Black Coffee
loop
大倉山記念館ホール(神奈川県)
2015/01/27 (火) ~ 2015/01/31 (土)公演終了
満足度★★★
味わいがあるも終盤の演出が好みでなかったのが惜しい
アガサ・クリスティの初戯曲を神奈川県指定有形文化財である大倉山記念館のホールで上演。
正統派推理劇である内容はもちろん、ホールを邸宅内、舞台部分を“現場”に見立て、本来の客席部分の真ん中を花道にした対面客席という使い方も味わいあり。
がしかし、大団円で真犯人とポアロ、ジャップ警部との会話がまだ続く中、早目にラテン風のジャズを(しかも大きめの音量で)流したのは映画かドラマのようで興醒め。
演出家と自分とのセンスに相違があったようで残念。
わたしが消えた
普通のラジオ
新宿眼科画廊(東京都)
2015/01/23 (金) ~ 2015/01/28 (水)公演終了
満足度★★★★
どこかアヤしくどこか不穏
劇団普通と日本のラジオの合同公演にして一方の主宰が書いた一人芝居をもう一方の主宰が演ずる2編でそれぞれが書いた三人芝居を挟むという「ダブルパティのハンバーガー」的構造。
どこか「アヤしい」「不穏」な雰囲気が両団体を結び付けている感じ?
1編目の「箱」と3編目の「人形」は劇団普通の石黒主宰の作品。
表面的にはそうでもないが、奥底に得体の知れないものが潜んでいるような不気味さアリ。
日本のラジオ・屋代主宰作品「コクミンノキュウジツ」(2編目)は、珍しくコミカル。
がしかし、不条理っぽいところがあったり、「仕事」に関する風刺が感じられたり。
考えようによっては「大人の賽の河原」でもあるか?
同じく屋代主宰作でラストを飾る「ワタシガキエタ」もどこかコワい。いろいろな解釈の余地があり「消えたのは誰?」な脚本が、石黒主宰の演技によりホラー気味になった、みたいな?
結論「劇団普通はコワそう」(笑)
あらううた
劇団五〇鬼
北池袋 新生館シアター(東京都)
2015/01/27 (火) ~ 2015/01/28 (水)公演終了
満足度★★★★
五〇鬼ならではの作品
あずきあらい伝説のある岡山県の山奥の村に分家の娘・綾が20年ぶりに帰省した日は朝から殺人事件が起きていて…な物語。
あれやこれやで金田一シリーズを思わせて始まりながらコミカルに展開し、やがて明かされる切実でおバカ(←褒め言葉のつもり)な真相が独特。(以下ネタバレBOXへ)
This is 30
シンクロ少女
スタジオ空洞(東京都)
2015/01/23 (金) ~ 2015/02/01 (日)公演終了
満足度★★★★
シンクロ少女としては異色?
シンクロ少女としては異色のポンコツ三兄弟のロードムービー的コメディ。
兄弟を持たない身ではあるが、もしもいたらあんな会話になるんじゃないかな?と時にニヤニヤ、時にワッハッハ。
である一方、兄弟愛というか兄弟の絆的なものがしっかり根底に流れていて、ちょっとホロリとしたりも。
また、挿入される時制の異なる場面が観ているうちにいつのことかとかすんなりワカるのも巧み。
さらに、プロローグで語られることが本編の展開を暗示していたり、三兄弟の個性を「ある場面」の選曲で示したりするのも上手いし、ご多分に漏れず末っ子(中田麦平、イメージチェンジ!)がしっかりしていて「そうだよねぇ…」みたいな(笑)。
『雪の女王』/『グレイシア』
劇団やぶさか
黄金町 高架下スタジオ Site-D 集会場(神奈川県)
2015/01/17 (土) ~ 2015/01/25 (日)公演終了
満足度★★★★
アイデア、センスが光る
アンデルセン原作の短編とそのスピンオフ的なオリジナル中編(60分弱)の組み合わせ。
その構成や童話風だが子供騙しでない…どころかむしろ大人向けな内容、原作を25分余に収めるための端折り方など随所にセンスが光る。
樹のミニチュアを植えた円盤の中央に電球を灯し走馬灯的に壁に影を流して走るシーンを表現したり、会場の真ん中にある支柱の蔭を舞台袖的に使う(小道具を置くなど)とかのアイデアもなかなかに良い。
また、フルートとピアノの生演奏による音楽も贅沢で、オープニングのグノシェンヌとヴィヴァルディの「四季」(の一部)の編曲が特に印象的。
凛
演激集団INDIGO PLANTS
武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)
2015/01/15 (木) ~ 2015/01/20 (火)公演終了
満足度★★★★
休憩なしの140分もさほど長さを感じず
水色桔梗紋の旗を再び掲げるべく女を捨て武将の道を選んだ明智光秀を中心とした戦国絵巻。
今まで光秀を主人公としたものを観ていなかったのであれこれ新鮮。
信長に対する危機感を濃が光秀に伝える場面でイスカリオテのユダを思い出したりもする。
後半の光秀が仕掛けた一大トリックも(読めるけれど)虚構として面白く、「斬り落とした手の指が動く」「大きな水色桔梗の旗を羽織って間もなく衣装が変わる」などのイリュージョンもあって休憩なしの140分もさほど長さを感じず。
しかしクライマックス、あそこまでできたのならわざわざ秀吉を立てなくても光秀がそのまま天下を獲って良いのでは?…な気がしないでもない。
いや、父殺し、主君殺しを罪に思って、というか、そういう過去を持つ自分が天下を獲っても反発する者がいる、という判断か?
ところで父親の幻影は沙翁のアレのオマージュ?(笑)
髷や衣裳は本格的で、装置はイントレという舞台美術も効果的と言うか、良かった。
自己オマージュ=シャウクロス
劇団パラノワール(旧Voyantroupe)
サンモールスタジオ(東京都)
2015/01/15 (木) ~ 2015/01/22 (木)公演終了
満足度★★★★
あしきからこそより純粋を知れ
戦場帰りで殺人を繰り返す男を通して戦争による狂気を描き出しているが、戦争によって狂気に至る過程ではなく煮詰まり抽出された狂気を見せるので強烈にして独特。
ラストシーン(ジーザス・クライスト・スーパースターの「イエスの宮」後半(♪See my eyes,I can hardry see♪以降)を想起)は主人公の悔恨あるいは良心の呵責が狂気によってモディファイされたもの?
また、前日譚的な【見ろ】を先に観たので娼婦たちが〇〇に見える、なんて部分など「なるほど、確かに!」状態だったのも嬉しい。
喩えて言えば【見ろ】が前菜とスープで【知れ】はメインディッシュ的な感じ。
そして【見ろ】は戦争そのものを語り、【知れ】は戦争に起因する人間の狂気を描いた、というところか?
自己オマージュ=シャウクロス
劇団パラノワール(旧Voyantroupe)
サンモールスタジオ(東京都)
2015/01/15 (木) ~ 2015/01/22 (木)公演終了
満足度★★★★
あることよりあるべきを見ろ
第二次大戦中、4人だけになってしまった日本軍の部隊が接収しようとした村はやけに協力的で…な状況から始まる物語。
事前情報通りに笑いも多いが、次第に変容。
占領とは、捕虜とは、虐殺とは、さらにそれらひっくるめて戦争とは、そしてどうしたら戦争が終わるのかなどをサラリと語るんだもの。
変に深刻ぶったりいかにも大事そうに語るよりずっと響く。
村の「占領コーディネーター」や「援軍」のラインナップや強さなんかも愉快だったなぁ。(どういう発想をしているんだか…(笑))
あと、百眼女優陣のよく通る特徴的な声に改めて感心。
軽い重箱
殿様ランチ
新宿眼科画廊(東京都)
2015/01/11 (日) ~ 2015/01/21 (水)公演終了
満足度★★★★
Aチーム
1編目(「あいつの身代わり」)、投影される背景がBチームの1編目と同じなので「もしや?」と思ったら案の定対を成すもので「なるほど…」と。
それどころか他の2編(「人の金」「失われた記憶」)もそれぞれにBチームとリンクしていて、一方だけでも面白いが両方観るとより楽しめるシカケに感心。
ちなみに「あいつの身代わり」では原典の主人公名が出てくるのに対して「恥じれ」では出てこないので、Bチームが先で正解だったかな?とも思ったり。
軽い重箱
殿様ランチ
新宿眼科画廊(東京都)
2015/01/11 (日) ~ 2015/01/21 (水)公演終了
満足度★★★★
Bチーム
1編目(「恥じれ」)は一見ありがちな状況ながら時折違和感が見え隠れ。そうして内容がワカった時の可笑しさと言ったら!
2、3編目(「広告塔」「張り込み」)はともに「ある職業」のひとコマを描き、いかにも「ありそー!」で笑いを誘われる。(3編目は実際の会話に基づく部分もあるとの由)
語り過ぎず潔い幕切れも鮮やかだし、巧い。
奇跡の年 ANNUS MIRABILIS
趣向
KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)
2015/01/10 (土) ~ 2015/01/12 (月)公演終了
満足度★★★★
Don't think, feeeeel!
翻訳家出身の小説家と担当編集者、未来から来た少女、小説内の世界が描かれながらも次第にそれらの境界が曖昧になってゆき…な「オノマ流終末SF純演劇」にして趣向としては異色作?
ストーリーテラー的に登場した少女が小説家の所に現れ、やがて他のパートにも“侵入”して行くのだが、その度により深く迷宮の奥に入り込むようで夢の中を彷徨する感覚?
全体的には悪夢を見ているようなトーンだが、ラストに微かな救いがあるのがイイ。
これもまた「考えるのでなく感じる」タイプであろう。
奇しくも前年12月に観た劇団桟敷童子の「体夢 -TIME-」に通ずる点が複数あり、また、チャペックの「RUR」を思い出したりもして、そのあたりと脳内で絡ませながら観るのも楽しからずや。
Q体同様、照明の使い方が巧く、時として客席入口あたりまで使う演出も〇。
新春玉山福袋
花まる学習会王子小劇場
王子小劇場(東京都)
2015/01/15 (木) ~ 2015/01/17 (土)公演終了
満足度★★★★★
各作家の個性丸出しな作品群
王子小劇場版「あまうめ」にしてそれぞれに色の異なる6編の短編。
仮に共演者が固定か存じ上げない方ばかりで作家を伏せられて観たとしても池亀作品、モラル作品はワカったろうし、裕本作品、北川作品も当てることができた(あとのお二方の作品は今回初めて)のではないか?というくらいに各作家の個性丸出しな作品群で伝説の名優(怪優?(笑))玉山悟氏の演技を堪能。(もちろん共演者の演技も)
これだけ充実した内容で1000円(台本集だって500円だ)というまさしく福袋な公演、機会があったらまた演っていただきたい。(爆)
そうそう、榊菜津美嬢は「アマヤドリではまず見ることがないであろう榊菜津美」ではあれど「池亀作品ではお馴染みの榊菜津美」だったなぁ。(笑)
男は二度死ぬ・その一度目!!~その三~
ライオン・パーマ
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2015/01/15 (木) ~ 2015/01/19 (月)公演終了
満足度★★★★
とッ散らかった感もあるが後半は胸アツだし、総じて満足
前半は傍系の挿話など盛り沢山でとッ散らかった感もあるが随所に熟練職人の名人芸的な会話の妙と男の粋が散りばめられているし、各キャラが一方向に進んでまとまって行く後半は胸アツだし、総じて満足。
芝居がかって凝った前説も実は本編に繋がって…と言うかラスト前の伏線になっているのも巧い。
あと、チープ(失敬!)なのに機能的な装置もいつもながらお見事。
毒花ーDOKKA-
危婦人
駅前劇場(東京都)
2015/01/08 (木) ~ 2015/01/13 (火)公演終了
満足度★★★★
サービス満点の娯楽ミステリー
地方の老舗ホテルの主人の死から始まる娯楽ミステリー。(前作とのギャップたるや…(笑))
狂言回しとなる人物や現地の捜査責任者の設定(三つ子の老女もそうだね:元ネタは双子だけれど)に国内有名推理作品へのオマージュがあり、物語の展開もそっち系の“お約束”満載…ではありながら、コミカルな部分も少なからずあり、サービス満点♪
事件の真相に関してもなかなかにしっかりしていたが、挿入される回想シーンが時として唐突というか、すぐには回想と気付きにくいこともあったのがちょっと惜しいか?
なお、某出演者の脚線美にも魅了された。
ふりむかないで【終演しました。】
エビス駅前バープロデュース
エビス駅前バー(東京都)
2014/05/01 (木) ~ 2014/05/14 (水)公演終了
満足度★★★★
バーを装置とした芝居
複数の浮気が妻にバレた男の顛末。
笑って観てはいるが実はコワいという「可笑しコワい」オハナシ。
演者がそれぞれ役にハマっているので戯画化されつつも説得力(?)あり。
また、今までにここで観てきた芝居が「バーを舞台にした」(=バーでの出来事をそこで見せる)ものであったのに対して本作は「バーを装置とした」(=バー以外の場も見せる)ものというのが画期的。
オムニー6
劇団K助
野方区民ホール(東京都)
2014/04/30 (水) ~ 2014/05/04 (日)公演終了
満足度★★★★
学校をテーマにした5編オムニバス
学校をテーマに、定時制、卒業式、部活、同窓会系などをコント気味、サスペンス、感動ものなどの形式で描いた5編オムニバス。
作家が4人いるだけにいろんなスタイルがあるのがイイ。
ちなみに個人的には2、4編目が特に好み。
あと、転換時にシルエットながら装置のハケ方向でモメたりイチャついたりなど小芝居をしているのも愉快。転換中でさえも観客を楽しませようという意気やよし。
刻印
innocentsphere
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2015/01/14 (水) ~ 2015/01/18 (日)公演終了
満足度★★★★
中篇2本オムニバス
“刻 -キザム-”と“印 -シルシ-”、実在の事件・出来事をモチーフにした2編で構成。
同じモチーフを異なる描き方で、とか関連性または共通点のある題材を、とかに比べて印象が分散された憾みはあるが、前者の緊迫感、後者のメッセージはそれぞれに〇。
「だいなし」/「本日昔噺」
劇団ウミダ
王子小劇場(東京都)
2015/01/08 (木) ~ 2015/01/12 (月)公演終了
満足度★★★★
だいなし
事前にタイプ・評価の異なる感想を目にしていて正解、その理由が手に取るようにワカって納得。
序盤では「このパターンで来たか」とニヤニヤ、中盤以降、涙を拭うお客さんが見えたり洟をすする音が聞こえるに至っては頬が緩みっ放し。
ここ半年ほど「内容に入り込む人・客観的な見方をする人」について考えていたが、本作はその判定基準になるのではなかろうか?
後者である身としては多かれ少なかれああいうことはあったろうが、全て事実ではなかろうから、どうしてそこまでアツくなるかな?な感覚。
もちろんフィクションだと割り切り冷静な目で観ていても泣ける作品はある。
がしかし、少なくとも本作はそれを目的としてはいないと思う。
また、涙とは逆の批判も目にしたが、海田主宰、してやったりなのでは?
あるいは真に受けられ過ぎて当惑?
個人的には前述のように「あ、これね」と観ていたが、終盤で一人になった場面での役者・海田眞佑と、サプライズ(←これも真偽不明ではあるが)を経た落とし方の巧みさを買う。
加えて、キ上の空論の「空想、甚だ濃いめのブルー」と同様、生成過程に関して疑問が残るのも上手いし好み。
フェイクドキュメントってのはこういうモンさ、みたいな…。
「だいなし」/「本日昔噺」
劇団ウミダ
王子小劇場(東京都)
2015/01/08 (木) ~ 2015/01/12 (月)公演終了
満足度★★★★
本日昔噺
ざっつ・えんたーていめんと、でぃす・いず・正月公演。
「国盗りの陰謀をヒーローが阻止」という王道娯楽時代劇をオールスター的なキャストが演ずる個性豊かなキャラクターたちで彩り、歌やダンス、殺陣まであるという。日本映画全盛期の正月映画の如し。
序盤での早口の台詞回しと単語の前や後に短いポーズを挟むスタイルに初期の柿喰う客を、その後、全体的な感じに X-QUEST を想起。
あと1つ「この既視感、何だっけ?」だったのが劇団☆新感線(帰路で思い当たった)のおポンチ路線と、好きなパターンだらけ。
さらに、所属している団体ではなかなか見ることができない面を見せて下さる出演者…そんなこんなでかなり楽しめた感じ。
ところで劇中でガンガン歌うのはヴィクセンズシアターのお家芸?(笑)
妖精の探し方
劇団Peek-a-Boo
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2014/04/25 (金) ~ 2014/04/29 (火)公演終了
満足度★★★★
Peek-a-Boo的「ピーターパン」
あるキッカケから故郷を訪れ妖精を探した少年時代を思い出す男…な物語。
少年たちと妖精たち(と時々現在の主人公)を併行して描き、大詰めで二者が邂逅するツクリは王道で安定感アリ。
そして、その邂逅場面で子供の頃のキモチを思い出すと共に初演時には気付かなかったオトナになって行くことの「切なさ」を感じる。
そんな意味でPeek-a-Boo的「ピーターパン」ではないかと思ったりも。