対岸の永遠 公演情報 対岸の永遠」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.1
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  • 脚本:長田育恵。約2時間。昔ソビエトで暮らしていた父娘の話。ソビエト政権崩壊から10年後の娘の日常、そして消えた父の足取りを追うので、過去数十年の歴史をたどり思考の旅ができる。国境、人種、宗教、言葉などの境界を会話劇で鮮やかに表し、具体的に想像させる。
    題名の『対岸』にも境界が含まれている。岸と岸の間には海(水)がある。詩の言葉は現実と空想の間を渡す橋のよう。言葉を生み出し、味わい、探る自分(人間)には、最初から現実も空想も内包されているはず。悲惨な現実と空想(ユートピア)は常に併存するはず…などと想像。
    初日は異種格闘技の片鱗はありつつも、集団全体で作品の芯に向かう集中力が良かった。一か月公演のうちに俳優の関係性も変わっていきそう。
    演出:上村聡史、美術:乘峯雅寛といえば読売演劇大賞最優秀スタッフ賞を受賞したばかりのシアター風姿花伝プロデュース『悲しみを聴く石』のコンビ。今作も盤石。照明(阪口美和)も時空の広がりを感じさせ美しい。文学座の俳優もいるので文学座アトリエ公演っぽくもあり。

  • 満足度★★★★

    ソビエト崩壊後のロシアで、祖国を追われた詩人と父に捨てられたと思い込んだ娘の葛藤を軸にした物語。事前に「翻訳劇っぽい」という感想を複数見かけたため、(翻訳劇が苦手なので)ちょっと覚悟して観劇に望んだが杞憂にすぎなかった。モデルとなった社会的背景等は断片的な知識しか持ち合わせていないため、わたし自身が長田さんのメッセージをきちんと受け取れているとは思えないけれど、確実に心に響いたものがあり涙が溢れたのだと思う。今回、個人的には親子関係の葛藤が一番感じるものがあった。忘れてしまったほうが楽になれるのに、それでも苦しみながら考え続けてしまうのは諦めていないという事で・・・。娘が父の言葉と向かい合い続けるのはきっと理解する事を諦めていないからだと思う。
    タイトルの「対岸」とは求めても手が届かないものの象徴のように感じた。 物質的に豊かになりすぎた世界は、自由を欲する気持ちを失わせるのだろうか。「アメリカに彼の詩を本当に必要としている人はいなかった」という意味の台詞が印象的だった。最低限の言葉で表現され、受け手によって容易に形が変わるという点で詩と戯曲は似ているのではないかと感じた。このお芝居、もっと違う切り口でも考えられたらいいのに思う。民族とか性的マイノリティとか国家の矛盾とか。そういう意味でもせめてもう一回観たかった。俳優陣は相変わらず達者な方ばかり。今泉さんのバレエがお見事。箱田さんのファーストシーンに驚き。

  • 満足度★★★★★

    2回目。
    劇場に入って、セットに味がしみてる・・と、思いました。
    ロングランならでは、この劇場ならでは、そして千秋楽間近に見れたからならではの感覚かもしれません。なんだかセットが息をしているみたいに感じました。
    2回目の観劇は、先に先に涙が出てきてしまいました。
    今回一番泣けたのは、半海パパが娘を置いてく時に「チェリーの砂糖漬けを買いに行かないか」と娘に手を差し出したところです。
    なんてせつない・・・・・・。
    そして、このパパを愛した二人がふと彼の気配を感じるところもいいです。

  • 満足度★★★★

    鮮烈
    長田作品を7作ほど観ているが、精神的エグり度はMAXかな。
    親子関係、友人関係、過去の痛み、憎悪、様々な感情を引っくるめてヴィヴィッドに描いてますね。
    一歩進んだ感があります、長田さん。

  • 満足度★★★★★

    無題1780(16-070)
    19:00の回(曇)

    19:10会場着、階段を上がり2列(1列は当日券:この日は1名3枚まで、もう1列は予約済み)で整列、19:15受付、19:30開場。

    「線のほとりに舞う花を(2011/4@王子)」から11公演目(再演、自主企画公演含む)になりました。

    前回公演のシアターイーストに替わり、本作はどの駅からもちょっと遠い風姿花伝の小空間(1/3くらい?)。

    入ってみると、どこにも明るさ(色)が感じられない部屋、唯一、下手の窓だけが白く明るい。
    正面にシーツが干してあり、酒瓶だらけの床、煤けた壁、テープルの上には煙草、灰皿(ということで喫煙シーンありますが事前にスタッフから説明があり、希望者にはマスクを配布)。客席は、椅子席+クッションで座りやすく、当日券の方でしょうか通路にクッション席を追加。

    19:08水の音が聴こえ開演~21:08終演。

    「The Wall Live In Berlin」は1990年、ソ連崩壊1991...とても遠いことのように感じてしまう。

    視点は部屋の内側に固定されている。隣の部屋、玄関、窓からは運河が見えるようだ。

    だが作者は見えないものを見せながら時間を遡り、部屋の中に投影する。
    記憶の奥底に押し込めようとしてものが目を覚ます。

    見えていなかったものが他者の視点から語られ、記憶はより鮮明になり、かつての愛おしさと暖かさを取り戻す。

    幼かった自分を自分の内に感じることができる。

    今なら喪ってしまったものをまっすぐ見つめることができる。

    作者による説明に「灰色の空と運河」とある。灰色の(室内)世界といえばヴィルヘルム・ハンマースホイ(画家)の世界。国立西洋美術館での展覧会は2008年だった。同館で1つ(ピアノを弾く妻イーダのいる室内)所蔵しているが常設ではないようだ。

    そんな色のない世界にも流れる赤い血の鼓動。生きるためにはたばことアルコール、そして戦火なのか。

    海外が舞台ということで「てがみ座」の皆さんもだいぶ印象がちがいました。

    今泉さんはバレエの経験があるのでしょうね、整ったフォームになっているようでした(ダンスもよく観ますがコンテンポラリーと舞踏しか観ないので...)。

    岸野さんは「青春残酷短編集(2012/3@笹塚)」「小豆洗い~泥を喰らう~(2013/10@BASE)」「地獄篇 ―賽の河原―(2014/1@王子)」「はてしないものがたり(2015/3@王子)」「ちょぼくれ花咲男(2015/6@高円寺)」。みやさん「おもてなし(2014/11@スズナリ)」「ハルメリ2013(2013/3@高円寺)」。

    いまも知らないどこかなどではない、身近なはずの処で起こっていること。

    余談:ロビーに横山さん。@鶏由宇「ドアを開ければいつも」に出ていらっしゃいました。2014/10、1年半経っても観に行く度に思い出します。

  • 満足度★★★

    観てきました
    ロシアのお話みたいで、 ちょっと分かりにくい場面もありました。
    半海さん、小さな体でも 存在感がすごいですね!  

  • 満足度★★★★

    ロシアが抱えるもの
    1999年のサンクトベテルブルグを中心に家族を置いてアメリカへ亡命した詩人と祖国にいる娘やその家族、知り合いの心情を描いた重厚な力作。長田さんの戯曲は実は初観劇。全編で、詩的なセリフが多く心にスッと入るというよりは、もう少し観る側が思考しながら観る必要に迫られるところはあったけれど、ラストに行くにつれ娘と父がどこかの世界でどんどん心が通い合って行く様が力強く押し寄せ、ラストは呪縛からようやく解き放たれた安息が訪れる。観ているこちらも静かに感動できた。
    日本人にとって社会主義時代のヨーロッパを100%理解することはできないと思っている。かつて東ドイツ出身の巨匠指揮者、クルト・マズア氏がNHKのインタビューで、東西ドイツ崩壊時の心情を聞かれたとたん、それまで上機嫌で答えていた表情が一変し、こう言った。「今、この限られた時間で、それをあなたに話して、いったいどれだけ理解できるのでしょう?おそらく無理だろうし、あなた方の番組が、むこう1週間にわたって私の話を編集なしに放送してくれるなら、話してもいいが・・・」と。あの情勢の当事者でないとわからないことは山ほどある。ただ、長田さんのこの戯曲は、それを柔軟な感性で上手に解きほぐし、全部は無理でも当時のロシア人の感情の一旦を間違いなく感じることはできたような気がした。

  • 満足度★★★

    海外を舞台とした他国人の芝居を日本で観る・・難しい課題に挑んだ成果は。
    久々のてがみ座観劇だったが、長田戯曲の感触は多分刻まれており、それを思い出させられた気がした。 文学的、というのが印象を言い当てる一つの言い方だが、その要点は何か・・。 台詞が、ある範囲というか、枠から飛び出ることがなさそうに感じる、そういう台詞の連なり、書き手にとって心地よい響き、所謂「文学的」=詩的、と言ってよいかも知れないが、素な日常言葉が混じる、のでなく、詩のほうに寄った表現が、混じる。生身の人間から発したことを確信させる言葉が、「文学的」の範疇を逸脱してでも飛び出てくる可能性、予感がない、ということなのだと思う。 とても微妙な部分について言っていてそんなのは芝居の本質に関わらない、という意見もありそうだが・・・私にはその部分が、「こちらか、あちらか」の境界を揺れており、どちらに立つのかは重要なのだ、という感じを持っている、今のところ。

    ネタバレBOX

     問題は戯曲にもありそうだが、まず見えるのは俳優だ。もう少し切実に、「そこに居る」リアリティを持てないのか・・・確かに、ロシアという土地の、庶民の感覚を身体ごと立ち上げることは難しい課題だろうけれど。 戯曲に対する確信が、持てていない? 演出はどうか・・・
     シアター風姿花伝のゆかりの演出家である事は今回知ったが、上村聡史演出+風姿花伝の秀作を頭に過ぎらせないでは行かない。戯曲をどう解釈し、何を生かそうとしたか・・ 美術や音響など「お膳立て」は期待感を駆り立てるが・・・
     亡命者である「父」を演じた俳優の佇まいはユニークだったが、彼がいったいどういう詩人であったのか・・そこが分からなかった。作者はどう描きたかったのか、も。彼自身が「逃亡」の途上で体験したものや、祖国に住む娘が(現代)出会うチェチェン出身者のこと、など「悩ましいテーマ」を想起させるが、その事と出会ったがゆえに彼らがどう変わったのかが分からないし、詩人の思想そのものとの関係も、結びつけづらかった。
     何より、娘にとって「父」を許せない決定的な理由があったが、それならば嫌悪や恨みを通り越して、無視の段階に至っていておかしくない。その彼女が、何をきっかけに父を受け入れるのか、そこも分からなかった。最後は歩み寄る、ということが物語りを一歩進めたようだが、結果先にありき、と見えなくない。役者自身が、その理由を見出していないと見えた(戯曲に書かれていないからだが、彼女はどう納得しているのだろう)。
     夫が改心する理由も分からない。爆撃音を聞いたことで、一時的に、日本での震災直後のように、何か真っ当な生き方をしなきゃと、テロを間近に見てそんな気になったのか。他に見当たらないのは私の鈍感な感性ゆえか。
     ヨシフ・ブロツキーという詩人(劇作もあり)を題材に書いたのだという。評伝に近い(史実を踏まえた)物語か、フィクションか。後者だという気がしたが、それにしては、実在した人物の威光というか、事実性(重さ)に依拠した作りに見える。
     一番困ったのは恐らく、この芝居をどう自分の場所に引き付け、重ねればよいのか、だろうと思う。 頭の悪い自分には、当たりも付けられない。
  • 満足度★★★★

    チラシも良くって
    「祖国」と「詩人」。もうそれだけで大作を観たという満足感。祖国を想う心、父を想う心…。役者さんたちの技量もあって見応えありました。対岸に何を想うのか、あの窓から見える風景を想い描き未来が戦争のない世界になる様に祈ります。

  • 満足度★★★

    詩人が想像せよと
    演出家変わっても大きな変化がないのは脚本に揺るぎがない=緻密であることの証し。

    ネタバレBOX

    石村さんは好きな役者のひとりでてがみ座を観る理由の2番目。出演シーン多く個人的には嬉しいことだったが、今回の役には疑問が残る。飲んだくれなのに飲んだくれに見えないからこの人は飲んだくれなんだと自分に言い聞かせながら観ていた。芝居ではなく見てくれ(せめてメイクで赤ら顔にしたり汚くしてくれれば・・・)の問題。こればっかりはどんなに芝居がうまくてもどうしようもない。石村さんの役だけでなくいつになく解せないシーンや設定、演技(演出)があったのでこの評価。後半に観れば評価はあがったかも。
  • 満足度★★★

    ネタばれ
    ネタばれ

    ネタバレBOX

    てがみ座の【対岸の永遠】を観劇。

    ソ連崩壊後のサンクトペテルブルグ。
    そこに住む女性の下に、アメリカから女性の父親の遺品を持った若者が現れる。
    彼女の父親は、ソ連時代に国を追放されて、アメリカに亡命した詩人である。
    勝手に家を出て行ったと思いこんでいた父親の遺品を通して、父と娘の真実との対話が始まるのである。

    想像し難い社会主義国のソ連での一般市民の苦悩、家族感、国家感が描かれている。
    苦みを潰してしまうほど、共感するにはやや難しい芝居ではあった。
    ただアメリカ人の若者が、何故遺品を持ってサンクトペテルブルグまでやって来たのか?という視点から入っていくと、立場の違う我々が、彼らの苦悩に少しは寄り添う事は出来るようだ。
    但し同じ立場ではなく、対岸の傍観者としてではあるのだが......。
  • 満足度★★★★★

    くそ面白かった
    個人的には苦手なジャンルだと思うんだけど、
    気が付いたら、全編で見入ってました。
    役者さんの技量もあって、メチャクチャ、面白かったです。

  • 満足度★★★★★

    温かな涙・・・。
    旧ソ連に引き裂かれた父と娘・・・26年の歳月を経て、真実と心と向き合う。
    なんとも苦しくて、悲しくて、切ないドラマですが、温かさもまたそこにあって、娘の心情に泣かされ、父の心情に泣かされました。

  • 満足度★★★★★

    重厚
    才能のある人は素晴らしいです。

    ネタバレBOX

    プーチンが大統領になろうとする頃、1999年のサンクトペテルブルクのアパートに、祖国を捨てた詩人である父親の遺品を持った米国在住の人物が娘の許を訪ねてくるところから始まる父娘それぞれの思いが交錯する話。

    追放の原因がユダヤ人であることと詩人であること、亡命することを家族に伝えたら家族は一生監視下に置かれると言われたため何も言わずに去ったこと、重たい内容でした。1999年はチェチェン紛争があった時期でもあり、同じくチェチェンを捨てた女性の気持ちや、娘と娘の義理の娘との関係にも相通じるものがあり、重層的であり、着想から実際の演劇に仕上げる能力はさすがだと感服しました。

    マンハッタンの街を車で運河沿いに海まで走らせることが、水脈を通じてサンクトペテルブルクの運河沿いのアパートにまで繋がると考えると切ないです。海と運河の光景が目に浮かびました。

    以前は目がぎょろっとした印象がありましたが今はそれが無くなった半海一晃さんの枯れた風貌が素敵でした。

    それにしても、芸術的才能を有する人が本当に羨ましいです。著作権という形で娘に残せるのですから。
  • 満足度★★★★

    翻訳劇っぽいけど日本の戯曲
    1ヶ月近いロングラン公演の舞台だそうで。
    日本とは遠く離れた国の話なのに、どうしてこう異国の抱える問題を厳しくも切なくまた力強く見せてくれるんだろう。昨今の政治社会面的な要素も多く、完全に理解していたかは自信ないけど、生まれた時から危機感を抱きながら暮らしてきた市井の人々の嘆きと苦しみを、父である詩人の言葉が巡り巡って娘の憎しみを和らげる、時間と人生を重ね合わせて見せてくれた舞台でした。
    詩人ということもあって、セリフがややとっつきにくく聞こえた面もあったけど最後のシーンには胸が熱くなって見てました。
    約2時間。

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