飯縄おろし
世の中と演劇するオフィスプロジェクトM
タイニイアリス(東京都)
2009/11/06 (金) ~ 2009/11/11 (水)公演終了
満足度★★★★★
甘酸っぱい、あの頃の記憶
女子高生バージョンを観劇。
1970年代の、長野県の片田舎にある高校での一晩を描写。
高校生特有の、将来に対する不安と期待を地方伝承を絡め、見事に表現。
観劇中、観劇後、心がポッと暖かくなる舞台であった。
今年101本目の観劇作品となったが、年間のトップ10に入る秀作であった。
黴と鉄道
地球割project
pit北/区域(東京都)
2009/10/29 (木) ~ 2009/11/08 (日)公演終了
百年後の蝶々
桃色バカンス
TACCS1179(東京都)
2009/10/29 (木) ~ 2009/11/01 (日)公演終了
満足度★★★
違うスタイルでの演劇に期待
未知のウィルスに犯されたことをきっかけに生命維持装置を活用して100年後の世界によみがえった科学者と、その関係者、そして、特殊能力者の苦悩を描く未来SFサスペンスストーリー。
当劇団は初見であったが、作・演出を手がける増山は、「一番見たいもの」と「一番言いたいこと」を考え、作品をつくりあげるという。今回増山は、以前所属していた「神様プロデュース」という劇団のスタイルを踏襲したようである。
物語は100年前と今、数日前を頻繁に行き来しながら、本編の主題とは直接的な結びつきの弱いサイドストーリーを複数はさみつつ、進行される。
主題はつたわるものの、あまりにも頻繁に時空を越え、サイドストーリーが加わることで、やや焦点がぼけてしまったのが残念であった。
次回、違うスタイルでの劇団の公演に期待したい。
リフラブレイン
MCR
駅前劇場(東京都)
2009/10/29 (木) ~ 2009/11/03 (火)公演終了
カカフカカBig2
カカフカカ企画
アイピット目白(東京都)
2009/10/15 (木) ~ 2009/10/25 (日)公演終了
満足度★★★
面白いが、下ネタが
「大脱獄」を鑑賞。当劇団初見。
近未来の、女性が男性を支配する世界で繰り広げられるナンセンスコメディー。
笑いを誘うしかけがあちこちにちりばめられており、なかなか楽しい舞台であった。
ただ、全編、下ネタのオンパレードで、後半は飽きてしまった。
次回、あまり下ネタのない、コメディーに期待したい!
ka-e-lu
多少婦人
しもきた空間リバティ(東京都)
2009/10/02 (金) ~ 2009/10/04 (日)公演終了
満足度★★★★
新感覚の言葉遊び
「かえる」に関するショートストーリ2人、ミドルストーリー1本のオムニバス。
「帰郷のすすめ」は、2年ほど、音信不通だった娘が突然、帰宅(かえる)するところから物語が始まる。久々にかつて自分が使っていた部屋に戻ると、そこには別人の荷物が。その荷物は、娘が突然出て行った寂しさを紛らわせるために、両親が新しい家族として迎え入れた娘と同じ年のころの同居人(赤の他人)の荷物であった。事態を飲み込めずに両親への不振が募るものの、ストレートに思いをぶつけることができずにいる娘、また、十分な説明を行うことができずに娘との距離を測りかねる両親。こ両者をつなぐべ奮闘する妹、そして、KYな同居人。これらのメンバーが織り成すかみ合わない会話の妙。
笑わせたいのか、笑ってほしくないのか、微妙なラインを行き来する演出がとても面白かった。
「無節操にひっくり返る。ならばせめて美しく。」は、5人の一般ユーザーが集まったモニターアンケートで、繰り広げられる女と女の勝負。主催者の意図とはまるっきり別に、モニターアンケート常連の二人の女は、お互いが多数意見を取ろうと、主導権争いを行う。ここでの「かえる」は、オセロのように、意見が「ひっくりかえる」ことにちなんでいる。「帰郷のすすめ」ほどではないものの、会話の妙を感じることができる作品。
「ガネーシャ・トランスポート」は、医療ミスと臓器移植がテーマにした本公演のメイン。「かえる」とは、医療ミスによって、危篤に陥った患者が「生き返る」ことをあらわす。ルイスキャロルのタブレットにヒントを得、臓器移植の是非を巡る倫理観を絡めた、言葉遊びに満ち溢れた脚本は見事の一言。ヒンズー教の、障害を取り去り、財産・幸福をもたらすといわれるガネーシャ神を登場させ、重層的な入れ子状態で展開されるスト-リーは謎解きを含み観客を飽きさせない。
それぞれに、言葉の妙味を味わうことが出来るなかなかよい舞台であった。
異邦人~エトランジェ~
シンクロナイズ・プロデュース
ザ・ポケット(東京都)
2009/09/16 (水) ~ 2009/09/20 (日)公演終了
満足度★★★★
「異邦人」はどっち?
「太陽が眩しかったから」という台詞で有名なアルベール・カミュの「異邦人」を比較的忠実に台本化した本作。
何事にも受身で、自分自身のことにさえ、あまり関心を持たないがゆえに、死刑台へと送られることになる主人公を丹念に描く。
自分に常に正直に、偽りを一切認めない、神を否定する主人公と、神を信奉し、道徳的な主人公以外の人々のどちらが、「異邦人」=「部外者」=「非常識人」なのかを見るものに問いかける。
道徳観が薄れるとともに、他者に対する関心が低い現在の日本においては、「異邦人」はもちろん主人公以外の人々であろう。
原作がどの時代にも通用する名作であることを再確認するとともに、そのことを理解させてくれた緻密な演出に感謝したい。
※欧米の作品を原典におく作品を読む、また、見るにつけ、毎回思うことであるが、一般に宗教観が薄い日本人の受け止めは欧米人のそれとは異なるのではないか。それをどう脚本家・演出家は考えているのだろうか。という疑問を今回も抱いた。
twelve
劇団6番シード
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2009/09/12 (土) ~ 2009/09/21 (月)公演終了
満足度★★★★
緻密な脚本に脱帽!
ある事故が原因で死亡した12人を描く重量級ミステリー。
トラック横転事故で死亡した12人の霊は、搬送先の病院の仮遺体安置所で、顔を合わせるが、11人の赤の他人に囲まれ、自身に何が起こったのか理解できずに、困惑する。
それぞれには、それぞれの鍵でしか開かない扉があり、その扉を開けることで、断片的に記憶がよみがえってくる。12人の記憶の断片がひとつになることで、事件の全体像が浮かびか上がってくるという仕掛け。
12人の霊は、自ら死を希望する者、ある者を助けようとして事故に巻き込まれた者など、関連する家族を含めて、見事に描き分けた作家の力量に感服した。出演者が多いにもかかわらず、誰一人として雑な描かれかたはされず、それぞれに、なぜ、今の状況におかれているのかを丁寧に描写されていた。
死期が迫った人物は、大きな事故現場に吸い寄せられるという話を聞いたことがあるが、今回の脚本はまさにそれを髣髴とさせ、それぞれの死に必然があるかのように、感じさせられた。
本劇団は初見であったが、コメディーに定評があるとのことであるが、引き続き本作のようなシリアスストーリーも取り扱ってほしい。
今後に大きな期待を持たせる劇団を発見できた喜びは大きい。
ハッピーエンドクラッシャー
ゴジゲン
シアターブラッツ(東京都)
2009/09/09 (水) ~ 2009/09/15 (火)公演終了
満足度★★★★
古典的テーマだが、妙なリアル感
センター試験でのカンニングがもとで、友人を自殺に追い込んでしまった5人の若者と、遺族の心の葛藤を描いた作品。
新盆に、死んだ友の兄から呼び出しを受けた5人の友人。かれらは、友の自殺をきっかけに、それまでの幸せが一転、それぞれに、心の重石を背負って生きている。ある者は、友人の自殺のショックで、若年性健忘症をわずらい、ある者は受験勉強が手につかず、成績は下降の一途をたどる。また、ある者は、週に1回線香を上げることを遺族から半ば強制され、精神的に追い込まれている。その現況を作り出してきた遺族の兄もまた、本性を隠すことでつらい思いをしている一人だった。
しかしかれらは一様に、努めて明るく振舞う。自分が不幸であることを隠すかのように。しかし次第に明らかになる各人の異変。
ラスト、みなが、心のうちをさらけ出し、これからの前進を期待させる場面で終演を迎える。
テーマは古典的であるが、あてがきされた個々の役を役者がそれぞれ見事に演じており、物語全体のリアリティを高めていた。
特に秀島役の、東迎昴史郎は出色であった。
この劇団は初見で、コメディーに定評があるとのことであったが、今回のように、心のうち深くを扱う作品も引き続き、描いてほしい。
【終幕】暗ポップ 【劇団員募集中】
空間ゼリー
赤坂RED/THEATER(東京都)
2009/08/26 (水) ~ 2009/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★
「普通」なのは誰?
入院施設のある心療内科専門病院に、あたらしく併設されたショートステイの診療セラピー参加者と、医師・看護師などの医療従事者の7日間を描いた作品。
アップフロントエージェンシーのいわゆるアイドルたちが出演しているということで、気軽に見れる舞台と思いきや、いい意味で裏切られた。。。
昏睡
青年団若手自主企画 山内・兵藤企画
アトリエ春風舎(東京都)
2009/08/17 (月) ~ 2009/08/26 (水)公演終了
満足度★★★★
神がかった脚本と、役者の熱演。。。
7組の男と女の出会いと別れ(そして再会を約束された遠い未来を暗示)を描く作品。
物語はそれぞれ独立しており、相互の連関は内容に思われた。
7つの物語は、観念的なものから、具象化されたものまで、ジツに幅広く、私は宗教性を強く感じさせられた。
まるで、何者か(神か?)があらゆる人間の好みにあうよう、7つの趣向の異なる物語を、作者の筆を通じて、書かせたかのよう。
見終わった直後は、あまりに重く(戦場の場、遺骨の場など)、あまりにばかばかしく(男女の営みの場)、ドット疲れてしまったが、場面を思い返すごとに、じわじわと、作品の深さを再認識できるようになった。
また、役者は、あれだけの力をこめて、演じていては相当に疲れるだろうと思われるほどの熱演を見せるが、時に過剰すぎて、観客が疲れてしまうほど。特に、第一番「戦場」での、「どもり」は見ていてつらかった。
観劇から1日近く経過したが、なかなか作品のすべてを理解できては居ないように思う。
たいへん評価の分かれる作品であろう。
反重力エンピツ
国道五十八号戦線
サンモールスタジオ(東京都)
2009/08/19 (水) ~ 2009/08/23 (日)公演終了
満足度★★★★
今の時代の学生運動
「反重力」とは物質に加わる重力を無効にしたり、調節する技術。現実の物理学では理論的に不可能であり、架空の技術とされる。
そんな反重力をテーマに描かれた学生運動活動家たちの物語。
レストラン ル・デコ
角角ストロガのフ×elePHANTMoon×犬と串
ギャラリーLE DECO(東京都)
2009/08/18 (火) ~ 2009/08/23 (日)公演終了
満足度★★★
3劇団顔見世興行
3劇団による30分三本勝負の顔見世興行という趣向。
今までのこれらの3劇団を見たことのない人には、一度で、その劇団の特徴を理解できるので、お得なのでは!?
雨の一瞬前(再演)
ユニークポイント
ザ・スズナリ(東京都)
2009/08/14 (金) ~ 2009/08/16 (日)公演終了
満足度★★★★
雨とは焼夷弾
タイトルの「雨の一瞬前」の「雨」とは、東京大空襲で無数に振り注ぐ焼夷弾のこと。
ストーリー、演出ともに、きわめてオーソドックスであったが、終戦記念日にふさわしい作品であった。
刺青/シセイ【ご来場ありがとうございました!!】
劇団印象派
タイニイアリス(東京都)
2009/08/14 (金) ~ 2009/08/16 (日)公演終了
リチャード・イーター
劇団銀石
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2009/08/12 (水) ~ 2009/08/16 (日)公演終了
満足度★★★
せむしの行進は印象的
ある歴史作家の妄想の中で、進行する「リチャードⅢ世」の物語。
チラシ等をみて、「リチャードⅢ世」を題材に、全く新しい作品を出現させるのと思っていたが、ストーリー自体は、設定を現在に置き換えているものの、原作「リチャードⅢ世」にきわめて忠実であった。
グッバイ・マイ・ダーリン
世田谷シルク
小劇場 楽園(東京都)
2009/08/06 (木) ~ 2009/08/09 (日)公演終了
満足度★★★
実験的な舞台
とある「おっぱいパブ」と、その「おっパブ」の階上に居を構える4人家族を描く。題材を寺山作品においているというだけあって、実験的な試みがなされている。寺山作品と異なり、リアルな部分が多いものの、象徴的なダンスが繰り返され、見るものの嗅覚を刺激し続ける。前衛をめざしているであろう、作品なのだから、何を伝えたいのかを理解する必要はなかろうが、70年代の前衛と比べ、リアルな部分が多い分、メッセージを解読しようとしたが、うまく理解できなかった。もう少し、どちらかを鮮明にすると、より観客に伝わる部分が多かったのではないか。相当に好みの分かれる作品のように思う。
暗黒地帯
鵺的(ぬえてき)
「劇」小劇場(東京都)
2009/08/05 (水) ~ 2009/08/09 (日)公演終了
満足度★★★★
心地悪すぎるが、しかし
とあるマンションの配水管の施工不良を端緒に、抉り出される人間の本心を、見事に、かつ、丁寧に描き分けた秀作といえよう。在日、部落、麻薬、うつ病、等々現代日本の暗部をこれでもかというほど、ぐいぐい観客に押し付けてくる。見ていてこれほど気分の悪い作品も多くはない。しかし、心地悪いにはそれなりの理由が存在する。今の日本のリアルを上手に描いているからであろう。それに加えて、キャストの一人ひとりが、まさに熱演。特に、在日2世を演じた荒井靖雄は出色。作・演出の高木登の今後に期待したい。
花とアスファルト
青☆組
アトリエ春風舎(東京都)
2009/08/01 (土) ~ 2009/08/09 (日)公演終了
満足度★★★★★
異質者との距離感
或る団地に、本物の「クマ」が引っ越してくることからはじまる物語。
どうやら、世の中には、一定程度、本物の「クマ」が、言葉をしゃべり、人間と一緒に暮らしているようだ。
ねずみの夜 【公演終了・御来場御礼】
殿様ランチ
サンモールスタジオ(東京都)
2009/07/29 (水) ~ 2009/08/04 (火)公演終了
満足度★★★
気楽に見るにはいいかも
舞台は幕末。坂本竜馬が殺されたまさにその日。
竜馬が殺された近江屋の隣にある長屋風の建物で起こる数時間の出来事を切り取ったシチュエーションコメディ。
勘違い・早とちりが生み出すおかしみを素材に、タイトルの「ねずみ」に引っ掛けて、「ねずみ小僧」と、「ねずみ講」を、いくつかの伏線を交えながら、最後にはひとつにつなげるという設定はうまく、コメディとしての完成度はそれなりに高い。
しかし、何か最後にはメッセージがあるのでは期待したのだが、最後の最後までなんらメッセージ性のある言葉は語られず。。。
気軽にあまり考えずに、面白さのみを追求し、演劇を見る人に面白いのかも。