満足度★★★★★
今だからこそ胸に響く作品
確か10年ぐらい前に、鈴木瑞穂さんと草笛光子さんで、この作品を観た記憶があります。
その時には、夫婦関係に視点が行って、核兵器反対の請願に関しては、あくまでも、話のお膳立てとして、捉えて観ていたように思います。
ところが、震災で、原発事故が起こり、原発再稼働や、集団的自衛権の問題など、今後の日本の方向を憂慮するような諸問題が山積している今観ると、三田さん扮するエリザベスの台詞の一言一言が、痛烈に、心臓を鷲掴みにして、居たたまれなくなる気持ちになりました。
こういう芝居を、高校の演劇鑑賞会とかで、取り上げて、多くの日本人に是非観て考えて頂きたいと強く思います。
夫婦間の暗黙の距離の置き方、言わない誠実さ、言い放ってしまった言葉は消せないという事実の重さ…、家族の在り方に正解はないけれど、夫側の立場で観るか、妻側の立場で観るかで、感想も様々かもしれません。
エドムンドも、エリザベスも、お互いに、それぞれの価値観で、相手を尊重し、家族関係を壊さないように、自分の大切な居場所を守る努力をしていたのでしょう。
巧みな脚本の台詞の応酬によって、観客にも、二人の思いの深さが痛いほどに伝わるだけに、終幕近くに、つい夫が妻に対して言い放ってしまった一言は、女である私の胸にも、グサッと突き刺さって、衝撃的な台詞でした。
エドムンドさん、それを言っちゃおしまいでしょ!と心で、叫んでしまいました。
本当に、素晴らしい完成度の作品です。
高校生以上の全ての年代の方に、是非是非観てほしいなあ!