ショートストーリーズ
劇団6番シード
劇団6番シード稽古場(東京都)
2009/06/26 (金) ~ 2009/07/12 (日)公演終了
満足度★★★★
Cコース
2週前に観たA・Bコースが「蔵出し」だったのに対してこちらは書き下ろしが中心の3編で80分。
「潜入記者 今井シリーズ (オレオレ詐欺・超能力詐欺)」は連作ショートコント。
テンポは非常に良いが、ネタがネタだけに2話が同工異曲なのがちょっと残念。ベースは同じでも仕上がりが異なっていたBコースの「新妻さん・夫婦さん」と比べてしまうからなおさらかも。
続いての「5分間の物語 ~残り5分の人生~」はキッチリ5分間のドラマ4話のオムニバス。
連作ではなく各話は独立しているものの、「5分間にもいろんなドラマがある」なんて台詞も出てくる第4話が全体をしめくくるようなカタチになっているのが上手いし、孫娘に「6時ちょうどは何の時間?」と問われた時計職人の回答も優しくてイイ。
なお、第1話はこれで4日連続となる友だちに関する部分があり、第2話の人情、第3話の親子ネタにもホロリ。
ラストの中篇「天気と戦う女」は某劇団員の体験がベースという雨女の奮戦記で、6Cには珍しいコメディ。
「雨女って大変だねぇ」「あぁ、ワカるぅ」レベルから始まり、次第にそれがエスカレートして「そう来ますか…」を経て「んなアホな!(笑)」まで行ってしまうのが楽しい。
「雨を欺く」ために待ち合わせ場所を直前まで相手にも伝えないとか、自分のいる場所に降らせないために周囲に雨男・雨女を集めるとか、よくもまぁそんな発想ができること!
マンガ大戦GREAT
YANKEE STADIUM 20XX
シアターサンモール(東京都)
2009/07/10 (金) ~ 2009/07/20 (月)公演終了
満足度★★★★★
新感線・ナイロン級の上演時間も瞬く間
05年夏公演の完全リニューアル版ということで、基本設定は同じだったり(←当然)一部のワザは残っていたりするが、確かにだいぶ変わったような気がする。(実はディテールが記憶の外なので断言できない…(爆))
主人公たちがマンガの中の世界に入ってしまうという「逆『ラスト・アクション・ヒーロー』」…というよりショーマの『アメリカの夜』的な物語、客いじりや1人芝居は控えめで比較的オーソドックス(←あくまで相対論)な感じ? が、その分出演者いじり(むしろムチャ振り?(笑))が多かったか。
この出演者へのムチャ振りもかなり(特に即興的な)演技のトレーニングになっているようで、ここって上演中のハプニングへの対応が(座長に限らず)実に見事。文字通り「当意即妙」で、その柔軟性により遅刻したことでネタにされてしまう客などが仕込みなのではないかとさえ思えてしまうほどで…(笑)
クライマックスの擬闘ではマンガの世界だけに、吹き出しにした言葉や擬音をタイミングを合わせて黒子が出す(これは初演で使ったテだな)ばかりでなく、マンガのコマを等身大にして見せるなんてことまでやったり、メインのアクションの陰でさり気なくスゴ技(ペンのパスとか)をやっていたり、黒子を使って空中浮遊させたりとアイデアを凝らして見せるのもまた見事。
本当に観客を楽しませるためには何でもやりますという心意気が伝わって来て感動すらしてしまう。
また、最近「悪いヤツを “退治” すればイイというモンでもあるまい」と思うことが多いので終わり近くに出てくる台詞
「ボクの描くマンガでは1人も死なせやしない」
「本当のヒーローは誰も傷つけない」
には涙をこらえきれず。(理想論ではあるんだが…)
あんな終盤に二段構えで泣かせるのは反則では?(笑)
そんなこんなで、休憩込み3時間20分という新感線・ナイロン級の上演時間も全くダレず、むしろ瞬く間、みたいな。
『 Deep Sea Fish 』
GOKAN。
シアター風姿花伝(東京都)
2009/07/10 (金) ~ 2009/07/12 (日)公演終了
満足度★★★★
東京で生きる深海魚たち
40歳近いが自閉症でアイドルの追っかけをしている兄を養う男性編集者と、夫と別れ息子を兄夫婦に「とられた」女性教師それぞれを中心とした2つのストーリーの合間に編集者が担当する作家が飼っている2匹の深海魚の会話(!)を挟んだ物語、「東京で生きる深海魚たち」をリアルに描き、それぞれ悲劇的な結末を迎えるが美しく、2匹の深海魚のシーンはシュールでありながらも作品テーマを端的に表現しており、その姿がラストで2人の人物と重なるのは見事。
またその終わり方が切なくてイイ。深海魚が見た夢と登場人物の夢に出てくる「約束」というキーワードがここで結実するのも上手い。
しかも深海魚のかぶり物、太目のシーラカンスに提灯を付けたようなデザインながら、けっこうリアルというのか存在感があるというのか、そんな風に感じる。
白川みなみ、田久保宗稔のお二方はいれずみベービーでのハイテンションぶり(笑)とは真逆のしっとりと落ち着いた演技、一方、宇都宮快斗はASSHでもありうるかも、な感じ?(笑)
いやしかし、こういう方々が同じ舞台に立っているのがフシギといおうか面白いといおうか…。
ひみつのアッコちゃん
劇団ガソリーナ
【閉館】江古田ストアハウス(東京都)
2009/07/08 (水) ~ 2009/07/19 (日)公演終了
満足度★★★★★
さすがじんのひろあき
マンガをそのまま舞台化するのではなく、アレを映像化するためのアッコちゃん役のオーディションを描くというスタイル。その意味では「カンバンにイツワリ」気味かも?(笑) しかも子役ではなく、その親5組との面談でこれが最終審査になるという設定。
「主題(2組)と変奏(3組)」のような形で見せる面談によって5組の親子像がクッキリ浮き上がる前半から、決断を迫られた時に監督と脚本家が初めて明かす映画の構想(その映画を実際に観てみたいというか、シノプシスを聞いただけで観たような気になったというか…)で「現代の友だち関係」に警鐘を鳴らし、最終決断に至る部分では映画制作現場の厳しさや全体の責任者である監督の責任・重圧まで描き、最後の監督の独白(落選者への結果通知草稿:これがまたイイんだ)で画竜点睛を打つ感じ? さすがじんのひろあき、見事です。
出演者では窪田あつこが相変わらず(笑)飛び道具っぷり(爆)を発揮して印象深い。ただし、卓越した歌唱力・表現力に裏付けられたものなんだよね。
また、佐藤寛子もインディーズで映画賞を総ナメという実績をもとに初の商業映画のメガホンをとることになった新鋭女流監督の戸惑い…ちょっと違うな、商業映画の厳しさにふれてまた一段ステップアップするその瞬間といおうか、そんなところを表現して◎。うん、イイ舞台女優になってきているぞ。
さらに5組の面談で、最初は面接官5人が客席に正対して、その手前に受験者が客席向きに座るという基本配置にしておき、その後の2組目と4組目は面接官が下手側で受験者が上手側に、3組目と5組目はその逆に、約45度の角度で舞台中央に向かって座る配置にして単調になることを回避したことにも感心。
向日葵と夕凪【ご来場頂き誠にありがとうございました。】
七里ガ浜オールスターズ
ギャラリーLE DECO(東京都)
2009/07/07 (火) ~ 2009/07/12 (日)公演終了
満足度★★★★★
冒頭3分で心ワシ掴み
もう、冒頭3分あたりで心をワシ掴みにされてしまう。
新井の台詞から「怪物先生」の人となり・たたずまいから放課後の美術室の様子までが眼に浮かぶようだし、その時と現在の新井の心境が心に直接伝わるようで貰い泣き気味。
以降、20年前&12年前の出来事と現在に「時の隔たりの切なさと優しさ」をたっぷりと絡めて描いた60分、中篇ならではの凝縮感…いや、それ以上にギッシリ詰まった充実感まであるか。
さらに夕暮れ前から日が暮れるまでの日射しの変化を刻々と表現した照明と夕凪の直前までさり気なく流れている潮騒のSEもナイスアシスト。
騎士ウォーカー
無頼組合
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2009/07/03 (金) ~ 2009/07/06 (月)公演終了
満足度★★★★
松田優作トリビュートといったオモムキ?
「無頼初連続活劇 “騎士(ナイト)シリーズ” 第1弾」と銘打たれた私立探偵もの、冒頭のシブい詩的な語りは軒上泊的(「べっぴんの町」に始まるシリーズとか)和風ハードボイルドを思わせるも、オープニングダンスで一転し、以降「勝手にしやがれ」を使っての逃亡やチェイスシーンなど、コミカルな味わいもからめて松田優作トリビュートといったオモムキ?
で、本筋もさることながらレギュラー(であろう)メンバーのキャラ設定も魅力的だし、それぞれの過去をチラリと出して伏線としているのも上手く、今後のシリーズ展開(3部作の予定とか)に期待。
また、ラストで装置の陰…もとい、ビルの合間から朝陽が射して主要人物がシルエットになるのがカッコイイ。
あと、ガンマニア的(爆)視点からも拳銃の選択が的確で○。
スメル
キリンバズウカ
王子小劇場(東京都)
2009/07/04 (土) ~ 2009/07/12 (日)公演終了
満足度★★★
多様なドラマが展開
東京郊外の「ゴミ屋敷」を片付けるボランティアたちを描いた物語…などと書くと「オトナの青春モノ」っぽく聞こえてしまうが、一癖も二癖もある面々なので決してそんなことはなく(笑)、多様なドラマが展開されるという…。
その点では北京蝶々の『愛のLーシー』とテイストが近いかも? それにマチネに続きこちらも「純文学っぽい」薫りがするような…。
郊外の一軒家ということで、映画『剥き出しにっぽん』などの雰囲気も勝手に漠然と感じつつ、親子ネタに弱い身として終盤の さくら の落ち込み具合と立ち直りぶりが印象に残る。稲川実代子、さすがだなぁ。
また、「瀬戸内海にある痛みを取る施設」という目くばせにニヤリ。
それにしてもあの産廃、何だったんだろう…う~ん、気になる。
神なき夜に…
東京バビロン
シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京都)
2009/07/01 (水) ~ 2009/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★
楽園王+『ELECTRIC GARDEN』
05年4月にムーブ町屋で観た時(=楽園王を観始めて3作品目)と比べてスンナリと作品世界に入り込めたのは、その後10作品以上観て世界観(あるいは手口(笑))がわかっていたからか?
少年5人を殺して取り調べを受ける男の話と砂漠(?)をさまよう少女の話がやがて…という物語、奇しくも前日に続いて「2つの併行したストーリーが1つにまとまる」スタイルだったが、こういうの、好きなんだよなぁ。
また、基本的に「純文学っぽい」雰囲気なのは共通ながら、初期作品だけに序盤には笑える部分もあって楽しい。(…って、今回の改訂によるものだったらどうしよう?(爆))
スケープゴート
Neo Mask
萬劇場(東京都)
2009/07/01 (水) ~ 2009/07/06 (月)公演終了
満足度★★★
緻密に組まれたパズルのよう
現実界のストーリーと神話的世界のハナシが併行して語られ、最後にそれが1つにまとまる構造であることに加えて、序盤において神話的世界の出来事は現実界の主人公が見る夢とされていながら終盤ではその逆もあったりして「胡蝶の夢」的になるところも好み。
そんな構造なこともあり緻密に組まれたパズルのようで、蝋奇と白木・黒木という名前の意味も含めて2つ(終盤では2つ半ないし3つ)の世界の繋がり方がわかった時には快感すら憶える。
ただ、そのために張り巡らされた伏線が劇中には収まりきれずA4版表裏2頁に及ぶ用語解説となり、開演前にそれに目を通していればイイけれど開演直前に着いていきなり本編を観た客にはかなりわかりにくいのではないか、というあたりは微妙。
東京ディスティニーランド
東京ディスティニーランド
タイニイアリス(東京都)
2009/07/03 (金) ~ 2009/07/06 (月)公演終了
満足度★★★
5時間の長さは感じず
持ちネタ3本、新作1本の一人芝居に女性ダンサー2名を迎えたダンスステージ2つを組み合わせた5時間で、構成は以下。
19:00~19:55「妖刀鬼斬丸」
20:10~20:30「ヴラドおぢさん」
20:50~21:10「貝塚」(ダンス)
21:25~22:20「モンスターハンターやろうぜ!」(新作)
22:35~23:00「コルテオ」(ダンス)
23:15~24:00「世界の果て」
「世界の果て」は以前タナトス6で観たことのある演目ながら、本格的な照明効果によって、まさに「劇場版」な感じだったし、「モンハン…」はお得意の(?)全編アドリブ…どころか行き当たりばったり(←本人曰く)ながら、ちゃんと結末にたどり着くし(そりゃそうだ)、ダンスステージが挟まることによって全体の構成にアクセントもつくし、5時間の長さは感じず。
Smile
S×Sプロデュース
新宿村LIVE(東京都)
2009/06/30 (火) ~ 2009/07/05 (日)公演終了
満足度★★★★
サスペンス風味の人間ドラマ
初見であった前作『SHOUT!!』が核燃料再処理工場に関する社会派だったので、今回は離島での医療問題がテーマかと思いきや、どちらかと言えば感染症が中心のサスペンス風味の人間ドラマ。
最近の新型インフルエンザ騒動が記憶に新しいこともあってか非常に身近に感じられ、変にスケールを大きくしてしまった映画『感染列島』(09年、瀬々敬久監督)よりもずっと説得力があり出来が良い。
さらに、感染症に関する無知のコワさや偏見にも言及しておりそのあたりに「社会派」の香りも漂って、これはこれでかなり満足。
ただ、劇的にしようと一部で音楽を過剰に使うのはいかがなものか。その音量が時としてしつこく感じられたりもしたくらいで。
とはいえ3曲ほど入る生歌は(その入れ方も含めて)とても良い。
天才バカボンのパパなのだ
mass%
神楽坂die pratze(ディ・プラッツ)(東京都)
2009/07/02 (木) ~ 2009/07/05 (日)公演終了
満足度★★★
ポップで若々しく、わかり易い
本作を観るのは初めてなので元来どういう風なのかはわからないが、序盤の「もしも電柱でなかったら…」な会話はイヨネスコにも通ずる別役実作品丸出しで頬が緩んでしまう。
が、全体的にはポップで若々しく、わかり易い(←あくまで比較論)とさえ感じられるのはやはりメンバーが若い(平均年齢は30前らしい)からか?
また、電子煙草を使ったシーンがあり、そんなに煙(らしきもの)が出るんだぁ、と驚くと共に全員が吸うことにより点灯(?)するシーンの美しさに感心。
UNO:R
アップフロントエージェンシー
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2009/07/01 (水) ~ 2009/07/05 (日)公演終了
満足度★★★
青春ドラマの王道的
高校卒業から7年経った同窓会の夜、かつての教師がマスターを務める喫茶店に高校時代の仲良し5人組のうち3人が2次会をパスして訪れ…という状況から始まる物語。
同窓会の招待状が亡くなった姉に届いたのは何故かと問う妹が現れて以降、ライトなサスペンスもありつつ、明かされる真相とそれによってギクシャクしていた友人との関係が修復されるという青春ドラマの王道的なハートウォーミングストーリーなのが上手い。
演技面でも空間ゼリーつながりの出演者などがシッカリ脇を固めていることに加えて、芸達者な村田めぐみを筆頭にメロンメンバーも悪くなく、それなりに満足。(しかしチケット代がちょっとイタい…(爆))
7の椅子 5
7の椅子
荻窪メガバックスシアター(東京都)
2009/07/01 (水) ~ 2009/07/05 (日)公演終了
満足度★★★★
ソラミミっっ!!!
「空耳」に関して、それぞれ違った語義をテーマにした3話オムニバス。がしかし、チラシなどで紹介されている第1話の冒頭部分および壁が10°ほど傾いた装置の心理的効果から3話とも心理サスペンス系かと思っていたら、残り2話がコメディだったのにはヤラレタ!(笑)
(コメディも好きなので、これはこれで嬉しい誤算ではあるが)
「空耳1」は、大学時代の登山部OB・OGが前年遭難して命を落とした仲間の一周忌で合宿所に集まるも、主人公には他メンバーの「俺(私)が殺した」という声が聞こえ…というサスペンス。
パーティーメンバーそれぞれに動機あるいはアヤしいところがあり、さて一体誰が?と思わせておいて最後に真相を見せるのは上手い。
ただ、アレじゃあ殺人ということがバレバレで警察も動くであろうから、「岩で頭を殴打する」程度にしておけば良かったのでは?という憾みアリ。
「空耳2」での語義は「聞こえても聞こえないふりをすること」で、狂言誘拐を企み実行したものの、犯人グループの1人が首尾よく身代金を受け取った後にワキ見運転をしていた主婦にはねられ、主婦は事故を隠すべくその男を自宅に軟禁し…というコメディ。
犯人グループの1人が映画好きという設定なのでちょくちょく出てくる名セリフが楽しいし、終盤で事態のもつれ具合を「なんでそーなるの!?」な組み合わせで見せるフラッシュの使い方も上手いし、混乱の原因である主婦の空トボケぶりが何とも愉快。
「空耳3」での語義は辞書にはないが一般化されつつある(←私見)「タモリ倶楽部」でお馴染みの「ある言葉が別の言葉に聞こえること」。
高名な画家の新作披露を目玉とした個展開催前日、よりによってその新作が見当たらなくなり慌てる主催百貨店担当者たち…なストーリー、かなりのムチャや多くのツッコミどころはあるものの、イキオイで見せてしまうチカラ技、的な?(笑)
…ってか、「It becomes if it does.」(確かに「隠微かつ犬1ダース」だね)という「空耳」が、内容に合致しているので許せるのか?
だもんで、予想の範囲内であった絵の一致も最大のツッコミどころではあるが「芝居のウソ」として容認。
『Tepes』
劇団パラノワール(旧Voyantroupe)
ザムザ阿佐谷(東京都)
2009/06/26 (金) ~ 2009/06/30 (火)公演終了
満足度★★★★
第1幕と第3幕は特に印象的
吸血鬼ドラキュラのモデルとなったルーマニアの「串刺し公」ヴラド・ツェペシュに想を得て書き下ろされたフィクションで、序章的な第1幕、タイトルロールであるテペスの少年時代を描いた第2幕、その後を描いた第3、4幕という構成。中でも第1幕と第3幕は特に印象的。
第1幕はテペスの両親を描いたもので、結婚のいきさつから心臓病をかかえて出産した妻(=テペスの母)の葬儀までを、基本の衣装の上にシンプルな上衣(?)を1枚羽織るだけで婚礼衣装や喪服を表現するなど多くを説明せずにそのシーンを観客に悟らせる手法によってテンポ良くダイジェスト的に見せて◎。テンポと言えば第2幕で少年テペスが瞬く間に別役の女性に変わるのも鮮やか。
第3幕は極めてアングラ(特に寺山?)っぽく、テント小屋で演ったらモロじゃん!な内容を、木目のあたたかさが特徴的なこの劇場でストレートプレイまんまな演出で見せるのが面白い。音楽に喩えればギンギンのロックな歌詞を演歌のメロディに載せました、的な?(笑)
で、テペス親子だけでなく別の親子も含めて「親の因果が子に報い」だの「血の呪縛」だのというフレーズがよく似合う内容(ギリシア悲劇に通ずるかも)は、ヘヴィーあるいはビターだが、最後の最後にそれをフッと和らげて終わるのは上手い(あるいは「ズルい」?(笑))。
あと、自分の出生に関してコンプレックスを持つ主人公という部分に前日観た某映画を連想。
ショートストーリーズ
劇団6番シード
劇団6番シード稽古場(東京都)
2009/06/26 (金) ~ 2009/07/12 (日)公演終了
満足度★★★★
Bコースっっ!!!
ショートコント「新妻さん、夫婦さん」に連作短編集「取調室A・B・C ~犬と向日葵と秘密基地の話~」を組み合わせた75分。
「新妻さん…」はまさにインパクト命のショートコントながら、「新妻さん」の夫の名前はダイレクトに「スキオ」さんではなく「好夫と書いてヨシオと読むんです!」の方が良かったような気も…
「取調室…」はAとBがコメディでCがハートウォーミングという構成なのでCでは「どこで落とすんだ?」な戸惑いアリ(爆)。
が、少年の父に事情聴取する婦警も母親であり、という設定が巧みで、ラストには往年の山田太一作品などに通ずるものを感じる。
ショートストーリーズ
劇団6番シード
劇団6番シード稽古場(東京都)
2009/06/26 (金) ~ 2009/07/12 (日)公演終了
満足度★★★★
Aコースっっ!!!
映画『パニック4rooms』の原案でライトな謎解き系「3人の男とひとりの女」、前回公演『テンリロインディアン』の原案的な「渋谷警察24時ころ」、ラジオドラマを元にイベントでの上演用にリライトしたハートウォーミング系「Re:」の3本で70分。
「3人の…」は自殺をほのめかす携帯メールに慌てて彼女の部屋に駆けつけた3人の男たちが中心で、しかし3人の相手の名前は違っている上に大家が告げた借主の名前はまた別で…というツカミはオッケー、さらに後半の謎解きパートもテンポ良く、短編ならではのキレの良さアリ。映画版はどんなだったんだろう?
「渋谷…」は『テンリロ…』を観ていた身として「なるほど、この設定にいろいろ付け加えてああいう風に仕上がったのね」と大いに納得。
「Re:」は当日パンフにあった「元はラジオドラマの脚本で」という部分をすっかり忘れて観ており、主人公グループにとって未知の相手であるメールの送信主の表現方法を「小説など文字情報であれば簡単なのに、それをよくこういうカタチで舞台に上げたなぁ」と感心。また、親子ネタに弱い身として、ラストにはホロリ。
ナンノチカラ?
シネマ系スパイスコメディAchiTION!
新宿シアターモリエール(東京都)
2009/06/26 (金) ~ 2009/06/28 (日)公演終了
満足度★★★★
マイルドなバッドエンド
生きることに失望しかかっている男と女それぞれの前にナゾの人物が現れ、彼らに関わる人物が持っていた100円ライターの出どころを遡りながら関係者の持つ「チカラ」を当てろと言い…という物語。
出だしは2組それぞれを交互に描きながら、次第にそれが接近・交差して1つにまとまってゆく構成が巧み。
また、毎度ながら映像の使い方も上手い。超能力で行方不明者を探す番組でのスタジオと現場中継の表現なぞまんまだし。
ただ、必ずしもハッピーではない終わり方なのはちょいとひっかかる。
とはいえ、ロミジュリ風でありつつ悲劇というよりは「マイルドなバッドエンド」ってところなのであくまで「ちょいと」なのだけれども。
Lady BAT
大路組
六行会ホール(東京都)
2009/06/24 (水) ~ 2009/06/27 (土)公演終了
満足度★★★
歴史再現ドラマのような落ち着き
同じく川島芳子を題材とした月蝕歌劇団の『怪盗ルパン・満洲奇岩城篇 ~川島芳子と少年探偵団~』とは対照的に(笑)ケレン味とはほぼ無縁、歴史再現ドラマのような落ち着いた見せ方で、これはこれでまた面白い。また、芳子の最後の言葉は「男装の麗人」などと伝えられているのは虚像だったのでは?などとも思わせるもので、これには盲点をつかれたようでドキリ!
Benkei
K.B.S.Project
ブディストホール(東京都)
2009/06/25 (木) ~ 2009/06/28 (日)公演終了
満足度★★★★
「何でもあり」状態で親しみやすい
今回はいくつかある柱のうち古典に独自のアレンジを施す路線で、題材は能の「舟弁慶」。
が、それに「義経千本櫻」の要素も加えて殺陣あり舞ありギャグありミスマガジン出身のアイドル出演までありという「何でもあり」状態で親しみやすい上に当日パンフに人物相関図はあるわ冒頭で平知章が背景となる状況は説明するわで非常にわかりやすくなっており…そのあたりは上手い。
しかも大河ドラマ「新選組」どころではない大胆な設定(笑)も盛り込んでの娯楽作、元ネタを知っていても知らなくても楽しめるというシカケ。(知らないと誤解しそうではあるが…(爆))
さらに卓袱台(!)を使った殺陣なんて滅多に目にできるモンじゃありませんぜ。