あたしちゃん、行く先を言って-太田省吾全テクストより- 公演情報 川崎市アートセンター「あたしちゃん、行く先を言って-太田省吾全テクストより-」の観てきた!クチコミとコメント

  • 聴覚的実験
    役者が独特の台詞回しをするのが特徴の劇団、地点の新作。とはいっても今年の5月、7月、9月、来年の1月と、場所を変えながら作っていく感じなので、今回はその途中経過、あるいはワーク・イン・プログレスといったほうがいい。

    それでも美術はかなり本格的に作られていて(by杉山至+鴉屋)、これは今後もそのままなのか、どうなのか。どんな美術だったかについては、とりあえず百聞は一見に如かずということで、ここでは説明を省略。

    今回は太田省吾の全テクストから抜粋したという断片的な言葉を使っている。以前に見たチェーホフ作品との比較でいえば、今回はドラマとしてのまとまりもなくなっているので、役者の発する台詞を聞いていてもストーリーは浮かんでこない。

    それでも日本語なのでいちおう言葉の意味はわかる。「ゴジラ」とか「お父さん」とかいっていた。ただ脈絡のない言葉群に耳を傾けていると、脳みその中でたぶんスイッチの切り替えが起きるのだろう、やがて言葉の意味にいちいち反応しなくなり、役者の動きとか照明の変化とか、声の響きや調子へと集中の矛先が移るようだ。中には意味を失ったせいで眠気に襲われる客もいたようだが。

    劇場でもらったパンフの中で、演出家の三浦基がこう書いている。
    「せりふを発することは、たとえば、歌をうたうこととは違うのだろうか?というようなことを私はよく考えます」

    地点の芝居を見たことがある人ならわかると思うが、この劇団の役者は普通の芝居とはかなり異なったしゃべり方をする。通常の芝居では役者の解釈に基づいて、登場人物の感情にもっともふさわしい台詞まわしが採用されるのに対して、地点の場合は、感情表現というものをまるで無視したようなしゃべり方をする。

    視覚面でテキストから飛躍したことをやっている劇団はそれなりにあるが、聴覚面で実験的なことをやっているのはここがピカイチだろう。今後も要注目。

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    2009/07/04 11:40

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