タイトルロールの若い女性と、その父の後妻(継母)との対比鮮やかな愛憎ドラマ。涙した…。リストフ・ロイ演出は洗練かつ雄弁。抽象化された白い箱の中で物語が展開し、閉塞感と開放感の両方が際立って、空気が濃密。スマートに可動する装置でメッセージが明確。
約百年前の作品だけど衣装は現代風。描かれる世間、親子、男女は今とぴたりと重なる。黒装束の継母(ジェニファー・ラーモア)はまるでブラックホール。負の感情を吸い込み爆発させる。自分を追い詰め孤立する姿が切実で、演技にも歌にも感動。音楽は人物の心情に沿うタイプで優しく温かい。無音の時間は演劇的効果絶大(私は音楽には全く詳しくないですが)
1904年チェコ初演のヤナーチェク作曲オペラで、演出はドイツ人。出演者の国籍は独、米、伊、日。チェコ語で歌えるオペラ歌手は貴重とのこと。2012年ドイツ初演版キャストがほぼ揃った贅沢な国際共同製作。オペラは国境を越えるのが前提なのだなぁと今さら改めて感じ入る。