★★★家族の論理

作・演出の松居大悟の家族を題材にした、最低な家族のホームコメディー。これまでも、松居の作品は、あるグループ内における論理の正当性を守ろうとすると、外部から観るととても滑稽なことになっているといった風景を描いてきたんだと、この作品を観た後に、彼の作風が見えてきた。これまでに比べて大きな劇場ということで、シンプルながらも挑戦的な舞台セットをフルに活用した演出は見所でした。

★★★傷つけながら絆を深める家族

前作『ハッピーエンドクラッシャー』で、笑いの要素はもちろん、人間関係や登場人物一人ひとりの感情をより深く描くことに力点を置いていたゴジゲン。
今作はある家族の形を描いた物語。母親は父の暴力が原因で家を飛び出し、残された子どもたちも引きこもりや非行と、それぞれが問題を抱えている。そんなギリギリの状態にもかかわらず、家族の誕生日だけは全員で祝うという妙な”つながり”もあったり。しかし、それぞれが考える家族像が違うゆえ、衝突は繰り返される。傷つけあいながらも、その傷の痛みで絆を感じるというのが痛々しくもあり、ホッとしたところでもあり。

★★★「家族の形」って……

「再生の物語ではない」とのことでしたが、多少風変わりではあっても、これはやはり「家族の絆(とその重要性)」に焦点を当てたものに見えました。

母が出て行った後の、荒れ果てたリビングとダイニングを舞台に描かれるのは、非行、引きこもりなど、それぞれに問題を抱えた家族の、なじりあいや暴力をも交えた激しいコミュニケーション。とはいえ「そろって誕生日を祝う」ことへの異常なこだわりも手伝って、その様子はどこか滑稽にも見え、笑いを誘いさえします(このあたりは俳優の魅力でもありますね)。

★★★舞台は崩壊し、家族は(一瞬)再生する

 あらすじ→母が突然出て行ってしまい、3人の兄弟と父親だけが残された。そんな非常事態に、次男の誕生日パーティーに参加しようと長女とその夫が帰ってくる。しかし次男は友人を2人連れて来て、家族水入らずの雰囲気ではなくなってしまった。さらに見知らぬ男まで家に入り込み・・・。

 作・演出の松居大悟さんが終演後のトークで話されていたとおり、役者さんの即興(エチュード)からシーンを立ち上げる作劇方法をとっていらっしゃいます。役者さんの魅力を伝えやすいという利点はあるものの、どうしても脚本の精度は低くならざるを得ないと思います。必要だとは思えない会話が積み上げられては捨て去られていくので、私には何を見て、何を感じ取るべかを選べない混沌状態でした。でも最後にあっと驚く演出で、ぐるりと世界をひっくり返してくれたのがとても面白かったです。

 役者さんの中では母のボーイフレンド(?)役の津村知与支さんが特に印象に残りました。一人芝居としても観られる完成度で、ありえない事態をしっかり成立させていらっしゃいました。

★★★★★初日から完成度が高い!

 200席以上ある吉祥寺シアターで2階席まで満席。勢いのある劇団の勝負を賭けた公演はやはり違う。初日から完成度は高く、練習が行き届いていることがわかる。役者同士の間合いも絶妙だ。

 次男の誕生日を題材に、母親が家出をして崩壊しつつある家族の、なんとか崩壊を防ごうとする涙ぐましい努力と、どんなに取り繕ってもぼろぼろと崩れていく様子を少しデフォルメしながら切なく描いている。

 客演陣にさまざまな劇団から味のある役者を揃え、登場人物一人一人がそれぞれ違ったタイプながら全員破滅型という、その役の設定が作品を面白くしている。

役者では長女役の安藤聖が気の強い長女役を好演、素敵だった。また父親役の島田曜蔵が、芝居を支える。この人がいなかったらこの芝居は成立しなかっただろう。

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