【終幕】暗ポップ 【劇団員募集中】 公演情報 空間ゼリー「【終幕】暗ポップ 【劇団員募集中】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    「普通」なのは誰?
    入院施設のある心療内科専門病院に、あたらしく併設されたショートステイの診療セラピー参加者と、医師・看護師などの医療従事者の7日間を描いた作品。
    アップフロントエージェンシーのいわゆるアイドルたちが出演しているということで、気軽に見れる舞台と思いきや、いい意味で裏切られた。。。

    ネタバレBOX

    合宿に参加したのは、それぞれ、心に傷持つ人ばかり。①「足が太い」と友人に言われたことがきっかけで拒食症になった女子高生、②自分は常に正しいと思い、相手の価値観を受容することができない幼稚園教諭、③締め切りに間に合わず、原稿を落としてしまったことで、職場から逃げ出したフリーライター、④極度の人見知りで対人恐怖症の女子大生、⑤裕福な家庭に育ち、引きこもりとなったオタク、⑥ちょっとしたことですぐにキレ、同居する女性にもDVをはたらく「ひも」、⑦働きすぎが原因で電車に乗ることができなる適応障害のサラリーマン。そんな彼らではあるが、7日間の合宿を通して、参加者どおし、医療従事者、または入院患者との交流を通じて、自分と向き合い、相手との距離感の保ち方などを徐々につかみ、多くのメンバーは一定の成果を上げる。

    一方で、かれらの支えるはずの医療従事者は医療従事者なりの課題を抱えていた。
    物事をすべて白か黒かで判断しようとする心療内科医、一生懸命なばっかりにがんばりすぎて、精神安定剤が手放せない心療内科医、患者のことを思い、自分こそが患者の一番の理解者であると自認しながらも、ある事件が起こった際には、患者を信用することができなかった心療内科医など。

    舞台の進行によって、「普通」でないはずのセラピー参加者は、実は「普通」で、「普通」であるはずの医療従事者が、実は「普通でない」様が明らかになってくる仕掛けはなかなか見ごたえがあった。
    その典型は、セラピー参加者でありながら、自分は他の参加者とは違い、「普通」の人間であると自覚し、1日早くセラピーを切り上げ、社会復帰を果たしたはずのサラリーマン(前述の⑦)と思われる人物が、電車への飛び込み自殺を図ったことが暗示されるラストに象徴されている。

    セラピーで交わされる参加者、医療従事者たちの会話・コミュニケーションの危うさを通して、万人が精神的に病んでいてもおかしくないこの時代に、仲間と普通にコミュニケーションがとれることが奇跡ではないか、と思わせられるような、そんなラストがわりと心地よかった。

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    2009/08/27 00:11

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