カルナバリート伯爵の約束 公演情報 メガバックスコレクション「カルナバリート伯爵の約束」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    今まで観たメガバの舞台で一番秀逸!
    今回もセットに凝る。箱の半分をセットに使う意気込み。東京芸術劇場レベルの舞台でもイケル舞台セットは事故車両とそれらの忌々しい惨事を演出していた。舞台セットに場所をとられた分、客席数を減らすという意気込みは観客にとってひじょうに贅沢そのものだ。毎回、感じることだが、帝国劇場などで観る舞台よりも、たった40~50人の観客の為に演じられる舞台のほうがずっと素敵なことなのだ。

    ネタバレBOX

    物語は山深い列車事故現場から。前日の大雨によって、脱線、崖下に転落した列車の中を軍による救出作業は続く。しかし日没とともに中断され、二人の若い兵隊、バロンとアーツだけが現場を維持する目的で残された。上官から謎めいた事項を言いつけられた忠告は4つ。
      一つ、どんな問いかけにも応えてはいけない
      二つ、岩塩で囲まれた白い円から出てはいけない
      三つ、奴らの言葉は何一つ信じてはいけない
      四つ、どんな小さな事でも奴らと約束をしてはいけない

    彼らは上官の忠告通りに岩塩で囲まれた白い円の中に入り込むと、やがて少女・アムが現れる。しかしその少女はさっき、彼らが死体として確認済みだったはずだ。バロンとアーツは怯えながら、それでも上官の忠告通り白い円からは出ずに成り行きを見守っていると、次々に何人かのゴーストたちが集まってくる。列車事故で亡くなった犠牲者たちだ。

    しかし彼らは白い円の中に居るバロンとアーツが見えないようだった。塩が苦手なゴーストには岩塩で囲まれた白い円の中は生きてる人間の保護地域となって安全だったのだ。しかしゴースト達の会話を聞いているうちに2人の兵隊たちはいくらかの興味といくらかの同情といくらかの正義感でゴースト達と話してみたい衝動にかられてしまう。

    こういった怖いもの見たさに対する人間の深層心理の描写、そしてあの世とこの世の繋がりの狭間、情景の描き方は滝一也の上手いところだ。

    やがて2人の兵隊たちはまるで何者かに憑りつかれたように岩塩で囲まれた白い円から出てしまい、ゴースト達と会話してしまうのだ。兵隊たちはゴーストらと酒を飲みかわし意気投合し問いかけに応え、奴らの言葉を信じようとする矢先、ある約束を執拗にさせられそうになる。

    この「約束」という部分で物語はクライマックスを迎え、なんだかとてつもない恐怖が兵隊たちにも、観客たちにも忍び込み、まるで死神が「この約束を守れなかったらお前の魂を頂くよ。」的に寄り添ってこちらをじっと見つめているような感覚に陥ってしまう。

    上官の忠告、ゴーストたちの言葉、どちらが真実で、どちらが陰謀なのか迷いながらも兵隊たちは彷徨える魂たちを沈め彼らとの約束を、これから生きていく自分たちの未来に向かって精一杯努力するという方向に持っていく。

    ハラハラドキドキしながら観ていたワタクシは、もしかしてバロンとアーツがゴーストたちに憑りつかれてしまうのではないか、そうして兵隊たちを自分の支配下に置き、生きてる人間のものであるこの世を乗っ取る気ではないか、などと勘繰って、気持ちは戦闘態勢の準備をしていた。笑
    繋がりを求めて彷徨う魂には気の毒だが、元来、この世に君らの居場所はない。

    終盤、バロンとアーツが自分の人生を見つめなおし希望に転換させる終わり方は素敵だった。どの役者も演技は素晴らしかったが、やはり、主軸となったバロン(新行内啓太)とアーツ(下田修平)の演技力がなかったらこの物語がここまでワタクシを興奮させることはなかったと思う。芸術性に溢れた素晴らしい舞台だった。

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    2011/01/24 15:20

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