三人吉三
松竹/Bunkamura
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2014/06/06 (金) ~ 2014/06/28 (土)公演終了
満足度★★★★★
18代目が、目を細めているのが目に見える
天国の18代目勘三郎さんが、仲間たちとの酒宴の席で、「あいつら、よくやってるよな」といつもの調子で、笑いながら祝宴をしている図が思い浮かび、目頭が熱くなる舞台でした。
本当に、勘九郎さんの躍進ぶりが頼もしい限り。七之助さんも、「白波五人男」の弁天小僧菊之助や、今回のお嬢𠮷三などの系譜の役が板につき、更に魅せる役者に進化されています。
松也さんは、歌舞伎役者としては、まだ新参者の域を出ませんが、このお坊𠮷三役は、お坊ちゃん気質が任に合って、声も容貌も文句なく、彼の出世作になりそうな予感がしました。
過去二度上演されているコクーン歌舞伎の「三人吉三」ですが、今回は、照明を極力暗くして、スポットライトを当てたり、影を作ったりする技巧が駆使されて、より、幕末の退廃美を印象づける舞台構成でした。
静寂の「三人吉三」が、因果応報の悲劇と、三人の盗賊のやむにやまれぬ絆と苦悩をより提示して、お見事でした。
本当に、勘三郎さん、あの世で、目を細めて見守っていることでしょうと確信します。
関数ドミノ
イキウメ
シアタートラム(東京都)
2014/05/25 (日) ~ 2014/06/15 (日)公演終了
満足度★★★
初演とは趣が異なる時代性
ちょうど、先月にアメリカのサンタバーバラで起こった、エリオット・ロジャーの事件を思い出してしまいました。
人は、合わせ鏡のようなもので、誰の視点で、誰を見るかによって、一つの事象がどうにでも解釈できるのだという手法の芝居は数々観ましたが、先日の「昔の日々」のように、全く皆目見当がつかない芝居と違って、前川さんの作品は、誰が観ても、描かれている世界が、等身大で、わかりやすいので、助かります。
安井順平さんは、今や、彼が出演していなかった頃のイキウメを思い出せないくらい、この劇団になくてはならない存在だと思います。
浜田さんの演技力にも、更に磨きが掛かっていました。
新田直樹役の新倉ケンタさんは、上手な役者さんだとは思うのですが、他のキャスト陣と演技の質が異なる点が、やや惜しいと感じました。
私個人の思いとしては、初演の「関数ドミノ」の方が好みでした。今回の作品は、前川作品に馴染みのない人でも、後半の展開が予測できてしまうのではないかなと思いましたが、どうなんでしょう?
芝居によって、うまいのかそうでもないのか、いつも判断jに迷う、森下さんが今回の土呂役の演技では、群を抜いて素晴らしく感じました。本当に、不可思議な役者さんだなといつも感心してしまいます。
昔の日々
梅田芸術劇場
日生劇場(東京都)
2014/06/06 (金) ~ 2014/06/15 (日)公演終了
満足度★★★
正直、私には理解不能ですが
何だか、五感で体感する芝居という気がしました。
台詞に官能性があり、言葉で愛撫されているようなゾクゾク感で、気持ちがざわつきました。
デウ゛ィット・ルウ゛ォーの演出作品は、感覚的に好みですが、何せ、私には、ハロルド・ピンターを理解できる頭脳は皆無のようで、3人の登場人物の誰が実在の人物なのか、もしかしたら、3人とも不在なのか、果たして、女性は二人存在するのか…等々、さっぱりわからず仕舞いでした。
ただ、わからないながら、エキサイティングで、スリリングであることは、確か。3人の配役も絶妙で、堀部さんが、とてもセクシーに感じました。
久しぶりに遭遇してしまった、伝説のブラボーおばさんが、彼女特有の、あり得ないリアクションで、一人高笑いし、最後には、一人だけスタンディングして、にんまり笑っていらしたのには、まるで不条理劇の置き土産風で、さすがのハロルド・ピンターをさえ、あの世で驚かせたのではと思いました。
予想通り、この作品を、日生劇場で、上演したのには、賛成出来かねました。
上演時間も短いし、これは小劇場で観たい作品でした。
請願
加藤健一事務所
本多劇場(東京都)
2014/06/04 (水) ~ 2014/06/17 (火)公演終了
満足度★★★★★
今だからこそ胸に響く作品
確か10年ぐらい前に、鈴木瑞穂さんと草笛光子さんで、この作品を観た記憶があります。
その時には、夫婦関係に視点が行って、核兵器反対の請願に関しては、あくまでも、話のお膳立てとして、捉えて観ていたように思います。
ところが、震災で、原発事故が起こり、原発再稼働や、集団的自衛権の問題など、今後の日本の方向を憂慮するような諸問題が山積している今観ると、三田さん扮するエリザベスの台詞の一言一言が、痛烈に、心臓を鷲掴みにして、居たたまれなくなる気持ちになりました。
こういう芝居を、高校の演劇鑑賞会とかで、取り上げて、多くの日本人に是非観て考えて頂きたいと強く思います。
夫婦間の暗黙の距離の置き方、言わない誠実さ、言い放ってしまった言葉は消せないという事実の重さ…、家族の在り方に正解はないけれど、夫側の立場で観るか、妻側の立場で観るかで、感想も様々かもしれません。
エドムンドも、エリザベスも、お互いに、それぞれの価値観で、相手を尊重し、家族関係を壊さないように、自分の大切な居場所を守る努力をしていたのでしょう。
巧みな脚本の台詞の応酬によって、観客にも、二人の思いの深さが痛いほどに伝わるだけに、終幕近くに、つい夫が妻に対して言い放ってしまった一言は、女である私の胸にも、グサッと突き刺さって、衝撃的な台詞でした。
エドムンドさん、それを言っちゃおしまいでしょ!と心で、叫んでしまいました。
本当に、素晴らしい完成度の作品です。
高校生以上の全ての年代の方に、是非是非観てほしいなあ!
毒舌と正義
ワンツーワークス
赤坂RED/THEATER(東京都)
2014/06/06 (金) ~ 2014/06/12 (木)公演終了
満足度★★★★
やや無理はあるが、他にはない妙味
今回の作品は、教師ものということで、興味があったので、急遽当日券で、観に行きました。
やはり、この劇団の、芝居には、他にはない妙味があります。
何よりも、構成が緻密。最後まで、終幕の予想がつかないスリルがあります。
以前、ムーブメントありきのような習性に縛られている面も見受けられましたが、今回のムーブメントは、芝居の本質を捉えて、効果的でした。
ただ、先に書きたいものがあって、それに沿ったやや強引なストーリー展開があり、いつもより、虚構度の強い芝居でもありました。
劇団の役者さんが、いつもながら、パーフェクトな演技の中、老舗劇団所属の俳優さんが、台詞を噛んだり、忘れたりしたのは、大変残念な部分でもありました。
龍馬疾風録
オフィスワンダーランド・(一社)演劇集団ワンダーランド
新宿村LIVE(東京都)
2014/06/06 (金) ~ 2014/06/08 (日)公演終了
満足度★★★
脚本は面白い
竹内さんの作品は、息子の初舞台で、一度、二度とこの劇団は観たくないと思った作品で、一度、そして今度で、三度目の観劇になります。
群像劇がお得意なんだと思います。そうして、よくもこれだけの多勢の出演者を整理して、視覚的にも、ストーリー的にも、破綻なく見せる技術に長けているなと、観る度、感心します。
この作品を、演技力に長けた役者さんだけで上演されたら、どんなに面白かっただろうと思うと、その部分において、やや残念な仕上がりでした。
時代劇を演じるには、やはり日頃の鍛錬が必要な気がします。
冒頭からしばらくは、役者さん達の所作の酷さに、気恥ずかしくなって凝視できないところがありました。
今日のチームの初日のせいか、役者さんが台詞を忘れたり、龍馬ご自身が、ご自分の名前を「りゅうま」と発音されたりと、失点も見受けられました。
開演前の、数人が、順番に、注意事項を述べるところも、どうせなら、もっと流麗にして頂きたかった気がします。あそこで、皆さんの息が揃うだけでも、芝居に対するワクワク感が違って来ると思うので。(それに、開演時刻を10分も過ぎてから、始まった注意事項読み上げで、これからトイレタイムを取る方がいないかと質問して、実際、促されてトイレに立つ方がいたのには呆れました。幾ら知り合いだらけの客席だとしても、一応有料公演である以上、こういうプロ精神に悖る行為は、それだけで、減点要素だと思います。)
プルーフ/証明
DULL-COLORED POP
サンモールスタジオ(東京都)
2014/05/28 (水) ~ 2014/06/04 (水)公演終了
満足度★★★★★
ドアの開閉の演出意図は?
ずっと気になっていた谷さんの演出作品、初めて拝見しました。
まず一言で言うなら、「呆れるほどの佳作」です。
サイン、コサイン、タンジェント、√あたりが出て来た頃から、算数得意少女の足を洗い、すっかり数学音痴女子学生に成り下がった還暦目前おばさんとしては、観てわかる芝居なのかと大変恐怖心を抱いて観に行きましたが、全く心配いりませんでした。
これは、人間関係の照明劇なんですね。心と体が融合して、それが一つの形に結びつくまでの綿密な公式を提示されたような芝居でした。
何よりも驚いたのは、山本さんの役者としての資質の芳醇さ。声に力があり、声優としてもご活躍だということが納得できました。
先日、従弟の長男が、アニソングランプリで、準グランプリになった映像を観たのですが、彼も、容姿が山本さんにそっくりでしたから、声優向きの体躯というのがあるのかもしれないと思いました。
他の公演を観ていないので、比較できませんが、この芝居、ハル役の俳優の演技如何で、作品の成果が全く違ってしまうと思うので、その点からも、山本さんのキャスティングは大成功だと感じました。
遠野さんも、宝塚ご出身とは思えない自然な演技が、姉役のスタンスを的確に表現されて、お見事でした。
ただ、一つ、非常に気になったのが、庭に出るドアの開閉のジェスチャーが、人によって、状況によって、あまりにもマチマチなこと。架空のドアを開閉する動作が数えきれない程繰り返されるので、もしかしたら、ここにも谷さんの緻密な演出意図が隠されている可能性も感じたのですが、そこまで、深読みできないと、逆に、演者の動きが気になって、演技の粗のように感じられる欠点とも受け取られ兼ねず、むしろ、ドアはない設定での芝居にした方が、芝居の中身にドップリ浸れるのではないかと感じました。
風間杜夫ひとり芝居『正義の味方』
トム・プロジェクト
本多劇場(東京都)
2014/05/27 (火) ~ 2014/06/01 (日)公演終了
満足度★★★★
風間ファンの空気感が心地よい
私が風間さんの舞台を初めて拝見したのは、紀伊国屋ホールで、つかこうへい事務所の「熱海殺人事件」を観た時。
あれから、何十年経ったのでしょう?
風間さんも、ファンも歳を重ねました。
絶賛された、一人芝居3部作よりも、緩い作りの新作一人芝居は、今の私の心境には、あまり熱すぎず、適度な笑いに満ちて、とても心地よい精神緩和剤に感じられました。
太陽王 ~ル・ロワ・ソレイユ~
宝塚歌劇団
東急シアターオーブ(東京都)
2014/05/17 (土) ~ 2014/06/02 (月)公演終了
満足度★★★★
星組は人材の宝庫
前回公演のナポレオンで、すっかり柚希さんに魅了されてしまったので、二度目の星組公演に参上致しました。
今回は、ルイ14世に関わった女性達が、何人も登場するので、俄かファンで、パンフレットも買わない私には、どの役を娘役トップの方が演じられたのかもわかりませんが、まあ、登場する女性達が、皆さん素敵で、本当にこの組は人材の宝庫だなと実感しました。
柚希さんは、声良し、歌良し、演技良し、ダンス良し、容姿端麗…と、男役トップとして、非の打ちどころのない魅力を兼ね備え、10年に一人のスターだと認識しました。
在位の長いルイ14世ですが、この舞台では、女性関係を中心に描き、その分、やや脚本が弱く、ストーリー展開は平板に感じられましたが、楽曲も良く、キャストは皆さん、実力派ばかりなので、宝塚の舞台としては、成功作だろうと感じました。
ペテカンのコント『諸々そこんところ2』
ペテカン
コア・いけぶくろ(旧豊島区民センタ-)(東京都)
2014/05/23 (金) ~ 2014/05/25 (日)公演終了
満足度★★★
好感の持てる笑いネタ
個人的に、ぺテカンの役者さん全員のファンなので、取り立ててものすごく面白いとは言えないコント集でしたが、終始楽しく拝見しました。大笑いするタイプのコントではなく、好感の持てる、クスッと笑うタイプのコントでした。
役者さんに思い入れのないお客さんにとっては、わざわざ劇場に足を運んでまで、観る価値はないのかもしれませんが。
下ネタのコントもありましたが、ダイレクトなネタではないので、嫌な気持ちにはなりませんでした。
お子さんが、何度も楽しげに声を立てて笑って観ていたので、万人向けのコント芝居だと感じます。
前回、入団されたばかりの新人女優さんが、おめでたとのことで、出演せず、助手役だったのには、驚きました。
でも、そんな新人さんを温かく見守っている感じの劇団先輩メンバーの様子に、更に、ぺテカンファン度がアップしました。
今年の公演は、これでおしまいとのこと。来年の本公演を首を長くして、楽しみに待ちたいと思います。
五月花形歌舞伎
松竹
明治座(東京都)
2014/05/02 (金) ~ 2014/05/26 (月)公演終了
満足度★★★★
奮闘染五郎10役早替り
澤瀉屋さんが復活上演した初回から、何度か観た「伊達の十役」、今回は染五郎さんが演じるとのことで、興味深く拝見しました。
最初の口上で、染五郎さんご自身で、十役の解説をして下さるので、人物関係がわかりやすく、歌舞伎にあまり馴染みがないお客さんには、大変親切な導入だったと思います。(いきなり始まると、染五郎さんが、十人もの登場人物を早替りで演じていることにすら気が付かないお客さんが相当数いるかもしれませんから)
序幕は、人物紹介を兼ね、ふんだんな早替りの趣向の醍醐味で、観客の興味を引き、二幕目以降は、一人の人物を長く丁寧に演じて、芝居の奥行きを感じさせる舞台構成が見事だと、改めて思いました。
先代の猿之助さんは、早替りに重きを置くタイプで、十役の演じ分けが、今ひとつに感じられましたが、染五郎さんは、十役それぞれのキャラクターをかなり工夫して、演じていらっしゃると思いました。
ただ、ハードな舞台のせいか、声が、いつもより掠れて、伸びも悪く、時として、台詞に力が籠らなかったのは、やや残念でした。
それと、これはもろ刃の剣的なことですが、早替りがあまりにもお見事過ぎて、難なくこなされているせいか、違う役で瞬時に登場された時のワクワク感をそれほど感じないのが、肩透かしにも感じてしまいました。
ミュージカル 『レディ・ベス』
東宝
帝国劇場(東京都)
2014/04/11 (金) ~ 2014/05/24 (土)公演終了
満足度★★★★★
リアルさに貢献する首切り役人
先日も書きましたが、アンブーリンの登場場面に必ず現れる首切り役人役の方が気になって、とうとう2000円もするパンフレットを購入してしまいました。
(父の存命中は、常に東宝のパンフレットには原稿を執筆していましたから、生まれつき、パンフレットを購入するという観念がなく、実に久々の自腹パンフでした)
笠原竜司さんというジャパンアクションクラブ出身の俳優さんでした。この方の筋肉隆々の佇まいが、本当に首切り役人らしさ満載で、彼が、和音さんの横で存在するだけで、アンブーリンからべスに伝わる悲劇の連鎖を具象化していて、観劇する度に感嘆します。
3度目の観劇でしたが、アンサンブルの進化が著しく、舞台が活性化していました。
育三郎さんのロビンには、べスへの愛情が増し、平方さんのフェりぺ王子には、楽しんで役を演じられる余裕が生まれ、吉野・石川コンビの悪役ぶりには更に拍車が掛かり、二人の掛け合いの楽曲は、絶品の境地に…。
ロビンの仲間の3人組は、舞台を明るくする役割をきちんと務められ、花總べスには益々気品が具わりました。
後5回ぐらい観たくなる、素敵な作品に成長していて、これが、世界初演作であることが、ちょっと日本のミュージカルファンとして、誇らしい気持ちになってしまいました。
3回目にして、口ずさめる楽曲も数曲できたので、初ミュージカルとしては、大成功ではないでしょうか?
パンフレットによれば、首切り役人の登場は、演出の小池さんのご発案だそうで、この作品、東宝の手で、小池さんの演出で、世界初演できて、ラッキーだったのではと思いました。
昭和レストレイション
パラドックス定数
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2014/05/16 (金) ~ 2014/05/25 (日)公演終了
満足度★★★
意外でした
2・26事件が題材ということで、きっとかなり終始息を呑むようなストーリー展開なのだろうと予想していましたが、意外も意外!
途中までは、コントめいた雰囲気で話が進むので、会場には笑いが絶えませんでした。
井上さんの「ムサシ」に似た劇構成のようにさえ感じられました。
野木さん流の、機知に富む2・26事件の切り口の斬新さには感嘆しましたが、でも、この事件の本質をあまり良く知らない観客が観ると、作者の作劇意図が全く見えて来ないのではと、危惧する部分も多々ありました。
パラドックスの役者さんの中で、近藤さんは浮いてしまうのではないかと心配でしたが、それは全く杞憂に過ぎず、見事に溶け込んでいらっしゃいました。
若い将校達の居住まいが、それらしく、この劇団の役者力はいつもながら、卓越しているなと思いました。
シュールで、アイロニーに満ちた野木版、2・26事件芝居です。
見よ、飛行機の高く飛べるを
劇団青年座
本多劇場(東京都)
2014/05/10 (土) ~ 2014/05/18 (日)公演終了
満足度★★★★★
青年座の女子力を実感
安藤瞳さんを、初めて、研究所の実習公演で拝見した時、この方には、この作品がお似合いだと直感めいたものが芽生えました。
それ以来、いつか安藤さんが、のぶを演じて下さる日が来ることをずっと心待ちしていたので、今回の観劇は心底楽しみでした。
期待通り、安藤さんののぶはピッタリでしたが、他の女子生徒達も、それぞれ、役柄にドンピシャリのキャスティングで、いつの間にか、青年座は、若手女優さんの宝庫になったなあと実感しました。
青年座は、私と同い年。演劇評論家だった亡父が、学生時代から、東恵美子さんと親友だったため、創立の時には、ずいぶん助力を惜しまなかったと、幼い頃から聞かさせて育ったので、創立60周年の公演を、息子と同期生だった安藤さん主演の舞台で、観劇することができて、個人的にも感慨深い思いがありました。
のぶは、永井愛さんのお祖母様、初江は、市川房枝さんがモデルだと伺っています。どこまでが、史実で、どこからが永井さんの創作かは知る由もありませんが、選挙権を得てから、市川さんが政界引退されるまで、ずっと投票してきた身なので、この芝居の中の初江のありかたに、一々頷く部分が多くありました。
たまたま、今日は、首相の意図的な図入りの集団的自衛権の解説などが報じられ、この芝居の時代に逆行しそうな世間の雰囲気に、観劇中も、心がざわつく不安がよぎりましたが、この劇団の役者力のお蔭で、舞台自体は、終始ワクワクと観ることができ、3時間の上演時間もあっという間に感じました。
ミュージカル 『レディ・ベス』
東宝
帝国劇場(東京都)
2014/04/11 (金) ~ 2014/05/24 (土)公演終了
満足度★★★
数人キャストが替るだけで
同じ内容の芝居なのに、こうも雰囲気が変わるものかという驚きがありました。
前回拝見したキャスト陣の方が、それぞれ、強い個性があったので、芝居の流れに、緊迫感や、緩急があったようで、今日の舞台はやや平板に感じました。
期待した加藤さんは、予想の通り、見栄えは素晴らしいロビンでしたが、演技や歌唱では、やはり育三郎さんに軍配が上がる気がしました。ただラブシーンの世界観では、加藤さんの方が勝っているようにも感じます。
加藤さん、平方さん、未来さん、更に、情感を込められた舞台進化に期待したいと思います。
特に、加藤さんは、まだ、演出の通りに、演技して歌って動いて…という演じ手の素顔が見え隠れしている感じがするので、もっと公演を重ねて、役を生きられるようになられた頃が楽しみだなと思いました。
カテコの後に、プレゼントコーナーなどがあり、出演者の楽屋グッズが、抽選で、12名の方に当たりましたが、こういう催しがあると知らずに、帰られた方もずいぶん見受けられました。
せめて、幕間に告知すればいいのにと思います。
ミュージカル「ラブ・ネバー・ダイ」
TBS
日生劇場(東京都)
2014/03/12 (水) ~ 2014/04/27 (日)公演終了
満足度★★
前評判通りの
ストーリー的には、三流昼メロみたいな展開で、やはり、「オペラ座の怪人」で感動した人にはちょっとおススメ出来かねる作品でした。
かと言って、「オペラ座の~」を観てない人には、余計面白くない作品だし…。
どっち道、あまり推薦はできないかも。
ファントムとクリスティーヌが主役と言うよりは、メグ(オペラ座のラストで、仮面を手に取る踊り子)と、クリスティーヌの息子グスタフが主役のスピンオフ作品みたい。
とは言え、オペラ座より更に難曲だらけで、よりオペラチックな歌曲を、各キャストが流麗に歌いこなす様はお見事で、一見の価値(一聴の価値)あり。
残念ながら、市村さんのファントムは拝見したことがないので、あのオペラ座の方のファントムに脳内変換して、彼の名唱に浸りました。
濱田クリスティーヌ、笹本メグ、香寿マダム・ジリー、松井グスタフも、皆さん歌唱も演技も文句なし。初ミュージカルの橘さんも、演技も大健闘されていました。
このキャストで、「オペラ座の怪人」の方を観られたら、どんなに良かったことか…。まあ、実際ありえない願望ですが。
ミュージカル 『レディ・ベス』
東宝
帝国劇場(東京都)
2014/04/11 (金) ~ 2014/05/24 (土)公演終了
満足度★★★★★
天にも昇る気持ち
何しろ、ずっと待ち侘びていた花總さんの主演舞台復帰作、拝見できただけで、夢見心地でした。
花總べス、山崎ロビン、吉沢メアリー、古川フェりぺ、石丸アスカムのキャストスケジュール日でした。
一番目を奪われたのはセットの美しさ。簡易なセットなのにもかかわらず、映像と照明で、その場をそれらしく感じさせるスタッフ技術に息を呑みました。
べスにとっては、敵役の、石川、吉野コンビの見事な息の合い方にも拍手喝采もの。
曲は、難解なものも多く、訳詞があまりはまっていないようにも感じましたが、全体的に、キャストがすこぶるはまり役ばかりで、これは、久しぶりに、リピートしたくなるミュージカルでした。
いのうえ歌舞伎 「蒼の乱」
劇団☆新感線
東急シアターオーブ(東京都)
2014/03/27 (木) ~ 2014/04/26 (土)公演終了
満足度★★★
疾走感皆無の要因
いつもの新感線の舞台には必ず感じる、疾走感が、残念ながら、皆無に近い状態でした。
その要因を昨日からずっと考えていました。
脚本は、いつもながらの、大テーマに沿うものだし、演出も悪いわけではない。とすれば、幾つかの要因が重なって、新感線の醍醐味を感じにくい舞台になってしまったのだと思いました。
後半、天海さんが、男前になられてからは、俄然、舞台に躍動感が発生しました。早乙女兄弟の殺陣は、美しく、壮絶で、冷や汗の連発で、圧巻の見応え。橋本じゅんさんは、あまり活躍の場がなくて、残念ですが、今回も、じゅんさんの演技には、涙を誘われました。
ラストシーンの美しさが、ずっと印象深く、目に残像のように焼き付いて離れません。
いつの世も、時の為政者の犠牲になるムコの民という構図は、今回の舞台でも同じですが、最後に少しだけ希望が持てる展開は、中島さんの思い描く希望の形なのかもしれないと感じました。
Broadway Musical 『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』
ニッポン放送
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2014/04/04 (金) ~ 2014/04/20 (日)公演終了
満足度★★★
1幕は眠いけど、2幕は最高!
1幕は、ダンスは切れが良くて、視覚的には乗れるものの、何せ、歌詞が、たとえラップにしろ、あまりにも字余り過ぎて、聞き取れず、ストーリーに付いて行けなくて、これは、年甲斐もない会場に迷い込んだかのアウエイ感を感じたのですが、2幕になると、示唆に富んだ楽曲が並び、人物関係も鮮明になって、いきなり、舞台が動き出した感がありました。
ベテラン女優陣と、若いエネルギーが混然としながら、均衡を保った素敵なステージでした。
ニーナ役の梅田さんの歌声が、ありえないくらい魅力的。AKB,御見それしました。
大塚ちひろさんは、舞台の度に、全く別のキャラクターを体現され、本当に、実力の凄さを痛感します。
カミラの樹里さん、ダニエラのマルシアさん、そして、もちろん、前田美波里さんのお婆ちゃん、演技も歌も安心していられる女優さんが3人も揃って、贅沢なキャスティングが、嬉しくなります。
若い役者陣のダンスは、本当に切れが良くて、観ているだけで、パワーを頂きました。
少し、気持ちが若返れた気分でした。
アダムス・ファミリー
パルコ・プロデュース
青山劇場(東京都)
2014/04/07 (月) ~ 2014/04/20 (日)公演終了
満足度★★★★★
アンサンブルの活躍が楽しい
東京楽日!
あたりまえですが、先日の公演よりずっと進化していました。
キャストの動きが自然になって、自然と、アダムスファミリーの夜会に誘われた気分になります。
キャスト、スタッフの一体感が心地よく、現実の憂さをしばし忘れさせてくれる、楽しい舞台でした。
改めて、台詞の一つ一つを注意深く聞くと、とても深読みできる作品だということも認識できました。
人間の多様性も、相手を優しく許容できる愛さえあれば、環境や価値観の違いなんて踏み越えられるというメッセージを受け取りました。