Koujiの観てきた!クチコミ一覧

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明日の幸福論

明日の幸福論

劇団HOBO

テアトルBONBON(東京都)

2010/02/23 (火) ~ 2010/03/07 (日)公演終了

満足度★★★★

芸達者達の競演!
 私の好きなラッパ屋の看板役者おかやまはじめの劇団。おかやまは今回、作・演出を手掛けたため、出番は少ない。もっとたっぷりとおかやまはじめを楽しみたかったが残念。しかし、他の役者も全員魅力的で、あたかも落語の中の物語のように長屋の人情話をきっちりとドラマに仕上げていた。とても面白かった。

 芸達者な役者陣に混じって高橋由美子がひけをとらず演技がうまいことにも驚く。

アルペンループ

アルペンループ

サイバー∴サイコロジック

早稲田小劇場どらま館(東京都)

2010/02/19 (金) ~ 2010/02/22 (月)公演終了

満足度★★★

どらま館の幕を閉じるに相応しい力作!
 独特の世界観、独特の表現にとてもフレッシュなものを感じた。ただ、私が勝手に喜劇的な芝居なのではないかと思ってしまったので、途中まで私自身のイメージと芝居の展開とがかみ合わなかった。これは昨年観たカカフカカの芝居が印象強かったこと、そこに出ているキャストが何人かいたことで、私が勝手に誤解したものだ。

 サイバーの芝居は独特な世界をデフォルメして描きながらも、コメディではない。役者では佐渡井役の白井肉丸が相変わらずいい。前半は抑えめだったので、もっともっと彼女を前面に出していいのではと思ったが、ラストシーンではやはり彼女の独壇場だった。

ネタバレBOX

 立山連峰に設けられた、地獄のテーマパーク。それは実際に地獄と瓜二つのものだった。しかし、実はその地獄にはおそるべき陰謀が隠されていたのである。リアルな地獄のテーマパークという発想が凄い。

 白井肉丸以外では、死にたがりの女を演じた正木英恵、和尚役の平平平平が印象に残った。また市役所職員を演じた木下幸太郎の独特の台詞回しが不思議な人物を見事に表現していた。

 3月末で早稲田のどらま館が幕を閉じるそうである。かつて早稲田小劇場として、数々の名舞台を生みだし、その後も長く小劇場の名門拠点となった歴史的場所である。反対運動は出来なかったのだろうか。これで無くなるというのはあまりに惜しすぎる。

(*どらま館の閉館をこの芝居を最後にと書きましたが情報が間違っていましたので訂正します。)
踊るワン‐パラグラフ2010

踊るワン‐パラグラフ2010

ニットキャップシアター

ザ・スズナリ(東京都)

2010/02/18 (木) ~ 2010/02/21 (日)公演終了

満足度★★★★

京都の人気劇団の東京公演!
 京都から活きのいい劇団が東京へやってきた。それを観られるだけでとてもうれしい。物語はオーム真理教の事件を思わせるような宗教団体「象の足」の15年前の教祖自殺事件の謎を追いかけるミステリードラマ仕立て。しかし、その実、伝えたいのは家族の絆だったりする。

 物語自体は重いテーマだが、それを演出と役者陣で明るく軽めの芝居に仕上げている。とても観やすくのめり込みやすかった。

 役者がそれぞれ魅力的だし、上手い。ヨーロッパ企画を始め、京都には東京に引けをとらない演劇文化が根付いているのだとあらためて感心。こういった劇団がどんどん東京に進出してくれることはとてもうれしい。

ネタバレBOX

 サスペンスであったり、ホラーであったり、コメディであったり、ホームドラマであったり、さまざまなスタイルを見せながら、ニットキャップシアターの持ち味をしっかりと出していた。
NECK※板尾創路が体調不良により降板。代役は河原雅彦。

NECK※板尾創路が体調不良により降板。代役は河原雅彦。

ネルケプランニング

青山円形劇場(東京都)

2010/02/12 (金) ~ 2010/02/24 (水)公演終了

満足度★★★★★

舞城王太郎の世界を堪能!
 天才舞城王太郎の世界を脚本竹内佑、演出河原雅彦でやるというのだから、面白くないはずがない。惜しむらくは最近めきめきと人気と実力をつけている横尾創路が体調不良で降板してしまったこと。横尾が出ていれば、どんな演技を見せてくれたろうと心から残念。

 しかし、その主役級の役者の降板を演出家自らが代役を務めるというところがかっこいい。そして、この河原雅彦の演技、代役とは思えない上手さだ。

 このNECKという作品、舞城王太郎の書き下ろしで舞台と映画が同時に進行しているそうだが、どちらも首にまつわる話ということだけで、内容は別物だそうだ。しかし面白いコラボ企画だ。「曲がれ!スプーン」のように、映画フアンと演劇フアンが垣根を越えることは意義のあることだと思う。

 溝端淳平、初舞台だそうだがただのアイドルではない。個性あふれるいい役者だ。そして、また売り出し中の役者鈴木浩介がやはりいい。この舞台でも光っている。

 芝居の内容は、衝撃的な舞台とだけここでは書いて、後はネタバレで。溝端淳平フアンの女の子が殺到していたが、純粋な演劇フアンの観賞に耐えうる名作だ。

ネタバレBOX

 最初から最後まで地面に埋められて、首だけ出している男達の物語。これだけで、どれだけ変わった芝居かわかると思うもの。体が出てないわけだから、手振り身振りなどというものはない。そんな不自由な状態が延々と続く。最初は途中から出てくるだろうと思ったら、最後まで地面の中だった。

 それでも不自由だったから面白くなかったとか、変化に乏しかったとかいうことが全くなく、新しい表現スタイルを産み出したと拍手を送りたくなる。この芝居の面白さは観てみないとわからない。溝口淳平も、鈴木浩介もずっと地面の中なのである。

 それがかえって面白いと感じさせるところに、作家と演出家の確かさがある。ラストシーンは衝撃的。
リベンジャーズ・トラジディ

リベンジャーズ・トラジディ

ナカゴー

王子小劇場(東京都)

2010/02/17 (水) ~ 2010/02/21 (日)公演終了

満足度★★★★★

衝撃的舞台!
 物語の展開力と、飛び抜けた発想力に感動。久々に全く新しいタイプの芝居を発見した気分。面白さを伝えたいのだが、ネタバレになるのでなかなか伝えられない。ともかく衝撃的とだけ言っておこう。

 役者も個性的。こんなやつがいたらむかつくなあという登場人物を見事に演じ、スタートから舞台は人間関係のもつれで波乱ぎみ。この人間関係の波乱を中心とした物語かと思っていたら、まあ、その後の展開には声も出なかった。想像を絶する芝居だ。

 ひょっとしたら肌に合わないという人もいるかもしれないが、好きな人にはたまらないという芝居だ。もちろん私は好きだ。

ネタバレBOX

 不思議な誕生日会のシーンが続き、突然、招かれざる人物が登場したところから、衝撃のシーンが続く。あのシーン転換の見事さは天才的だ。そして写真の男、篠原正明の登場でまた盛り上がる。後半は篠原正明の個性的演技にぐいぐい引きつけられる。そういった鎌田順也の構成力がすごい。

 また役者の全身を○だらけにしながらの演技、そういった体を張っている部分も恐れ入った。
そして彼女はいなくなった

そして彼女はいなくなった

劇団競泳水着

サンモールスタジオ(東京都)

2010/02/11 (木) ~ 2010/02/21 (日)公演終了

満足度★★★★★

競泳水着がミステリーで新境地を開く!
今回の芝居は正統派ミステリー。始まった瞬間から舞台はサスペンスモードに包まれ、最初から最後までわくわくどきどきしどおしの1時間40分だった。

上野友之はいつもしびれるような台詞を書くが、今回はそれだけでなく、緻密な場面構成とパズルを組み合わせたようなシーン展開に才能を見せた。たぶん二度三度見ても十分楽しめるミステリーだろう。

これだけ密度の高い作品だと、アフタートークはいらないなあ。

ネタバレBOX

 ミステリーは、最後まで誰が犯人かわからないという謎解き部分の面白さと、犯人がわかった後になるほどなあと思わせる、相反する二要素をクリアしなければ名作にならない。その点、今回の作品、ミステリーのお手本のような見事なつくりだった。

 そして川村紗也の鬼気迫る演技、恐れ入った。ただのかわいいだけの女優じゃないことを今回の舞台で証明。そして縦糸となった姉と妹の物語がこのミステリーを本物にした。細野今日子が演じた愛に生きる姉の強さと弱さそして哀しさ。この伏線が生きたために、このミステリーを奥の深いものにした。

 小劇場の人気役者が勢ぞろいしたような舞台で、それぞれが上野サスペンスの重要素材として芝居を盛り上げたが、中でも、舞台上でも女優を演じた岡田あがさの華のある演技に感動。立っているだけで絵になる女優だ。個性的な役を演じることが多い彼女が、今回はストレートな役どころをしっかりと演じた。

 探偵を演じた高見靖二と書店店長を演じた永山智啓もどこか憂いを含んで魅力的だった。全体的に重苦しいシーンが多い中、書店アルバイトあみを演じた松崎みゆきの明るくさわやかな演技が清涼剤のようだった。
飛龍伝2010―ラストプリンセス【作・演出 つかこうへい】

飛龍伝2010―ラストプリンセス【作・演出 つかこうへい】

松竹

新橋演舞場(東京都)

2010/02/03 (水) ~ 2010/02/21 (日)公演終了

満足度★★★★

やはり黒木メイサはただものではない!
演技も歌も踊りも、いずれも飛び抜けているわけではないが、しかし、そこに黒木メイサがいるだけで漂ってくるものがある。立ってるだけで絵になるし、動いているだけでかっこいい。

ネタバレBOX

一部が終了して、休憩が35分あることにびっくり。新橋演舞場では当たり前なんだろうけど・・・。
カラーボール野球、死ぬ気で。【御来場ありがとうございました。】

カラーボール野球、死ぬ気で。【御来場ありがとうございました。】

早稲田大学演劇倶楽部

早稲田大学学生会館(東京都)

2010/02/12 (金) ~ 2010/02/15 (月)公演終了

満足度★★★★

早慶戦のごとく熱く!
 エンクラ+てあとろ50’という早稲田演劇の本流に慶応から創像工房 in front ofが武者修行にやってきたというような公演。その結果、エンクラの流れをくみながら、どこかゴジゲンチックな熱さを持った面白い公演となった。

 作演は今回が初の奥村徹也。一回きりの演出だそうだが、それだけこの作品に賭ける情熱はすごく、高校の野球部を舞台にして熱い熱い男達のドラマを創り上げた。一見、ROOKIES(ルーキーズ)もどきだが、最後までヒーローになれない男達のプライドと劣等感が表裏一体となったような青春像を見事に表現している。

 役者では慶応から来た島田真吾、村上淳也がさすがに渾身の演技を見せた。エンクラ勢ではいのっち役の藤本大将と、マネージャー役の佐藤あい子がいい味を出していた。魅力的な役者に育ちつつある。将来が楽しみだ。

ネタバレBOX

 全ての役者が本当の体当たり演技、全身汗だく、傷だらけになりながら熱演していくさまは、まさにこれこそ高校野球だと感じた。野球部の部室を表す舞台がどんどん荒れていく。ワンステージが終わった後、次のステージへの準備がどれだけ大変かと思うが、そんなことおかまいなしに、1回ずつ全力投球していく姿がすがすがしい。

 また、役者にとってもこれほど体力を使う芝居はないだろう。1日2ステージをやることが、信じられないほどの熱演だ。若さとその裏返しの焦燥感、そのいらだちをこれだけストレートに見せてくれる芝居はなかなかない。役者全員にお疲れ様と言いたい。

 ただ、視力を失っていったのりちゃんがその後どうなったのかはとても気になる。そこだけはフォローをしてほしかった。
遠ざかるネバーランド

遠ざかるネバーランド

空想組曲

ザ・ポケット(東京都)

2010/02/10 (水) ~ 2010/02/14 (日)公演終了

満足度★★★★

すごい座組!
 すごい役者が揃っている。出てくる役者、出てくる役者が、皆魅力的でうまい。これだけの役者を揃えることが出来るというだけで、ほさかようの凄さがわかるし、またそれだけの役者の魅力をこの舞台でもしっかりと引き出しているところに、これまたほさかようの能力を感じる。

 物語はピーターパンをモチーフにして、・・・(ネタバレのため自粛)というまあありがちな(と言っては失礼だが)ストーリーなのだが、その見せ方がうまく、また台詞のひとつひとつが磨かれていて、物語がちゃちにならない。ここら辺お見事。

 ティンカーベルを演じた武藤晃子の達者な演技に感激。一度でフアンになった。僕の好きなホチキスの小玉久仁子はここでもホチキスの小玉久仁子だった。それもまたうれしくもあった。

ネタバレBOX

 ファンタジーそのもののピーターパン物語からスタートして、それが次第にブラックな雰囲気に変わり、そして最後には舞台は実際の学園に移る。ここら辺の展開は見事だが、ファンタジーの部分がやや冗長か。

 清水那保、中田顕史郎、奥田ワレタに関しては、全体にファンタジーのシーンの印象が強く、後半の陰影がややかすみ、あれだけの役者を使ったのにとちょっともったいなく思った。逆にルフィオ役の石黒圭一郎、ドンキー役の鶴町憲、フォガーテ役の尾崎宇内には、新しい魅力を感じた。また少年役の斉藤陽介は前半謎の人物、後半、好青年を見事に演じた。

 この座組で違う芝居をまた観たい。そう思わせるメンバーだった。
日曜日は父曜日

日曜日は父曜日

早稲田大学劇団木霊

劇団木霊アトリエ(東京都)

2010/02/12 (金) ~ 2010/02/14 (日)公演終了

満足度★★★★

場面転換が秀逸!
 最初は少しシュールな感じを受けたが、最後まで観ると家族の問題、恋人の問題、ホモセクシャルを含む青春の悩みなど、リアルで骨太なストレートプレイだった。まじめで深刻なストーリーとコミカルな部分のバランスが絶妙で、最後まで飽きるところがなく魅せられた。

 演出上は場面転換が見事で、ほとんど暗転がなく、舞台装置を役者が移動させながら(しかも台詞をしゃべりながら)次のシーンに移る。この変化が面白く、新しい演劇表現だと思った。

 そのほか、舞台に出ていない役者が周囲の壁に手を上げてスタンバイしているのだが、まるであやつり人形がそでに飾ってあり、そのあやつり人形が、出番になると息を吹き返していくようで面白かった。

 作演の木村謙太は言葉のリズム感がいい。山田太一や倉本聰のように何気ない会話がリズムになっていて、耳に心地よい。

 役者もそれぞれ魅力的だった。特に娘役の湯口光穂、マサル役の竜史、シゲオ役の遠藤貴之には将来性を感じた。

 荷物を預かってくれたり、膝掛けを用意してくれたり、抽選でTシャツプレゼントがあったり、観客サービスも満点だった。

ネタバレBOX

 ある日、母が娘になるというストーリー、よくある入れ替わりものかと思ったが、実はそう見せかけてリアルな家族問題をとりあげた作品だった。

 娘が走るシーンが映像とリアルで2回あったが、湯口光穂の走りっぷりが見事だった。全力で走る姿は、娘のそのときの気持ちと緊迫感を相乗効果で表現していた。しかもその後、ほとんど息が切れることなく台詞をしゃべっていた。意外と鍛えられているのだと感心した。
アイ・アム・マイ・オウン・ワイフ

アイ・アム・マイ・オウン・ワイフ

燐光群

吉祥寺シアター(東京都)

2010/02/06 (土) ~ 2010/02/16 (火)公演終了

満足度★★★★★

刺激的で前衛的だが、格調も高い。
 吉祥寺シアターの会場に入った瞬間からこのドラマに魅せられた。ネタバレなのでここでは書かないが、こんな吉祥寺シアターの使い方観たことがないという見事なものだった。作品はオフ・ブロードウェイからブロードウェイに駆け上り、ロングランのあげくトニー賞からピュリッツァー賞まで受賞してしまったという作品。そう聞けば観ないわけにはいかない。こういう海外の話題作を燐光群がしっかりと紹介してくれることは大変うれしい。絶対に日本ではお目にかかることの出来ない芝居だ。

 オリジナルでは一人芝居だったものを、なんと16人で演ずるといったところも、面白い。と言っても登場人物は40人以上いて、16人でも足りないくらいなのだが。

 台詞がとても詩的なのだ。一人の台詞を何人もの登場人物で分散してしゃべるのだが、それが実に美しいのだ。

古いレコードの音とともに、全編が美しく格調高い。

ネタバレBOX

 あたかも秘密バーのような、あるいは公開番組の会場のような雰囲気の作り。それにより、劇場全体が舞台になっているところが見事。舞台の中にもうひとつステージがあるというそんな感じ。客席にあるテーブルもテーブルの上の写真もひとつひとつが凝っている。そして、開場した瞬間から役者が席に案内してくれる。ここら辺も秘密バーをイメージしているのだろう。とても素敵だ。

 役者の服装にも注目したい。全員が同じ黒っぽい衣裳なのだが、上は男性ぽく、下はスカートで、主人公のゲイを象徴している。

 随所に刺激的な仕掛けがあり、今まで観たことのない芝居を観たような喜びを与えてくれる。海外の現代劇に興味のあるひとは必見だ。
センチメンタリ

センチメンタリ

monophonic orchestra

STスポット(神奈川県)

2010/02/05 (金) ~ 2010/02/11 (木)公演終了

満足度★★★★

須貝英、新ユニット旗揚げ公演の成功!
 人気劇団から中心的役者を集め、生きのいい若手俳優を加えて、メンバーを見ただけでわくわくする座組。それだけにそれぞれに見せ場を作ろうとして話が散漫にならないかと心配したのだが、余計な心配だった。作者はしっかりと描きたいテーマを持ち、そのメインのストーリーの元にけれん味のない作りだった。

 残念だったのは須貝英の出番が少なかったこと。佐藤佐吉最優秀主演男優賞を獲得してから初の舞台だったが、やはり演技に味がある。もっともっと見たかった。もちろん、西川、玉置、村上らも自分たちの劇団では見せないシリアスな演技ぶりでこれまた素敵だった。

 ちなみに、私が観た回は、制作の方が非常にていねいで会場前から非常に気持ちよく観ることが出来たということも付け加えておく。

ネタバレBOX

 何故、ユキは遺体を埋められたのか?その謎を解き明かす物語だが、その裏にはとても素敵な想いが込められていた。とてもロマンティックな物語である。

 また、木漏れ日のような照明がとても美しく、しかも時間の経過やその場の情感で微妙に変化をつけていた。とても素敵だった。
ハッピー☆ハッピーアイスクリーム

ハッピー☆ハッピーアイスクリーム

劇団東京ペンギン

THE GUIDE(東京都)

2010/02/05 (金) ~ 2010/02/07 (日)公演終了

満足度★★★

題名どおりの楽しさ。
 前半はばたばたとして、芝居が地についてない感じだったが、後半からどんどん面白くなっていき引き込まれた。アイスクリームが題材なだけに、とても甘い物語。スイートで素敵なファンタジーに仕上がった。

 役者はそれぞれ個性的で魅力的な役者がそろっている。ただ、練習不足か、連携がうまくいってない部分があり、役者の持ち味を生かしきれていない。それが残念。カスタード役の野澤太郎に将来性を感じる。素晴らしい原石だ。大化けする可能性あり。チョコレート役の山辺健介と、カズマ役の山本恭裕もいい味を出していた。その他の役者もみなコメディ役者として魅力を感じた。

 全体をコミカルな感じで彩りながら、根底には幼いころの友情を置き、愛と勇気と冒険の物語に仕上げた。

 会場が狭く、照明や装置もシンプルなものだったが、今回の芝居はもっと舞台美術や照明に凝った方が、よかったのではないか。そうすればもっともっと楽しめた気がする。次回公演がとても楽しみだ。

監視カメラが忘れたアリア

監視カメラが忘れたアリア

虚構の劇団

座・高円寺1(東京都)

2010/02/05 (金) ~ 2010/02/21 (日)公演終了

満足度★★★★★

さすがの鴻上演出!
 虚構の劇団の芝居は初期の第三舞台のようにとても新鮮でみずみずしい。テーマとしては「監視社会」という重いものなのに、それを二組の男女の恋愛物語にからめて、切ないけれども素敵な物語になっている。

 そして、鴻上尚史の演出は切れ味がいい。だから、決めの台詞、決めのシーンがかっこいいのだ。ここら辺やはりただものではない。

 そして、まず、役者陣がみんな美男美女だ。男はジュノンボーイを集めたようなイケメン、女はすぐにアイドルとして売り出せそうな美女ばかり。特に小野川晶、大久保綾乃がキラリと光っている。男優では長谷川寛太が、しっかりと笑いをとりながら、奥行きの深い演技をしていた。将来が楽しみだ。

ネタバレBOX

 前回の公演もそうだが、シンプルな舞台装置に映像を見事に使って、一瞬にして空間を違う空間にしている。

 だから、通常の凝った舞台美術よりはるかに空間に奥行きと広がりがある。特に渋谷の人混みと、その中を歩き回る登場人物がシンクロするところなど、見事である。

 何度でも観たくなる作品と言っておこう。
ゴージャスな雰囲気/めんどくさい人(千秋楽満員御礼で終了しました・感謝!御感想お待ちしています)

ゴージャスな雰囲気/めんどくさい人(千秋楽満員御礼で終了しました・感謝!御感想お待ちしています)

MU

OFF OFFシアター(東京都)

2010/02/03 (水) ~ 2010/02/14 (日)公演終了

満足度★★★★

初日とは思えない完成度。
 初日Aバージョンを観賞。

 ハセガワアユムの創作意欲には恐れ入る。最近はほとんど二本立てにしたり、二作品を交互に上演するというパターンだが、今回はなんと二本立てのそれぞれを3バージョンで上演するという。ということは全部で6つの作品を上演するということ。考えただけで恐ろしい。一体どんな練習をしたんだろうと考えると、ハセガワアユムは超人としか思えない。

 ゴージャスな雰囲気

 仕事疲れの私の体調のせいなのか、初日で完成度が低かったのか、こちらの作品にはなかなかついて行けなかった。ただ、火事のシーンからぐっと盛り上がり、ラストシーンはとても素敵だった。

 めんどくさい人

 どんどん引き込まれていった。こちらは初日とは思えない完成度。役者の魅力と演技力で決して明るくないテーマを、素敵なファンタジーに仕上げてくれた。お見事。

 星は「ゴージャス・・・」が3,「めんどくさい人」が5で、平均して4とした。

ネタバレBOX

 ハセガワアユムの作品はB級映画の匂いがする。古きよき時代のB級映画だ。人間の醜い部分、弱い部分をさらけ出しながら、見終わってみると、しっかりとファンタジーになっている。ただし、ハセガワ流ファンタジーは甘いファンタジーではなく、ほろ苦く、時に残酷なファンタジーだ。

 めんどくさい人ではそれが死んだ青い鳥に象徴される。メーテルリンクよろしく、この物語でも幸せの象徴として登場する青い鳥は、実は既に死んでいて、腐敗したまま冷蔵庫に保管されているのである。

 感性がやはり常人ではないと思われる。今年は映画を中心にやるそうだが、確かにハセガワアユムには映画がよく似合う。しかし、演劇の現場に戻ってきて、刺激的な舞台を見せ続けてほしいものだ。
幸せの歌をうたう犬ども【ご来場ありがとうございました!】

幸せの歌をうたう犬ども【ご来場ありがとうございました!】

DULL-COLORED POP

タイニイアリス(東京都)

2010/02/02 (火) ~ 2010/02/04 (木)公演終了

満足度★★★

二度と見られないかもしれない芝居。
 落語に三題噺というのがある。客席から三つのお題を出してもらって、そのお題を元にひとつの話を作るという企画である。それをもじると、今回の公演は十題噺。十人の役者のわがままな希望を聞いて、見事にひとつの芝居を作ったというところにまず意義がある。

 そして、その結果、それぞれが今までの舞台では見せなかったような新鮮な役どころを思い入れたっぷりに演じてくれた。それが何よりの収穫。そして、したたかな演出家の谷賢一は、今回の公演、お遊びのようなふりをしながら、さまざまな実験や仕掛けを用意している。

 ここで繰り広げられたことは、役者にとっても谷賢一自身にとってもこれからすごく役立つことだろう。

ネタバレBOX

 個人的にははじけた鈴木麻美が観られたことで満足。そして藤尾姦太郎が犬と串とはひと味違い、切ない男の芝居を哀しく切なくしっとりと演じていた。これも大収穫だ。

 それにしても登場人物、それぞれに見せ場がある。それを作っただけでも谷賢一はすごい
【ご来場ありがとうございました!】あのひとたちのリサイタル

【ご来場ありがとうございました!】あのひとたちのリサイタル

FUKAIPRODUCE羽衣

シアタートラム(東京都)

2010/01/30 (土) ~ 2010/01/31 (日)公演終了

満足度★★★★★

トラムを制した羽衣!
 シアタートラムが有望な若手劇団を発掘する企画シアタートラムネクスト・ジェネレーションvol2に選ばれての公演。いつもより一回り大きなステージだが、見事に使い切った。
今回も、作・演出・音楽・振付・美術を一手に担当する糸井幸之介、どれだけ才能があるのかとあらためて感心した。

 今年はこの後、東京芸術劇場で2週間の公演、その後、小さめの劇場で1カ月公演なども企画しているらしく、羽衣にとってまさに飛翔のきっかけになる年だが、そのスタートを切る公演として、劇団がいかにこの公演に賭けているかがひしひしと伝わってきた。間違いなく、今回の公演、FUKAIPRODUCE羽衣の代表作として評価されることだろう。

 役者では伊藤昌子、藤一平というベテラン勢が光った。伊藤昌子の体を張ったコミカルな動きと、藤一平の哀切たっぷりのセリフの確かさ(そして声がいい)、それに二人とも歌がうまいのだ。

 鯉和鮎美の演技は相変わらずかわいらしく、この劇団のかわいさ部門を一手に引き受けているが、声はハスキーで(セクシーで)そちらにもしびれた。また召田実子の軽快な動きも新鮮で素敵だった。なかなかあの動きは出来ない。貴重な役者だ。

 シアタートラムに立ち見まで出るほどの活況。前説にさえ拍手がわくほどの盛り上がりで、終始観客を味方につけていた。二日で終わってしまうのがもったいないくらいだ。

ネタバレBOX

 物語は暗闇の中からスタートする。この暗闇意外と長いのだが、とても想像力をかきたてられる。そして最初に舞台上に明かりが当たったとき、夜明けのようにステージが光り輝いてみえた。

 舞台は芸術家のアトリエからスタートする。舞台装置の全てが今回アートであり、背景で糸井が書き続けることも、また日高啓介が走り続けることさえ、アートであると感じた。そして、春夏秋冬、人間の生死、戦争と平和、そして芸術論に至るまで、象徴的に展開される。糸井幸之介のセリフは全編詩であり、それゆえ、繰り返しが多用され、繰り返しのリズムの中で心地よくこちらの胸に突き刺さってくる。

 前回の羽衣の芝居を私はシャーマニズムであり、豊穣の祭りだと感じたが、今回は神話だと思った。今回繰り広げられたのは、古事記や日本書紀のような神々の物語ではないのか。そう思った瞬間、糸井幸之介が愛の営みにこだわる理由がわかったような気がした。それはまさに神話そのものだからだ。

 舞台が広いためか、暗転にやや時間がかかった。それだけが気になった。それと、私の好きな役者高橋義和の活躍の場が少なかったような・・・。
それ以外は満足。
ゆらぎり【脚本:成島秀和(こゆび侍)×演出:古川貴義(箱庭円舞曲)】

ゆらぎり【脚本:成島秀和(こゆび侍)×演出:古川貴義(箱庭円舞曲)】

FOSSETTE×feblabo×エビス駅前バー

エビス駅前バー(東京都)

2010/01/22 (金) ~ 2010/01/28 (木)公演終了

満足度★★★★

最高の贅沢!
 会場が狭いこと、そして当然のこと舞台が狭いこと、それらがマイナスにならないばかりか、逆にとてつもない魅力になることをこの劇場は思いしらせてくれる。狭い空間に満員の人、足を伸ばす事もできず、隣の人と肩がぶつかってしまう。こういうとき、体が大きいのは損だ。そして固い座り心地の悪い椅子。そういった悪条件も、そこに素晴らしい役者がいて、素晴らしい芝居があれば、最高の空間になってしまう。まさに芝居の魔力だ。

 役者の息遣いが聞こえる。ふとついた役者のため息さえ、しっかりと捉えられる。なんという贅沢。成島秀和の作品を古川貴義が演出する。なんという贅沢。そして各劇団からいい男といい女を集めたような座組。なんという贅沢。

 成島秀和の戯曲は愛しあう男女が微妙にすれ違っていくさまを見事に表現し、恵比寿駅前バーをうまく活かして、バーのカウンターで隣のテーブルの会話を盗み聞きしているようなそんなゾクゾク感を与えてくれる。そして古川貴義の演出は、これまた狭い空間を見事に活かし、二人の会話が突然、違う組み合わせに変わっていくという素敵な仕掛けを用意した。いい演出家は、舞台の狭ささえ、長所に変えてしまうのだ。お見事。

ネタバレBOX

 役者では、二人の女性の心を弄び、それがゆえに転落していく男性を澤田慎司が好演。持ち味の誰にも好かれる性格の良さを逆手にとり、それゆえ、他人から嫉妬され、落とし穴に陥ってしまう男を見事に演じた。莉奈役の望月綾乃はロロの役者で前回の公演で気になっていた女優。早くもベテラン俳優を相手に一歩も引けをとらぬ演技ぶり。将来が楽しみだ。エステエリザベスの社長貴島荒太を演じた和知龍範は典型的な二枚目、いつか彼を主役にして、影のある二枚目をたっぷりと見せてくれないかなあと思わせる俳優。

 客席の一番前の列で見た。役者と役者の間隔より役者に近かったりする。思わず自分が舞台に立っているような緊張感を感じた。素敵な経験だ。
ロング・ミニッツ-The loop of 7 minutes-

ロング・ミニッツ-The loop of 7 minutes-

FOSSETTE×feblabo×エビス駅前バー

エビス駅前バー(東京都)

2010/01/22 (金) ~ 2010/01/28 (木)公演終了

満足度★★★★

ストーリーの面白さと役者の魅力を堪能!
 昨年、同じく恵比寿駅前バーで上演して好評を得た名作を、今度は池田プロデューサー自らが演出をして、ひと味違う舞台に仕上げてみせてくれた。

 前作がシリアスなSFミステリーだったのに対し、今回はエンターテイメント的味付けのされたミステリー。同じシーンの繰り返しというこの劇の面白さであり難しさであるところを、個性豊かな役者を揃えて、わかりやすく楽しめる作品に仕上げた。場面転換の音楽の使い方など絶妙。

 役者では酒巻誉洋が難しい桐野役を自分のものにしていた。編集者役の乙黒史誠は汗をしたたらせての熱演。桐野に対する友情と期待が見事に表現され、愛すべき友人役を好演していた。バーの客役の今城文恵は私の好きな女優だ。不思議な色気と、独特なな影を持っている。今回の役ははまり役。ただし、出ずっぱりでありながら活躍するのはラスト近くになってから。もっとたっぷりと活躍を見たかった。

ネタバレBOX

 同じシーンの繰り返しの中で、少しずつ変化し、その少しずつの変化の中で最初は妻と友人の浮気疑惑からスタートし、いつしか山手線連続殺人事件に焦点が移り、そしてその犯人を突き止めるところまで持っていく作者の筆力をあらためて感心。昨年のルデコでのDart'sの公演とあわせて、ミステリー作家桐野範容シリーズといったところ。第三弾が期待される。
スーパースター

スーパースター

劇団鹿殺し

青山円形劇場(東京都)

2010/01/21 (木) ~ 2010/01/28 (木)公演終了

満足度★★★★★

人生の素敵な応援ミュージカル!
 全編を流れる郷愁。何から何まで懐かしい。そして子供のころのあこがれのヒーロー。そう、子供のころのヒーローは永遠だ。

 売れない漫画家が劣等感を感じながらも、ただひとり自分を愛してくれた今は亡き母親への思いを込めて、今や壊されそうとする公団アパートを守ろうとして闘う。昔から落ちこぼれで、才能のかけらもなく、劣等感の塊だが、でも昔の思い出は光輝いている。そして思い出の中にはいつもヒーローがいた。

 登場人物は皆ブザマで不格好だが、愛すべき奴ばかり。観ているだけで勇気が湧いてくる。そして人生の応援歌。観終わった後、いろいろ人生つらいこともあるけど、でももう少し頑張ろうという気持にさせてくれる。

 音楽も素敵だ。そして、菜月チョビの声がとても魅力的だ。ノスタルジックなミュージカルを堪能させてもらった。

ネタバレBOX

 バスケのシーン、ピカイチのはなったシュートは入らず、ボクシングのシーン、我らがヒーロー、ブッチャーは倒されてしまう。しかし、それでもめげずに、何度でも挑戦すればいいじゃないかというメッセージがとても素敵だ。

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