動かして絶叫しだした。

「貴様たち、貴様たち、負けはしないぞ、もう負けはしないぞ、誰でも彼でも恐ろしいことはないぞ、俺は今までどうしてあんなに弱虫で卑屈だったのか、誰でも来い、誰でも来い。」彦太郎は初めて知った自分の力に対する信頼のため、次第に胸のふくれ上がって来るのを感じた。

ここに至って観客は、ぶち撒かれる糞尿とともにある種のカタルシスを感じるわけだけれど、佐原山の松林の陰に没しはじめた太陽が、赤い光をま横からさしかけ、つっ立っている彦太郎の姿は、燦然と光りかがやいていた。

この最後の演出など、糞尿柄杓を持った彦太郎を何故か勇士のごとく感じて、その鮮やかな描写は大傑作でした。

全てのキャストらの演技力は序盤から魅せつけられて彦太郎を演じた勝山はまさに絶妙な演技力だった。そして、おせい役の吉田直子は和服の良く似合う絶世の美女でした。あんな美人、この世に存在するんだね。生まれて初めてあんな美人に会いました。美しすぎて芳醇!勝山は臭い漂うほどの演技力!糞尿だけに!笑

素晴らしいです。
くちびるぱんつ

くちびるぱんつ

ぬいぐるみハンター

王子小劇場(東京都)

2011/01/27 (木) ~ 2011/01/31 (月)公演終了

満足度★★★★

「くちびるぱんつ」というよりも
「銀河鉄道9」みたいな感じだった。笑
相変わらず神戸アキコがいい。なんすか、あのキャラクターは!何をやらせても面白いし、なんだか動きも普通じゃない。笑)普通じゃないと言えば桐村理恵も普通じゃない。普通じゃないって素敵なことだ。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

セットはジャングルジムが中央に。眼の前の舞台はどうやら地球らしい。はたまた宇宙船の中らしい。そして銀河鉄道の中らしい。

つまりは宇宙空間を彷徨う哲郎やメーテル、車掌らが居るグループ(減が鉄道列車)。30XX年の未来のグループ(コロニーを持たない宇宙船で生活)。2011年地球の人たち。と3グループが交錯しながら割に自由に関わっていく物語だが、登場するキャストらの自由度100%全開だった。笑

タイトルのパンツと宇宙がどう関わってんの?という疑問だが、正直、たいして関わっていない。強いて言うなら、ぴっちぴっちの女子キャストらのおパンツを前列で観るのは嬉しいぞっ!ってな感じだ。笑

メーテルは緑色したナメック聖人みたいなキャラクターだったし、自称、地球防衛軍を名乗るおじさんは、どう良心的に見たって塒は公園だ。笑

そんなはちゃめちゃな舞台だったけれど、ジューシーでフレッシュな舞台で、すんごく楽しめた。出来たら亀仙人が欲しかった!笑
Dogrunner’s High 千秋楽満員御礼にて終了致しました。ご来場の皆さまありがとうございました!

Dogrunner’s High 千秋楽満員御礼にて終了致しました。ご来場の皆さまありがとうございました!

junkiesista×junkiebros.

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2011/01/25 (火) ~ 2011/01/30 (日)公演終了

満足度★★★★

junkie sistaを観た
まず、「茨城の暴走族たちが繰り広げる」って出だしがいい。特に茨城ってゾッキー達のたまり場みたいな気がするからだ。
舞台はエンターテイメントに溢れ、ダンスあり~の、笑いあり~の、涙なしのまさに“ミュージカル”でした。ゾッキーどおしの抗争とかあるのかと思ったけれど、それはなかった!笑

全体的に楽しめた舞台だった。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

当初、杉田はヒカルゲンジの追っかけを目的に走っていた。しかし荒ぶる魂に突き動かされるように、彼女はやがてレディースの初代総長として暴走族「紫色舞」を立ち上げた。「あたしら暴走女愚連隊は走ることでしか命の花、燃やせねぇ!」なんつって言ってなかったけれど、勝手に想像する。笑

ここで普通、ゾッキーならば「紫死鬼舞」なんつってゴロを使うのだけれどネーミングは案外、華麗だ。笑
でもって地下タビを履くもんなんだけれどここのゾッキー達はそうじゃない。武器も持たなけりゃ、戦国武将のような旗も掲げてないのだから、要するに走るだけのゾッキー達だ。

しか~し、キャンディキャンディみたいなマスコットガールが登場した時には思わず仰け反った!「ええっと・・・君もバイクに乗るの?」って目を疑うようなキャラクターだ。もしかして、いざ戦ったら君が一番強いよね?と思わせるような長い爪が武器になる。笑

そして、走り続けて20年、今やゾッキー達も三十路となってヒカルゲンジも若い衆から「誰ソレ?」なんつって伝説になり、暴走族「紫色舞」も「あいつら、まだ走ってんのか?」と伝説になる。そうして余儀なく解散するまでを描いた物語だったけれど、確かに19の年を前にして引退する普通のゾッキーたちとは一風変わったゾッキー物語。

ここで登場する母ちゃんとばあちゃんの会話が絶妙だ。
この母ちゃんにしてゾッキーの素質ありき。のようなキャラクターがいい。

よっし、今夜も走るぜ!
世界制圧目指して灼熱の魂を走らせるぜっ!
あたしの前に立ちはだかる奴等はタダじゃおかねぇ、ドたまかち割って地の雨降らせるぜ!(既にゾッキーなんだかヤクザなんだかよく解らない心もち!)

ぱらりらぱらりら・・ぱらりらぱらりら。
コイツらありき。

コイツらありき。

電動夏子安置システム

ギャラリーLE DECO(東京都)

2011/01/25 (火) ~ 2011/01/30 (日)公演終了

満足度★★★

全体的にブラックコメディ
たしかに 【夏】即興×電動夏子『夏の夜の夢』 では役者ありき。俊敏さと頭脳を試される即興劇だ。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

しかし、どうやら電夏の役者らは即興、つまりインプロに弱いらしい。渡辺は頑張っていたが、しりとりみたいに語尾制限があった御題で、ぐずぐずだった。まあ、ワタクシ自身がインプロはあまり観ないし、どちらかというときっちり練りこんで完成された舞台のほうが好きだから、期待はしていなかったけれど。笑

個人的には】板垣雄亮(殿様ランチ)×電動夏子『動きとれず』 、『痛み、忍ぶ。』、渡辺のディズニーランドネタが好みだった。

短編だけあって今までの電夏の公演よりは小粒で薄味だけれど、博覧会だからそれはそれで。

カルナバリート伯爵の約束

カルナバリート伯爵の約束

メガバックスコレクション

荻窪メガバックスシアター(東京都)

2011/01/15 (土) ~ 2011/02/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

今まで観たメガバの舞台で一番秀逸!
今回もセットに凝る。箱の半分をセットに使う意気込み。東京芸術劇場レベルの舞台でもイケル舞台セットは事故車両とそれらの忌々しい惨事を演出していた。舞台セットに場所をとられた分、客席数を減らすという意気込みは観客にとってひじょうに贅沢そのものだ。毎回、感じることだが、帝国劇場などで観る舞台よりも、たった40~50人の観客の為に演じられる舞台のほうがずっと素敵なことなのだ。

ネタバレBOX

物語は山深い列車事故現場から。前日の大雨によって、脱線、崖下に転落した列車の中を軍による救出作業は続く。しかし日没とともに中断され、二人の若い兵隊、バロンとアーツだけが現場を維持する目的で残された。上官から謎めいた事項を言いつけられた忠告は4つ。
  一つ、どんな問いかけにも応えてはいけない
  二つ、岩塩で囲まれた白い円から出てはいけない
  三つ、奴らの言葉は何一つ信じてはいけない
  四つ、どんな小さな事でも奴らと約束をしてはいけない

彼らは上官の忠告通りに岩塩で囲まれた白い円の中に入り込むと、やがて少女・アムが現れる。しかしその少女はさっき、彼らが死体として確認済みだったはずだ。バロンとアーツは怯えながら、それでも上官の忠告通り白い円からは出ずに成り行きを見守っていると、次々に何人かのゴーストたちが集まってくる。列車事故で亡くなった犠牲者たちだ。

しかし彼らは白い円の中に居るバロンとアーツが見えないようだった。塩が苦手なゴーストには岩塩で囲まれた白い円の中は生きてる人間の保護地域となって安全だったのだ。しかしゴースト達の会話を聞いているうちに2人の兵隊たちはいくらかの興味といくらかの同情といくらかの正義感でゴースト達と話してみたい衝動にかられてしまう。

こういった怖いもの見たさに対する人間の深層心理の描写、そしてあの世とこの世の繋がりの狭間、情景の描き方は滝一也の上手いところだ。

やがて2人の兵隊たちはまるで何者かに憑りつかれたように岩塩で囲まれた白い円から出てしまい、ゴースト達と会話してしまうのだ。兵隊たちはゴーストらと酒を飲みかわし意気投合し問いかけに応え、奴らの言葉を信じようとする矢先、ある約束を執拗にさせられそうになる。

この「約束」という部分で物語はクライマックスを迎え、なんだかとてつもない恐怖が兵隊たちにも、観客たちにも忍び込み、まるで死神が「この約束を守れなかったらお前の魂を頂くよ。」的に寄り添ってこちらをじっと見つめているような感覚に陥ってしまう。

上官の忠告、ゴーストたちの言葉、どちらが真実で、どちらが陰謀なのか迷いながらも兵隊たちは彷徨える魂たちを沈め彼らとの約束を、これから生きていく自分たちの未来に向かって精一杯努力するという方向に持っていく。

ハラハラドキドキしながら観ていたワタクシは、もしかしてバロンとアーツがゴーストたちに憑りつかれてしまうのではないか、そうして兵隊たちを自分の支配下に置き、生きてる人間のものであるこの世を乗っ取る気ではないか、などと勘繰って、気持ちは戦闘態勢の準備をしていた。笑
繋がりを求めて彷徨う魂には気の毒だが、元来、この世に君らの居場所はない。

終盤、バロンとアーツが自分の人生を見つめなおし希望に転換させる終わり方は素敵だった。どの役者も演技は素晴らしかったが、やはり、主軸となったバロン(新行内啓太)とアーツ(下田修平)の演技力がなかったらこの物語がここまでワタクシを興奮させることはなかったと思う。芸術性に溢れた素晴らしい舞台だった。
投げられやすい石

投げられやすい石

ハイバイ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/01/19 (水) ~ 2011/01/30 (日)公演終了

満足度★★★★

四様のキャラクターの立ち上がりが凄い
特に岩井の演技が素晴らしい。弱いものを演じる凄さは独特だ。

以下はねたばれBOXにて。。

ネタバレBOX

画家を目指していた佐藤と山田、佐藤の恋人で佐藤の七光りにあやかって絵を描いていた美紀。三人のポジションはこの時点で上手く回っていたが、佐藤がある日突然、失踪してしまったことで山田と美紀は何となくくっついて、結婚した。尤も山田は美紀を以前から好きだったのだが・・。

しかし数年後、山田は佐藤に呼び出されて再会する。このシーンで登場する佐藤のメイク、風情はまるで病める浮浪者だ。ここで苦い笑いが起こる。そしてコンビニ店員から濡れ衣を着せられても強く反論できない佐藤は人間の本来持ち合わせた性質の強弱を露呈させ、なぜか、コンビニ店員が正論を吐いてるように強引にねじ伏せてしまう。いつの世も強いものが勝ってしまう不条理さの表現が秀逸だ。

更に、山田と美紀の現状をなかなか、佐藤に報告できない。それは美紀が佐藤の元カノで、山田の今妻という気まずさと佐藤を気遣う感情に起因する。

しかし現在の二人の状況を隠したばかりに、事態はますます悪化してしまう。佐藤は山田の目を盗んで、元カノの美紀にセックスを求め、美紀の服を強引に脱がせようとし、これに同意したかのように、美紀も嫌がらない。

人間の心理とは実に複雑だ。佐藤は自分の命の期限を知ってるかのように美紀に最後のセックスを求め、盛りのついた犬のように美紀のスカートをめくる。これに気付いた山田は美紀を佐藤から離そうとし、美紀は二人の男の間で「けんかはやめて~♪ふたりをとめて~♪わたしのためにぃ~争わないでぇ~♪状態になっちまうわけだ。

山田の焦り、佐藤の焦り、美紀の焦りはそれぞれ違う種類だ。そして三人はそれぞれ勘違いしながら佐藤の最後を見てしまうのだが、佐藤を掴もうとするカラオケ店員が大きな鎌を持った死神のように見えたのはワタクシだけだろうか?

美紀が誰かの人妻だと知った後にも執拗にセックスを迫る佐藤も哀れだが同時に美紀自身も哀れだ。どっちでもいい女。迷える3匹の獣達は心に空洞を抱えたまま、自分達のフィクションを作り上げる。美紀は死んだ佐藤を送るかのように高らかに歌い、山田は佐藤を抱える。

自分というものを持たない三人はまさに投げられやすい石そのものだ。

アフターサービス【月1WS開催中!】

アフターサービス【月1WS開催中!】

プロデュースユニット四方八方

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2011/01/20 (木) ~ 2011/01/24 (月)公演終了

満足度★★★★★

黄泉の国ってどうやら楽しそうだ
あの世って本当にあるの?あるなら見てみたい。ってのが誰もが考えることだと思う。実のところ死ななきゃあの世へ行けないのだから、まったくもって不公平だ。だってあの世からこっちには来てるらしいのだから・・。笑

ネタバレBOX

人が死ぬとリフトという階段に登って黄泉の国に行くらしい。そこには閻魔大王が居るらしい。閻魔大王といえば、恐ろしく大男で黒い服を身に纏いひげ面で盗賊みたいな強面ってイメージだけれど、ここの閻魔様は美人のオカマだ。

ここで繰り広げられるのは、黄泉の国の花形・アフターと案内人が死んだ人間を監視する物語だ。

ストーリーはとても良く出来てる素敵な物語だ。だから観劇後、「ああ、いい話だなぁ・・」と心が満たされる。

死んだ後に必ず蘇ると言われている人間の魂は黄泉の国で生き返る為の準備期間を過ごす。この準備期間中に下界で楽しく生きるためのリハビリを手伝うのがアフターたちの仕事だ。

アフターたちは人間達の希望を叶えるために奔走するのだが、魂が自宅に帰還する仕組みや設定が上手い。更にどこまでも長い滑り台で自宅の玄関へ辿り着くなんて、アニメチックで可愛いらしい。

また死んだ人間がいつまでも妻を忘れたくないためにアフターになったというエピソードや妻に会いたいという願いを吐くセリフにも心を打たれる。死にきった人間は生ききれる、という考えも納得できた。

生きるって大変だ、死んだら楽だろうな。と人間達はいうけれど、死んだ後だって大変なんだぞ!とせりフるアフターらの仕事はサービス業だ。笑

笑いのネタはシュールで面白かった。最高でした。
広島バッゲージ

広島バッゲージ

アシメとロージー

タイニイアリス(東京都)

2011/01/21 (金) ~ 2011/01/23 (日)公演終了

満足度★★★

誠実であること
この会場で2時間の公演時間はきついし長すぎ。
色んなものを盛り込みすぎて主軸がぶれる難あり。
ウラニウムの原子から核分裂していくさまを人間で描写する。この説明があまりにも絶妙!笑

ネタバレBOX

後藤健圭一と山下ゆきの同棲生活から広島原爆投下までの諸事情を広げていった物語。ゆきは後藤の夢・俳優になりたいという意思を組んで働きながら経済的に圭一を支える。これに対し後藤のやる気のなさが個人的にムカツク。こんな男、さっさと見切りをつけて捨ててしまえばいいものを・・。とムカつきながら観ていたが、この物語はそういった恋愛事情ではない。笑

しかし、ゆきが突然圭一の前から消えてしまう。慌てた圭一はゆきを捜し求めるも、行き着いた先は昭和20年の広島。ゆきの祖母・浅田富佐子の命と関わっていたのだった。当時、広島原爆投下で生と死の狭間を駆け巡っていた富貴子の生き様を交えながら、現代と過去を交錯させた物語。

この物語のキーは自分の大切だと思っている人たちに対して、不誠実だったことが、結果、大切な人を失った結末になるという戒めのようなバイブルはやはり、ジン!とくる。

博士と大山大佐の切羽詰ったやりとりは観客の緊張感を引き出し、見事だった。対照的に、コメディをそこここに散りばめて笑わせようとしていたが、スベッていたのも事実。一人ひとりに語らせる第三者の広島原爆の思い出話は、ここでは必要なかったように思う。劇中導入されるお歌も邪魔だった。余計な導入は育った観客の空想を破壊する恐れがあり、ワタクシはまさに破壊されたのだった。
物語の構成は良かったと思う。
『OLと魔王』 ご来場ありがとうございました◎さよなら魔王!また会おう!!

『OLと魔王』 ご来場ありがとうございました◎さよなら魔王!また会おう!!

舞台芸術集団 地下空港

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2011/01/19 (水) ~ 2011/01/23 (日)公演終了

満足度★★★★

キリスト教の七つの大罪
を主軸に巻き起こすリビングコメディ。
2007年に初演されたらしいが、ワタクシは初見。で、今回の衣装は今までとかなり毛色の違う可愛いらしいデザインで、がちゃぴんとムックを観ているよう。つまり子供が観ても喜びそうなキャラクター達だった。

ネタバレBOX

七つの大罪の中のそれぞれ一つを持った悪魔たちの衣装というのはワタクシの中ではもっとドロドロしたイメージだったから、こうしたコミカルな、くるくる巻き毛の羊を皮を被ったキャラクターたちが可愛いすぎて、どうしたって馴染めない。しかし、コメディなのだから、仕方がないと言えばそうなのだけれど。

個人的には衣装は悪魔らしく、内容は恐そうな悪魔なのに「人の良いダメ悪魔」的な舞台の方が好みだった。

物語は、ミサに呼びよせられた魔王は泡野家のリビングに突如、現われる。魔王の仕事は人間の魂を頂くことだ。早速、魔王は泡野家の主婦・倫子の魂を頂こうと契約を交わすが、どうしたことか倫子の勘違いによって、泡野家の間借り人として契約させられてしまう。

勘違いから始った魔王と倫子と周りの人たちが織り成す物語だが、魔王の悪巧みを止めようとする維持派の悪魔たちのコミカルさがバカバカしい。そして魔界の王の魔王が始終、たかが人間の倫子やミサに振り回されてしまうキャラクターはペットのようだった。笑

ただ、マモルという死に切れない魂の浮遊度がいまいち弱かったように感じた。別居中の夫に憎悪を抱いていた倫子の魂は悪魔を呼び寄せてしまうきっかけにもなり悪魔にのっとられてしまいそうになりながら、終盤、自ら生き方を変える展開は素敵だった。

大道具の数々が素晴らしい。

そうして手塚けだまが今回もきっちり自らのキャラクターを演じ魅了した。けだま・・、素晴らしい女優だとつくづく思う。
そして倫子こと川根有子が悪魔とリンクしながら吐くセリフのド迫力には毎回、ヤラレル。もっと悪魔的な川根を観たかったが、まあ、仕方がない。笑
僕を愛ちて。~燃える湿原と音楽~【沢山のご来場ありがとうございました!次回公演は7月青山円形劇場にて!】

僕を愛ちて。~燃える湿原と音楽~【沢山のご来場ありがとうございました!次回公演は7月青山円形劇場にて!】

劇団鹿殺し

本多劇場(東京都)

2011/01/15 (土) ~ 2011/01/23 (日)公演終了

満足度★★★★

鶴の恩返し
釧路湿原を舞台に描いた人間の愛憎劇。鶴のダンスやアニメ的キャラクターの立ち上がりが楽しい。それからキャラクターたちの仕草もいちいち面白い。全体的に音楽劇というよりもエンタメ。相変わらず勢いのある芝居だった。

ネタバレBOX

ジョンレノンを愛する自衛官の父・哲郎が海外赴任中、母ちゃんが沼で殺された。 父は「お前は長男なのに母ちゃん一人守れなかったのか?!」と詰られ、それ以来、兄・哲太郎は、オンボロ小屋を建て、そこで引きこもりになり、そして丹頂鶴の保護活動を始める。沼は哲太郎の母ちゃんなのだ。

弟・哲次郎は、母を忘れるようにギターを掻き鳴らした。
そんなある日、哲太郎は湿原で月影千鶴子と名乗る女を拾う。千鶴子は哲太郎に助けてもらった恩義を感じて、哲太郎の命令に従い、哲郎に見つかって殴られ傷つきながらも、哲郎の家から金目のものを持ってくる。千鶴子にとって哲太郎が全てだった。

一方で哲太郎は母を殺した犯人に復習の念を抱き、千鶴子にもそのことを話していた。そうこうしているうちに、レッドリボン群が母親を殺したのだと知ると千鶴子は主犯格の足を片足切ってしまうのだが、障子の向こうで繰り広げられた惨殺事件は、まるで父・哲郎を殺したのかと勘違いした哲次郎は千鶴子の後頭部を滅多打ちにしてしまうのであった。

鶴の恩返しの物語を「劇団鹿殺し」風に脚色したような感じだった。三人の男達と千鶴子が織り成すバカらしくも愛おしい暴走の果て。

劇中、ドラゴンボールネタやマリオネタ、プロレスネタ、カツーンネタを盛り込み楽しませてくれる。親子の確執の後、誤解が解けて、晴れて「僕を愛ちてくれていたんだね。」と納得する哲太郎が愛おしい舞台。
(再演)酒と泪と男とオカマ(ご来場ありがとうございました!)

(再演)酒と泪と男とオカマ(ご来場ありがとうございました!)

ザ・プレイボーイズ

OFF OFFシアター(東京都)

2011/01/19 (水) ~ 2011/01/23 (日)公演終了

満足度★★★★

中々愉快!
物語は家族愛がテーマ。屋台で酒を飲む男が、かつての父親との関係を店主にしんみりと話す。舞台は男の回想劇から。構成も良かった。


以下はネタばれBOXにて。

ネタバレBOX

男が少年だったころ、母親は死んだ。その代り父親が母親になった。あんた、母親が欲しいでしょ!と。笑

少年・ユキオはオカマになった父親が嫌で仕方がない。いちいち父親に抗うも、どうにか家族として成り立っていたが、ユキオがカツアゲされそうになると、何処からともなくやってきたオカマオヤジは息子を助ける為に仲裁に入る。

自分の父親がオカマだと他人に知られてしまったユキオは、もう嫌だ!と家を飛び出してしまうも経済的に困窮してしまう。そこで友人のツヨシに金をせびり、どうにか暮らしていたが、ツヨシはオカマオヤジが働く店のママ・ツキヨ(オカマ)から事情を話して金を融通してもらっていたのだった。

オカマオヤジをずっと前から好きだったママ。そのママから金を集るツヨシ。ツヨシから金をせびるユキオ。ユキオを誰よりも愛しているオヤジオカマ。4人の愛情はまるでメビウスの輪のように裏と表が交錯しながら漂う。

そして父親が死んだ今、大人になった幸男は今更ながらに父親の愛情を感じるのであった。

緩いコメディかと思いきや、きっちりと人間の情を直球勝負で描いていた。ここでの登場人物でツキヨほど見返りのない愛情をオカマオヤジに注いだ人物は居ないだろうと思う。ワタクシは個人的にツキヨのようなキャラクターは好きだ。振り向くことはない相手に注ぐ愛のふり幅が大きいのだ。そこにピュアを感じる。そしてユキオを演じた内田貴史の演技もきっちり魅せた。

ふざけた芝居かと思っていたがヤラレタのだ。
終わりなき将来を思い、18歳の剛は空に向かってむせび泣いた。オンオンと。

終わりなき将来を思い、18歳の剛は空に向かってむせび泣いた。オンオンと。

青年団若手自主企画 だて企画(限定30席!)

アトリエ春風舎(東京都)

2011/01/14 (金) ~ 2011/01/25 (火)公演終了

満足度★★★★

まんま、生徒
劇場に入った途端、制服姿の女子からタメ口で話される。
ここで、「あん?!敬語と丁寧語をこれでもかってくらい使いまくりなさいよ!」なんつって抗議はできない。だって歳はくってても同級生だからだ。
しかし、観客の殆どは既に立派な社会人になっちゃってるから、タメ口を叩かれてもタメ口で返す観客は皆無だ。ようするに大人は社会人としてのポジションをわきまえて頑なに守りきってるから、いくら演技とはいえ常識が邪魔をして他人にタメ口を吐けないのだった。笑

ネタバレBOX

客席はない。劇場に入るとそこは、まんま教室。つまり全員が同級生だ。観客はみんな静かに観る体制なのだが、そうは問屋がおろさない。無理にでも一員にさせられるのだ。嫌だなんては言えない。

しかし、ワタクシはこういった参加型の芝居はすこぶる好きだ。しかも高校生になれるなんてチャンスはもう、二度とない。制服だって着たいくらいだ。白いソックスを三つ折にして短いスカートを穿いてポニテで登校したいくらいだ。

だから嬉しくて仕方がなかった。仕方がなかったから目の前の教師がシリアスな演技をしようが、同級生が九州に転校しようが、前田先生の弟が死のうがそんなことはどうでもよかった。どうでも良かったから始終、笑みがコボレテ教室はシリアス満点なのに、こっちの気持ちは笑いが止まらないのだった。

つまりはものすっごく楽しめた。観客にもうちょっと自由な発言機会を与えてもいいような気はしたが、まとまりがつかなくなるのだろうか?

海老根が転校するシーンで顔をくしゃくしゃにさせながら涙する役者魂が凄い!と感じた舞台だった。よくもまあ、あんな状況で泣けるもんだ。

青いかぜにふ~かれて~~♪

音楽導入も最高!
終盤、出演者の名前と序盤に撮った写真が映像で流されるがこのアイデアも凄くいい。
もしかしたら、もういっかい参加するかも。笑
第5回公演 U-ru ウル

第5回公演 U-ru ウル

トランジスタone

調布市せんがわ劇場(東京都)

2011/01/12 (水) ~ 2011/01/16 (日)公演終了

満足度★★★★

おしゃれな古代人
小笠原諸島の無人島には古代遺跡らしきものがあり、それはどうやらグスター族のものらしい。かつて、彼らが島に根付きそこを恵みの地とし、幾年もの年月を重ね、やがて火山は爆発した。

以下はねたばれBOXにて。。

ネタバレBOX

彼らは火山の爆発を神の怒りに触れたとし、守り人なる神に近き人を祀りこれにすがり、ウルという御霊にもすがっているだけだったが、ある者からテオシンテの種を授かり、荒れた土地を耕しこれを撒き、これを芽吹かせ、そうしてグスター族そのものを成長させる古代歴史ロマン。

その無人島に降り立った考古学博士は古代遺跡の痕跡に触れた時、彼の前に蘇った古代の人々が活き活きと息づく。彼らからはこちらが見えないが、彼らの生活は火山の爆発前の活力に溢れた島での幸福で満たされた時を描写する。

博士はどんどんその世界に引き込まれ、あたかもグスター族のテリトリーに入り込み囚われの身になったような風景になるが、たぶんそれは時間軸の交錯の瞬間なのだと理解するが、もしかしたら博士の妄想の世界なのかも知れない。

遺跡発掘チームと、古代の人達の思いが交錯し立ち現れる瞬間を綴った物語だったが、全体的な構想はしっかりしていたと思う。古代人が何を考え、また現代人がロマンを追いかけたい気持ちを考古学という最もロマンを空想できる題材にしたのも功を奏したと思う。

しかしだ・・、古代人のキャストらがマニュキアを付けまくりばっちりメイクし、現代風の髪形をして、ちゃなりちゃなりと歩く姿は、到底古代文明を想像し難いし、またその世界観に浸れなかったのは事実だ。

舞台とは観客をどこまでその世界観に誘導できるか、どこまで騙せるかが勝負の分かれ道だとも思う。古代文明人なら顔も汚れていたろうし、歩き方ももっと違うような気がするのだ。だからワタクシから言わせるとマニュキアなんてとんでもないし、ましてや女優陣は「綺麗に見せたい」と考えてるようでは演技力が雑と思われても仕方がないと思う。こうしたちっさな事の手落ちが観客を落胆させるのだ、ということを演出家は肝に銘じて欲しい。

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