義経千本桜
木ノ下歌舞伎
京都芸術劇場(京都芸術大学) 春秋座(京都府)
2012/07/07 (土) ~ 2012/07/08 (日)公演終了
満足度★★★★
木ノ下歌舞伎「義経千本桜」3「吉野山」「河連法眼館[通称|四の切]」観ました
悲壮さただよう原本が、劇団四季をも彷彿とさせる、楽し過ぎるエンターテイメントに(笑)おそろいの衣装の役者が総出演で世界を形作り、全ての物語が鼓に宿る。そして、親子・主従・恋人、様々な絆も、織り成す飾り紐のように収束…大団円へ。狐の動きと、静様の制御された身体と、後で出る癒し系の声のギャップが妙に印象的(笑)。
義経千本桜
木ノ下歌舞伎
京都芸術劇場(京都芸術大学) 春秋座(京都府)
2012/07/07 (土) ~ 2012/07/08 (日)公演終了
満足度★★★★
木ノ下歌舞伎「義経千本桜」2「椎の木」「小金吾討ち死」「鮨屋」観ました
悪漢が一転して忠義者になる、原本に忠実な凄まじい強引さ(汗)事の次第をあざ笑う、あまりに現代的な維盛さえも、うむを言わさず存在する、古典パワーのにじみ出る権太の前についに自壊…また涙しそうに。美術、感覚、所作等の入り混じる違和感も不思議。あいま合間の遊びもまた感覚の張り方を変える。3演目の中ではもっとも分かりやすかったのでは?
義経千本桜
木ノ下歌舞伎
京都芸術劇場(京都芸術大学) 春秋座(京都府)
2012/07/07 (土) ~ 2012/07/08 (日)公演終了
満足度★★★★
木ノ下歌舞伎「義経千本桜」1「渡海屋」「大物浦」観ました
義経や安徳の非人間的クールさと、知盛や典待局のみっともない人間くささの対比に涙しそうに。赤と白、平家と源氏、生と死…衣服は生者の思念を含む影…それを道連れに消える男の悲壮さ。照明も空間や人間を浮き立たせてステキ。美し過ぎるビジュアルも悲しい…練り返す物語、身体が同じ演出家の舞台「再/生」を連想させる。3演目の中では一番分かりにくい部分も多いけど、観客が自由に観られる面も大きい。
東京アメリカ
範宙遊泳
こまばアゴラ劇場(東京都)
2012/07/08 (日) ~ 2012/07/15 (日)公演終了
満足度★★★★
範宙遊泳「東京アメリカ」観ました
「20年安泰。」以来1年ぶりの範宙遊泳。(開演前には平台や衣装ハンガーが所狭しと並んでいた)劇場という非日常の空間に、(生身の役者が入って)稽古場という仮初めの世界が立ち上がり、(東京→アメリカの間に本物の休憩が入った後)さらにそこを虚構の劇世界が侵食…SFからの野暮ったい道具立てが、余計にP・K・ディックの小説を連想させる。現実を誠実に観察、事細かに描写すればこそのメタ構造。欲を言えば、人を不安にさせるあのメタな展開をもっと観たかった。しかしまさか、名古屋に範宙遊泳が来るとは…名古屋の協力・右角81さんに感謝!
バーサよりよろしく / また逢う日まで
百景社
三重県文化会館/津あけぼの座スクエア(三重県)
2012/07/14 (土) ~ 2012/07/15 (日)公演終了
満足度★★★★
百景社「また逢う日まで」観ました
(役者の身体・精神も含めて)観客の目の前でじわじわと組み立てられる劇空間と、視覚・聴覚から幾度もさらけ出される実空間の、距離感の計り合いが観てて気を抜けない(津あけぼの座スクエアならでは)。テキストも、非常に現代的に感じられて刺激的(特に終演5分ぐらい前に、連続殺傷事件を突然連想して、ぞっとしたり悲しくなったり…)。個人的には、「三重県文「バーサよりよろしく」よりも、野趣溢れる(笑)こちらの方が好み。それにしても、一つの劇団の違う魅力を同じ日に味わえるという贅沢…(ゲップ)
バーサよりよろしく / また逢う日まで
百景社
三重県文化会館/津あけぼの座スクエア(三重県)
2012/07/14 (土) ~ 2012/07/15 (日)公演終了
満足度★★★★
百景社「バーサよりよろしく」観ました
水の使われ方が、様々な意味を持って見えて面白い(身体・心理的重圧、酒びたり、感情のほとばしり、不安定な状態等)。追いつめられ狂気に浸る人の弱さと、それでも誇りを取り戻す気高さ。原本にないという演出家っぽい男に、メフィストフェレスのイメージが重なって見える。戯曲を読んでから観た方が良かったも。一人芝居にしてもおもしろくなりそう。…じつは、背景のアレがどうにも解釈できてません…何だったんだろう、あれは…(汗)
HR
七ツ寺共同スタジオ
サブテレニアン(東京都)
2012/07/05 (木) ~ 2012/07/07 (土)公演終了
満足度★★★★
七ツ寺プロデュース「HR」観ました
約1年前に七ツ寺共同スタジオで上演された、初演・名古屋版も観ました。今回は出演者が13人から5人に。インタビューを交えたテキストや、世界の重なりを意識する音の力が、コンパクトな空間に濃密に凝縮。個人的には、13人の異なる身体が広い空間のどこかで常に動いている、バラエティーに富んだ名古屋版の方が衝撃的。しかし今回も、想像力を刺激。初見の東京の役者さん二人も、興味深く観れました。今回聞いた「風景にしたい」という演出家の言葉に、1年置いて納得。あと、終盤で背景の白布上に、無数の横垣のテキストが浮んでみえた気がする(錯覚?幻覚?)のは、密やかな映像処理化か、想像力の賜物か、ただ眠くなっただけか。。。観客力が試される舞台。
-HAIKAI面構劇場- 「大須ドン底」
ハラプロジェクト
七ツ寺共同スタジオ(愛知県)
2012/07/01 (日) ~ 2012/07/09 (月)公演終了
満足度★★★★
ハラプロジェクト「大須ドン底」観ました
以前、芸文小ホールで正スタンダードな演出の「どん底」を観ましたが、今回は「どん底」らしからぬ、泥臭くもあっけらかんとして、生き生きとした舞台。花道のすぐ脇に座ったので、時折役者さんのはらむ風や衣装の端がかすめてくる。途中に挟まれる大須商店街回遊(狭い路地での怪しい演出等)は、もっと体験してみたかった。その先での古墳公園の一幕、もっともヤバい場面を遠くから覗き見してるようで生々しい…ハラプロジェクト初の七ツ寺共同スタジオ公演は、普段より自由度が高い印象。
人の気も知らないで
iaku
atelier SENTIO(東京都)
2012/06/29 (金) ~ 2012/07/01 (日)公演終了
満足度★★★★
iaku「人の気も知らないで」観ました
つくづく、ひとと人とは違うものだなあ…話し合ったからといって、簡単には分かり合えない。多重に関係性が重なる間柄での計算された会話劇へ、できれば話題にしたくない強烈なポイントを容赦なく投入。関西の軽妙なノリとアレが続くのかと思いきや、行きがかり上、人間的に非常に危険な領域へ踏み込みながら、相手の懐を探るやりとりが延々と…胃が痛くなりそう(´Д`)ラストがちょっとすっきりし過ぎた気もするけど、これくらいがちょうどいいかも。唯一の男が癒し(笑』。
ハイライフ
東北えびす
七ツ寺共同スタジオ(愛知県)
2012/06/26 (火) ~ 2012/06/27 (水)公演終了
満足度★★★★
SENDAI座☆プロジェクト「ハイライフ」観ました
最底辺で生きる犯罪者4人が合流しての、それぞれのまるで懲りないバカ人生を書いた現代アメリカ演劇(厳密にはカナダ)を、仙台の実力派演技陣がパワー全開かつ巧みに。小細工のない素直さが、逆に新鮮な印象。倫理の規制も個人の信念も一本通らない、価値基準の違う世界。あんな腑に落ちないはずのラストがしっくり来るとは不思議…。
SOTOBA-COMACHI 【初演版のダイジェスト動画を公開しています】
一徳会/鎌ヶ谷アルトギルド
アトリエみるめ(静岡県)
2012/06/23 (土) ~ 2012/06/24 (日)公演終了
満足度★★★★
一徳会/K.A.G「SOTOBA-COMACHI」観ました
怪。。。廃工場跡のアトリエに入ったダンプの存在感。荷台にしつらえた立体空間で繰り広げられる、横溝正史ものの表紙が頭に浮かぶ異様なビジュアル…古典的な人外の世界を常識外れの手法で(油圧の力で視点、重力の変化)。今まで観たセンティオ組からは想像もつかない。。。動画を見直してみたけれど、声の力もすごい。説得力あり過ぎ。もっとこういう舞台を観て、茫然としたりガーンとショックを受けるべきだなあ…。
THE BEE Japanese Version
NODA・MAP
静岡芸術劇場(静岡県)
2012/06/22 (金) ~ 2012/06/24 (日)公演終了
満足度★★★★
NODA-MAP「THE BEE」観ました
アトリエみるめへ行く前に、急遽並んで取った当日券で、一階最後列から観れました。報復の連鎖の日常化、狂気の段階を経た定常化を、残酷にコミカルにパワフルに客観的に構成。徐々に狂いゆく基準。意識下で肥大、増殖する蜂の煩わしさ。役者・舞台・映像など全てが高度に制御され、一つの流れになった有機的な舞台。そして、野田さんが近藤さんをさしおいて踊りまくってたのが印象的(笑)演技もダンスも切れ味鋭過ぎ。いまお幾つだっけ…(汗)
ねむるまち
劇団うりんこ
うりんこ劇場(愛知県)
2012/06/23 (土) ~ 2012/06/24 (日)公演終了
満足度★★★★
うりんこ「ねむるまち」観ました
東京公演時にツイートで見た「開演前に子どもたちと目を合わす」というくだりが気になり、愛知で急遽開かれた千秋楽公演へ。観ながら、ムーミン原作者の短編集を読んだ気分を思い出す。みんな不安を抱えてまんじりとしない時を過ごしているけれど、、いつかは光指す時も来る。あとは、そちらへ一歩踏み出す気持ちを。年配の大人にも観てほしい舞台。スウェーデンの演出家による独特の演出や美術等も、既成概念にとらわれず刺激的。海外演出を身近に見れる面白い機会でした。うりんこは基本的に、毎回作家も演出家も変わるので、いろんな気風を味わいに足を運びたくなります。
ドコカ遠クノ、ソレヨリ向コウ 或いは、泡ニナル、風景
マームとジプシー
PRUNUS HALL(桜美林大学内)(神奈川県)
2012/06/22 (金) ~ 2012/06/24 (日)公演終了
満足度★★★★
マームとジプシー「ドコカ遠クノ、ソレヨリ向コウ 或いは、泡ニナル、風景」観ました
縦長の舞台上で、薄い鉛筆で何度も重ねてなぞるように、淡々とリフレインし交錯し角度を変えて語られる、数人の男女達ひとり一人の人生。舞台の形が象徴するある場所で一まとまりとなり、変えられない結末へ向けてゆるゆると収束。予想外に社会性が強く、走馬灯のように切ない舞台。たわけたDJブースや他愛ないラップが、不思議に切なさを際立たせる(笑)。20年安泰。の短編以来1年ぶりに観ましたが、力強い舞台でした。
THE ICEBREAKER ~その凍てつきし場所で~
ネオゼネレイター・プロジェクト
「劇」小劇場(東京都)
2012/06/20 (水) ~ 2012/06/24 (日)公演終了
満足度★★★★
ネオゼネレイター・プロジェクト2012「THE ICEBRAKER」観ました
世界の変化が人々の変化を。限定環境に密集するカオス…変異は一段と進行。もう「〇〇だから敵、味方」という単純な線引きが通用しない事態に、入り乱れ例外無く変わり行く私達…この先どうなるか分からないという不安感を抱えつつ、それぞれの信じる道を歩くしかない。前作「THE NIGHT HAWKS」から一年の期間を置いた意義を感じる、現実世界に即したB級SFホラー舞台。ネオゼネの舞台は、終わった後も観た人の中で続くなあ。
星の結び目
時間堂
こまばアゴラ劇場(東京都)
2011/12/22 (木) ~ 2012/01/02 (月)公演終了
満足度★★★★
時間堂「星の結び目」観ました
しんしんと静かに雪が降り積もるような舞台。幾重にも折り重なる人の気持ち。外に出したものと内に秘めたものが複雑な営みを築き、振り返る事はできても引き返せない道に。流れの戻らない川のように…人がそこにいるから愛憎が伝わる、しっとりとした上質の芝居でした。
此処か何処か
よこしまブロッコリー
K・Dハポン(愛知県)
2012/06/12 (火) ~ 2012/06/17 (日)公演終了
満足度★★★★
よこしまブロッコリー「此処か何処か」観ました。
ひとの気配の手触りを大事にする繊細な舞台。「いる」と「いない」はほんのわずかなズレ。すべてが理解できなくても、ひとと人とはつながっている。違う位相が薄絹のように重なる光景が自然に流れる。K.Dハポンという会場と相まって、「空間自体が巨大な楽器でその中で震動を感じる」ように鑑賞できました。目の前の物語は終わっても、流れはまだ続いていく…。しかし、よこしまの感想は詩的になるなあ(笑)肌から敏感になって感じたい舞台。
最強の一人芝居フェスティバル 東海版 ”INDEPENDENT:TSU”
津あけぼの座スクエア
四天王寺スクエア(三重県)
2012/06/09 (土) ~ 2012/06/10 (日)公演終了
満足度★★★★
津あけぼの座スクエア「INDEPENDENT:TSU」観ました。
都合でBプログラムのみ観ました。これまでの創作を基に着実にステップを踏んでいたり、既成概念にとらわれない新規の創作をしたりと、一人芝居4作品それぞれが独自の創作スタンスを持つ。そんな中、大阪からの招聘作参加作品は、綿密な設計を鍛錬した肉体で披露して、横綱の貫禄(笑)。Aプロ3作品も観たかった…観た後は、自分も一人芝居をやりたくなるが、道は険しいぞ~。
翔べ翔べ翔べ!!!!!バナ学シェイクスピア輪姦学校(仮仮仮)
バナナ学園純情乙女組
王子小劇場(東京都)
2012/05/24 (木) ~ 2012/05/27 (日)公演終了
満足度★★★★
バナナ学園純情乙女組「翔べ翔べ翔べ!!!!!バナ学シェイクスピア輪姦学校(仮仮仮)」観ました。
煽り文句にもみられる反体制闘争というより、「祝祭」としての無礼講のように見受けられました(無論、送り手が好き勝手するのでなく、受け手が観客席の常識から解放され、危険を孕んだ喜びを享受する)。ブリューゲルの絵の如く、卑俗で野蛮なのに神々しさすら感じる。そして、演劇寄りな強弱のドラマ性も。これからどんな方向へ向かうのか…帰り道、左耳に詰まった食塩の塊をほじくり出しつつ考えました。…しかし、ここ一両日中の様々な問題(観ないで激しく非難する人、芝居に紛れて暴走した出演者等)を見ると、主宰の思想、手法の強度がハンパなく求められるのだなあ…ともあれ、安住しない男気を期待。
[追記] 「一度に全ての事象を把握できない」という点で、昨年末に名古屋で観た、双身機関『阿片戦争』(作・寺山修司 演出・寂光根隅的父)を思い出しました…劇場で迷いそうになるカオス。
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shelf
atelier SENTIO(東京都)
2012/05/24 (木) ~ 2012/05/27 (日)公演終了
満足度★★★★
shelf「[edit]」観ました。
役者の体内で練られた言葉が、そのまま役者の形をして舞台上に浮び出たかのよう。言葉に脳を揉みほぐされる気分。役者がそのままじわじわと、SENTIOの白い壁の中に消えていくと理想的なのかも(無茶振り)。引用したアンティゴネもそうだけど、表現スタイル自体も既成概念の際々を攻めているのが、静かに祈りつつ挑戦的にみえる。静岡・アトリエみるめで観た「幽霊」と好対照の、神殿の神託を思わせる神々しい舞台でした。終演後退出する時に、靴を脱いでいる足で舞台の面の触り心地を確かめてしまった…。