ボンゴレロッソ
劇団†勇壮淑女
ウッディシアター中目黒(東京都)
2010/04/13 (火) ~ 2010/04/19 (月)公演終了
満足度★★★★
ズルさ満載!(笑)
卒業から12年が経ち全員が30歳を迎える年、かつてのクラス委員の呼びかけにより、同級生の1人が雇われ店長をしているイタリアンレストラン「ボンゴレロッソ」で同窓会が開かれるが、憧れの存在であった先生が入院していると知った面々は…な物語。
出オチ的なキャラ作りすぎの登場人物たちに大笑い、な登場シーンに続く本編は「ありがちな同窓会系」と劇中で宣言しながらも、死神(!)がストーリーテラーを務め、しかも具体的に「この人物は2週間後に命を落とします」と予告することで「どういう方向に展開するんだ?」と思わせて、これがまずズルい。
で、いろいろあって、結局予告した人物は命を落とさないというのがまたズルい。
しかし考えてみると作・演出の金沢知樹作品は少なくとも今までσ(^-^) の観た範囲内ではビターエンドはなかったワケで、そういうオチなのも当然と言えば当然か?
…なんて書きつつ気付いたのだが、「もしかして初のビターエンドを観ることができるのか?」という無意識的な期待があったかもしれず、だとすればそこもズルい…(笑)
そういえば「ビターなの?」と思わせて実は…というパターンもいくつかあったのでまたしても同じ手口にダマされたのか?(爆)
さらに、クライマックスで出演者15人(すべて女優だヽ(^o^)丿)の大半にあんなカッコとそんなカッコをさせるに至ってはもはやズルいを通り越して反則あるいは禁じ手級?(笑)
が、そのクライマックスでの生のバンド演奏は見事。
その前の練習中の(グダグダの(笑))音は録音音源で「生じゃないのか」と思わせて、か~ら~の、なのでより引き立つ、みたいな。
あ、じゃあこれもズルいじゃん!(笑)
大海原の小さなイェイ!
カリフォルニアバカンス
OFF OFFシアター(東京都)
2010/04/08 (木) ~ 2010/04/14 (水)公演終了
満足度★★★
いつものことながら可笑しい
地球の陸地の多くが水没した未来、人々は定期的に訪れて略奪する女海賊たちに怯えており…な物語。
が、海賊を追い払うために侍やガンマンを雇う(笑)なんて方向ではなく、毎度ながらのナンセンス系でありながらも妙に説得力のある(←私見)会話が中心で、いつものことながらこれが可笑しい。
そんな中、序盤にコンビーフの材料を「昔、陸に住んでいた「ウシ」というもの」などとする台詞があり、簡潔かつ的確に状況を観客に伝えるなぁ、と感心。
しかしそんな状況だったらカップ麺なんてとっくに賞味期限が切れているんじゃないのか?…いや、未来のことだから半永久的に品質が保てるようになっているに違いない。(爆)
で、終盤には大ダコとの戦い(「海底二万哩」かっっ!!!(笑))なんてスペクタクル(?)まであって、新境地か?みたいな…。
また、このタコの足がなかなかそれっぽく出来ていたし、女海賊のフック船長のようなカギ爪が回るなんてアイデアも愉快。(未来でも不便なカギ爪なのかい!なんてツッコミはヤボってモンで、ここは「海賊の首領の記号」ということで納得しておこう…)
CALLING
Neo Mask
吉祥寺シアター(東京都)
2010/04/07 (水) ~ 2010/04/12 (月)公演終了
満足度★★★
コミカルな味も加えた新機軸
かつて十兵衛と共に修行をし、柳生宗矩の命により徳川家の裏の仕事をしながらも口封じに一族郎党を皆殺しにされた幻四郎は「伴天連(ばてれん)」の妖術を使って「八犬士」ならぬ「八賢士」を率いて柳生家への復讐を始め…なアクション時代劇。
殺陣やアクションのスピード感と迫力は毎度お馴染みながら、今回はそこに唐の剣術も取り入れ、さらにコミカルな味も加えたのが新機軸。
公安組(表記は推測)の紅二点・蟹目と箙がそれぞれ柳生兄弟と交わしている会話を交互に見せるが箙の側はボキャブラ風、とかその会話の途中で十兵衛に妻がいることを知った蟹目が「男なんて~っっ!!!」と斬りまくる、なんてのが愉快。
が、当日パンフで徳留主宰自ら「里見八犬伝の忍者版というイメージで進めていたが膨大な原作を消化することが出来ず…」と吐露している通り、「八賢士」関連がほとんど生かされていないのが残念。
ORGAN 【ご来場ありがとうございました。次回公演は9月中旬】
elePHANTMoon
サンモールスタジオ(東京都)
2010/04/07 (水) ~ 2010/04/18 (日)公演終了
満足度★★★★★
両編とも「This is elePHANTMoon!」
【レシピエント編】
まずは説明的なものがまったくないのに、交わされる会話の中から自然に諸状況が伝わってくる序盤に舌を巻く。
そんな会話劇的な中からドナーの遺族の気持ちがジワジワと滲み出てきて、しかし迎える結末はショッキング気味?
ってか、ブラックでありながらも「そうか、そのテがあったか……って、そーじゃねーだろ!」なノリツッコミをしたくなるようなユーモラスなオチは前作『ブロークン・セッション』(前年11月)のクライマックスと同質で、笑っては不謹慎かと思いながらもσ(^-^) は満面の笑み…(爆)
思い起こせば前述の「会話から状況がしっかり伝わってくる」手口も『ブロークン…』と共通で、前作にウケまくった身として大いに満足。
その一方、ドナー編の初日をご覧になった方の情報(ってか印象?)と照らし合わせ、この時点で「観る順を間違えたかもなぁ…」とも思う。(笑)
【ドナー編】
まず、装置を目にして「あらまぁ」と。
R編では窓があり外の木々が見えていた装置後方中央部分がコンクリート壁だし、天板が木目で丸いテーブルも黒一色の四角いものだし、などの変化があり周囲の細い縦材まで色合いが違って感じられるほど。
なるほど、60分と75分という中篇でありながらも通して上演しないのはその転換のため「も」ある(← 内容的にも続けて観るのはヘヴィーそうだし…(笑))のね、と。
そんな似て非なる(?)装置内で進むストーリーは静かな中にピンと張り詰めた緊張感があり、初日をご覧になった方が持たれた「『ブロークン…』よりも『成れの果て』(前年5月)に近い」という印象に大いに賛同。
また、ヒロインが悩んだ末に我が子を殺した犯人の臓器を受ける決断を下すものの、決して「めでたしめでたし」にはならず、手術の直前で…という後味の悪さ(笑)もいかにも、な感じ。
【総括】
そんなこんなで、動と静あるいは陽と陰にクッキリ分かれつつも、その両方が「This is elePHANTMoon!」に仕上がっているのが見事。
で、両編を観終えての結論は「やっぱり観る順を誤った…」(爆)
しかし事前にD編の印象を耳にしていたので覚悟ができていた(笑)のは幸い。予備知識なしにこの順で観たらヘコんだかも?(爆)
夕焼けとベル
カムヰヤッセン
王子小劇場(東京都)
2010/04/03 (土) ~ 2010/04/11 (日)公演終了
満足度★★★
3つのパターンの家族愛
北陸地方の小さな島に銀行を襲ったテロリスト5人が逃亡してくるが、弟が事件に巻き込まれた女性刑事が私怨で彼らを追ってきて…な物語。
チラシには「終わる世界の、続いていく話」など終末的な言葉が躍っている割には単なる(しかも既視感のある)クライムサスペンスにすぎないとか、冒頭のアヤしい儀式や死んだ者の臓器を食べてしまう風習があまり活きていない(それによって西部地区のおどろおどろしさは表現されているが)とか、「17時の鐘」もとってつけたようだとか、ツッコミどころは少なからずあるものの、雨降って地固まる的に2人の小学生がちょっこし成長するラストが清々しいし、家族愛に弱い(あるいは甘い)身として「知的障害の姉への愛に気付く妹・妹へ裏返しの愛を抱いている姉・弟への愛によって暴走する姉」なんて3つのパターンを盛り込んでいるし、なので「終わり良ければすべて良し」的な?(笑)
いや、終盤だけでなく、序盤でのあちこちが軋んでいるようなザラついた感覚とか、島の駐在さんの見合いから現在に至るまでをダイジェストっぽく見せる手法とかも好きだし。
あと、前腕に被弾した2人がちゃんと流血している(しかもよく見ないと気付かない程度なのだ)とは芸が細かい!(笑)
ドライビング エンゼルフィッシュ
劇団6番シード
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2010/04/08 (木) ~ 2010/04/18 (日)公演終了
満足度★★★
「お、いつもと違うゾ」
3人組の怪盗「エンゼルフィッシュ」一味を逮捕するべく警察のブレインとして招かれたのは映画監督で…な「圧倒的コメディ!」(←チラシなどの惹句)、入場してメルヘンチックな装置を目にした段階で「お、いつもと違うゾ」的な。
以降、昨年のアトリエ公演や恒例のファンクラブイベントでなどで見せたコミカルな味を全編にちりばめた125分(本編時間)、異色作と言えるかも。
そんな中、「そう言えばあの時…」というつぶやきの後で回想(あるいは過去再現)シーンが時々差し挟まれており、終盤の謎解きではその連発で大人数がドタバタと走り回って再現してまた戻る(ので中には息切れ気味の出演者もいる(笑))のが可笑しい。
しかしエンゼルフィッシュが殺人を犯すところで「何かあるゾ」と思わせるのはイイとしても286人もの大量殺人(!)というのはやりすぎ。
これじゃあ「真のワルモノを騙すための芝居ですよ」と声を大にして言ってるようなモンじゃないかさ。(笑)
春の海
世田谷シルク
シアター711(東京都)
2010/04/08 (木) ~ 2010/04/11 (日)公演終了
満足度★★★★
クライマックスは圧巻
地方の町(村?)の理科実験教室を主な舞台にそこでの2つの出来事を併行して描き、やがてそのつながりが明かされて…という構造。
2つの流れ(+α)の関係がなかなかわからずに観ながら悶々としたり(←そこまで大袈裟ではない(笑))もするが、クライマックスは圧巻。
現在の状況と20年間の状況(それは現在の状況でのビデオ映像内の出来事でもある)、それにドキュメンタリー番組を編集しているルームの3つの場面を映像で言うところのカットの積み重ねのようなスタイルで併行して見せ、時として異なる時空での台詞が微妙にシンクロしていたりするのが、照明による時空の切り替えの表現も含めて巧い。
また、ダム新設によりふるさとが水の底に沈んでしまうことに対する気持ち、ということで 3LDK の『僕たちの町は一ヶ月後ダムに沈む』(09年1月)を連想。
あと、小学3年生の表現(脚本・演出・演技)がいかにもそれらしく、個性も描き分けられていて自分のその年齢の頃を思い出したりも…
トマトのいろは
SPINNERS
劇場MOMO(東京都)
2010/04/07 (水) ~ 2010/04/11 (日)公演終了
満足度★★★
外の景色まで眼に浮かぶよう
地方の町でビニールハウスを併設した喫茶店を妊娠中の妻と営むマスターを東京に出て行った姉が8年ぶりに訪れるが、なにかワケありな様子の姉が以前と変わってしまったことにマスターはいらだちを憶え…な物語。
喫茶店関係者や農業留学している人などその周辺の人物の紹介と地方ならでは(偏見?)の優しい人間関係を見せる序盤は劇場サイズもあって、その喫茶店の空気まで感じられる(どころかその外の景色まで眼に浮かぶ)よう。
と、その静けさに一石を投じるように姉が帰って来て本題(?)に突入。8年ぶりのぎこちなさゆえとも思われた姉と弟のギクシャクした雰囲気が弟の姉に対する思慕の気持ちに基づくものとわかる終盤がイイ感じ。(周りの人々の優しさも含む)
また、トマトが美味しそうで、高校時代の夏合宿で泊まった民宿で食べたもぎたてのトマトの甘さなども思い出す。
Les Bonnes
M.M.S.T
横浜美術館レクチャーホール(神奈川県)
2010/04/06 (火) ~ 2010/04/07 (水)公演終了
満足度★★★
芝居ではなく前衛アートを観た
古典に疎い身としてジャン・ジュネの『女中たち』は当然の如く未見なので、一応ネットで探したあらすじを読み、当日パンフにそれよりももう少し詳しいあらすじが載っていて(これは有難い)それも読んで臨んだものの、あまり参考にはならず。
というのも、オリジナルアレンジを知らないままリミックスヴァージョンを聴いた…というより原曲を知らないままにフリージャズ化されたものを「聴いてしまった」な感じだったから。(そんなことから、岡崎藝術座の『オセロー』(07年10月)を観た時のことなども思い出す)
日本の伝統芸能的(最初にそういう印象を受けた)あるいは白石加代子っぽい(笑)台詞回し(ついでそう気付いた)で重々しく始まったかと思えば柿喰う客などのような早口に転じて、また重々しい調子に戻ったりという序盤から「今進行しているのはストーリーのどのあたりか?」と考えることはあまり意味がないと悟り、「考えるのではなく感じる」見方にしたのは正解?
緩急自在な台詞回しに、ここでその曲ですか?なこともあるサックス(テナー&ソプラノ持ち替え)の生演奏も絡んで、時々台詞は聞きとれないし、終盤では戦時中の日本軍の(かな?)文書まで登場するし、いわば「芝居ではなく前衛アートを観た」というところか。
これはこれで面白かったが、間違っても芝居を初めて観る人には勧められず。(笑)
ところで原典を知った上で観たらどうだったんだろう?
そしてまた、いつか原典を観る日は訪れるんだろうか?(DCPあたりが取り上げてもフシギはない気もするが…)
あの娘の気功は1ピコグラム
ザッパー熱風隊
OFF OFFシアター(東京都)
2010/04/02 (金) ~ 2010/04/06 (火)公演終了
満足度★★★
評価は真っ二つに分かれるだろうが…
人間によく似た未確認生物「マルガニ」と戦うカンフー少女とその姉が住む山寺に、3年前にそこで書いた小説がベストセラーになり再び執筆に来たカリスマ恋愛小説家や環境汚染調査員、UMA探しの女性などが訪れて…な物語。
48種の毒をもつPCB(=PCB48)を生成して撒き散らすUMA(しかも元・人間)や、PCBの毒性を浄化するナチュラル・キラー・バクテリア(=NKB48)を気功によって発生させるなんてムチャな設定を受容できるかどうかで評価は真っ二つに分かれるだろうが、個人的には「芝居のウソ」と割り切って観ることができたのでオッケー。
…ってか、りりあんを観るという所期目的(爆)は十分に果たせたし、そればかりか満載のおバカさ、ヌルさ、ユルさ(←もちろん良い意味での)は好みだし、終盤のミュージカルっぽい部分のおマヌケさが秀逸だし、さらに名前だけしか知らなかった深澤ゆうきもなかなか良かったし(やっぱりソコか(爆))、そもそも女優7人に対して男優は1人だけだし(やっぱりソコか pt.II(爆))ということで許す。
〈津山三十人殺し〉幻視行
月蝕歌劇団
ザムザ阿佐谷(東京都)
2010/04/01 (木) ~ 2010/04/05 (月)公演終了
満足度★★★★
史実ベースとフィクション部分のハーモニーが絶妙
後にいわゆる「津山事件」を起こすことになる少年・睦雄の前に「お前に幸せな道を歩ませてやる」という3人の人物が現われる一方、軍服姿の一団が彼らを邪魔し…な物語。
横溝正史の「八つ村墓」の冒頭部分の元ネタにもなった昭和13年の「津山事件」の犯人・都井睦雄の半生を中心に、彼が異常な関心を抱いていたという阿部定事件(昭和11年)や二・二六事件を絡め、さらに突拍子もない要素(笑)も加えた作品、事前に wikipedia で睦雄の生涯を調べて臨んだこともあり非常にわかりやすく、かなり史実に忠実な部分とトンデモ系なフィクション部分のハーモニーが絶妙でかなり楽しむ。やはり元ネタを知っている方が楽しめる。
津山事件を防ごうとする3人組が式神で、彼らを邪魔する軍人たちは大量殺人者たちを集めて戦争用人間兵器にしようとしている(当然その両者は未来から来ている)なんて発想、イイよなぁ。
で、帰宅後に阿部定事件について wikipedia で復習したのは言うまでもない。(笑)
乱反射ドロップ (出演劇団) こゆび侍・本田ライダーズ・てがみ座・シンクロ少女
みきかせworks
ワーサルシアター(東京都)
2010/04/01 (木) ~ 2010/04/04 (日)公演終了
満足度★★★★
以上、総括すると…
全体で言えば比較的リアルなストーリー(どちらも離婚ネタだ)のハッカ味と奇想天外なイチゴ味、そしてそれぞれの味の中ではオーソドックスなもの(てがみ、こゆび)と娯楽性満載なもの(シンクロ、本田)と対照的で、その組み合わせ方が上手いな、と。
この企画、今後も続けて行くんだろうな。次はどこが挑戦するか、どんな手法を駆使するかなど楽しみだなぁ。
乱反射ドロップ (出演劇団) こゆび侍・本田ライダーズ・てがみ座・シンクロ少女
みきかせworks
ワーサルシアター(東京都)
2010/04/01 (木) ~ 2010/04/04 (日)公演終了
満足度★★★★
イチゴ味
毎度のこゆび侍と初見の本田ライダーズの組み合わせ。
こゆび侍の「網膜火傷」はアリジゴクとアリたちの物語。
初演時に観たいと思いつつ観に行けなかったので時を経てこうして観ることができて幸い。(初演もこういうスタイルだったのかしら?それとももっと芝居寄り?)
で、アリジゴクの巣の中での虫たちを描いた内容から、先日の『昆虫大戦争』に始まる標本箱シリーズの原典はこれだな、と。
また、生き延びるためにハナシをつむぐアリにシエラザード夜話(「千夜一夜物語」とか「アラビアンナイト」と書かないところがペダンチックだね(自爆))を連想。
一方、本田ライダーズの「二匹のマシンガン」は富豪令嬢である小学生を主人公に、彼女の家の「お宝」を頂戴すると予告した怪盗マシンガンも実は小学生(しかも彼女の同級生)で…というドタバタ系。
気付いてみれば主演の生見司織は昨年大いに気に入ったハチビット・プラネットの『朝焼けのパレード』に出演していたワケで、そっちの意味でも満足。
乱反射ドロップ (出演劇団) こゆび侍・本田ライダーズ・てがみ座・シンクロ少女
みきかせworks
ワーサルシアター(東京都)
2010/04/01 (木) ~ 2010/04/04 (日)公演終了
満足度★★★★
ハッカ味
初見のシンクロ少女と、旗揚げ&第2回と観てきている演劇ユニット てがみ座のカップリング。
まずはシンクロ少女の「極私的エロス」。
主宰(&作・演出)である名嘉友美のかつての夫との出会いから離婚までを描いた私小説ならぬ私戯曲で、結婚を祝す友人たちとの会話と反対する友人との会話という相反するものを同時進行で見せながら、時々双方の台詞がシンクロさせる手法が面白く、言い争いでは一言発する度に台本(ってか原稿用紙ってか)を1枚ずつ乱暴に捨ててゆくのも愉快。
てがみ座の「カシオペア」は09年6月の旗揚げ公演での芝居版を観ており、そちらがフル・オーケストラ伴奏だったのに対してこちらはアコースティック・ギター1本の弾き語り、な風情。
その分、会話が前面に押し出されており、前述の喩えの如くそれぞれ面白さがある感じ。
GOLDEN★HANDSHAKE
さるしげろっく
d-倉庫(東京都)
2010/03/31 (水) ~ 2010/04/04 (日)公演終了
満足度★★★★
サクゾウにはイタく共感
「ホスピタルクラウン」的発想をもっと進めて取り入れた診療を行なう病院を舞台にした悲喜こもごもの人間模様、チラシの惹句から予想したような(σ(^-^) の弱点でもあるところの)家族ものではなかったものの、息子を亡くしたことから目をそむけ続け…というか逃げ続けて、入院している声を失った少年に息子を重ねているサクゾウにはイタく共感。
また、そんなクライマックスを経て迎える結末は、「逆・胎児の夢」(ありゃ?胎児は前世を夢で見る、ではなくこれから迎える人生を見る、だったっけ?だったら逆じゃないな)的で、こういうのもまた好きなんだな。
で、そんな全体構造もそうだし、序盤のちょっと騒がし気味にコミカルかつテンポ良く進む感じにも野田秀樹的なモノを想起したのは当日パンフに「初演は野田・鴻上リスペクト的なものだった」と書いてあったからだけではあるまい。
雅貴とクダンの奇妙な夜
進戯団 夢命クラシックス
新宿シアターモリエール(東京都)
2010/04/01 (木) ~ 2010/04/04 (日)公演終了
満足度★★★
どう謎が解かれて行くのかワクワク
妖怪・件(クダン)と笑忌(ワラキ)に気に入られておりその力ゆえ警察の捜査に協力させられたりしている高校生・雅貴が巻き込まれるストリートギャングたちの抗争…な物語。勝手に DMF の『SLeeVe』風なのかと思っていたらさにあらず、クライムサスペンスが中心で「不可能犯罪」的部分のみに妖怪が絡んでいるというスタイル。
だもんでこれはこれでまた予期していたものとは違った別の面白さがあり、むしろどう謎が解かれて行くのかワクワクしながら観る。
ただ、「一件」ならぬ「一見」落着の後、ちょっとしたひっかかりから黒幕の存在に気付くのが雅貴なのは主人公として当然なので悪くはないのだが、「金田一少年の事件簿」などで見慣れてしまったため、むしろ黒幕の存在に気付くのは女刑事で、それを読まれて逆に窮地に陥った彼女を救うのが雅貴、なんて展開の方が斬新に感じられたかも?
とりあえず寝る女
箱庭円舞曲
駅前劇場(東京都)
2010/04/02 (金) ~ 2010/04/06 (火)公演終了
満足度★★★★
観る側を舞台上に引き込む求心力
母を亡くして姉妹2人が住んでいる家に、町の再開発でしばらくマンション…もとい、億ションに移住し、その間に賃貸マンション兼住宅に改築することを勧める役場の男と町内の世話役が来るが、姉は思い出いっぱいの家にそのまま住み続けたい(共感!ってかその胸中がビンビン響いてきた)と言い…な状況から始まる物語は駅前劇場進出ということで気合いが入ったワケではあるまいが、140分という長尺。
がしかし、ライトなタッチでコミカルな味もある導入部から、次第にシリアスに転ずるにつれ、観る側を舞台上に引き込む求心力のようなものがあり、それゆえ舞台との距離が近く感じられて観ながら「ここ、OFF・OFFじゃなくて駅前だよね?」などと思ったりも…。(←ちょっと作りました(爆))
前作から「身近な感覚」は以前と比べて若干薄れた(あるいはフィクション度数がアップした?:個人の感想です)ものの、会話の自然さは変わらず、それとキャスティングの妙(意外なケースも含めてそれぞれハマっているんだな)の相乗効果で引き込まれるのかしら?
で、時節柄もあってか、ラストシーンはマチネ同様、積もるほど降りしきる桜の花びらたちという…。
ラストシーンといえば、暗転の間に家具類を全部運び出して転居後を見せたのも良かった。
ヒメ
チェリーブロッサムハイスクール
吉祥寺シアター(東京都)
2010/04/01 (木) ~ 2010/04/04 (日)公演終了
満足度★★★
ミステリーからファンタジーへ
キャンパス内で死んでいるのが見つかり自殺と判断された教授が研究していた「散らない桜」について薬品会社の女性と学内のイベントで咲いている桜が必要な女子学生が調べていると…な物語。
警察は自殺で処理したものの殺人なのではないか?的なミステリー(サスペンス?)風味もありつつ、過去の出来事などが絡んでファンタジーとして開花する流れが独特。
また、広い舞台をいくつかの場所として使い分け、中心となる部分では普通の演技でそこに入る前とそこから出てからはスローモーションになる演出も面白い。
ワンドロップ
発条ロールシアター
タイニイアリス(東京都)
2010/04/01 (木) ~ 2010/04/04 (日)公演終了
満足度★★★★
往年のNHK少年ドラマシリーズのオトナ版的
まずは出だしの作業中のシーンで針金で作った削岩機やシャベル(あるいはスコップ)に感心。フレームだけなのに雰囲気がよく出ている、的な。ある意味阿佐南のダンボール製小道具に通ずるか。
その直後、「ここから彼の妄想なのね」と一目でワカらせる照明にも感心。
ガラリとトーンが変わって引っ込み思案の田西がズバズバ言うんだもの、事前情報や説明がなくてもバッチリ。
照明に関してはその後の隠れ家の中と外の変化や、ラストでトンネルから出た時の陽光とやや遅れてそれに加わる逆光も見事。
他に演出では、水辺で顔を洗おうとして水面に映った自分の姿が源五郎であることに気付く田西、なシーンや終盤、外まで比較的近い部分を掘って脱出しようとする場面などの見せ方・表現方法も上手い。
源五郎と言えば、本人が時空を超えるのではなく『ウイング・オブ・ゴッド』などと同様に心だけがその時代の人物に入る「マインド・スリップ」(勝手に命名)の形態ながら、元の人物と入った人物が会話する(演者も2人)なんてのが愉快。
でもって、思っていたほど命を粗末にしているワケではないが、敵前逃亡よりは死を選ぶという源五郎に対して田西が「恥とか言うけれど死んでしまったら何もならないじゃないか」と言うところはσ(^-^) 好みのテーマだし。
あと、客入れ時のBGMが『荒野の7人』のサントラ盤(ほぼ全曲?)で、本編のオープニング曲もそのメイン・テーマだったこともあり、途中で野武士(?)がいるかどうか村に偵察に行く場面などに『七人の侍』へのオマージュも見る。
そんなこんなで前年9月の『アマガエル』よりもこちらの方がより好きかも。
SKY
Performing unit colors7~C7
d-倉庫(東京都)
2010/05/07 (金) ~ 2010/05/11 (火)公演終了
満足度★★★★
オールレンジのミュージカル系
最初に書いておくと、開演前に当日パンフでどんな鳥が出て来るか見ておくとより楽しいかと…
「カゴの小鳥」を主人公に鳥たちの世界を描いた観る年齢層を問わないオールレンジのミュージカル系、深読みなどせずそのまま観ても十分に楽しい。
また、特に鳥っぼくせず配色だけでそれらしく見せる衣装も一見の価値アリ。