各団体の採点
開演前に出演者が観客に飴を配るという予想外の親しさ、そして昼間からいっぱいで、ワイワイしてる感じの客席にまずはビックリしました。
気軽な雰囲気の「前説」(らしきもの)からシームレスに本題のドラマに入っていく手つきも含め、気持ちよく、伸び伸びしている集団(もちろん「考えている」と思います)なのだなと感じました。
芝居そのものはもちろん、「マクベス」ですからシリアスです。
セットも衣裳も小道具も、できるだけ具象を排した空間の中で展開されるのは声と身体のドラマ。動きもせりふも、決して過剰になることなく、でも、十分に満たされている、といってよいものだったと思います。中でも私は、感情や状況をたくみに表現する<声>に魅力を感じました。<声>が表現する恐怖や喜びには、不思議な奥行きが宿るものです。
シンプルな装置の中で、主に身体表現で戯曲を立体化するスタイルでした。想像していたよりも原作に忠実で、初めて「マクベス」を観た人にもその内容があらかたわかるようになっていたことに好感を持ちました。主人公マクベスは三人の魔女の予言に翻弄されますが、それを現代に読み替えた演出がとても面白かったです。
オープニングの「観客の恋愛体験をその場で手短に演じてみる」という余興(ガチンコ馴れ初め芝居)は、個人的には好きにはなれませんでしたが、舞台から役者さんが観客に気さくに話しかけ、希望者全員に飴を配るサービスづくしの幕開けには、劇団の姿勢がよく表れていて感心しました。ロビーでは絵画展が併催されており、演劇鑑賞の窓口を広げる工夫もされています。
初日はシアター・カイが通路席まで埋まっており、劇団の固定ファンを大勢獲得されているのがよくわかりました。
受付に長蛇の列ができており、スムーズに客席につけたとは言いがたい状況でした。終演後に演出の佐川大輔さんとお話させていただいた際、作品の感想と一緒にそのことをお伝えしたところ、真摯に聞き届けてくださいました。翌日からは具体的に改善されていたようで、観客への誠実な対応を嬉しく思いました。