対岸の永遠
てがみ座
シアター風姿花伝(東京都)
2016/03/04 (金) ~ 2016/03/30 (水)公演終了
脚本:長田育恵。約2時間。昔ソビエトで暮らしていた父娘の話。ソビエト政権崩壊から10年後の娘の日常、そして消えた父の足取りを追うので、過去数十年の歴史をたどり思考の旅ができる。国境、人種、宗教、言葉などの境界を会話劇で鮮やかに表し、具体的に想像させる。
題名の『対岸』にも境界が含まれている。岸と岸の間には海(水)がある。詩の言葉は現実と空想の間を渡す橋のよう。言葉を生み出し、味わい、探る自分(人間)には、最初から現実も空想も内包されているはず。悲惨な現実と空想(ユートピア)は常に併存するはず…などと想像。
初日は異種格闘技の片鱗はありつつも、集団全体で作品の芯に向かう集中力が良かった。一か月公演のうちに俳優の関係性も変わっていきそう。
演出:上村聡史、美術:乘峯雅寛といえば読売演劇大賞最優秀スタッフ賞を受賞したばかりのシアター風姿花伝プロデュース『悲しみを聴く石』のコンビ。今作も盤石。照明(阪口美和)も時空の広がりを感じさせ美しい。文学座の俳優もいるので文学座アトリエ公演っぽくもあり。
砦
トム・プロジェクト
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2016/03/01 (火) ~ 2016/03/06 (日)公演終了
約1時間50分。13年間に渡るダム反対運動を描く。三池炭鉱、足尾銅山、成田空港、辺野古…等が次々と思い浮かぶ。「土地収用法は現代の赤紙ぞ」「公共事業は理に叶い、法に叶い、情に叶うものでなければ」。胸に刺さる言葉が沢山。主導者役は村井國夫さん、妻役は藤田弓子さん。奥深い演技で70代の役人物をチャーミングに見せて下さる。ベテラン俳優の存在そのものに感謝の涙。アングラ風の演出でスケール大きく。
裸に勾玉
MONO
シアタートラム(東京都)
2016/03/05 (土) ~ 2016/03/13 (日)公演終了
満足度★★★★★
約1時間55分。劇場に入るなり美術を見て気分がアガる!本当に弥生時代の話だった(笑)。冒頭からゲラゲラ笑って、終盤はめっちゃ泣いてしまった…。土田英生さんの戯曲は「排斥」を描くものが多いと思う。たとえば自己保身のために他者を簡単に犠牲にする。その他者とは弱者、少数者であり、つまり私のことなのだと優しく伝えてくれる。人間の幸せについては、アドラー心理学の本「嫌われる勇気」とも重なった。
焼肉ドラゴン
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2016/03/07 (月) ~ 2016/03/27 (日)公演終了
逆鱗
NODA・MAP
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2016/01/29 (金) ~ 2016/03/13 (日)公演終了
約2時間15分休憩なし。衣装も群舞も綺麗。大活躍のパネルたちと相性の良い美術も美しい。ロマンティックな言葉遊びにうっとり。でも噂通りストレートで終盤は苦しくて涙した。説明的だとか直球すぎるとか、どう評されようが、やるしかない、言うしかないということか。『2001人芝居』『オイル』『パイパー』など野田秀樹さんの過去作品がどんどん思い浮かぶ。
ザ・ドリンカー
浮世企画
駅前劇場(東京都)
2016/02/17 (水) ~ 2016/02/22 (月)公演終了
幕末の浮世絵師もので幽霊も登場。伊達暁さんが柔軟&細やかな工夫のある演技で、私の今までの印象を一新。達者な出演者が多くアンサンブルも良い。対面客席の丁寧な会話劇。
ラジオ危口
Produce lab 89
音楽実験室 新世界(東京都)
2016/02/15 (月) ~ 2016/02/15 (月)公演終了
『ラジオ○○』というのは、アーティストが基本的に1人で長時間、自分について語るというイベント。危口紘之さんがご自身を晒す3時間でした。長時間だから無駄だ、余計だと省かれがちな事柄が溢れ出て、凄く楽しかった。お薦め小説紹介の語り方が素敵。「漏祭」に爆笑し、感動。絶対見ないけど(笑)。
光の国から僕らのために―金城哲夫伝―
劇団民藝
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2016/02/10 (水) ~ 2016/02/21 (日)公演終了
青森が拠点の劇団渡辺源四郎商店の畑澤聖悟さんが、劇団民藝に脚本を書き下ろす第三弾。「ウルトラマン」の生みの親、金城哲夫(きんじょう・てつお)さんのお話。懐かしく、微笑ましく楽しんで観ていましたが、やがて涙、涙でした。テレビ局の横暴に振り回される特撮会社、沖縄国際海洋博覧会(1975年)で東京資本の会社から搾取される島民、そして今、米軍が沖縄で起こす事故、事件…。
レクチャーパフォーマンス「廃墟の証言」東京版
芸術公社
SHIBAURA HOUSE(東京都港区芝浦3-15-4)(東京都)
2016/02/04 (木) ~ 2016/02/06 (土)公演終了
コロンビアの首都ボゴタで行われてきたパフォーマンスを映像と講義、朗読で紹介。
終演後のトークに登壇された詩人の管啓次郎さんの言葉が記憶に残る。「命令」という詩集は出版されたのかしら。
Opera club Macbeth
オペラシアターこんにゃく座
吉祥寺シアター(東京都)
2016/02/05 (金) ~ 2016/02/14 (日)公演終了
約2時間半休15分込み。眞鍋卓嗣の新演出で初演から美術、衣装、メイクなど刷新。前半少々退屈したが後半とても面白かった。悲哀漂う中年会社員がマクベスの劇世界へ没入。ヘカティーら魔女の森の場面が迫力。音楽と魔女は相性がいいのかも。
あぶくしゃくりのブリガンテ
東京No.1親子
駅前劇場(東京都)
2016/02/03 (水) ~ 2016/02/14 (日)公演終了
カテコ込みで約1時間55分。すごく面白かった!駅前劇場の横長小空間で、ドタバタのギャグもハッとさせられる名セリフも大胆な風刺も大盤振る舞いの福原充則ワールド。演劇ならではの仕掛けもふんだん。昭和が息づく、又は支配する平成の姿…。佐藤B作さん、銀平さんの体当たりの親子ネタに大笑いし、劇中の親子対立を彼らと重ねる。安藤聖さんの抑制の行き届いた緻密かつ熱い演技に見入る。親子のみならず男女の闘いも熾烈。
『官能教育』─官能をめぐるリーディング─第9回「この町にはあまり行くところがない」
Produce lab 89
音楽実験室 新世界(東京都)
2016/02/12 (金) ~ 2016/02/14 (日)公演終了
私が観た「官能教育」シリーズの中で最もエロかった…!三浦さん、可愛らしいお顔であんな、こんな…!私的に内容はR25だけど若者や演劇初心者に観て頂きたい気持ち。演劇ってこんなに凄いこと出来るんだ…!って思ってもらえそうだから。
甘酸っぱい青春、大人の性愛、求め与え合っても満たされない乾き、報われない夢想の行方…。はぁ~切ない!小道具、椅子等の見立てが見事。ゾクゾクするし笑っちゃう。飴屋法水さんの切れ味もさすが。私は原作漫画未読。
オーファンズ
ワタナベエンターテインメント
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2016/02/10 (水) ~ 2016/02/21 (日)公演終了
『オーファンズ』は日本でよく上演されているそうです。私は2000年に一度だけ拝見。言葉と人間関係をじっくり味わうことができました。じーんと体から湧き上がってくるように「いい戯曲だな~」と思えたのは、戯曲そのものの良さはもちろん、演技、演出で世界を緻密に作り上げてくださったからだと思います。
SPAC『メフィストと呼ばれた男』
SPAC・静岡県舞台芸術センター
KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)
2016/02/14 (日) ~ 2016/02/14 (日)公演終了
三時間+休憩15分。税金で運営されている公立劇場に時の政府が介入。身につまされる。変化の中で芸術が芸術としてあり続けることは、非常に困難なのだと改めて感じた。古典戯曲の引用多数で楽しい。芝居が民衆的にされる場面は「黄金の馬車」と重なった。
イェヌーファ
新国立劇場
新国立劇場 オペラ劇場(東京都)
2016/02/28 (日) ~ 2016/03/11 (金)公演終了
タイトルロールの若い女性と、その父の後妻(継母)との対比鮮やかな愛憎ドラマ。涙した…。リストフ・ロイ演出は洗練かつ雄弁。抽象化された白い箱の中で物語が展開し、閉塞感と開放感の両方が際立って、空気が濃密。スマートに可動する装置でメッセージが明確。
約百年前の作品だけど衣装は現代風。描かれる世間、親子、男女は今とぴたりと重なる。黒装束の継母(ジェニファー・ラーモア)はまるでブラックホール。負の感情を吸い込み爆発させる。自分を追い詰め孤立する姿が切実で、演技にも歌にも感動。音楽は人物の心情に沿うタイプで優しく温かい。無音の時間は演劇的効果絶大(私は音楽には全く詳しくないですが)
1904年チェコ初演のヤナーチェク作曲オペラで、演出はドイツ人。出演者の国籍は独、米、伊、日。チェコ語で歌えるオペラ歌手は貴重とのこと。2012年ドイツ初演版キャストがほぼ揃った贅沢な国際共同製作。オペラは国境を越えるのが前提なのだなぁと今さら改めて感じ入る。
胎内
マキーフン
【閉館】SPACE 梟門(東京都)
2016/01/27 (水) ~ 2016/01/31 (日)公演終了
「胎内」を観るのは4度目。洞窟の表情を作る照明が巧み。男女3人が激しく触れ合い、命(生と性)を描くのが個性的。藤井咲有里さんの演技が細やかで美しい。90分と短くまとまった三好十郎体験。
黒蜥蜴
SPAC・静岡県舞台芸術センター
静岡芸術劇場(静岡県)
2016/01/16 (土) ~ 2016/02/07 (日)公演終了
大切に発せられるセリフを味わうごとに「三島由紀夫戯曲、めちゃカッコえー!」と脳内でのけ反る。演出で批評したりせず、ロマンティックで耽美な世界をストレートに立体化。主役のたきいみきさん超美しい!女盗賊の人生そのものが宝石なのだと思えた。約2時間55分休15分込。
城塞
劇団俳優座
シアタートラム(東京都)
2016/01/06 (水) ~ 2016/01/17 (日)公演終了
面白い戯曲でした…。やっぱり安部公房は凄いなぁ…。俳優さんの演技はもっと感情が小刻みに揺れ動いて、行動の振れ幅が大きい方が、スリリングで私好みです。他者をシャットアウトして逃げ込んだ心の隠れ家(=城塞)を、恐る恐る、でもこれ以上ないほど乱暴に、ぶち壊してほしい。
マクベス~The tragedy of Mr. and Mrs. Macbeth
wits
シアターX(東京都)
2016/01/15 (金) ~ 2016/01/16 (土)公演終了
チョウソンハさん(成河)と池田有希子さんによる、何もないと言っていい空間で2人だけのシェイクスピア。夫婦漫才風でアドリブ多そうだが実は原作に忠実。演じ分けの工夫と名台詞のアレンジが楽しい♪バーナムの森が迫ってくる場面は笑ったわ~。観客と交流し、共演者と息を合わせ、物語を伝える。人気も実力もある俳優が生身をさらして挑戦してる。今後の継続に期待。
アマルガム手帖+
リクウズルーム
こまばアゴラ劇場(東京都)
2016/01/08 (金) ~ 2016/01/13 (水)公演終了
思春期の女生徒、教師、親の妄想を材料に、数式、論理、動く身体で世界を立ち上げる試み。日本語に英語、仏語の数式を混ぜたセリフが面白い。セリフを壁に映写するから文字、絵としても楽しめた。知的好奇心を大いにそそるお芝居で、なぜか懐かしさも。難題に取り組み、実験、推敲を重ねた結果を見せてもらえた気がする。出自、特技の異なる俳優もまた世界の構成物なのかな。モーリー・ロバートソンさんの終演後のトークが凄かった。頭の回転に口の動きが間に合ってない感じ(笑)。知性がエンタメになってた。