しのぶが投票した舞台芸術アワード!

2020年度 1-10位と総評
エブリ・ブリリアント・シング 【高知公演中止(2月29日(土)・3月 1日(日))】

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エブリ・ブリリアント・シング 【高知公演中止(2月29日(土)・3月 1日(日))】

東京芸術劇場/新潟市民芸術文化会館

2013年の英国初演以来、各国で上演されている一人芝居。小さな幸せが次々に生まれ、劇場にいる誰もがステキに見えてくる!参加型演劇の理想型かも♪すごくスリリングで、愛がいっぱいで、幸せな時間になりました。70代の母も絶賛。
稽古場レポート:http://shinobutakano.com/2020/01/24/14940/
メルマガ号外:http://shinobutakano.com/2020/01/29/15004/

殺意 ストリップショウ

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殺意 ストリップショウ

世田谷パブリックシアター

シアタートラムで鈴木杏さん主演一人芝居。約2時間。19歳の少女が体験した敗戦、ある男性社会学者の転向、堕落から見えた日本人の姿。「この鈴木杏を観ない手はない」と思う。狂気と正気を大胆かつ小刻みに行き来し、人間そのものを彼女自身にうつす。腹筋にも見とれた♪
「あんまり安心しすぎて、いい気になるのはよしなさい」という警句は私自身に向けられたものだと思う。

野兎たち【英国公演中止】

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野兎たち【英国公演中止】

(公財)可児市文化芸術振興財団

岐阜の劇場と英国の劇場による新作。約2時間20分、休憩15分含む。面白かった!国際結婚する男女の家族が日本で初対面。双方が問題を抱えており…。転換も展開もスピーディーで会話に説得力あり。説明しすぎないのもいい!ラストの余韻が持続。いいもの観た♪東京、岐阜の後に英国公演あり。

FORTUNE(フォーチュン)【北九州公演中止(2月28日~3月1日)】

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FORTUNE(フォーチュン)【北九州公演中止(2月28日~3月1日)】

パルコ・プロデュース

100分、休憩20分、60分。限りある命、誰にも平等に過ぎる時間、予測不可能な未来という人間に与えられた恵み、そして罪と罰について。物語「ファウスト」が示すものがやっと腑に落ちた気がする(きっとまだわかってないけど)。美術、演出が凄い。鮮烈、奇抜に見えてアナログで王道。劇場の異化効果も踏まえ虚空、宇宙、脳内に飛ぶ。出演者は根岸季衣さんが素晴らしかった。

アルトゥロ・ウイの興隆

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アルトゥロ・ウイの興隆

KAAT神奈川芸術劇場

3時間5分、休憩15分込み。ギャングのウイ(草彅剛)の成り上がり物語は、ヒトラー率いるナチ党の台頭をなぞる。ファンク・ミュージックの生演奏(オーサカ=モノレール)で踊って歌って客席通路使いまくり♪ めちゃ楽しいしカッコいい!
ウイは権力者に取り入り、暴力をチラつかせて勢力拡大していく。節操なしの恫喝と囲い込み、仲間割れ(内ゲバ)など、ならず者あるあるのオンパレード。物語進行に合わせて、字幕パネルにナチス勢力拡大の史実をテキスト表示。まんまヒトラーなのが恐ろしい。

場面転換ごとにバックバンドの生演奏で大盛り上がり。3人の女性ダンサーも超かっこいい!ノリノリのライブとダンスが異化効果になる。

大音量の音楽に身を任せて浮かれてると、冷や水を浴びせかけられる。狙いバッチリ。痛快。
通路で俳優に「手を上げろ!(ハイルヒトラーのポーズをしろ)」と言われて、手を上げちゃうお客さんは少なくなかった。

可動式の大道具やパネルに文字(曲名?歌詞?)を映す。大量の電球と照明とのコンビネーションも派手で楽しい。鮮やかな色使いの衣装はデザインも攻めていて眼福。出演者の誰もがかっこよく見えた。何度も着替えて複数役演じる趣向もいい。役を演じる俳優がうっすら白塗りしているので、虚構を冷静に眺める姿勢をキープできた。

天保十二年のシェイクスピア【東京公演中止2月28日(金)~29日(土)/大阪公演中止3/5(木)~3/10(火)】

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天保十二年のシェイクスピア【東京公演中止2月28日(金)~29日(土)/大阪公演中止3/5(木)~3/10(火)】

東宝

豪華キャストによる沙翁尽くしの音楽劇。格子戸をはめ込んだ対になる2つの可動式装置で軽やかに場面展開。出演者と客席が近いライブの贅沢。音楽も明るく楽しい。特に「賭場の場のボサノバ♪」が好み。藤井俊太郎演出からは、井上ひさし戯曲の言葉を伝えようという強い意志が感じ取れた。歌詞の字幕もありがたい。メインキャストばかりを目立たせるのではなく、出演者一人ひとりを輝かせる群像劇になっていたことにも好感。
シェイクスピアだからエロ多めなのは仕方ないけど、私個人としてはちょっとしんどかった。この作品を観るのは4度目だけど、毎度、そこは苦手。

グロリア

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グロリア

ワンツーワークス

2時間5分。アメリカの雑誌編集部が舞台の会話劇。噂に違わぬ面白さ!!戯曲凄いし演技もきめ細やかで狙いを外さない。言葉の意味の上っ面を披露するのではなく、人間同士の闘いを見せてくれた。戯曲の芯が伝わる演技、演出だと思う。戯曲への敬意が感じられて嬉しい。ありがとうございました!
終演後のトークによると、もともとは6人芝居。最後のムーブメントと、その直前の人々が行き交う場面は、セリフも古城さんの創作。
小田島恒志さんがブラックフェイスについて説明してくださりホッとした。

炎の人【公演中止(02/28~ 02/29)】

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炎の人【公演中止(02/28~ 02/29)】

劇団文化座

三好十郎の1951年初演戯曲。老若男女の出演者がそろう老舗劇団ならではの贅沢な公演で、演出は鵜山仁さん。

絵画のキャンバスのようなパネルを組み立てていく舞台美術で、教会、アトリエ、画廊、ゴッホがゴーギャンと暮らした家などに場面転換する。19世紀半ばのヨーロッパの時代背景がわかる、具象の衣装とヘアメイクも凝っている。戯曲の世界観を丹念に立ち上げる群像劇になっていた。
昨年の『アニマの海』でも特に印象に残っていた、ゴッホ役の藤原章寛さんが素晴らしかった。しばしば「狂気」と称されるゴッホの激しさが、一人の人間のありようとして受け入れられた。舞台上に誰もおらず、藤原さんの独白音声のみが流れる場面でも、ゴッホの心境の変化がありありと伝わった。娼婦シィヌ役の小川沙織さんもむき出しの純粋さに説得力があり、魅力的だった。

死んだゴッホに贈る長い独白は、おそらく三好十郎自身の言葉。出演者がかわるがわる、一部分ずつ分担して語っていくラストは私好みではなかった。祝祭劇にしなくてもよかったのでは。

「明日の幸福」「神田祭」

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「明日の幸福」「神田祭」

松竹

2020年の観劇初め。
『明日の幸福』
大旦那の命の次に大事な埴輪の馬の脚が折れた。隠そうと必死になる女たち。実は1ヶ月前に嫁が、2ヶ月前に姑が、1年前に大姑が割っていた。

着替えもできない、風呂にも入れない、食事もできない。ないない尽くしのくせに威張り散らす男ども…。終盤に飛び出す女たちの本音がすがすがしい。

「47年間、私自身だと思ったことはない」
「これでも青踏社の新しい女だったんです」
「校長先生を論破した女学生時代があった」

家庭裁判所の場面との切り替えはもっとスピーディーにしてもらいたい。暗転は不要ではないかと思う。

『神田祭』
新春にふさわしい演目。美しかった。

ナイロンのライオン

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ナイロンのライオン

文化庁・日本劇団協議会

令和キャスト版を拝見。
 女性用下着製作販売の先駆者となる女性企業家をワコール社長と対比。犬猫含む多数の役を次々に演じ分けるのが賑やかで楽しい。

 暗転や大道具の転換で中断するのが残念だなと感じていたけれど、この戯曲はもっと大きな劇場向けなのではという意見を聞き納得。戦後の大河ドラマなのかも。

 出演者は関西弁に奮闘。主役の高畑こと美さんが素晴らしい。好敵手の経営者役の阿岐之将一さんもピタリとはまっていた。

総評

2020年に観劇した46作品から選んだ10作品です。4位以下は順不同。映像配信の舞台作品は20本ほど拝見しましたが観劇数にはカウントしていません。鈴木杏さん主演の一人芝居『殺意 ストリップショウ』以外は、すべて1~3月に拝見しました。

コロナ感染リスクが高い同居家族がいるため、劇場通いも含め外出を極端に減らしております…。舞台芸術関係者の皆様、そして演劇を愛する観客の皆様のコロナ対策の徹底ぶりに、心からの感謝を申し上げます。

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