ひみつのアッコちゃん
劇団ガソリーナ
【閉館】江古田ストアハウス(東京都)
2009/07/08 (水) ~ 2009/07/19 (日)公演終了
満足度★★★
さよなら江古田ストアハウス
じんのひろあきの作・演出なら大ハズレはないだろうということで観劇。去年亡くなった赤塚不二夫の漫画がタイトルになっているが、漫画のストーリーをそのまま役者が実演したものではない。
上海異人娼館-チャイナ・ドール -
青蛾館
こまばアゴラ劇場(東京都)
2009/07/08 (水) ~ 2009/07/12 (日)公演終了
デカダン
寺山修司が亡くなったのが1983年。その2年前に作られた映画「上海異人娼館」をもとに、岸田理生が今から20年ほど前に構成・脚本を担当した舞台劇。
私が芝居を見始めたのは寺山の没後だし、岸田理生が関わった芝居を見るのもこれが初めて。古典を見るときのように、予備知識ゼロで見るのはなかなかむずかしい作品で、見ているうちにもその時代背景が気になってくる。
映画はポーリーヌ・レアージュの「O嬢の物語」の続編を寺山が上海を舞台に置き換えたものだという。城館で繰りひろげられる退廃的でエロチックな世界というのは、ジャンルとはいわないまでも、映画や文学作品の系譜としてはそれなりにある。王侯貴族による酒池肉林の宴なんてのがそもそもの始まりではないだろうか。
「ロメオとジュリエット」「令嬢ジュリー」
谷桃子バレエ団
新国立劇場 中劇場(東京都)
2009/07/04 (土) ~ 2009/07/05 (日)公演終了
満足度★★★★
文芸バレエ
バレエを見始めてまだ日は浅いのだけど、チケット代が安ければもっと見たいと思っている。文字通り、バレエは高値の花だ。
谷桃子バレエ団は今年が創立60周年だという。見るのはこれが4度目くらい。そのうちの2回は団員による創作バレエの発表会だった。BATIKの黒田育世が所属していたこともあり、古典だけでなく、創作ものにも熱心なカンパニーなのかなという印象がある。
今回はスウェーデンの女流振付家ブリギット・クルベリ(1908-1999)の作品を2本立てで上演。彼女の名前は今回初めて知ったが、スウェーデンではバレエ・カンパニーにその名前が冠せられているくらい有名な存在らしい。現在も振付家として活躍しているマッツ・エックが彼女の息子だったというのには驚いた。
上演された2本はどちらも有名な戯曲が原作。一つはシェイクスピアの「ロメオとジュリエット」、もう一つはストリンドベリの「令嬢ジュリー」。言葉そのものといっていい戯曲を、言葉をまったく使わないバレエに置き換えるのは、ある意味で乱暴な行為だと思うけれど、実際にはドラマ性がより濃厚なほうが、無言のダンス表現では観客に内容がよく伝わるようだ。
「ロメオとジュリエット」は芝居だと2時間以上はかかるはずだが、バレエ作品では約1時間に収まっている。舞台装置はまったく使わず、照明と衣装による色彩の変化だけで雰囲気を盛り上げている。対立するキャピュレットとモンタギューを青と赤で色分けし、そのなかでジュリエットだけは白い衣装を着ている。シェイクスピアの芝居を観客が知っていることを前提にしているとはいえ、鍵となる10の場面をダンスで演じることによって、「ロメオとジュリエット」の物語をわずか1時間で観客に伝えてしまうというのはすごいことだと思う。ソワレで主役の二人を演じたのは永橋あゆみと齊藤拓。ともに好演。
「令嬢ジュリー」はストリンドベリが1888年に発表した戯曲をクルベリが1950年にバレエ化したもの。上流階級の女性と使用人の関係を軸にしているところは「チャタレイ夫人の恋人」を連想させる。発表当時は大胆な内容がバレエ界では相当話題になったらしい。(スウェーデン映画がハードコアなポルノ映画の代名詞だったなんてことは、今の若い人には想像もつかないだろうなあ。)1本目の「ロメオとジュリエット」とは違い、こちらは舞台装置を場面ごとに転換させていく。しかし悲劇的な内容にもかかわらず、色彩が派手なのはどちらにも共通している。こちらの主役二人は髙部尚子と三木雄馬。こちらも良かった。
クルベリの振付は、音楽のリズムに合わせてマイムを演じるせいか、どことなく人形振りを感じさせるところがあった。バックのダンサーをストップモーションで静止させて背景化するのも特徴的だった。
合唱舞踊劇「ヨハネ受難曲」
O.F.C.
すみだトリフォニーホール(東京都)
2009/07/04 (土) ~ 2009/07/05 (日)公演終了
満足度★★★
たまにはクラシック
バレエと合唱と管弦楽の合体をめざす、O.F.C.という団体の公演。バレエの振付は今年77歳になる超ベテラン、佐多達枝が以前からずっと担当している。
彼女の振付作品を見るのは3年前の「庭園」以来これが5回目。作品の内容も、カーテンコールで見かけるその姿も、実年齢よりはずいぶん若々しい。先日のさいたまゴールドシアターだけじゃないね、元気なお年寄りは。
バッハの「ヨハネ受難曲」は演奏時間が2時間ほどの大作。佐多とコンビを組んでいる河内連太という人が台本を書いたらしいので、バッハの曲をそのまま演奏したのではないようだが、それでも上演時間は2時間くらいあった。
このホールはクラシックのコンサート専用で、普段はダンスや芝居はやらないのだが、今回はステージの手前側にオーケストラ・ピットを設け、残りのステージの後方に合唱団が並び、オケピとコーラスに挟まれた中央部分が踊り場になっていた。かなり狭い上、手前に傾斜のある八百屋舞台なのでダンサーたちは大変だったと思うが、大したトラブルもなく無事に終わった。
以前、「ヨハネ受難曲」をコンサートで聞いたときは歌詞の意味が字幕で映写された。コーラスとソロからなるこの曲はオペラに近い形式だし、歌詞の内容も聖書に基づいたドラマチックなものなので、その意味がわからないと面白さが半減する。しかし今回の公演では、演奏のほかにダンスが加わるので、これに字幕を付けるとそちらに気をとられて肝心のダンスが目に入らなくなる。だから字幕はつかなかった。
見ている途中では字幕があればと思う瞬間もあったが、それでも歌詞の内容をダンサーの動きがある程度補足してくれたので、字幕も踊りもなしで聞くよりはだいぶましだった。
バレエと演奏、どちらに重点を置くかは客の興味次第だろう。私自身はダンスが主、演奏が従で、基本的にはコンサートを聞きに行ったというよりもバレエ公演を見に行ったという印象が強い。
ダンサーはキリスト役と13人の弟子がメイン。コーラス隊の一部が群集として振りをこなす場面もあった。20列目という座席ではダンサーの顔はオペラグラスなしではなかなかわからないし、私はメガネが邪魔なので基本的にオペラグラスは使わない。余談だけど、オペラグラスを使いたいがためにメガネからコンタクトレンズに替えたという人を私は知っている。
それでもいちばんの目当てだった井上バレエ団の島田衣子は、目を凝らして捜すまでもなく、動きのよさで自然と目にとまった。
あとで調べたら、ヨハネ受難曲よりもさらに長い、同じくバッハ作曲の「マタイ受難曲」もすでにバレエ化されているという。しかし、生きている間に見る機会はたぶんないだろうなあ。
あたしちゃん、行く先を言って-太田省吾全テクストより-
川崎市アートセンター
川崎市アートセンター アルテリオ小劇場(神奈川県)
2009/07/03 (金) ~ 2009/07/05 (日)公演終了
聴覚的実験
役者が独特の台詞回しをするのが特徴の劇団、地点の新作。とはいっても今年の5月、7月、9月、来年の1月と、場所を変えながら作っていく感じなので、今回はその途中経過、あるいはワーク・イン・プログレスといったほうがいい。
それでも美術はかなり本格的に作られていて(by杉山至+鴉屋)、これは今後もそのままなのか、どうなのか。どんな美術だったかについては、とりあえず百聞は一見に如かずということで、ここでは説明を省略。
今回は太田省吾の全テクストから抜粋したという断片的な言葉を使っている。以前に見たチェーホフ作品との比較でいえば、今回はドラマとしてのまとまりもなくなっているので、役者の発する台詞を聞いていてもストーリーは浮かんでこない。
それでも日本語なのでいちおう言葉の意味はわかる。「ゴジラ」とか「お父さん」とかいっていた。ただ脈絡のない言葉群に耳を傾けていると、脳みその中でたぶんスイッチの切り替えが起きるのだろう、やがて言葉の意味にいちいち反応しなくなり、役者の動きとか照明の変化とか、声の響きや調子へと集中の矛先が移るようだ。中には意味を失ったせいで眠気に襲われる客もいたようだが。
劇場でもらったパンフの中で、演出家の三浦基がこう書いている。
「せりふを発することは、たとえば、歌をうたうこととは違うのだろうか?というようなことを私はよく考えます」
地点の芝居を見たことがある人ならわかると思うが、この劇団の役者は普通の芝居とはかなり異なったしゃべり方をする。通常の芝居では役者の解釈に基づいて、登場人物の感情にもっともふさわしい台詞まわしが採用されるのに対して、地点の場合は、感情表現というものをまるで無視したようなしゃべり方をする。
視覚面でテキストから飛躍したことをやっている劇団はそれなりにあるが、聴覚面で実験的なことをやっているのはここがピカイチだろう。今後も要注目。
新しい男
城山羊の会
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2009/06/26 (金) ~ 2009/07/05 (日)公演終了
満足度★★★★
絶妙の脚本と演技を満喫
この劇団の芝居を見たのは深浦加奈子の(たぶん)遺作になった「新しい橋」が最初。舞台を見るかぎりこのときは病気の気配などまるで感じなかったのに、その半年後に彼女は亡くなってしまった。
そのあと「新しい歌」「新しい男」と似たようなタイトルが続いている。見続けているのは別に深浦加奈子に義理だてしているからではなく、ただ作・演出を担当する山内ケンジの芝居が面白いから。
今回も期待を裏切らない内容だった。
寛容のオルギア Orgy of Tolerance
彩の国さいたま芸術劇場
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)
2009/06/26 (金) ~ 2009/06/28 (日)公演終了
満足度★★★
挑発的な悪趣味
刺激的なパフォーマンスを繰りひろげるベルギーの作家ヤン・ファーブル。さいたま芸術劇場で見るのはこれが4回目。
楽しいことや面白いことよりも、頭に来ることや苛立たしいことを表現するときに活気付くという意味で、今回はパンクなスピリットが漲っている。
(なぜかしら関西弁でいうと)
ファーブルのおっちゃん、今回は相当怒ってまっせ。ほいで何に怒ってるかっちゅうたら、ほれはもう世界の現状に対してやね。
アンドゥ家の一夜
さいたまゴールド・シアター
彩の国さいたま芸術劇場 小ホール(埼玉県)
2009/06/18 (木) ~ 2009/07/01 (水)公演終了
満足度★★★★
老人力
オーディションで選ばれた年配者の劇団、さいたまゴールドシアター。ナイロン100℃のケラが脚本を提供したというので第3回目の今回、初めて足を運んだ。ふだん小劇場の芝居を見ている者ほど、老人一色に埋め尽くされた舞台に面食らうのではないか。「老人力」という古い流行語が頭に浮かんだほど。
ケラの脚本は少人数の芝居も悪くはないけど、やっぱりこういう出演者が40名を越えるような芝居をやらせたら本領を発揮する。多くの若手を起用したケラマップの芝居「ヤング・マーブル・ジャイアンツ」などはある意味でこの芝居の若者版だったような気がする。
カーテンコールで拍手をするときには「みなさんいつまでもお元気で」という、およそ芝居の観劇後とは思えない感慨が湧いた。
鳥の飛ぶ高さ
青年団国際演劇交流プロジェクト
シアタートラム(東京都)
2009/06/20 (土) ~ 2009/06/28 (日)公演終了
お尻がムズムズ
30年前に書かれた上演時間約7時間のフランスの戯曲を、平田オリザが日本を舞台にして2時間強の芝居に翻案したもの。演出はフランス人。テキスト自体は労作だと思うけれど、演出や演技は翻訳劇くさくてあまり好みではない。
芍麗鳥(シャックリ)
乞局
駅前劇場(東京都)
2009/06/17 (水) ~ 2009/06/22 (月)公演終了
麻生首相でも読めないだろう
乞局の芝居は5年前の「勿忘」以来、欠かさず見てきたけれど、今回はどういうわけか途中でウトウトしてしまった。会場でもらうパンフにときどき作者の近況が綴られていて、それによると少し前に結婚して、今年の8月には子供ができるという。芝居を見るうえで作者の私生活などいちいち気にすることはないとは思うものの、独特の気持ち悪さが特徴の劇団だけに、プライベートの変化が芝居に与える影響というのもついつい考えてしまう。
シリタガールの旅
本能中枢劇団
こまばアゴラ劇場(東京都)
2009/06/20 (土) ~ 2009/06/27 (土)公演終了
満足度★★★★
なにはともあれ、祝復活
ベターポーヅとの涙の別れから早2年近くが経つ。その涙もすっかり乾ききったころ、帰らぬはずの人が名前を変えてもどってきた。喜び勇んで初日に出かけたが、40席ほどの客席はどうにか満席という程度。自分の期待と世間の反応の温度差にやや戸惑う。
作者にとってはそれなりのブランクだから、今回はウォーミングアップという面もある。前半は短いやりとりを反復する変態シュールなコント集の趣き。後半は人物や状況の設定がそれなりに定まってくる。
さすがにここの芝居は誰にでもオススメというわけにはいかない。いってみれば、好きな人の、好きな人による、好きな人のための演劇。
空耳タワー
クロムモリブデン
赤坂RED/THEATER(東京都)
2009/06/16 (火) ~ 2009/06/21 (日)公演終了
満足度★★★
いつものクロムなモリブデン
「次回は静かな演劇をやる」と聞こえたのはどうやら私の空耳で、本当は「次回も長台詞がいっぱいの、終盤でわっと来て一気呵成にカタルシスを迎える、役者の個性でぐいぐい押していく、いつも通りのクロムの芝居をやる」と言っていたのを私が聞きまちがえたらしい。
ボス・イン・ザ・スカイ
ヨーロッパ企画
青山円形劇場(東京都)
2009/06/17 (水) ~ 2009/06/28 (日)公演終了
満足度★★★★
見上げたもんだ
初日観劇。期待通りに楽しませてもらった。
この劇場の円形舞台をきちんと使ったうえで、見づらさ、聞きづらさから来るストレスをほとんど感じさせなかったのが素晴らしい。さすがは理系の劇作家、上田誠の面目躍如。ここ何作か、長田佳代子という人が美術を担当するようになって、そっち方面がかなりグレードアップしたのも大きい。
開演前に座席にすわって、舞台のセットを眺めながら、どんな話になるのだろうと想像をめぐらすのも楽しい時間。ゴキブリコンビナートの「ちょっぴりスパイシー」という作品の舞台装置を思い出したのは私だけだろうか。
熱海殺人事件
一徳会/鎌ヶ谷アルトギルド
atelier SENTIO(東京都)
2009/06/11 (木) ~ 2009/06/14 (日)公演終了
満足度★★★
殺人を解剖する
ここでの評判につられてノコノコと。前日まではその存在さえ知らなかった劇団を、口コミに頼って見に行くのもたまにはいい。
千葉県がベースで、視覚面で飛躍した演出をする・・・といえば三条会が思い浮かぶが、この劇団も同系列といっていい。
---MESs---メス---
Dance Company BABY-Q
リトルモア地下(東京都)
2009/06/12 (金) ~ 2009/06/14 (日)公演終了
満足度★★★★
この人を見よ
去年10月のシアタートラムでのソロ公演から半年ぶりに見た。東野祥子のソロダンス。あのときは怪我で公演が中断してしまったが、私は初日に出かけたので見ることができた。幸い怪我は回復して、その後まもなく踊り始めたが、今回もらったチラシをみると、英語で My head is a mess と書いてあるので、頭のほうはまだ問題を抱えているのかもしれない。
シアタートラムよりもはるかに小さな空間で、それでも従来通りのしなやかさをとりもどした彼女の体を間近に眺める約1時間。照明と音響が加わって、いつもながらの空間演出力を感じさせる。独特の体、独特の作品世界。
「リサイクルショップ『KOBITO』」
ハイバイ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2009/06/05 (金) ~ 2009/06/16 (火)公演終了
満足度★★
これはハズレだった
問題作というよりも、作品としてこれはちょっと問題ありでしょ。貧弱な脚本を演出でカバーしようとして、しきれてない感じ。
こんだけいい役者を揃えておいて、脚本家はなんでもっといい台詞を書いてあげないのよ。