先生と呼ばれるほどの教師でなしの観てきた!クチコミ一覧

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THE TOUR CONDUCTOR

THE TOUR CONDUCTOR

82-party

シアター風姿花伝(東京都)

2012/05/31 (木) ~ 2012/06/03 (日)公演終了

満足度★★★

お馬鹿もいいものだ  が
楽しく観せていただきました。
絵本の中身が現実に、しかもそれはレジスタンス運動に、観光客が巻き込まれるというハチャメチャもの。
奇想天外、支離滅裂。
途中で何度も笑ったり、強要された拍手(笑)をしたりと、劇団と観客との一体感も感じ取ることができました。

続いて、私なりの気になる点です。
①お馬鹿になって、笑いとばせば、それはそれでいいのですが、ちょいと中途半端なストーリー、リアリティといった印象でした。とりわけ「継承者」の二面性については、もっともっとコントラストを強くさせてほしかった。「遊び人の金さん」を、さらに自堕落にした印象から、私の気持ちを、あまり脱することができないまま、劇が終わってしまいました。

②笑いをとる場面・しかけがいつも同じパターンです。1つの台詞に対して、すぐ後に続く「つぶやき」が、ほとんど。漫才で言うと、つっこみの台詞だけが、笑いのタイミングです。もちろん、それも否定するものではありませんが、それだけではねえ。台詞の本流に笑いを盛り込んでほしかった。

若い俳優さんばかりで、それぞれの「伸びしろ」を感じる劇団です。

星を撃ち落とす

星を撃ち落とす

劇団はんなりふるぼっこ

pit北/区域(東京都)

2012/05/04 (金) ~ 2012/05/06 (日)公演終了

満足度★★★

こだわりは好きです
偶然と思えることも、必ず理由、原因があり、その積み重ねが結局は「必然」といわれるものなのだ。
だから私達が日々、選択している、どんな些細なことも、実はあらかじめ決められたもので、自己が自由な意思で選びとったものなど、なにひとつない。
大学時代、こんなことを誰彼問わずに説いていたクラスメイトがいた。宿命論にかぶれた、その友人は、いまどこでなにをしているのだろう。(あるいは、とっくにこの世からさよならしているかもしれない)

登場人物はたくさんいるが、これは原作者の自問自答なのだろうと思う。

循環小数のような展開ながら、この「屁理屈劇」(失礼)を私なりに楽しむことができた。

注文は三つ。

①宿命についてのシンポジウムではないので(また失礼)、もっと身体表現も追求してほしかった。
 内容からして、会話劇という形式を意識したのだろうし、劇場の狭さも加味しなくてはならないのだろうが。
 これは次回のお楽しみ。

②若い役者さんばかりの劇団は、「熱い」が、「安心感」という点で欠ける傾向にあると思う。
 今回出演の役者さんの演技が「なかなかのもの」だっただけに。
 客演、友情出演なりで、年齢構成のバランスを図ってみてはどうか。(若さが信条なら仕方ないが)

③この劇は、虚無、希望のどちらを、私たちに選択させようとしているのだろうか。
 「それはお客の判断に・・・」でも構わないが、役者同士の稽古の際に、どんな話がでてきたのか興味あるところだ。
 私たちに投げられるテーマも悪くないが、劇団員として、原作者として、後者であったことを願う。
 希望を、人間の深みを、ぜひ私たちに与える劇であってほしい。

ちゃきん【終演いたしました!連日満員御礼!】

ちゃきん【終演いたしました!連日満員御礼!】

劇団俳協

TACCS1179(東京都)

2012/04/25 (水) ~ 2012/04/29 (日)公演終了

満足度★★★★

なんとせつなく 愛らしい
【序章】
下落合の駅の周辺には、食べ物屋がほとんどありません。ぎりぎりまで仕事をこなして、
なんとか「食事」も可能な30分前に下落合の駅についてみると・・・
駅前には、喫茶店とラーメン屋がある程度。少し周辺を歩いたのですが、ぽつんぽつんと、
パスタ屋さん、総菜やさんがある程度。やむなく、「活きの良さそう」なラーメン屋にはいりました。
ここは、野菜入りのつけ麺が目玉のようです。小雨がぱらついて、肌寒かったため、「中華そば」を
注文。あっさり、こってり、背脂つきと、三種あるとのことで、「背脂」に決める。
自動券売機があるので、500円硬貨を投入すると・・・ん? なにか変だ。
100円硬貨、おっとっと、なにか手に感じる。
手がしびれるのだ。
きっと漏電しているんだ。券の取り出しでは、私はボールペンで掻き出してチケットを出す。

ご主人は何も言わない。
券をカウンターに置き、主人に、「この券売機、電気が漏れていると思いますよ」と言うと、
「あ、やっぱり・・・そうなんですよ。よく言われます。」
と・・・え? なんで分かっているのに直さないの?
「人によって感じるみたいなんです。でも、死ぬようなことはないと・・・」
かなりの楽天家なのだろう。
ラーメンは、堅い醤油味の所謂「中華そば」という感じ。まあまあの味でした。

そのしびれる手と足で、会場に。

【ちゃきん】
 重松清の「カシオペアの丘で」を思い出しながら、観ていました。
 最初のうちは、時間を飛ばす劇の展開に、なんとなくぎくしゃくさを感じていたのですが、
時間の経過とともに、それを感じることはなくなりました。

 人間とはなんと哀しく、せつなく、しかし愛らしいものなのだろう。

 高校時代の四人の仲間が、それぞれ、どうつながり、どういった別れを迎えるか、これは、
私の体験と重ねて見せていただきました。(私は大学時代の仲間ですが)

 俳協の劇は何回か見ていますが、だいたいハズレを引いたことがありません。
 自分たちの劇場を持ち、若い俳優から年配の俳優まで、「縦の集団」ができていること、
おそらくは「演出部」がしっかりと機能しているからだと思います。

 胸が締め付けられ、涙腺が緩んでしまいそうになりました。
 心を揺さぶる劇を、ありがとうございました。

太陽と灰二

太陽と灰二

9-States

OFF OFFシアター(東京都)

2012/04/05 (木) ~ 2012/04/15 (日)公演終了

満足度★★★★

人の数だけの感銘の視点
「灰二」さんの方を見せていただきました。
素敵な劇でした。それは、ただ良かったという凡庸な感想ではなく、これを観た人、それぞれが、自分のこれまでの生き様を思い出し、関連を見つけ・・・と、異なった思いを持つ劇、という意味で。

テーマがはっきりとしていて、観客の全てが、それに従った感想を持つ劇も、もちろんいいのですが、今回の劇はそうではありません。

たくさんの伏線を孕ませて、個々それぞれのテーマを持って観劇する。

私には、それが成功していると思いました。(失敗して、テーマをつかみそこなうものも多々あります)

参考までに、私のテーマは「人と人との関わりは、本当にあり得るのか」ということでした。その時期その時期に、関わりの深い人がありながら、職場や環境が変わってしまうと、私は急激に「関わり」に興味をなくしてしまうのです。関係を絶つというのではなく、「そのうち必要な時に会えば、話せばいいや」ということですが。

この劇では、当然のことながら解答はありません。
灰二さんの思惑とは異なるのかもしれませんが、私はずっと「漫画家」さんを心の中で追いかけていました。
灰二さんは、どのような意図で彼女を登場させたのかなと、ずっとずっと考えていました。

場面ごとに、「お前、しっかり考えてみろや」と、突き詰められているような二時間でした。

たぶん、これは一人歩きする劇なんですね。

いつになっても

いつになっても

UMBRELLA

武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)

2012/04/06 (金) ~ 2012/04/08 (日)公演終了

満足度★★★★

心の栄養をいただいた
それぞれ性格の違う五人兄弟姉妹の織り成す、心が洗われれる劇を魅せていただいた。
まず、八人の役者が適材適所。脚本は優れているが、いざそれを芝居にしてみると、期待外れに終わってしまうということが、よくある演劇界。今回は、脚本、そして役者の配置が、うまく合致して、安心して最後まで、その世界に浸ることができた。

兄弟姉妹、親子といった関係の劇には、めっぽう弱い私だからかもしれないが、何度も目の前が曇ってしまった。

気負うこともなく、絶叫で進めることもなく、ごく自然な演技が、小振りの三鷹芸能劇場には、よく似合っている。

素敵な時間をありがとうございました。


魚のいない水槽

魚のいない水槽

スポンジ

サンモールスタジオ(東京都)

2012/03/23 (金) ~ 2012/03/27 (火)公演終了

満足度★★★★

「軸」を感じました
すでに5回ほど、ここサンモールスタジオを訪れているのですが、ストレートにたどり着いたことがありません。新宿駅から、伊勢丹の前を通って、さて右前方か、左前か、いつも迷ってしまうのです。それでも今回は、なんとか1回のミスで到着することができました。ラッキーです。

さて、劇評です。
①題名は、むしろ「水のない水槽」のほうが、内容的からしてよかったのではないかと・・・
 次第に息苦しくなる、重苦しい展開。息がつまるような進行なのですから。と、最初に思ったことです。(どうでもいいのかもしれませんが)

②最後まで観た後で、「ああ、この劇団は、しっかりとした軸を持っているな」と感じました。1回しか劇を観ていませんが、みなさん「真摯」なのです。もちろん脚本からしてそうなのでしょう。現実を、リアルに、しかも冷静に捉えて、淡々と演技をしているように思えました。ここ何回か「絶叫」的台詞の発露の劇を観てきたせいか、なおさらそう感じたのかもしれません。無意味に昂ぶらず・・・の姿勢は、この劇では効果的だったと思いました。

③しかし、それが逆に作用される面も否定できません。役者全体を見ていて、強烈な個性を感じる方がいなかったのは残念です。「抑えた」演技ゆえのことかもしれません。これは何回か足を運んで見定めていく必要がありそうです。今回は、役者のみなさんに及第点、しかしMVPなしといったところでした。

④主宰者の方の姿勢に好感が持てます。それは②に書いた通りですが、劇団として、大きな可能性を秘めていると確信。内容や演技の幅を、どんどん広げていってほしいものです。

⑤若い(新しい)劇団共通の課題ですが、やはり「年長者」は必要です。今回も、みなさん若くて、それはそれで魅力なのですが、重いテーマながら、さほど重みを感じなかったのは、そこから来るのではないでしょうか。「看板」としてではなくてかまいませんが、いるだけでも「重さ」を導き出してくれる存在は、ぜひともほしいなと思いました。

⑥とは言え、私には、大変「面白い」そして「考えさせられた」劇でした。

ありがとうございました。

ダンデライオン~飛龍伝より~

ダンデライオン~飛龍伝より~

ThreeQuarter

池袋GEKIBA(東京都)

2012/03/18 (日) ~ 2012/03/20 (火)公演終了

満足度★★★

つかこうへいでも・・・笑
長渕剛のBGM、そしてつかこうへいという、私にとっては「最悪」の(つまりどちらも嫌いな)要素がからみついた劇だけに、逆の意味で「楽しみ」にしていた芝居でした。
長渕剛が嫌いな理由は「情念」とか「男の世界」を全面に出されると、私が引いてしまうから。
つかこうへいは、どうも「左翼的共感」(こんな言葉はないし、彼自身「左翼」とは思っていないでしょうから、不正確なのですが)を覚えないでいるからです。彼の作品は「人情モノ」として観る分にはなかなか面白いと思うのですが、こと「革命」だ「闘争」だというキーワードで観ると、「ん、これは単なる任侠の世界で、右も左もないのでは・・・?」と、考え込んでしまうからです。

能書きはここまで。今日の劇は、そんな障壁があるものの、楽しめた劇でした。
一番前の箱の席で、痛いお尻に辟易しながらも、最後まで見続けていられたのは、役者さんたちの「熱演」のおかげだと思います。
最初、「絶叫的台詞」に、「これは難聴になってしまうかも」と(なにしろ最前列ゆえ)危惧しましたが、それもなんのその。役者さんの熱意に負けてしまいました。
安保闘争については、私さえも幼少時の遙か彼方の記憶のものです。
それを、この若い役者さんは、どう解釈して血肉にしているのだろうか、少し興味が湧きましたが、それは分からないことですね。
もし、単なる「人情モノ」として、「ひとつ観客を泣かせてみよう」程度のものでしたら、当時を知る私にとっては、「やっぱりね」と、哀しい思いだけが先行します。

現在も本質的に変わらない、「富めるものの世界」「強いものの世界」に、少しでも一石を投じようとしていたならば嬉しい限りなのですが。

そんなことを思いながら、薄暗くなった池袋の街を、ぶらぶらと歩いて家路に向かいました。

真冬の夜の夢

真冬の夜の夢

平熱43度

ワーサルシアター(東京都)

2012/02/08 (水) ~ 2012/02/12 (日)公演終了

満足度★★★★

若さは魅力
前日までの激務の疲れか、睡魔との戦いでしたが、劇中の「戦い」の場面の迫力に圧倒され、
なんとか最後まで観ることができました。
まず第一印象は、「若いということ自体、魅力の大きな要素だな」と実感したこと。
声量といい、動きといい、若いエネルギッシュな、魅力あふれるものでした。

脚本も、あちこちに伏線が敷かれていて、飽きさせない構成で、2時間を、あっという間に終わってしまった印象にしてくれました。

これからきっと、どんどん伸びていくだろうと予感させる劇団といえるでしょう。

私の感じた課題としては、
①トーンが、みな同じであること。かなり「絶叫型」のせりふが飛び交います。ですから、「がっばっている」という反面、耳に障る気にもなってきます。ぎっしりと詰まった内容のために、速いテンポで進行させる必要もあるでしょうが、落ち着いたトーンの場面も所望したい客です。

②「若い=魅力」の反面、劇に重みを醸し出す「重鎮」的な年配俳優がほしいものです。
③ ②とも関連しますが、劇のジャンル、路線について。私は、あれこれ手を広げるよりも、一貫して、今回のような、若さ=エネルギー、RPG的な構成=伏線の創出、動き=殺陣的演技を追求しても面白いなと思いました。

老成した古典劇もいいけれど、今回のような、どんどんと私に迫ってくるエネルギーを感じる劇も、またいいものです。

仮名手本吉原恋心中

仮名手本吉原恋心中

東方守護-EAST GUARDIAN-

武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)

2012/02/03 (金) ~ 2012/02/05 (日)公演終了

満足度★★★★

艶やかな しかし 哀しい そんな世界に沈み込んで
<女性のみで構成された演劇ユニット“東方守護”。薔薇にも劣らぬ品格と華を感じさせる「椿」を苗字とした椿一座が幻想の世界を創り上げます>
と、宣伝のコピーにありましたが、まさにその通りの劇、劇団です。

「ベルサイユのばら」の世界を、そっくり江戸、吉原の町に再現したような絵図。
なにしろ和服にブーツの衣装です。
心中を扱ったものだけに、宝塚でもない、艶やかな、しかし悲哀に満ちた空気を醸し出しています。

この独特な世界に、観たあとに、感想の言葉が、しばらく出てきませんでした。

最後の透明で美しい情死、その一点に向かって、突き進んでいく。
劇中の、一人一人の振るまいが、一つ一つの場面が、白装束を纏った二人の、清らかな死のためにあるのだという印象でした。

自らを突いてからの、初花の立ち振る舞いが、ずっと目に焼き付いたまま、劇場を後にしました。

新宿二丁目で、バーテンのバイトをしていた頃の、「匂い」とも違う、初めての「香り」を体験したようです。

一言、こんな世界もありかな、そして、なかなか乙な劇でもあった。

お月さまへようこそ

お月さまへようこそ

演劇集団若人

中板橋 新生館スタジオ(東京都)

2011/12/22 (木) ~ 2011/12/25 (日)公演終了

満足度★★★

若い それ自体魅力的ですね
とにかく「若いなあ」という10人の俳優さんたちです。
 ですから、テンポ、せりふの言い回し、椅子を使っての台上前転などの動作に、若々しい、活気に満ちたものを感じました。ショートコント風の恋愛オムニバスも、1つ1つがしっかりとこなされて、意図する場面も、自然に笑いがこぼれるほどでした。
 軽いタッチで、後に残るものは多くはありませんでしたが、これは脚本と、選者のせいでしょう。さわやかさは、いただけたのですから、それで充分です。
 注文は、2つあります。
 ①「若い俳優」中心の劇団には、いつも書くのですが、劇団の年齢構成についてです。今回は、どの作品もクリアしていましたが、少し「重い劇」あるいは「中高年の必要な劇」
では、厳しいものがあると感じます。もちろん「客演」として、年配俳優を呼べばいいことですが、劇団に「いるだけで重くなる」「存在自体が落ち着いた雰囲気を醸し出す」俳優が複数いればいいのになあと思いました。若いということ、それ自体は確かに魅力的ではあるのですが、それだけでは行き止まりになる場面が、必ず到来すると思います。
 ②最後のドラマ。「ホモ」の挿入は、必要あったかなと思いました。それを劇に入れることには、別にこだわりはないのですが、劇団として、何か意図はあったのかなと。「笑い」をとる場面に使われていたようで、私にはやや違和感がありました。別の小品でもよかったのではないか。そんな思いです。

 これからまだまだ伸びていく予感のする「若人」です。
 たくさんの挑戦をし、成功しては喜び、失敗しては、悔しさを抱きつつも這い上がり、さらに上を目指して努力し・・・

ありがとうございました。

ハムレット― to be or not to be

ハムレット― to be or not to be

東京演劇集団風

レパートリーシアターKAZE(東京都)

2011/12/23 (金) ~ 2011/12/25 (日)公演終了

満足度★★★★

不思議な縁も
今月は、劇団室生春カンパニー の「リヤ王」に続いて、今月2本目のシェイクスピア劇です。
この「風」については、存在は知っていたけれど、観る機会にたまたま恵まれませんでした。
正統派の劇団、重厚な劇を公演を基調とする、歴史のある劇団。(違っていたら、私に教えた友人が間違った認識をしていたことになります)

 今回観劇した「ハムレット」は、九州の中学・高校を周り、61回の公演を経て、本拠地に戻ってきたと言います。つまり「数をこなしてきたもの」ということなのでしょう。期待に胸をふくらませて、二階にある会場に向かう階段を上りました。

 「実験」そんな言葉がぴったりする劇でした。
 舞台美術は、誰から見ても「こだわり」を感じるものでしたし、何枚かのパネルの組み合わせ、移動による効果は、劇団の意気込みを感じさせるには十分なものでした。

 劇団のホームページを見ると、ブレヒトの作品もたびたび上演するとのこと。(もっと早く知っておけばよかった!ブレヒトは、私が演劇好きになるきっかけを作ってくれた戯曲家ですから。あっ、辻さんの名前を見て気づきました。東京演劇アンサンブルと袂を分けた方々ですね。私にとっては、昔のアンサンブルには、青年期に大変大変触発された劇団ですし、当時の劇団員さんとも仲良くさせていただいたものです。つまりは、この「風」のメンバーさんたちにも、大きな恩恵を受けていることになりますね。不思議な縁を感じます。)

 さて、昨日の公演。
 しっかりとした構成と、俳優さんの力量の高さを感じました。所謂「新劇」は、せりふが翻訳調で「堅苦しく」なるものなのですが、そこから脱皮させようとする努力も伝わってきました。(まだ完全とは言えないまでも)
 それから、この「実験」による表現方法の模索です。私には、正直言って、それが成功していたのかどうかは語ることはできません。
 例えば「水槽・・・」も、私にはあまり必然性を感じませんでした。
 パネル、背景の色が、あまりコントラストになっていないで、舞台全体が色調で平板になっていたことも、少し気になりました。
 
 とはいえ、劇団の飽くなき「前進」への意欲は、頭が下がります。
 古典をそのまま従順にするのではなく、常に新しい解釈、新しい表現を追求していく、青年のような、みずみずしさを持った劇団ですね。

 これから、しばらくは注目して、観続け、見守っていきたいと思いました。
 素敵な劇を、ありがとうございました。

一九一一年【ご来場ありがとうございました!】

一九一一年【ご来場ありがとうございました!】

劇団チョコレートケーキ

王子小劇場(東京都)

2011/12/16 (金) ~ 2011/12/20 (火)公演終了

満足度★★★★★

重厚な構成と卓越した演技力 
私のブログで「今年観た中で、劇団アニマル王子「近松ジュリエット女庭訓」が一番良かった」旨の文章を書きましたが、それに負けず劣らずの劇を観せてもらいました。
当然ながら、単純に比較することはできませんので、私にはどちらも「今年最高」という評価にとどめます。

「チョコレートケーキ」という劇団名からして、やや軽い劇団の印象で、演題からして「あの事件か」ということは分かりましたので、一抹の不安(重いテーマを茶化されるような)を抱きながら会場に赴きました。

折しも、この事件については、週刊金曜日で、鎌田慧氏が「坂本清馬」について連載をしていましたし、過去にも多少なりともかじったこと(学生時代も関心があり、「橋のない川」を読んだり、事件を調べたこともありましたし)があったことも、この劇を観る前の「不安」を増長させていました。

結論から言いますと、そんな不安は、最初の数分で吹き飛んでしまうくらいの、すばらしい劇でした。
重苦しい、息苦しい時代にあって、個々の人間は、国家と、時代の流れと、どう折り合いをつけて生きていけばいいのか。それを、過去の事件を引き合いにして、私たちにつきつけてくれました。
テーマは、今の時代にも(いや、今の時代だからこそ)有効なものです。
劇を観ながら、命と引き替えとまではいかないにせよ、似たような葛藤を日々繰り返している私の仕事について考えていました。

俳優の面々は、誰もが主人公を受け持つことができるだろうと思われるほどの、優れた演技力の持ち主。それも、みな個性的です。
王子劇場という、50人程度しか収容できない箱で上演せざるを得ないことが、心から残念に思えるほどの迫力でした。

このような劇を観たあとは、私の方から劇団に感謝を言いたくります。
本当に素敵な劇を、そして私の生き様すら問い詰めてくれる劇を、ありがとうございました。

※1つだけ・・・舞台の四方を囲んだ観客席。なかなかのアイデアでした。しかし、王子劇場の広さの会場では、私にとっては、やや観にくさの印象がありました。私の対面に座った女性は、劇が終わったあと、しきりに首を揉んでいました。(笑)


リア王

リア王

室生春カンパニー 劇団 風の森

新宿シアターモリエール(東京都)

2011/12/01 (木) ~ 2011/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★

今後が楽しみですね
今日は、とんだ失敗からスタート。てっきり、新宿のシアターサンモールだと勘違い。
ぎりぎりの時刻に入り口に駆けつけると「シネマの天使」というポスターが貼り付けられている。
あっ、もしや・・・と思い、携帯で確かめると、「モリエール」!!
10分遅れで入場するはめになってしまった。

「リア王」は、私が観た商業演劇の中で、人生最初の劇。
池袋の東武デパートの中に(当時)あった劇場で、文芸部の先生に連れて行ってもらったものです。その強烈な印象から、劇が好きになる自分が始まるのだが、じつに43年ぶりの「再会」。

今回の劇も、期待に背くことなく、なかなかの意欲的なものだという、最初の印象。
古典を古典のままにせず、途中でミュージカル的な場面を入れたり、ギター、ヴァイオリンのBGMを流したり・・・切れ目のない展開は、二時間を長いと感じさせないものがあった。
「長老」的な室生さんと、たくさんの若い劇団員が、うまくバランスのとれた構成となっていて、あと数年もするころが最適なハーモニーを醸し出すのではないかと思えた。

親子の絆、権力の醜悪さ、計り知れない人間の欲望、人生の儚さ・脆さ。それらの表出で、劇の展開中、何度も胸を打たれた。
まだまだ、荒削りな若手の演技なのだが、それをもってしても余りある劇となったと思った。

といった讃辞のあとに、私なりの「苦言」もいくつか。
①歌を挿入して、「荘厳」さを出そうとしていたが、歌が続いても、なかなか重い雰囲気がでなかったと思う。低音部が、ないか、または軽視されているのではないか。合唱の効果は少なかったと思えた。
②嵐の場面の演出が、寂しすぎる。照明でライトを回す程度でもいいから、なんらかの工夫がほしかった。
③道化役は、よほどうまく使わないと白けるものだが、今回はその比重があまりにも、低かったと思う。戯れ言の中に、本質的な箴言の含まれる、道化の言葉を楽しみにしていたが、今回は空回りしていた。

私の観た範囲での、好演の俳優。(座長は対象外で・・・)
ケント役 肩を張らない自然な言い回しが良かった。
エドガー役 後半の表情がすばらしかった。
と、ここまで書いてきて、今回のような劇では、この評価は難しいのかなと思う。
おそろしく個性的な俳優もいるにはいるのだろうが、この劇からは探しきれなかった。申し訳ない。

はじめての劇団だが、おそらくは座長が、太く大きな背骨となって、日々進化している劇団だと思った。若手がたくさんいることも頼もしく思える。

期待は大きい。

トンデモ医者

トンデモ医者

劇団新和座

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2011/11/10 (木) ~ 2011/11/13 (日)公演終了

満足度★★

今回はほめません
結成2年の劇団だと聞きました。
正直言って、発展途上の劇団という感じです。
「新しい試み」とパンフレットに書かれていましたが、うーーん、見つけることが、私にはできませんでした。
モリエールの原作を、劇団なりに味付けをしたのでしょうが、人間の愚かさを焙り出したいのか、恋心の強さを言い張りたいのか、ギャグを見てもらいたかったのか、冒頭のタップが「新鮮」なのか・・・劇団の意図が中途半端だったのではないかと思いました。
出演6人、雑居ビルのワンフロアーという狭さ、普段着のような衣装、寂しく感じた舞台装置・・・厳しい条件での上演で、さらに上演が49分。私は、チケットプレゼントで無料でしたで、なんとも懐は痛まなかったものの、3000円の入場料は、かなり割高に感じたのではないでしょうか。

どうも辛口になってしまいますが、もっとカラー、こだわりを感じさせてほしかったと思いました。

代表をはじめとして、意気込みは充分に感じ取れる舞台です。
さらに、がんばっていただきたく、今回は褒めません。

近松ジュリエット女庭訓

近松ジュリエット女庭訓

劇団アニマル王子

武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)

2011/11/03 (木) ~ 2011/11/07 (月)公演終了

満足度★★★★★

劇団の勢いを感じて
古典を現代風に創造し直して、オリジナルな演劇をしていこうという劇団(合っているかな)。それだけでも劇団、劇団員の意気込みを感じます。
15回目の公演、しかも千秋楽とあって、期待して三鷹に向かいました。

そして・・・その期待を裏切ることなく、劇団の熱い思いと、それに付随した演技に圧倒されました。
2時間20分と、そこそこ長い劇にもかかわらず、休憩中も、待ちきれない思いでいるほどの気持ちでした。(まあ、タバコを一服できたのはありがたかったけれど)

まず、歯切れのよいせりふの言い回し。かなり凝縮されたせりふが飛び交うのですが、「聞きづらい」役者がいるわけでもなく、しっかりと心地よく耳に入ってきました。
舞台の設定と、役者の統制のとれた、無駄のない動きも、進行の印象を冗長させることなく、テンポ良く進められていたことも快く思われました。
台本も、しっかりと構想が練られていたことが分かりました。
現代的なジョークも挿入されてはいますが、それが劇の流れを妨げることがない。
近松の心中ものと、ロミオとジュリエットの見事な融合です。最後の場面では、めったに涙を流すことのない私でさえ、目の前がボッと曇ってしまったほどの迫真のシーンでした。
近松役の安定した演技に魅入っていました。また、これだけの人数を抱えた劇団にもかかわらず、それぞれの役者に「個性」があり、また「華」もありました。
勢いを感じる劇団ですね。

褒め過ぎかもしれませんが、中小劇団しか見ていない私の、今年の一番のものだったと思います。(まだ2ヶ月ありますが、現時点で)
こんな時は、見ていただいてありがとう・・・ではなく、見せていただいてありがとう、という気持ちになります。

はい!スクール

はい!スクール

おばけの森

新宿眼科画廊(東京都)

2011/10/09 (日) ~ 2011/10/10 (月)公演終了

満足度★★

今後を期待 辛口ですが
正直、無理しても笑えませんでした。
オムニバスの7編。
どれも、台詞のひとつひとつに、脚本家の「意気込み」が感じられるのですが。
二つの理由で、これが「受けない」のだと思いました。

1つ目は、脚本家と観客との意識の乖離。書いた方は、台本の一字一句をながめながら「クスクス」していたにちがいないのでしょうが、私にとっては、それが笑いと繋がらない。このギャグは、4,5人の仲の良い友だちとの飲み会あたりなら、みんなが腹をかかえて笑い合うことでしょう。ただ、これはそうではない、見ず知らずの観客群です。一つ一つに精を出すあまりに、のべつまくなしに「笑い」を強要されている感じとなって、結局笑えないものとなっていったのだと思いました。

2つ目は、役者の問題。あるいは演出の問題。
とにかく「オチ」のたびに「絶叫」することが多いのです。これも違和感があります。声を張り上げて、言いたいことを強調したいのはわかりますが、それはストレートに受けるものではありません。
みなさん若いということもあるのでしょうが、素早い、大きな声がメインの流れになっていて、「ああ、ここに1人でもおじいさんがいたらなあ」という気持ちもしました。(これはハイスクールですから、無理か)

台詞の言い回し、演技などは、一定のレベル以上のものを感じただけに、残念。脚本の精選を望みます。がんばってほしい。

シャイロック

シャイロック

東京演劇アンサンブル

ブレヒトの芝居小屋(東京都)

2011/09/09 (金) ~ 2011/09/19 (月)公演終了

満足度★★★★★

感無量です
チケットの招待をいただきましたが、熱中症でダウン。なんとか千秋楽の日に観ることができました。

長野、木島というところに「学生村」という民宿の集まりがありました。
私が高校三年のときの夏休みに、クラスメイトの荒木くんと一緒に訪れたときのことです。
同宿した人たちの中に、20代半ばと思われる「お兄さん、お姉さん」がいました。
男女それぞれ二人。もう40年近くも前のことです。

なんとはなしに話をするようになり、この四人の同宿者は、「東京演劇アンサンブル」の劇団員だということを知りました。
一人は、長塚さんという方。あとは残念ながら覚えていません。

この四人は、ブレヒトの劇について、それがどんなに優れたものなのか、熱く語り、何も知らない私は、それがとても新鮮に感じられました。その際に、「暗記するといいよ」として教えられたのが、ブレヒトの「けしてできないなんてお言いでない」(原題は失念です)、谷川俊太郎の「ネロ」の詩です。
同時に、そのときに、世界で初めて民主的な手続きで成立した、チリのアジェンテ政権が、軍隊の反乱により倒壊してしまったことも、この学生村で、ニュースとして彼らから知らされました。

おそらく社会に目を向けて考えるということを、私は初めて、この四人から教わったと思います。(完全にノンポリの私でしたから)

東京に帰って、暮れに「パリコミューン」という劇を、この劇団で観ました。長塚さんたちは、まだ端役でしたが、林光の音楽や、切れ目のないせりふの連続に、ある種のカルチャーショックを覚えたこと、今でも鮮明に覚えています。(打ち上げにまで私を誘っていただいたことも感激でした)

私が今、ここにあるのは、この劇団のおかげなのかもしれません。

「シャイロック」は、「ヴェニスの商人」をベースとしながらも、脚本を手がけたアーノルド・ウェスカー自らが言うように、まったく新しい作品として完成されたものです。
シャイロックを、より人間くさく、しかも複雑な生い立ちと心理とを持った人物として、「再生」されています。
ユダヤ人問題に目をそむけず、真正面から描いているところが、観ている私たちにとっては、分かりやすいものともなっています。シェークスピアの原作では、そこまで描ききれていません。
より人間を深く理解し、しかもより深く愛した作品だと言えるでしょう。

実験的な脚本なのでしょうが、その試みには共感できるものがありました。

劇団の「年長の方」(案内係をしていた男性の方)に、前半に書いたようなことを、懐かしさをこめて、たくさん話してしまいました。待合室の左手奥に飾られた「パリコミューン」のポスター。これは当時、読売ホールで上演されたときのものだとのこと。私の第一歩が、ここから始まったのですね。懐かしい・・・

今年の学芸会は、以前作成した「ヴェニスの商人」の大幅な書き換えをしたいと考えています。



「エダニク」「サブウェイ」

「エダニク」「サブウェイ」

真夏の極東フェスティバル

王子小劇場(東京都)

2011/08/25 (木) ~ 2011/08/28 (日)公演終了

満足度★★★★

安心感と緊張感
舞台装置は、みすぼらしい限り(あえて?)なのですが、それをもってしても、収穫ありの観劇でした。
台本、そして役者の演技力、この両輪がしっかりしていると、安心して劇の世界に浸ることができるものです。
今回は、そのどちらもが満足のいくものでした。

会話中心の劇、といってもいいのでしょうが、それを楽しむと同時に、いつ「爆発」するかもしれないという緊張感も一緒に体験することができて、あっという間に終わってしまった感がありました。
とりわけ、「沢村」役の原真さんの演技力に惹かれました。よどみない台詞を、ひとつひとつ抑揚を変えたり、間をとったりと、これこそ「プロだなあ」と思わせました。

屠殺場という舞台だけに、内容的に難しいところもあったことだと思います。ただ、その点については、意図的か、または無意識にか、さりげなく「流した」感じがしました。(「差別問題」が絶対ではありません)

これは僕が神様になりたかったけれどなれなかった話で、僕の彼女が実は地球だったってオチが待っている話なわけで、

これは僕が神様になりたかったけれどなれなかった話で、僕の彼女が実は地球だったってオチが待っている話なわけで、

劇団エリザベス

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2011/08/19 (金) ~ 2011/08/21 (日)公演終了

満足度★★★

初めて眠らなかった不条理劇
題名の長さからして、力のこもった思いが伝わってきます。しかも、それが不条理の劇と訊くと、かなり気合いを入れて劇場に足を運ばなくてはなりません。
いままで、不条理劇を観て、途中で帰ってきたか、または居眠りを決め込んで時間の経過をひたすら待つだけでしたから。

今回は・・・最後まで寝ずに見ることができました。
不条理劇は、こちらの感性で観るものでしょうから、なにが眠らせなかったのかなと考えました。
面白かった? いや、「ラブ・コメディ」といっていたにもかかわらず、「コメディ」として笑った場面は皆無だったと思います。ギャグもかなり俗的でしたし・・・
琴線にひっかかったものが・・・う~ん、これもどうか。言葉の豊潤さというものも、正直言ってあまり感じるものはなかったと思いました。
劇団の人には申し訳ないけれど、一番の理由は「体調がよかった」ことでしょう。(すみません)
俳優さんの演技は、それぞれが個性的で、それなりに見応えがあったこともありました。もっと「日常生活」を扱った脚本なら、それぞれの個性を活かした素敵な劇になるだけの力量があったと思いました。
舞台装置も、光の使い方が素敵でした。

私の感性が、未発達だったとも言えますね。
ただ、内容的には私の「常識」を覆すほどの「台詞」もなく、世俗の典型部分をオムニバス調にコントにしたようだったという印象。どうせ劇化するならば、徹底して冒険してほしかったと思いました。

花と魚

花と魚

十七戦地

シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京都)

2011/07/28 (木) ~ 2011/07/31 (日)公演終了

満足度★★★★

よく練られた構成
近未来の劇。1時間50分、休憩なしというのは、私にとってかなりきつい部類に入ります。(すぐに眠くなるから)
ミステリーとして徐々に真相が明らかになる展開と、一地方の漁村?のゆったりとした風土とがうまく調和して、脚本自体がしっかりとした構成のもとに演じられていることに、まず好感が持てました。
ユーモアを一切排除して貫徹させている点も、昨今の安直な劇と比べて『品位』を感じさせます。
ああ真面目な劇団だなと、私には安心感を持って観ることができました。
集落の歴史と住人の複雑な関係、新生物の発現などの因果関係については、やや私の認識能力を越えたものがありましたがf^_^;、骨太の劇として印象に強く残りました。
まだ若い人が多い劇団。あと十年くらいすれば、年齢構成もバランスがとれたものになりそうで、これからも見守っていこうと強く思いました。

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