錦繍 KINSHU
ホリプロ
天王洲 銀河劇場(東京都)
2009/11/04 (水) ~ 2009/11/13 (金)公演終了
満足度★★★★★
手紙のやり取りで味わい深い男女の人間模様。「生きていることと死んでいることは同じことかもしれない」
再演です。初演も観ました。
男女で交互に手紙を読み合いながら進行していく芝居の形式と
垂れ幕と机といすくらいしかない舞台セット
俳優とともに舞台上で生演奏する尺八のみよる音楽など
特徴のある、しかしシンプルな様式で演じられる
男女の大人の人間模様の機微が味わい深く、
3時間を越えるのに長さをまったく感じさせません。
鹿賀丈史さんは初演のとき、ちょっとミュージカルのような
台詞回しが気になった記憶があるのですが、今回は非常に
自然で静かな演技。
気になる女優さんの一人、小島聖さんは、落ち着いた
しっかりとした演技に驚きました。
これまで見た作品ではもっとも大人で、存在感のある役でした。
年齢的に鹿賀さんと釣り合わないのでは?という心配は、
不要でした。
そして中村ゆりさんの少し細身で妖しい美しさ、
特に女学生のときに、男に強烈な印象を焼き付けたときの
若い魔性の美しさが印象的でした。
初演時には、馬淵英俚可さんも妖艶に演じられ、その魅力に
それ以来、出演作はできるだけ観るようにしてます!
「生きていることと死んでいることは同じことかもしれない」
この言葉も、深く難しく。
けれども不思議な面白さがあり、
観るたびに違った感じ方が味わえる舞台です。
ピチチ5プロデュース「サボテンとバントライン」
こどもの城 青山円形劇場/ネルケプランニング
青山円形劇場(東京都)
2009/10/30 (金) ~ 2009/11/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
初主演:要潤!映研で自主映画,映画マニア,イタイ高校生活…大人になっても続く,うっ屈した青春!
要潤の初主演作!
平成仮面ライダー出演のイケメン俳優さんたちの一人です。
開演前の客入れのときのBGMが「真夜中のカーボーイ」の主題歌と、
劇中「テレビのブラウン管に『ウルトラマン』のスカイドンが映る
シーンの音楽」などが流れる。
わかる人にはわかる有名なシーン・・・。
この選曲が、今回の芝居を象徴してます。
<IMG SRC="http://image.space.rakuten.co.jp/lg01/91/0000415091/43/img2ba419cczik6zj.jpeg" width="240" height="400" alt="091107_122706.jpgサボテンとバントライン">
イケてない、モテない連中の集う映画研究会。
8ミリでマカロニウェスタンの自主映画
『サボテンとバントライン』を撮っていたイタイイタイ高校生活。
ダイナマイトを片手に片っ端から爆破する、
孤独な荒野のガンマンの話だ。
いじめられっ子の転校生は、今経験している屈辱がつらいほど、
そのトラウマが大きいほど、将来のエネルギーになるという。
ある日突然、クラスのマドンナを主演に迎え、一転して楽しい
日々が訪れた。だが、それは長くは続くことは無く…。
『中途半端に、楽しませないでくれよ!』
大きな挫折を味わい、
偶然の出会いからビデオレンタル店でアルバイト。
そして、毎日タダでビデオで映画を観ながらアルバイトが続く、
怠惰な毎日の中、あっという間に10年以上が過ぎ、30代。
そのビデオ屋も大手全国チェーンのTSU○○○○に負けてつぶれた。
いまだにVHSしかなかったのだから当たり前だ・・・。
しかも、いまだにアルバイト。
しかも、次のバイト先に選んだのがそのTSU○○○○だという
念の入れよう。
そしてついに、クラスのマドンナや、高校の同級生たちとの
再会のとき、ある衝撃的な結末を迎える。
映研、自主映画、映画マニア、もてない高校生活・・・
「真夜中のカーボーイ」、アメリカンニューシネマ・・・
イタイイタイ・・・見事に私のツボです。
おそらく今の『映画秘宝』読者は皆同じではないか。
要潤(カナジュンとは言わないか?)さん、
初主演が、映画マニアのさえない高校生→30歳アルバイター、
小劇場小劇団への出演というのが意外。
この先も応援したくなります。
そして、キングオブコメディでは普通に「キモいボケ」
を担当している今野さんですが、
この芝居では今野さんの持つ「毒」が強烈で効いています。
印獣
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2009/10/13 (火) ~ 2009/11/08 (日)公演終了
満足度★★★
今流行の,作:宮藤官九郎+演出:河原雅彦+出演:三田佳子+三銃士の顔合わせが見物.でももっとイケたはず!
今流行の,作:宮藤官九郎+演出:河原雅彦+出演:三田佳子+三銃士・生瀬勝久・池田成志・古田新太の組み合わせが実現するのがすごい。
なかなか見物でした。
ミステリー長の話の進行もいい。
が、これだけそろえれば、面白くならないわけがない・・・ので、この程度楽しめるのは普通かも?
もっとイケたはず!
それよりも、三田さんがこれまでにはやったことがないだろう扮装や役、たとえば、ヒーロー物の怪人やコントのようなランドセル小学生を演じるとき、「有名な大女優がこんなことしてるのが面白いでしょう」感が、わかってしまって、素直に楽しめない感じがしました。
最近こういうの多くないでしょうか。
ひねくれ物なのか、見る目がないのか・・・。
ガス人間第1号
東宝
シアタークリエ(東京都)
2009/10/03 (土) ~ 2009/10/31 (土)公演終了
満足度★★★★★
超傑作SFモダンホラー・ラブストーリー誕生!後藤ひろひと氏は真面目な東宝特撮映画マニアだった。
後藤氏の舞台はいずれも劇団piperでの「ひーはー」「恐竜と隣人のポルカ」
しか観ておらず、そして【お笑い芸人を配した】キャスティングに、
かなり心配でしたが、実際は…【素晴らしい出来でした!】感激です!
異形の者と孤独な歌手の悲恋・純愛物語として、最高の完成度です。
映画版のテーマをより「純化させている」ともいえます。
その意味では「ガス人間第一号」というそっけないタイトルに、物悲しい特別の意味を感じてしまう。
これだけある意味誰よりも人間的なのに、実験対象の名称が。
また、SFモダン・ホラーでも犯罪ものとしても楽しめる。
そのまま舞台となる劇場を、実際の客席ごと演技空間にしたのもうまい。
(唯一、唯一ラストはもっと盛り上げてほしかった気はしますが。)
映画当時のノスタルジーに頼らず、現代の日本の話である点もいい。
映画では能狂言だったのを、ポップスにしたのも正解。
時代に合わせるとこの方がよりしっくりときます。
そして問題の、ガス人間の特殊効果が巧み!
体からまさに噴出すガスの表現は、決してドライアイスや
普通のスモークではない、最高の効果。
そして、ガス人間からほかの人間に対して、腕から
「ガスのリング」(ぜんじろうの実験の空気砲に似てる)を発射、
それが当たった人間(役者)が、体から煙を出して苦しむという表現が見事!
俳優さんたちもよかった!
特に中村中さんの存在感が光ってます。
音楽も中村中さんが担当、都会波ミステリー+ホラーの雰囲気。
映画版の宮内國郎氏に似たフレーズも聴かせてくれました。
高橋一生さんは静かな愛情を表現、クライマックスでは「体形も崩れていくような」様子は、まさに異形の者の演技で見事でした。
また、重く暗くなりすぎない中山エミリさんの配役。
伊原剛志さんの、劇中の登場人物の物まねがとても可笑しい。
飄々としながらも的確に話を進めていくポジションとして、普通の部分をちゃんと進める枠組みは非常に重要です。
そして、三谷昇さん!いつもは怪演が多いのですが、今回は名演というのがふさわしいと思う。
水野久美さんは出番少な目でしたが、やっぱり只者ではない役で!
何より意外だったのは、南海キャンディーズの山チャンのコメディ演技が、とっても笑えて良かったことです。
違和感がなくなじんでました。後藤さんのキャスティングの妙でしょうか。
(ただし水野さんのほうは予想通りか…)
(悠木千帆さんは、樹木希林さんの名前を買った人から名前を譲ってもらったという…。)
後藤ひろひと氏は真面目な東宝特撮映画マニアだった!
先ほどのBGMだけでなく、本編にも【適度に】(これが最も難しい。センスが問われる!)
リスペクトがあり、東宝特撮映画を本当に愛しているのだなと。
翻案劇 サロメ
アトリエ・ダンカン
東京グローブ座(東京都)
2009/10/19 (月) ~ 2009/10/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
現代の女方:篠井英介×演出:鈴木勝秀 三部作最終作は新スタートの予告編!和の世界観で翻案,舞踏も交えた意欲作.
現代の女方・篠井英介さんも50歳を越え、スズカツさん
との共作シリーズ三部作も「欲望という名の電車」
「サド公爵夫人」に続き本作で一応ひと区切り。
この3作の前の「トーチソングトリロジー」で篠井さんに
魅せられて以来、本作を含めて4作とも全部観れました。
パンフの対談では、この先も続きそうで、ひと安心です。
(ただ来年は、ひと休みらしいです)
篠井英介さんのセリフ回しや舞踊が美しく、知らず知らず
に惹きつけられました。
また、上條恒彦さん、江波杏子さんを王と妃に迎えたのは
大正解。
お二人のしっかりとした演技の支えがあってこそ、
和風の本案や、篠井さんの女方と日舞、森山開次さんの
創作舞踊などが際立つというものです。
邦楽の生演奏や、和と洋のテイストの衣装なども
素晴らしかった。
篠井さんは、仲間由紀恵さん主演の新ドラマシリーズ
「アンタッチャブル」第一回でも新興宗教の教祖役で
怪しいキャラを発揮されてました。
年齢的には分岐点の時期でもありますが、作品や役に
対する姿勢や、カーテンコールでいつも垣間見れる
謙虚さ優しさもひっくるめて大好きな役者さんで、
今後の活躍にも期待します。
組曲虐殺
こまつ座
天王洲 銀河劇場(東京都)
2009/10/03 (土) ~ 2009/10/25 (日)公演終了
満足度★★★★
重い重い虐殺の現実より,日常の普通の人として小林多喜二を音楽劇として描き,より冷酷な事実を浮き彫りにする.
私は不勉強でお恥ずかしいのですが、小林多喜二は
「蟹工船」の著者であるということしか知りません
でした。
今回、この芝居で「虐殺」の事実を知りました。
同様の観客はかなりいたのではないかと思います。
劇は、井上ひさしさんらしい音楽劇であり、
悲劇よりは喜劇として描かれています。
「虐殺」の事実は、劇中では短くセリフで語られた
だけで、その酷い事実だけではなく、彼らにも
その時代の普通の生活があって、笑いも涙もある
日々を送っていたことに重きを置いた作品です。
井上ひさしさんは今回も全身全霊で書き上げた、
その揺るぎのない作品世界には圧倒されます。
パンフレットには、セリフの内容よりも
もっと残酷な拷問の跡があったことが載っており、
その写真も一部掲載されています。
(いつもながら、こまつ座のパンフレットの詳細な記録・
記事の充実ぶりには感心します。)
ミュージカルスターとして知られる井上芳雄さん
の歌はさすがに聴かせますが、
上手くなりすぎないように
歌いあげないように配慮しているようで、
通常のイメージにある歴史上の人物ではなく、
ひとりの人間としての演技が光っていました。
ほぼ弾きっぱなし?の印象がある小曽根さんによる
ピアノの生演奏も素晴らしく、
つらい過去を抱えて耐える石原さとみさん、
元気でたくましい高畑淳子さん、
凄みに温かさを漂わせる山本龍二さん、
コミカルが魅力の山崎 一さん、
必死に多喜二を支える神野三鈴さん、
と出演者の方々の競演も見ごたえがありました。
屋根の上のヴァイオリン弾き
東宝
日生劇場(東京都)
2009/10/05 (月) ~ 2009/10/29 (木)公演終了
満足度★★★★
「陽は昇り,陽は沈み,時は過ぎ…」何気ない日々の営みに幸せがある.
「サンライズサンセット」陽は昇り,陽は沈み,時は過ぎ…
毎日の普通の生活に根付いて、昔から繰り返された
「しきたり」も時を経て若者たちから変わっていく。
娘たちの結婚と旅立ち、家族の日常の営み、
そしてそのような小さな一人ひとりの小さな幸せも、
大きな理不尽な流れに押し流されてしまう。
それでも家族はたくましく生きる。
足元が危なくても軽やかに音楽を奏でる
「屋根の上のヴァイオリン弾き」のように。
やっぱり生オーケストラはいい!
オープニングの「しきたり」の歌や、
有名な「サンライズ・サンセット」が感動的。
(個人的には最後にもう一回「サンライズ~」で
盛り上がって終わるかと思ってたのですが、
わりとあっさりおわりました…)
「陽は昇り陽は沈み時は過ぎ…」という日本語詩を
どこかで見て覚えています。
そして話自体は、おそらくテレビで映画を見た記憶
があります。
そのときは深くは考えませんでしたが、
実はロシアによるユダヤ人の迫害・追放という
シリアスな背景があったのだと、今、改めて知りました。
結婚式の踊りや歌の陽気さが、その苛酷な現実と対比
してより一層際立ちます。
市村デヴィエは、市村さん自身のコミカルさ優しさを
前面に押し出したキャラクターになっていました。
「しきたり」を大事にしながらもかわいい娘たちに
押し切られてしまう優しい父親像がとっても微笑ましい。
他にも芸達者揃いのキャスティングですが、その中では
逆に、末っ子平田愛咲さんの輝きと、三姉妹の下の2人
の無邪気さが記憶に残りました。
(真島さんはカーテンコールまでどこに出てたか
わからなかった…ごめんなさい)
ライトフライト ~帰りたい奴ら~
TEAM NACS
サンシャイン劇場(東京都)
2009/10/16 (金) ~ 2009/10/25 (日)公演終了
満足度★★★
小松彩夏ちゃん目当てで。戸次さんが書いた何でも有りのコメディを軽く楽しむ。
チラシでは出演者全員が旅客機の乗員やCAの制服姿でしたが、実際は違う配役、それはよくあることですが。
NASA(この名前がナメてていい^^。ニューアサヒスカイエアラインの略)の初フライト便が遭遇する時空を超えた冒険物語。
オカマのCA、リハビリ中の猫好き機長、宝塚風の副機長、BJ風歯医者、コスプレオタク、漫画家と編集者の夫婦、危ない服装の外人…。
怪しい乗員・乗客を乗せた旅客機にさらに新たな訪問者が現れ、旅客機は宇宙船に変身!時間を超えた彼らは無事帰ることができるのか。
次々にいろんなことが起きるドタバタコメディ。
かなりベタな展開が多いのですが、そこは軽く面白がって楽しむしかない。
チラシでは川原亜矢子さんのCA姿から「CAとお呼び」みたいですが、実際は乗客の漫画家役。
終始、喋りまくりのコメディ演技が良く合っていて、観てて気持ちいいくらい。
夫役の六角さんもセリフが多く、アリキリの石井正則さんにそっくりの演技に見えてしまいます。
小松ちゃんはてっきりCA役かと思いきやコスプレマニアで、メイド、勇者?、看護婦、甲冑姿と服装に合わせてキャラも早変わり。
オカマCA役の福島さんは芸達者。
宝塚男役風副機長の蘭香さんも宝塚OGなので、そのままのイメージでオーバーアクト、歌も披露と大活躍。
みんな戸次さんのあて書きなのがわかります。
世田谷カフカ
ナイロン100℃
本多劇場(東京都)
2009/09/28 (月) ~ 2009/10/12 (月)公演終了
満足度★★★
カフカの不条理な世界感を、断片的だが所々つながるエピソードとキャラクターで表現。
今度はカフカの世界です。
ナイロンやケラさんの最近の作品のようなストーリー性重視、感情移入に重心を置かない作風。
いくつものパートに分かれた構成は、ダンスあり、楽器演奏あり、バラエティに富んだ内容です。
これは、それぞれのシーンをただ楽しむ作品、率直に感じるための作品だと思いました。
冒頭、村岡さんら3名の俳優さんたちの、おそらく実体験を語るシーンから始まります。
その後場面は次々にかわり、短いエピソードが続きますが、先ほどの俳優さんたちの経験からでてきたエピソードや人物と、それに加えてカフカの小説の物語や登場人物たちが、
各パートにまたがって交錯して出て来たりしながら進行していきます。
それぞれは断片的に見えても、それまでに登場したキャラクターが出てきたり、部分的には話がつながっていたりする不思議な構成は、そのまま、カフカの不条理な世界感を表現しています。
特に【おっ!】と思ったのは、ハンディのビデオカメラを舞台上に持ち込んで、その場で撮影し客席に向けてスクリーンに投影する手法。
ペットボトルなどで作った人形でのテキトーな遊びを撮影し、その場でリアルタイムで、舞台上のスクリーンに映しだし、観客が観る。
その流れが、あらかじめ撮った映像に一瞬で切り替えて差し替えるのが面白かったです。
蛮幽鬼(ばんゆうき)
松竹
新橋演舞場(東京都)
2009/09/30 (水) ~ 2009/10/27 (火)公演終了
満足度★★★★
“いのうえ歌舞伎”版「岩窟王」,カッコイイ殺陣,復讐劇・恋愛悲劇。
今回は「岩窟王」の翻案ものです。
謀略のため無実の罪で投獄された主人公の復讐の物語。
運命に翻弄される上川さんと稲森さんの愛が哀しい。
やはり主演の上川さんは、本作もやさしい雰囲気が役にも反映されてます。
稲森さんは、衣装も含めて美しく、最初は可憐に最後はたくましい姿がいい。
堺さんは、復讐に加勢する、終始にこやかに悪事を企む謎の男を好演。
いやぁほんとに憎まれ役です。
また、聖子さんはカタコトの日本語を話す王女様役が可笑しい。
主人公に慕いながらも報われない…最近こういう役が多い気がします。
そしてとにかく良かったのが、美しくて派手な”殺陣”です。
剣を横方向に綺麗にくるくると振るかたちが、動きが大きくてカッコイイ。
中でももちろん、早乙女太一くんのカッコよさはピカイチです。
コースト・オブ・ユートピア-ユートピアの岸へ
Bunkamura
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2009/09/12 (土) ~ 2009/10/04 (日)公演終了
満足度★★★★★
9時間の大作!渋谷で今ロシア思想家の芝居を打つ意味。
蜷川さん、今度は9時間に及ぶ大作です!
通し券で三部作を一気に観ました。
12時開演、終わったら22時20分、こんなの初めてですが、
こういうイベント性が高いのも楽しいですね。
舞台は、囲み舞台。
開演前のお客さん入れの時間から、舞台上には
出演俳優さんが稽古着姿で並び、
長めの会議テーブルを囲んで談笑…。
本読みでも始まりそうな稽古場風光景。
ほんの目前に、大物さんたちが大挙して並ぶ様は圧巻です。
しかし、開演と同時に、
舞台の周りを瞬く間に紗のかかった半透明のカーテンが覆い、
現代の街の雑踏の音が大きくなり、出演者はカーテンの中で
衣装をつけ、道具も設置されて、次の瞬間、舞台上は
一気に1833年のロシアに飛ぶ。
この展開、この演出にまず驚かされました。さすがです。
蜷川さんはよく、この渋谷で若者たちのいるど真ん中で
芝居をする意味を話されてるので、現代と歴史を結ぶ
演出を常に考えられているのだと思います。
そして、渋谷で今、ロシアの思想家たちの長時間に及ぶ
芝居を打つという意味を考えさせられます。
メインの話は、阿部さん演じる思想家と勝村さんの革命家
を中心に集まるロシアの現代・未来を憂う人々。
名門貴族の家族、革命家、詩人、哲学者、評論家たちが
海外へと転々とし祖国を案じながらも、それぞれの人生を
生きるまさしく大河ドラマのよう。
特に阿部さんのパワーは圧巻です。
しかし、私としては、文芸評論家ベリンスキーを演じた
池内博之さんの貧しく不器用ながらも、必死に自分の考え
を説き生き抜く姿が素晴らしかった!
また1部、家族、兄弟姉妹もその思想に影響されながら、
時にはかわいらしく夢見て、時には必死に生きる姿も心に残ります。
彼らの人生の様々な逸話やその年月の流れは、
まさに長編でしか味わえない。
何度も休憩があり席に戻ると同じ世界に浸れる、
何度も舞台上の世界に帰ってくるような感覚。
俳優と観客が、足掛け10時間以上も劇場内で同じ時間を
共有する楽しさを十二分に堪能しました。
ジェーン・エア
松竹
日生劇場(東京都)
2009/09/02 (水) ~ 2009/09/29 (火)公演終了
満足度★★★★★
松たか子凄し!ジェーン・エア波乱に満ちた純愛物語.ケアード演出は日本にぴったり.次はいよいよレミゼだ!
やっぱり生演奏のミュージカルはいいです。
まず、舞台上、左右にも観客席があるのが目に入ります。
舞台の奥には大きな木があって、シンプルで美しい風景が作らていて、とても奥行きがあります。
オーケストラ・ピットは舞台奥下にあり、舞台上の席からしか見えないのが少し残念ですが、その分手前まで舞台がせり出している感じで、俳優さんたちが間近に感じます。
生まれてすぐ両親を失ったジェーン・エアの波乱に満ちた純愛物語。
身分差別など時代背景が、多分にキリスト教が色濃く反映されている話です。
松たか子の歌はうまく、また心の揺れ動く様子の演技も良かったです。
主人公は、原作では「美しくない」ことになっていて、セリフにも「美しくない」とあるのですが、松さんが演じるとやはり美しく、その矛盾?は気になります。
しかし、パンフでは作者自身が「自分を美しくはないと思い込んでいた」というくだりがあり、そのせいだと勝手に納得しました。
そして、10歳のジェーンと教え子アデールの女の子の子役2人が、また上手い。
(特に後者)
芝居全体の雰囲気を大きく変えていて、非常に重要な役回りだと思いました。
なお、本作も「レミゼ」のケアードの演出によるもの。
リニューアル版としての初演ということですが、ケアードは本当に日本風にあっていると思います。
さて、いよいよ今度は「レミゼ」です!
サッちゃんの明日【松尾スズキ新作!】
大人計画
シアタートラム(東京都)
2009/09/18 (金) ~ 2009/10/11 (日)公演終了
満足度★★
松尾版・朝の連続ドラマ小説!覚悟はしてましたが、結構エグい。下ネタはまだしも汚いのは苦手でして。
松尾版(大人計画版)朝の連続ドラマ小説!
初大人計画です。
覚悟はしてましたが、結構エグい。
下ネタはまだしも汚いのは苦手でして。
ネジと紙幣
ホリプロ
天王洲 銀河劇場(東京都)
2009/09/17 (木) ~ 2009/09/27 (日)公演終了
満足度★★★★
最も注目の出演者は、実は、江口のりこさん!結末に至る「過程」を味わう倉持裕さんの翻案。
元が「女殺油地獄」なので結末が暗くなることは織り込み済み。
そこに至るまでの「過程」が見どころです。
良い悪いでは割り切れない人々のそれぞれの心情が描かれます。
今回、特にすごいと思ったのが、ともさか演じる妻と夫の会話です。
気を遣いすぎたりする夫婦間の気持ちと、言葉のすれ違いがリアルでドキッとしました。
どちらが悪くもなく、むしろ気にかけているのにすれ違ってしまう…非常に哀しい。
最も注目の出演者は、実は、江口のりこさんです。
今回は、ちょっと外した?キャバ嬢役。
外した感じと、すれた感じが良かったです。
もっと長い出番でじっくり見たい面白い役者さんです。
意外やストレートプレイ初出演・森山未來さんのダメ男ぶりが哀しい。
ともさかりえさんは幼馴染みとの距離感や、家庭内で気を遣う主婦の微妙な心の変化を演じる難しい役に挑戦。
田口浩正さんはシリアスな演技が絶対光ってる!それも日常の場面でのコミカルで弱気なキャラクターづくりがあってこそ、怒りの部分が強調されるよう。
満島ひかりさんは、私にとっては今でもウルトラマンマックスのエリーですが、主人公に通じる暗く重い部分を抱えてました。
根岸季衣さんは、ストーブに手を着くネタで手が届かなくてタイミングをはずしてましたが…演技はさすがです。
ザ・ダイバー 日本バージョン【9/20千秋楽】
東京芸術劇場
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2009/08/20 (木) ~ 2009/09/20 (日)公演終了
満足度★★★★★
まったく違う4人の絶妙なカラーと、かけ合い。濃密で充実した最高に贅沢な時間!
この実力派4人の出演者で、小ホール公演という間近で特別な空間。
「野田秀樹芸術監督就任記念プログラム」だから実現できたのか?
能、源氏物語を題材に、多重人格者?容疑者の深層心理と犯罪の記憶の海に漂う物語。
難解な物語の展開に、観客は「考えること」を要求される。
非常に密度の濃い、最高に贅沢な時間でした。
まったく違う4人の絶妙なカラーと、かけ合いが見どころ。
大竹しのぶさんの変幻自在な演技。
いっけいさんはテレビショー司会でノリ全開!
刑事役ではカタブツで古いタイプ。
北村さんは、ひたすら渋く地味にしっかりと押さえた演技。
野田さんも徹底して飾りのないストレートな精神分析医。
すべてが、大竹しのぶさんを最大限に立てる、最大限に演技
を引き出せるように展開されているように感じました。
それにしても、近年立て続けに舞台に出演し続けている
大竹しのぶさんのパワーに脱帽です。
パンフレットの座談会も最高に面白いです。
しかもパンフレット安い!
悪趣味
柿喰う客
シアタートラム(東京都)
2009/09/04 (金) ~ 2009/09/13 (日)公演終了
満足度★★★★★
初柿喰う客。超B級アダルトXオカルトXサスペンス!!勢い、悪ノリ、ギャグ、コント、アドリブ、てんこ盛り!
初めて見る劇団「柿喰う客」です。
Jホラー好きとして、今回の「悪趣味」の
チラシの「怖さ」不気味さに惹かれての鑑賞。
まず舞台上は、村はずれのさびれた神社の鳥居、
井戸、などいかにも怖い。
そしてお客入れ時のBGMも、悲鳴、足音、赤ん坊の
泣き声などおどろおどろしい効果音で開演前から
雰囲気満点。
開演前のアナウンスも電波が乱れて途切れるという
念の入れよう。
チラシのイメージもあって結構普通の芝居か?
と思いきや…。
始まると、役者はみなハイテンションで客席に
向かって叫ぶ、キャラクターの演技も衣装も
デフォルメされている、ギャグや下ネタも時々交えて。
そして、休憩なしと言いながら、突然前編の終了、
数秒の休憩時間、再開するとミニコントコーナー…
なるほどこういう劇団だったか!
ある意味私の「小劇団」のイメージです。
村の狐伝説を調べにきた学者と女子大生、
男優が女装した自殺願望OL、
ナタをふりまわす女子高生、時々発作を起こす
不気味な母親と家族たち、
ゾンビの村長、「車椅子のコスプレ」の長老老婆、
ジェイソン風、メガネのメイド、ゲイの家庭教師、
飼い犬、河童…出演俳優は26人。
ホラー的なあらゆる要素をぶち込んだごった煮状態は、
多少ありがちな遊びが目立たなくもないですが…。
私のツボは、片桐はづき嬢。
ぼたん丸が実にキュート。
あの棒演技と、せりふとびリピートに大受けでした。
演劇集団キャラメルボックスの渡邊安理さんの客演にびっくり。
普段と違う面を楽しみました。
最後に代表の挨拶、
「ひたすら自分たちの好きなことだけをやるので、
好きなお客さんは観に来てください」という
言葉には納得。
スタンスがはっきりしていて気持ちいい。(^^)
シリアスなホラー劇も観たくなりました。
思いっきり怖いやつ。
「柿喰う客」の次回公演も観たくなりました。
さよならノーチラス号
演劇集団キャラメルボックス
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2009/08/27 (木) ~ 2009/09/13 (日)公演終了
満足度★★★★★
サブリナ最高。小学生時代ひと夏の成長物語。
作・演出の成井豊の実体験を基にしている、
もちろんキャラメルらしい、ハートウォーミングな、
少年の成長物語です。
潜水艦クルーをイメージした冒頭のダンスも、
いつもより長めで難易度も高そう!
けれど振りはぴったりそろってて、さすが。
キャストでは、なんといってもサブリナが最高。
演じる坂口さんも最近は落ち着いた中年の女性の役が多いような
イメージがありましたが、今回は犬!しかも唯一初演時と同じ役
での出演。
年配の犬という設定でもあるため、変に可愛いぶらず、
過度な動物演技もしないところがイイです。
今回客演はクロムモリブデンから、森下亮さんと、久保貫太郎さん。
特に久保さんの、ちょっと情けない、おっさんノリが笑えました。
でも優しくていい人そうで…。
狭き門より入れ
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2009/08/17 (月) ~ 2009/09/06 (日)公演終了
満足度★★★★
パンデミック発生の中、迫る「世界の更新」に生き残る条件は何か。SF的救済の物語。
一言で言えば「世界終末もの」で、
出ると思った「パンデミック・ネタ」。
最後の審判と未知の伝染病の関係とは・・・。
「イキウメ」の前川さん得意のSF的寓話世界が面白い。
佐々木蔵之介さん中心のユニット「Team申」第3弾。
2弾がRED/THEATERだったことを思うと、いきなり拡大!
PARCO劇場に。
出演者も2人から6人に。
しかし、男性だけ6人の座組みでも、それを感じさせないのは
このメンバーの取り合わせが面白いからでしょう。
そして、佐々木さんのクールさと、手塚さんの面妖さの妙か。
それにしても手塚さんは、はまりすぎの役柄で、
あえて言えばぴったり過ぎて面白くないともいえます。
そう考えると市川さん以外は、全員そのままの役ですね。
市川亀治郎さんは、初の現代劇ストレートプレイで、
いい味を出してました。
怪談 牡丹燈籠【演出 いのうえひでのり】
シス・カンパニー
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2009/08/06 (木) ~ 2009/08/31 (月)公演終了
満足度★★★★
怪談!日本の夏!風情があって好きですね。いやー怖いのは結局「人の性」ということですか・・・。
今年は、「奇ッ怪」とNHKの深夜テレビ「怪談百物語」、そして今回で3度目の「牡丹燈籠」です。
怪談を見聞きすると、日本の夏だなぁ~と思いますね。
結局この話のテーマは「愛」ですよね。
段田安則・伊藤蘭、秋山菜津子・千葉哲也、瑛太・柴本幸という3組の男女の愛の物語でした。
段田・伊藤ペアは、貧しくても真っ当なときは幸福で仲のいい夫婦だったのに、悪行の後は・・・。
これに反して秋山・千葉ペアは、最初は悪巧みから始まりますが、その後の逃避行はまさに純愛で涙ぐましい。
これらの人間の移り変わりが物悲しく、切ない。
段田さんはいつものとおり軽妙に、おとなしいイメージがあった伊藤蘭さんの、威勢のいいおかみさんぶりが楽しく。
瑛太さん、柴本幸さんは真正面から純愛を演じ、梅沢さんがしっかりと支えています。
秋山さんの初登場シーンは結構衝撃的なからみ(と思うのですが)でびっくり。
千葉さんは最初は小悪党、むしろ秋山さんにそそのかされた勢いで悪事を働いてしまい、その後はどんどん悲惨になっていく様が哀しく。
また、森本健介さんの演じる三遊亭円朝が、とっても重要な役割を担っていました。
芸達者な俳優さんぞろいで面白い反面、出番が短い人も多く、その場面だけに集中するのも大変と思います。
【終幕】暗ポップ 【劇団員募集中】
空間ゼリー
赤坂RED/THEATER(東京都)
2009/08/26 (水) ~ 2009/08/30 (日)公演終了
満足度★★★★★
良かった!シリアスなテーマを軽めに描く感じがとってもイイ。やっと観た、空間ゼリー。
ある病院の心療内科で新たにスタートされた7日間のケアプログラム・ショートステイに集まった7人の参加者と医師/スタッフたち、入院患者も交え、彼らの抱えたさまざまな問題と交流、心の変化を「空ゼ」流?に、さらっと描く。
先日は、北区つかこうへい劇団の「こもれびの中で…」で鍛えた?モー娘。OG小川麻琴さん出演つながりで観劇です。
空間ゼリーも気になっていて、今回が初「空ゼ」です。
若さからくる良い意味での、明るさ・軽さが良い感じです。
実はかなりシリアスなテーマを重たすぎずに良く表現しています。
主演の斎藤ナツ子さんが、プログラム開始当初から終了時へと表情が変わっていく様子がうまい。
他には、アキバ系ニートを演じた阿部イズムさんの振り切り方がおかしかったです。
客数も出演者も、このくらいの規模の芝居・劇団が好きです。