ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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太陽への回廊

太陽への回廊

無頼組合

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2014/09/12 (金) ~ 2014/09/15 (月)公演終了

満足度★★★★★

嘘の国、日本の糞ったれ!
 糞ったれ! な現代日本への熱いメッセージだ。実際、F1事故の処理は終わるどころか、どんどん、出口が見えなくなっており、内部被曝も、これから、本当にその影響が増えてくるのに、川内原発を再稼働するような規制委の判断は、原発の現場を知らない田中 俊一なればこそだろう。核は、総ての生命を危機的状況に晒している。核大国、安保理、原子力産業、原発で電気を産んでいる電力会社、IAEA,ICRP,WHO(核の齎す健康被害に関しては、IAEAの言うなり)等々の核組織は、核の齎す健康被害については、極力実態を過小評価、データ改竄や、隠蔽、独立系科学者、医学者らへの嫌がらせや司法と組んでのでっち上げ逮捕を始めとする弾圧で圧殺を図ってきた。時には、一番、中核になる人物を「自殺」に追いこんで。マッポが実行犯に、個人情報を流すのである。その情報を元に、子供がどうなっても知らないぞ! と脅す訳である。そんな連中の権威等糞喰らえ! である。規制委のやっていることも単にアリバイ作りに過ぎない。こんな連中に権威など認めることは、犯罪と言わねばならない。茶番なのである。それらの、日本の構造を見事に描いた。因みに、ここで描かれているトンネル工事は、最も、危険な工事であった。2番目が埋め立てである。現在では、トップに原発解体工事が入ってくるだろうが。(追記2014.9.18)

ネタバレBOX

 何も、日本の糞共に権威を認める必要はさらさらない。なぜならば、我ら民衆にとって、彼らの齎す害は著しいが、益は無いからである。寧ろ、独立系研究者、医療従事者らを権威として敬うべきである。ちょっと、考えてみるが良い。核種の出す膨大なエネルギーと生命の設計図であるDNAやゲノムを繋いでいる力の差を。

 さて、本作のアウトラインを書いておこう。1964年の東京オリンピックに向けて世の中が、建設ラッシュに沸いて居た時代。長野県の村の人々の不便を解消する為にトンネル工事が進められていた。監督は、人望の厚い海馬 正義。掘削工事が半分程終了した所で、本社は、急に工事の中止を申し渡して来た。現場監督以下、作業員は、次の現場に振り向けられるハズだった。
ところで、急に工事がトリヤメになった理由は、オリンピック関連の道路工事の入札が決まって、その方が金になるからであった。建設ラッシュで不足気味の作業員も確保したい。儲けと人員確保の為には、地方の大した金にならない工事などはさっさと引き上げて金儲けをしよう、というのが本社の意向だったのである。
海馬は、作業員全員を集め、今迄の給料支払いや、今後の割り振りなどについて、指示を出していたが、この時「海馬自身はどうするつもり」か問われ「一人残って作業を続けるつもりである」ことを話した。すると、作業員も全員、「残る」と言いだしたのだ。無論、海馬が皆の給料を払ってやれるわけではない。それでも良い、と言うのが、作業員の総意であった。こんな経緯で、当時、建設業界で最も危険な工事だとうたわれたトンネル工事は殆ど無給で続行されることになった。皆、会社の儲ければよいというやり方が気にくわなかったのだ。それに、現場監督である海馬の人望もあって残ることにしたのであった。
 無論、会社としては面白くない。命令に背いた上、村の人々の為に、タダ同然で工事を完成されたとあっては、会社のイメージダウンに繋がる。それを恐れて、工事に対する嫌がらせが続いていた。然し、それでも、仲間はくじけなかった。業を煮やした会社側は彼らの作業現場に発破を仕掛けて爆発させる。其処に居た全員が亡くなった。盲腸で休んでいた唯一人の作業員を除いて。事後処理は、無論、落盤事故で片付けられた。
 数十年後、このトンネル工事現場に隕石が落ちた。政府は最近落下した隕石から出たガスによって、死人が生き返る、という情報を入手していた為、このエリアを立ち入り禁止にし、蘇生した人間を使ってあるプロジェクトを立ち上げていた。
 折しも、2011年の原発人災で低迷している産業界を活性化させようと、原発人災後の放射性核種漏れや汚染水の問題は収束したとの嘘と共に、オリンピック招致合戦が行われていた。拡大する一方の経済格差と政治の貧困、力のある者への優遇税制、軍事国家化や翼賛体制への足音は、凶悪犯罪を極端に増加させていた。警察では2年前に凶悪犯罪対策の専門チームCEPTを立ち上げ、凶悪犯を殺害する実行者として、生き返った海馬を使った。彼は、無論、骨だけになっていたのだが、蘇生してからは、悪意を感知し、銃弾を浴びても、直ぐに再生する能力を具えていた。更に、彼が凶悪犯の前頭部を鷲掴みにすると、彼は、悪意を自らに取り込むことができた。凶悪犯は命を失うが、悪意は消滅し、解放されて死んでゆく。チームは、海馬を手に入れてから、何度もこの方法で凶悪犯を殺していた。だが、犯行の増加は抑えきれなかった。そこで、上司に逆らったりして、頗る優秀であるにも拘わらず、否、だからこそ窓際に追われた部署ダストボックスの人間達に協力を要請。一緒に仕事を始めることになるが、上司に逆らってでも、将来を棒に振ってでも、何かを守ろうとした彼らに、裁判も受けさせずに犯人を殺すチームのやり方は許せなかった。海馬に対する同情もあった。
 警察サイドでこんな体制が組まれた矢先、某有名政治家の息子、渡瀬が、犯罪の片棒を担ぎにくる。彼は、自らの体に流れる悪胤を絶やそうとしていた。その為に、家系に染み・汚点をつけたいと願っており、腐りきった社会の耳目を逆立てるような犯罪を起こそうと考えていた。一方、社会的騒乱を起こした者に賞金として1億円を出す、というネット広告が出た。彼は応募し、採用され、実行した。1億円は振り込まれた。次は、もっと大きなことをやろうと考え、仲間を募った。仲間になることを嫌がる男、北見に爆弾製造を頼んだ。北見は、人を傷つけるようなことは絶対にない、という渡瀬の言葉で製造に加担した。だが、渡瀬は、最初から人も殺す予定である。北見は元々、掏りであるが、かつて時々組んで詐欺を働いた沼田夫婦には、拾われて、当たり屋をやらされている女の子、知佳がおり、彼女を不憫に思うような優しい所もあったから、人が傷ついたり死ぬことには反対したのである。今回、この話を持って来たのは沼田夫妻であったが、彼らはヤクザを詐欺に掛け追われていた。期日までに金を用意しなければ自分達が、東京湾に沈められる。それで、銃やマシンガン迄買いこんで対応に大わらわだ。而も、知佳はトロイと踏んでいる沼田 一徳は、逃亡の足手まといになると考えて、彼女を射殺してしまう。渡瀬は東京湾に掛かる橋の爆破を考えており、当然、多くの被害が予想された。自分の作った爆弾の設置場所を知った北見は、起爆装置を解除しようと現場に赴くが、其処には海馬が来ていた。おまけに、北見は海馬が亡くなった後、妊娠していた妻が産んだ息子であった。親子は向き合い、海馬は息子を殺すことになった。同時に、再生した者のリミットを迎えて息絶えた。それらを嘲笑うかのように現れた渡瀬とダストボックスが対峙する。渡瀬は撃たれて死に、橋は爆破されずに済んだが、実は、渡瀬に賞金を出していたのはCEPTの局員、橋爪で渡瀬の父とは昵懇の間柄であった。




ホラフキ ~あなたの職場、幸せにします~

ホラフキ ~あなたの職場、幸せにします~

劇団与太組

小劇場 楽園(東京都)

2014/09/12 (金) ~ 2014/09/16 (火)公演終了

満足度★★★

ディレッタントの自分には不思議な感覚の作品
 自分はディレッタントなので、こういう会社は大っきらいだし、こんな管理下では働けない。そも、広告を創るという作業は、自由裁量の範囲が広くなければ良いものなど作れない。自分が広告を書いていた頃、やはり、まあ、大体、出勤時間は守っていたものの、クライアントとの打ち合わせや、デザイナーや、カメラマン、モデルとの打ち合わせ等々の理由があれば、それがすんでから出社するのは当たり前。その代わり、閉めが迫っている時は事務所で寝泊まりしながらなんてこともよくあった。それが、当たり前で、下らない愚痴なんかこぼすのは、イギタナイと軽蔑していた。愚痴をこぼすのが当たり前なんて感覚でやってるから、何時まで経っても日本の企業の多くが駄目なんじゃないかな。中小に対する、大企業の態度は酷いもんだし、何もしないで丸投げするだけで3割抜くってのも、糞ではあるけどさ。それでも、広告とTV局の仕事はギャラがいい。

ネタバレBOX

 適当な事を言っては、社員の心身の疲れを癒し、仕事を楽しく効率的に進めようと作られた“休憩室”。そこで働く河原は、カウンセラーだが、システム設計などの専門家、鈴木と組んで、効率重視の新社長の下、様々な企画を実現してゆく。若手や女子社員には好評なのだが、休憩室での会話は盗聴され、つけさせられたリストバンドは、社員の位置情報などが取れるチップが埋め込まれIT技術を用いた監視システムであった。勿論、モニター用にカメラも設置されている。
 一方、河原が、この会社に入った目的は他にあった。自分が崇拝していた上司が、この会社で仕事をし、広告で大ヒットを飛ばし、賞も獲ったのに何故か社を止め、行方知れずになった原因を探ろうとしていたのである。
 それは鈴木姓が多いこの地方の、歴史にも関わることであった。元々、この地域には、狩猟、採集を生業とする先住民が居た。ミスミ一族である。だが、彼らは、稲作農業技術を持った鈴木一族の先祖によって、平地を追われ、山に移り住んだ。無論、其々の氏の中から、自分達のコミュニティーを出て相手のコミュニティーに打つる者はあったが、一度、コミュニティーを出た者の復縁は許されなかった。狩猟採集民の性格は、自由奔放である。生活の安定性は低いものの、その生活には、縛る物が少なく、発想は自由で野山に融和して生きていた。一方、農耕民族は勤勉で技術力も高かったが、土地に縛られ、因習に縛られて自由度は低かった。また、農業は、天候に大きな影響を受ける。冷害や旱魃、大雨、長雨等々の影響で作物は生育は大きく変化する。日照りに喘ぐ時には、山の天狗と言われる人々に仲介をして貰って龍神に雨乞いをした。河原が尊敬していた先輩は、この天狗一族の血を引いており、雨女だった。然し、彼女の自由な発想とポテンシャルの高さは、広告業界では優れた才能として評価され、同僚、社内の様々な人間から多大の嫉妬を買っていた。それで、彼女が会社を辞めさせられ、それを苦にして失踪したのではないか、というのが河原の推理であった。然し、事実はそうではなかった。未だ、公演があるので、ここから先は観て頂こう。
ねじまき島エレキテル

ねじまき島エレキテル

アナログスイッチ

シアター711(東京都)

2014/09/12 (金) ~ 2014/09/15 (月)公演終了

満足度★★★★

有名税?
 ねじまき島は、天才科学者、川原博士の秘密研究所。様々なタイプのアンドロイドを試作している。無論、公になれば、軍事技術に最初に利用されることは目に見えているから、博士は、無人島になったこの島の廃墟の地下に研究施設を作って研究を続けているのである。(追記2014.9.18)

ネタバレBOX

 まあ、本当にリアルなレベルで秘密研究をしようとしたら、インターネットをアンドロイド達が、スパイ機能防止の所作も見せずに使って居ること自体、甘っちょろくて話にならないが、まあ、御愛嬌である。何故なら、話の本筋は別にあるからである。その本筋とは? 
 初めて、島を旬日に亘って離れた博士は、周囲から研究と結婚した、と思われる程の堅物だが、実際には、結婚しており、子供まで居た。博士が島へ戻る予定日の3日前、その
子供が、守役のネネと共に、島へやってきた。
 ネネの前では、猫を被っているこの餓鬼、頗る性質が悪い。アンドロイド性質が反抗しようとすると、前に自分のお守をしていたアンドロイドは自分に逆らった為、父に良いつけたら、ルンバにされてしまったなどと嘘をつくので、それが、嘘だと分かる迄アンドロイド性質はこの餓鬼に散々苛められた。然し、彼自身が学校で苛められている事実が判明し、アンドロイド達は、其々の方法で対応策を教える。其々の方法は個別矛盾したりしているのだが、根底にあるものは、同じであった。即ちOne for all, all for one.そして、アンドロイド達が、苛めっ子対策として教えたのは、闘うこと、非暴力だが主張を曲げないこと、そして逃げることであった。考えてみれば、この他に苛めを避ける方法は無いのではなかろうか? このような問いは、主人公の子供に投げられることにより、実際には観客に投げられていると考えたい。何れを選ぶかは、観客に委ねられているのであるが、このような問い掛けを行っている点は見逃せない。
兇王は涙を流さない

兇王は涙を流さない

劇団くもりのちはれ

吉祥寺櫂スタジオ(東京都)

2014/09/13 (土) ~ 2014/09/15 (月)公演終了

満足度★★★★

中々深いぞ
 シナリオは、劇的展開に必要な要素を盛り込み、ダイナミックに展開して楽しめる。(追記2014.9.18)

ネタバレBOX

 先祖の秘密を守り抜いてきた、側近の末裔を歴史小説家が訪ねて、巷間流布されているのとは、異なる話を聞き出すという設定になっているので、歴史的人物として、絵画に描かれるようなストップモーションが効果的に使われている。
 一方、今作は、以下の問題も提起しているだろう。即ち現実政治が直面する問題についてである。言う迄も泣く王権。貴族政治にせよ民主主義や独裁にせよ、少数者が他の大多数を支配するには、その正統性を与える為の根拠が必要であり、その施策を実現する為の官僚組織が欠かせないということである。そして、形式上、そのシステムに齟齬が在ってはならない。何故なら、正当性を付与された為政者は、それ故に義務を負い、義務を果たすことによってしか正当性を維持できないからである。
 ことある時、人間の持つ諸感情(愛情、友情、嫉妬、より良きものへの意志、絶望、失望、破戒衝動等々)を採るか、一歩距離を置いて、決めごとに従うかの決断に迫られたなら、結果によってどちらがより良かったか、は後代が判断するであろうが、為政者は、問われたその時に判断せねばならない。安倍のような馬鹿でない限り、その判断は、ある程度、後代でその論理や哲学を問題にされるか、判断の見事さを称揚されるであろうが、無論、基本は、その人物の持つ性向によって判断は異なり、異なる判断を許容するのが、一般的な大人社会であることは言うを俟たない。
 今作は、政治としては、余りに幼稚な、友情を介在させることによって、政治劇としては児戯に等しいものとなったが、それ故にこそ、作家にとっては、今作が書かれる必要があったとも言える。何れにせよ、観客は、この幼児性を許容するか否かを求められる。許容できれば、面白い作品であり、できなければ認め難い作品であろう。だが、本当にそれだけだろうか? 自分には、その判断の分かれ目に、実際立ち会う個々人の必然的差というものが、余り必然的なものとは思えないのである。育った環境の差だとか、受けた教育の差だとか、或いは偶然だとかは、想像できる。然し、その差が必然的である為の必然的差異は、ハッキリ言って未だ分かっていない。そして、現在の所、その原因を探る時間が無い。いつか、自分にその事を探る時間的余裕ができたら、探ってみたいテーマの一つである。そのような問題を提起してくれたことによって、この作品は意外に深いと感じているのだ。
東京オペレッタジゴロ オペレッタ公演

東京オペレッタジゴロ オペレッタ公演

芝居舎ジタリキ

新宿ゴールデン街劇場(東京都)

2014/09/12 (金) ~ 2014/09/13 (土)公演終了

満足度★★★

パロるなら、更に高度に
 上手にはチンドンで使うタイプのパーカッション等が置かれているが、基本的に素舞台。開演前には、猿蟹合戦の昔話の朗読に文部省唱歌をキチンとした合唱団が歌ってBGMにしたような音響が流れている。

ネタバレBOX

 前説は、歌舞伎町のちょっと時代がかった趣向で興味深い。隋所に黒子が登場するのも、浄瑠璃のようで面白い。黒船で眠れなくなったヤマトンチューは、急ぎに急いで西欧化を図った。だが、そう簡単に総てが変えられるわけは無い。大衆芸能の世界でも、オペラではなく、色々な所やものを継ぎ接ぎした、謂わばキメラの如く奇怪なダシモノが、異様にキッチュな魅力を発揮して、てんやわんやの癖に中味が何なのか、自分達が何故、てんやわんやなのかを知ろうともせぬ大衆の心を、捉えて居たのかも知れぬ。演目は、猿蟹合戦、スターウォーズ、シンデレラの3本。これをオムニバス形式で演じるわけだ。
 其々に、日本の芸能の手法が用いられているのだが、スターウォーズは如何にも、アメリカの作品らしく、正義を矢鱈、称揚するイデオロギーが単純な形で描かれている分、殆ど、グロテスクそのものである、パックスアメリカーナをパロっているようで面白かったと同時に、オビワンケノービの登場場面では、オビワン役の役者を浄瑠璃人形に見立てて演技するという面白い試みも披露された。
 その他、矢張り、ギターやチンドンさんの音曲に、このオペレッタはマッチする。

ヒョウイズム

ヒョウイズム

爬虫類企画

新宿シアターモリエール(東京都)

2014/09/12 (金) ~ 2014/09/15 (月)公演終了

満足度★★★★

前説シリーズ化して売り込めば?
 少し早目に行くのがお薦め! 自分は、ホンのちょっと、拝見しただけだったが、前説が抜群なのだ。どんな風に抜群なのかは、観てのお楽しみだが、これをシリーズ化して、関連会社に企画として売り込み、採用されれば、ブレイク間違いなし、という感じの面白さである。広告コピーも書いていたから、こういう勘は、業界で鍛えた。
 さて、本編であるが、背景に映る映像のセンスも鋭い。どうやら、メンバーには様々な才能の持ち主が居るようだ。恐らく個性も強い、これらのメンバーの才能を最大限に生かしながら作劇する為には、口立てでシナリオ化するのが良かろう。つか こうへい的、ピーター・ブルック的な方法だ。それが、難しいとなれば、ワジディ・ムアワッドのように、兎に角、皆の話をじっくり聞いて1年ぐらい掛けて話を纏めてゆく。最初の提案で劇団としての活動資金が稼げれば、相当好きな事をやってのけられる。
 

ネタバレBOX

 一応、作品の内容にも触れておくが、初日が終わったばかりだから、ホンのさわりだけ。基本、苛めの話。但し、苛められっ子は、あることを経て、特殊な能力を二つ持つことになった。
注文の多い!?料理店

注文の多い!?料理店

HyouRe Theatre Company

Route Theater/ルートシアター(東京都)

2014/09/10 (水) ~ 2014/09/11 (木)公演終了

満足度★★★★

もっとプッシュしてみたら
 折角、結構ラディカルなことやってるんだから、もっと、上手く表出してみたら、更に、高い評価を得られるのでは? エンタメ的な視点も武器になるにゃ。
 今作、可也特殊な公演形態を採っている。このことに注意を向けておかねばなるまい。少なくとも、作る側が呈示している条件は、観客が、劇団の寄こした三段重ねの容器に入った干し葡萄や、菓子、木の実を指示に従って食べることである。これは、基本的に観劇中の指示に従って為されることになる。これが、お約束である。無論、これらの食品にアレルギーのある観客は食べる必要は無いが、その旨、劇団側に伝えるようお願いが為されている。これが、通常の前説と決定的に異なる点なのだ。

ネタバレBOX

 ところで、かつて、観客も、演劇の構成要素だとして一世を風靡した寺山修司の天井桟敷や、状況劇場の唐十郎らが居た。劇空間と日常空間の境界を曖昧にして何か非日常の世界に踏み込んだような擬似体験を仮構させる(天井桟敷)や水などを撥ね散らかして強制的に当事者に仕立て上げる唐十郎の状況劇場でも、ここ迄ラディカルに観客を劇に内包し得て居なかったのである。どういうことかと言うと、今作の主眼である「西洋」料理店は、様々な注文を客が店に対してつけるのではなく、店主が、様々な注文を客につけて、自らの好みに仕立て、供するように作られているのである。無論、店主が自ら、そのような下世話な命令を下す訳ではない。間には、執事のような役の者が居て、荒野を歩き疲れた大衆に対し、道を案内するのである。この道は、必ずしも大衆の望む所へ通じている訳ではないものの、一度、選んでしまえば、後戻りはできないものとアナウンスされ、従う者は、他の可能性が在るかないかなど、疑いもせぬ。阿保である。その愚かさ故に、彼らは、何の根拠もなしに、旗を振る者を先導者・水先案内人・リーダーと思い定め、道なき道を行き、涯無く思われる荒れ地を彷徨い歩くのだ。何の収穫も無く。そして、もう駄目だ、万事休すと思われた時、彼らは、夢のカケラを投げ与えられ、リーダーの用いる方便によって、最後の一歩を踏み出す。最早帰ることのできない地平へ。
 待っているのは、無論、主人のプレートである。そこに、先ほど買われた山鳥と合わされて、適当な野菜と共に供されるのである。店主(天守・天主、天子であっても良い)の待つ食卓へ! 
 かなり、寓意的に作られた舞台なので、どのように解釈しても構わない。自分の解釈は、以下の通りである。
 店主・天主・天子とは、国際原子力マフィア(アメリカ、英国、フランス等を中心とする西側核保有国とIAEA、エートス・プロジェクト、CORE、ICRP、WHO、FAO、安保理、これら、世界の有力機関に媚びを売る総てのメディア、国家、研究者・機関等々)。大衆とは我々、力なき者全員である。旗振り役は、核の軍門に下った総てのリーダーだ。ナイフとフォークは、プルトニウム239、ウラン238、セシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素131等々の放射性核種である。これらを体内に取り込むと、ゲノムが破戒され、トンデモナイ遺伝的疾患が生じると考えられるが、核が関わると疑われる健康被害に関して、公的な公衆衛生に関しては、何ら権限や役割も持たないIAEAの従属的役割しか果たしていないWHOは、一切、その憲章に書かれている使命を果たしていない。(IAEAとWHOの間に交わされた1959年の協定を調べてみよ)
 マンハッタン計画に由る核汚染以来、まき散らされてきた死の灰や、放射性核種は、今や地球のありとあらゆる場所を汚染している。無論、汚染の酷いエリアとそうでもないエリアは存在するが、安全な閾値が知られていない物質を放出するテクノロジーは、制御されていないどころか、故意に制御していない、と言われても仕方のない原理的欠陥を孕んでいることは、小学生でも分かる理屈だ。
 そんな技術が、益々、蔓延しようとしている中で、我らが、天日干しの食物を食べること、最早、人間の技術によって甚だしく汚染された環境中に生育する総ての生き物から、我らが、生きてゆくのに必要な食物を得るということは、国際原子力村の認めていない内部被曝のリスクを伴うということである。
 この捕食行動を通して、食物連鎖のヒエラルキーをも示唆した今作で、我らが為政者に為し得ることは、我らの体内で更に濃縮されて為政者の食卓に上がり、我らの死によって、彼らの健康を少し害すること、だけなのだろう!
獏の棲家

獏の棲家

異魂

OFF OFFシアター(東京都)

2014/09/09 (火) ~ 2014/09/14 (日)公演終了

満足度★★★★

スラップスティック&リーンカーネーションホラーコメディー
 ひとまず、コメディーっぽい作品なのだが、テーマは、浮気である。コメディーで浮気とくれば、もう定番。演劇ファンには、既に目に蛸ができるほど観飽きたパターンであるから、そこから先、どう勝負してくるかが、焦点だ。
 だが、今作、幾つか重要な捻りがある。基本的にカラッとしていない。喜劇の定法として、ドライなタッチは、観客を笑わせる為に最も大事な要素の一つだ。そんなことは重々、承知しているであろう、この作家、敢えて、自分の描きたい世界・世界観を描いている。(追記後送)

東益平7丁目団地防衛隊

東益平7丁目団地防衛隊

ENBUゼミナール

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2014/09/09 (火) ~ 2014/09/10 (水)公演終了

満足度★★★★

思い出と時の経過
 東京からは結構あるが、まあ、ベッドタウンにはギリギリ入るかも知れない。郊外のマンモス団地。第7だけで、住人は1500人を数得る。このエリアの親達は、どういう訳か、
 地域親交に熱心で、クリスマスパーティーやら、花火大会やら、潮干狩りやら、矢鱈、団地の皆でやりたがる。自然、ここで育った子供達も、そんな機会に知り合って友達になり、一緒に遊ぶようになった。中でも優等生トクヤマ、トクヤマのライバル、タッツン、要領のいいオオタケ、宇宙人に攫われたと噂があり、超能力の特訓に余念のないカズ、そして、頭が悪いフリをしながら、結構、やることはやっているマッキーの5人組は、第七団地防衛隊、通称、7団を結成したメンバーであり、大の仲良しである。(追記後送)

ネタバレBOX

 何時も仲良く、時の経つのも忘れて一緒に遊んでいた5人だが、時の流れは残酷だ。中学になり、高校になりと成長するに従って、幼馴染の友人と遊ぶより、通っている学校の友達とつるむことが多くなる。それで、次第に疎遠になっていた。だが、高校2年の時、団地でクリスマスパーティーを開催しようと言うことになり、高校生達にも声が掛けられた。当然、かなり中心的な働きをしなければならない。雑用も当然だが。しなければならないことが多い以上、仲間全員に声を掛け参加して貰うように運んだ。だが、暫く会っていなかった以上、其々は、其々の事情を抱えていた。それらの話が、展開される。而も、それは思い出話としてである。というのも、トクヤマは、高校を出て十数年後、TVのニュースで報じられたのだ。彼は会社社長になっていたが、親会社倒産の煽りを喰らって連鎖倒産と言う憂き目に会っていたのだ。
デジタル

デジタル

うさぎストライプ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2014/09/10 (水) ~ 2014/09/16 (火)公演終了

満足度★★★★

ピタゴラスイッチ ヒューマノイド
 舞台は縁日で売っているプラレールを思わせるような木組みの滑り台や、大小の配管、幅広い木道を組み合わせたようなセット。真ん中には、其々左右に延びた超長いベンチのような物が平行して置かれ、其々の木製構造物の上に人がちょこなんと座っていたりする。尚、真ん中の超長ベンチには、一灯ずつ、蛍光灯が点っている。
 上演初日に拝見したから、敢えて、諸関連については述べない。イマジネーションを使って読むべし!

ネタバレBOX

  スタートの音楽と同時に、タイトルのデジタルを匂わせるような身体パフォーマンスと申し訳ないが、余り達者とは言えないブレイクダンスを含めたパフォーマンスが始まる。
 物語と言える程の連携は、シナリオの単語相互の関係には見受けられない。そんなものを信じていないとか、自分達の先輩世代の築きあげてきたものを積極的に否定し得るような、己の実存を賭けた何かを突きつけて来る訳ではない。そも、ハイデガーのダーザインを継承したサルトルが、現代世界の実存を代表しているのは偶然ではない。ダーザインの意味すら分からない脳天気な連中(安倍 晋太郎のような阿保)は、この際、問題ではない。寧ろ、それを濃厚に感じているが故に、そして、それを体験していないことを理解しているが故に、彷徨う自分達の地平を提起しているのだ。この先、大人にならざるを得ないのなら、指針になる本を紹介しておこう。出演者全員、関係者全員に向けて! 現代を解く鍵になろう。その本の名は、以前、別の所でも少し触れたが、「国際原子力ムラ‐その形成の歴史と実態」合同出版 日本科学者会議編である。
クジカン×キカク

クジカン×キカク

シアターKASSAIイベント部

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2014/09/08 (月) ~ 2014/09/09 (火)公演終了

満足度★★★★★

ブラボー
 昨日は、演出家1人に役者7人のクジカンキカクであったが、本日は、参加メンバー全員が演出家である。

ネタバレBOX

 今作の演出を担当したのは、劇団東京都鈴木区の鈴木 智晴。出演陣も全員、演出家である。
ショーケン役:松本陽一(劇団6番シード)
金子役: 宇野正玖(劇団海賊ハイジャック)
西尾役: 細川博司(バンタムステージクラス)
松島役:久保田唱(企画演劇集団ボクラ団義)
社長役: ボス村松(劇団鋼鉄村松)
宮本役:夢麻呂(娯楽エンターテインメント演劇集団 「熱きロマンを胸に、生きる勇気と希望を与えるべく突っ走り続ける奴ら」
社運を賭けて売り出した新商品。“ナメタケの瓶詰・キムチ味”然し、完全な失敗。売れ残り続出で、経営の首を絞めた。週明けんは、二度めの不渡りを出しそうだ。そんな週末、金庫に残っていた200万円と社長が消えた。残ったのは、一箱120本入りのナメタケの瓶詰464ケースだけだ。社長の息子、ショーケンの計らいで倒産して差し押さえられる前に、せめて現物支給をしようと、土曜の夜から、徹夜でトラックに積み込んでいたが、作業中に社長が戻ってきた。東京11レースの馬券195万円分と共に。然し、このレース、3番、11番の鉄板。案の定、馬券は紙屑になってしまった。だが、社長が持ち出した金は200万。後、5万あるはずだ。その5万で決済の出来る金を稼げばいい、と阪神12レースにチャレンジするが、見事、今回は的中して350倍もの高配当。手がたを支払ってまだおつりがくる、と皆大喜びしたが。社長の持っていたのは船券。幸い当たってはいたものの、10.2倍で51万にしかならない。決済は1千7百万以上あるので、話にならない、と落ち込もうとしている所へ、朗報が入った。ナメタケの瓶詰が全部売れたのである。これで手がたのジャンプが出来ることになりそうだ。という所で幕。メニューは以下の如し。
1.顔合わせ
2.読み合わせ
3.配役決定
4.稽古
5.通し稽古
6.ダメ出し
7.本番
8. 反省会
本番まで9時間である。その間、小休憩、昼の食事休憩45分等を挟みながら、通し稽古は、予定の16時には少し間があるほどであった。演出家同士なのでツーと言えば、カーと通じる。その以心伝心性が抜群である。また、キャスティングも良かった。驚いたのは、こんなに短い時間で本番に臨んだのにキチンとした舞台に仕上がっていたことである。自分は朝、10時過ぎからずっと拝見していたのだが、感動してしまった。企画自体が素晴らしい。出演者は、大変だし、観る側も相当の体力勝負であるが、今後も第二弾、第三弾とこの企画をシリーズ化して欲しいものである。劇場側スタッフの対応も非常に良かった。
お披露目~浮気編~

お披露目~浮気編~

日本コメディ協会

駅前劇場(東京都)

2014/09/06 (土) ~ 2014/09/08 (月)公演終了

満足度★★★★★


 古典落語を劇化したような、粋で洒脱な2時間余。浮気をテーマに、其々テイストを変え、喜劇に必要な冷めた視点を観客に持たせながら、擽る、擽る。流石にコメディー専門の協会。その面目躍如である。(時間と体力が残っていたら追記。作品は素晴らしいよ)

ブラックジャックによろしく

ブラックジャックによろしく

トウキョウ演劇倶楽部(活動終了)

六行会ホール(東京都)

2014/09/03 (水) ~ 2014/09/08 (月)公演終了

満足度★★★★

ハングリー精神が欲しい
 原作は、「モーニング」誌上に連載された佐藤 秀峰氏のコミックだが、今作は、その5巻から7巻~がん患者編~である。原作を読まれた方も多いとは思うが、念の為、若干、この原作のアウトラインを示しておいた方が良かろう。主人公は、理科Ⅲ類、京都大学医学部、大阪大学医学部等に匹敵する永禄大学医学部出身の研修医、斉藤 英二郎が、日本の医療制度、システムの壁、法、倫理などと臨床現場の矛盾に悩みつつ、有り得べき医療を求めて、悩み、上部とぶつかりながら、自らも成長し、医療制度そのものをも変えてゆく「成長」の物語である。(因みに、今作の医学的状況は、原作の発表された2003年当時を基本にしている)追記後送

Unbreakable-アンブレイカブル

Unbreakable-アンブレイカブル

演劇レーベルBo″-tanz

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2014/09/04 (木) ~ 2014/09/09 (火)公演終了

満足度★★★★★

現代の悪
 ギリシャ神話に登場する創世神ウラヌス、その息子で父の秘所を金剛(今作ではアマダス)の斧で切り取り海に投じたクロノス、旧約聖書偽典“エノク書”などを下敷きに、グリゴリ(地上を見張る為に使わされた天使達200人だが、人間の女と結婚することを選び、為に堕天使となった。彼らは人間には、禁じられていた技術や化粧を教えた。これが原因で男は闘うようになり、女は媚びを売るようになって、地上は退廃したという)や、ネフィリム{神(今作ではグリゴリ)と人の間に生まれた巨人、身長は1350mあったという}、グリゴリを狩る為に使わされた4人の天使達の織りなす一大スペクタクル。天使が人間を愛し、子を為したからと言って、それが罪か? とのグリゴリ達の問いは、痛切。無論、本作内容は、上記のようなうわっつらだけでは無い。(体力限界なので、1行か2行本質的なヒント追記)

ネタバレBOX

 IAEAとWHOは協定を結んでいて、核が関係すると疑われる健康被害に関しては、WHOは、IAEAの言う事に逆らえないんだよね。(コリッチの読者にまさか、IAEAやWHOが何を意味するか分からない人はいないよね。無論、まじめにそんなこと思っていないから安心? してね。 と言われてるのは、どういう意味か分かってなかった人は、考えてね)一応、説明しておくと、IAEAは国際原子力機関。WHOは世界保健機構だよね。で、IAEAは、核、殊にアメリカの核戦略体制を優位に進める為に「世界」(「」がついていることに注意)各国への軍事的核の拡散防止と、「平和利用」(「」の意味を考えよ)原発推進を両立させる為に作られた組織と言っていいよね。他にも多々あるのだけれど、本日、これまで。調べたい人は自分で調べてみてちょ。英語以外に、フランス語文献、ロシア語文献などがあるにゃ。自分はロシア語は読めないので直接あたっていないけどにゃ。翻訳で読んでいる。
 まあ、今作を神話形式にせざるを得ない背景は、このヒントをキチンと追うだけの能力があれば、自ずと見えてくるよ。も一つだけヒント。エートスプロジェクトのチェルノブイリと福島を調べてごらん。その上で、ホントに科学的な知見を比べて見ると良いにゃ。世界の為政者共の狂気が分かるハズだから。一応、参考書。「国際原子力村」合同出版、「調査報告 チェルノブイリ被害の全貌」岩波書店など日本語で読めるものを挙げておく。それと、核物理学に関しても、京大の小出さんの本は読んでおくべきだろうにゃ。この程度は最低限、今作を理解する為に調べるべし。これ常識!
グレーテルの妹

グレーテルの妹

シアターノーチラス

OFF OFFシアター(東京都)

2014/09/03 (水) ~ 2014/09/07 (日)公演終了

満足度★★★★

最終日に拝見
 いつもながら、日常の何気ない些事に鋭く深く丁寧なタッチで切りこんでくる、シアターノーチラスの冴えが光る。この劇団の持ち味は、しみじみ考え込ませるような作品を毎回練り上げてくることで、大した力量である。今後とも見続けたい劇団の一つだ。もう一つ、話題性を獲得する為に、社会的事件と絡める手法を取り入れれば、ブレイクするは必定。(ネタバレ追記後送)

ネタバレBOX

 ヘンゼルとグレーテルは、1度目に森に入った時は、道しるべに小石を落としていったのに、2度目は何故、小鳥に食べられてしまうパン屑を撒いていったのか? いきなり鋭い問い掛けが為されて、物語は始まる。この問いと答えは、妹が出すのだが、認知症の初期段階にある父は、最近では、毎日、森に出掛けるのである。行く場所は、決まっているので、捜索に手間取ることは無いのだが、失踪した母を探して、毎日森を彷徨い歩くのが、日課になっていたのだ。
懐郷物語

懐郷物語

劇団EOE

千本桜ホール(東京都)

2014/09/04 (木) ~ 2014/09/07 (日)公演終了

満足度★★★★

一所懸命だが
 軍事を物語る場合は、地理的、政治的、国際的視野をもう少し広げておいた方が良い。また、念を形にする時、リアリティーが不足であれば、作家の最も深い所から立ちあがってくる照れなりなんなりがないと、容認される巾が狭まる。(追記2014.9.18)

ネタバレBOX

 シナリオに描かれているテーマ、テーゼに一切新味が無い。これは決定的なマイナスである。外界から断絶する、させることを良くやってきたようであるが、恐らくは、それが原因であろう。何でも縛れば良いというものではない。寧ろ、基本だけ教えてあとはほっぽり出す方が、優れたものを生みだすのではなかろうか? 今日、拝見した作品は、つか こうへいに似たテイストを感じはしたし、ある部分、役者の熱気などは、つか全盛期の時代の役者の演じた熱気をフィルムで観たことしかない自分は、そのフィルムから感じたのと似た感触を受けた。然し、舞台のそれでは無論ない。

 唯、自分にも、観終わって暫く金縛りにあった舞台がある。その時、同じ舞台を観ていた観客全員が、自分と同じ状態であった。終演の瞬間、会場は水を打ったように異様な緊張感を伴った沈黙に包まれた。誰もが息を呑んで、静まり返ってしまった。暫くして、其々が我に帰るや否や、割れるような拍手が起こった。大阪の劇団、Mayが、タイニイアリスで演じた「風の市」上演の際である。自分が、小劇場演劇に嵌ったのは、この公演を観たからである。演劇にはそれほどの衝撃力があるが、そんな舞台は、千本に1本位のものだろう。シナリオ、演出、音響、照明、演技、文化・歴史的背景等々が、渾然一体となって、観客のイマジネーションを最大限に揺すぶり、感応させ、至高の高みと地獄の底を引きずり回して魂の底の底までカオティックな熱で焼くとき観客は、身も心も役者や舞台と溶け、交わって壮大なイマージュの時空を創造するのである。
 このような舞台を作り上げる為には、外の世界を知り、自らを知り、真に葛藤しなければならない。魂の鍛錬を、このような精神的レベルに於いて行って初めて、「風の市」のような傑作が生まれるのだ。肉体的な鍛錬は、この魂の鍛錬に比べれば、負荷は軽いと言わねばならない。なぜならば、それは、無限を相手にするわけではないからだ。
マナナン・マクリルの羅針盤

マナナン・マクリルの羅針盤

劇団ショウダウン

シアター風姿花伝(東京都)

2014/09/05 (金) ~ 2014/09/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

えっ
  海は危険な世界だ。人間等一噛みで真っ二つにする程大きな鮫がいるし、凶暴な海獣も居る。何より底しれない海底から何が何時現れてもおかしくないのだ。現代ですら、宇宙と深海は、人の知の及んでいない場所の代表である。まして、物語の時代は18世紀初頭、それも実在した海賊、サミュエル・ベラミーを主人公にしているのだから、海洋実習船に乗って航海をしたりした体験を持つ自分は、男性役者の一人芝居だと決め込んで劇場へ行ったのだ。ところが、出て来た役者は、若く可愛い女性、確かにバランスの取れた無駄のない体つきをしていて、相当、体の鍛錬はしているであろう。 然し、演ずるのは、海の荒くれ者の代表とも言える海賊と彼らを追う軍隊だ。おまけに、1人で10人程を演じ分け、地の文章も多いシナリオだ。休憩10分を挟むとはいえ、2時間10分の長丁場である。無謀という評価をしなければならないか、或いは、人間というのはここ迄できるのか! という感心で終わるのか分からない、というのが、最初の印象であった。結果から言うと、後者であった。

ネタバレBOX

 シナリオが、物語の顛末を基本的には時系列に沿って追って言っていること、分かり難いと思われる点には、適宜、解説を入れながら進められるので、観客はずっと物語の勘所に集中していられること、が今作成功の秘訣であろう。この辺りの演出は気付かれ難いが見事である。また、演じる林 遊眠さんが、立ち位置、声音、体の姿勢や向きを合理的に組み合わせて人物を描き分け、最小の動きで最大の効果を生みだしている。頭の良い役者さんが、弛まざる訓練によって掴み取った結果なのだろう。無論、そうはいっても過酷な公演には違いないから、水分補給が必要になったり、サプリメントが必要になったりする。だが、それらを摂取したくても、中々摂取できない程のレベルで、つまり肉体負荷マックスの地平で彼女の演じる演技は、自ずと肉体に精神を宿し、極めて美しい。
 この彼女の身体に、演じられる其々のキャラクターが宿り、自らの言葉を彼女に託して発するようなイマージュを作り出す為に、実に効果的に、照明、音響が使われていることにも注意したい。林 遊眠はここでは霊媒である。だから女性なのだ。この物語の作りは、このように解釈すると、総てが合理的に符号するのだ。ラグナロックを防ぐ為に、最強の女神モリガンは、サミュエルの力を借りた。そして、今、蘇ったサミュエルは、霊媒、林 遊眠の力を借り、300年後の我らに語りかける。人が生まれ持っている権利、自由の尊さとそれを得る為に為されねばならない戦いとその意味を!
アカイイト

アカイイト

劇団ピンクメロンパン

タイニイアリス(東京都)

2014/09/03 (水) ~ 2014/09/07 (日)公演終了

満足度★★★

自意識は世界とどう対峙したらよいのか? について
見事に非生産的な作品だが、作家さんが若い頃は、小劇場の特性でこう言う作品が出てくるのも、面白さではある。但し、世の中に対する鎧として一人称世界は大して有効性を持たないということは言っておくべきだろう。戯曲は、古来から詩と並んで文学を代表する言語表現である。そして、それが、普遍性を持つのは、唯、三人称で語られた、或いは、書かれた場合だけだ。A la recherche du temps perduだって、話者Jeの構造は、客観化されることによって三人称化されているのである。絶対メジャーになんかなるか、との反発が在るのかも知れないし、それはそれで、ある時期通る通過点でもあるだろうから、深く追求しないが、ではなぜ、書くのだろう?
 観る人によって大きく評価が変る作品だろう。嵌るヒトにとっては最高、と成り得る作品ではある。

宵山の音

宵山の音

真紅組

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2014/09/04 (木) ~ 2014/09/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

千年の都
 祇園、京都を代表する風流な遊びのメッカだが、幕末、この地は勤皇 佐幕双方相乱れる情報合戦の陣中の場でもあった。そう考えて良かろう。無論、揚屋、茶屋が軒を並べ華を競う街でもあるから、表向きは、華やかで平和、その実、一旦、ことあれば、普段、目立たぬよう裏回りを勤める男達が、用心棒ともなれば、武士を相手の交渉人とも、また強訴人ともなったのである。それはそうだろう。千年を越える長きにわたり、都であったこの地は、たび重なる戦で散々辛酸を嘗めさせられてきた。闘い合う主体は勝てば権力を手中に、大きな力を持てるのだから、勝手にやればよい。然し、トバッチリを喰うのは、常に、ろくな武器も持たぬ民衆である。ろくな武器を持たぬ民衆が、武器を持つ相手や権力者に対して、どのように自分達を守り抜くのか? その答えの一つが、女性が、表の顔になることである。

ネタバレBOX

 祇園の街の仕来たりを門屋の女将と亭主に担わせて実に自然に分からせ、京の町の長く深く幾重にも屈折し折り畳まれた風情として出している所が良い。無論、その為には、中央の雛壇の配色に意を用い、歌舞音曲でデコレートを施し、時に殺陣を入れて、時代、それも動乱を時代を浮き彫りにし、平時なら、揉め事等の仲介役も務める親分衆に、このような時代は、自分達の手に負えない、というような科白も吐かせて、風雲急を告げる時代を示している。
心憎いのは、その親分の雪駄の緒が蛇なのに、子分達の雪駄は普通の緒である、というような細かい点まで目が配られている点、芸妓の衣裳や衣装替え、簪などの小道具迄、キチンと気を配って演出されている点などである。
 更に、情景を盛り上げているのが、クライマックスで、時を宵山に設定していることだ。宵山とは、祇園祭本番の前日である。巡業する鉾や山車が、各町内で披露目をしている。其処を、芋の子をあらうような人々の群れが訪れては、鉾や山車の装飾に用いられている織物の見事さを見ては嘆声を上げ、ゆらゆらと夏の陽炎の立つ程暑い京の街を練り歩くのである。無論、恋人達にとっては絶好のデートスポットである。幕末でも、若い男女の逸る心は変わらない。門屋に集う男女の恋文様は、この時期・季節に設定されているのである。京都に住んだことのある人ならば、この設定が、いかほど時宜を得たものであるかに得心が行くハズである。
 こんな具合に恋あり、華やかな花柳界あり、歌、踊りありの背後で、日夜刃傷沙汰が起こっていた。実際、門屋の玄関前にも斬られた人が倒れていて、門屋の常連、長州藩士、五郎が見付けたのは、土佐藩士であった。男装している彼女に、表向き気付かぬふりをしながら、門屋の面々は、面倒を見る。彼女は、壬生組にやられたのである。
 サイドストーリーにも事欠かない。五郎と共に門屋に通う清造は、店で最も美しい笙華とねんごろな仲であるが、彼女は、本気に人に惚れたことが無い。無論、好いたことはある。
だが、花柳界で恋をするということは、命懸けで、時には複雑な状況を抱えた恋する人の嘘を守ることでもあり、そのような恋は身悶えせんばかりに苦しいものなのである。それを抱え込んで墓場まで持ってゆくような、一種の覚悟を抱えた恋は、したことが無い。一方、五郎の馴染みは、三糸。彼女は、五郎、実は桂 小五郎の、出来れば刃傷沙汰を避け改革を断行しようとの念と波長を合わせながら、命のやりとりにも関与せざるを得ない位置に生き、最終的に彼女の選ぶ男の格によって、彼女自身の品格と見識を表すと同時に、女性の本質である、恋する存在をも浮き彫りにしている。三糸を演じた古田 里美さんの演技が実に良い。無論、五郎を演じた大澤 真也さんの演技もグー。
 恋は、女性の命であるから未だ半玉の芸妓らも、彼女らを巡る恋文様と仕出し屋の御用聞き、勝治の死、彼の死に纏わる武士と町民の関係などもキチンと描かれているし、忠志が池田屋騒動に参加する下りにも恋はキッチリその彩文様を記している。これら、多くの体験を通して芸妓が半玉から玉になるシーンも、扇子を与えるナギの姿を通して描かれるなど花柳界の仕来たりにも目配りがされている。
 特筆すべきは、忠志を演じた高島 理さんだ。この3年間で千本以上の舞台を拝見し、時代劇もそのうち百本は越えているであろうと思われる程拝見している自分が、初めて目の当たりにしたシーンを彼が演じたのである。詳細は、観てのお楽しみだが、終盤、池田屋騒動の場面である。
 その他、観客の出迎え方がユニーク。これにも、自分は感心した。楽しみに劇場へ向かわれるが良い。
=侠= 君、逃げたもうことなかれ

=侠= 君、逃げたもうことなかれ

サンハロンシアター

「劇」小劇場(東京都)

2014/09/02 (火) ~ 2014/09/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

着眼点の素晴らしさ
 初見の劇団であるが、着眼点の良さに感心した。また、勝ち負けだけを重視する最近の傾向に対し、心構えや立場の諸関係、即ち勝ち負けが成立する為の諸状況という場を対置してみせ、それ自体を作品化し得た実力を評価したい。シナリオの良さに加え、主役の九条を演じた内藤さんの演技が素晴らしい。物語の進展するにつれて、どんどん、良い顔に見えてくるのだ。(追記後送)

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