リンダリンダ
サードステージ
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2012/06/20 (水) ~ 2012/07/22 (日)公演終了
満足度★★★
ノレなかった。まるで松岡充1人ライブ…。
(今更の感想で、まことにすみません。)
いつまでもロックをあきらめきれない大人たちの物語。
バンドのメンバーたちは「ロック」は「永遠の反抗だ」と
「3.11」「原発問題」にのめりこんでいき、ついには爆弾テロ
まがいの計画を立てて、機動隊と対決するまでになってしまうが…。
全編ブルーハーツの歌がちりばめられていますが、
いまいちノレないのはなぜ?
会場か、演出のせいかもしれない。
肝心の「リンダ・リンダ」も劇中のクライマックスでなく
カーテンコールでしかも一度しか歌われなくて消化不良の気分でした。
以前、赤坂BLITZで公演され、筋肉少女帯のナンバーを使った
「アウェーインザライフ」は終始ノリノリだったことを思い出すと非常に残念。
主演の松岡充は、映画「仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ」と、
OV「仮面ライダーW RETURNS 仮面ライダーエターナル」で、
仮面ライダーエターナルを演じたことしか知りませんが、
観客の多くは彼のファンだったようで、
カーテンコールでは自ら動画サイトの宣伝を何度もしていたし、
芝居全体が松岡充のものになって終わったようで、非常にもったいないと
感じて釈然としませんでした。
かなり期待していただけに。
イントレランスの祭
サードステージ
シアターサンモール(東京都)
2012/10/30 (火) ~ 2012/11/11 (日)公演終了
満足度★★★★
大久保綾乃、高橋奈津季、退団が残念!
個人的にお気に入りの虚構の劇団公演。
今回のテーマは「差別」。
突如地球に現れ、各地で帰化した宇宙人達に対する差別と弾圧を描く。
移民宇宙人ネタは、第三舞台「深呼吸する惑星」にも共通するところがある。
小野川晶・富山恵理子の二人一役を通じて、人(日本人)が「外見」に対する依存度が
非常に高いことも描かれます。
小野川晶演じる「美人に変身した宇宙人」が、特定の条件では気が緩んで
「少しふくよかになる」と、富山恵理子に代わる。
そうすると付き合っていた彼の態度まで変わってしまう。
観ている観客も共感してしまうのは、我々も人を「外見で差別している」からに他ならない。
自分が今、芝居を観ながらにして差別を確認するというドキッとする演出です。
これは、私たちが、「同国人なら区別がつくけれど、外国人の人相は細かい点が違っていても
同じに人に見えてしまう」のと同様に、宇宙人から見たら些細な違いも、地球人が見ると
大きな違いに見えるのと一緒ですね。
何度かあるダンスシーンが非常に楽しい!
けれど大久保綾乃、高橋奈津季は俳優をやめて退団!ざんねん!
好きな女優さんが2人ともいなくなるのは大きい。
劇団旗揚げの頃のみんなが懐かしい…。
楽園
モダンスイマーズ
吉祥寺シアター(東京都)
2012/11/07 (水) ~ 2012/11/14 (水)公演終了
満足度★★★★
深沢敦さん凄い。普通の太ったおばさんにしか見えない。
嵐の午後、秘密基地で繰り広げられる子供たちの戦い。
誰でも経験したような子供の世界のルールを、
登場人物のその後の成長した大人の姿で演じる妙。
子供のころのことは、今大人の視線で考えると、
結構残酷だったかもしれない。
こうして見せられると、腹立たしくもあり…。
しかし、とにかく、深沢敦さんは凄い。
もう、普通の太ったおばさんにしか見えないです!
遭難、
劇団、本谷有希子
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2012/10/02 (火) ~ 2012/10/23 (火)公演終了
満足度★★★
「エグイ」。
思わず出る言葉は「エグイ」だった。
人の嫌な面をさらして見せるような展開が、凄かった。
閉鎖された人間関係の中で事件が起きて、その空間の中で捻じ曲げられて繰り広げられるゆがんだ論理。
次々に人の弱味に付け込んで広がっていく。
しかしその中に浸かってしまっている人間は、納得させられてしまう。
凄い内容だった。
さて本作は、初演の時に見逃してしまったため、今回は先行予約で確実にチケットゲットして
待ち臨んでいたところ、何と直前に主役の黒沢あすかさんが病気で降板!
しかも代役が男優という異例の展開!
両面オールカラーの本チラまで、新主役で作り直されるという力の入れ具合はさすがと思ったが。
やはり、女優が演じた場合と、男優が演じた場合では大きく意味が変わってしまう。
主役降板を逆手にとって、ならば再演ながらも全く新しい作品にしてしまおうと
前向きに考えたのかもしれません。
しかし、直前で別の女優はやりにくい?から、いっそのこと男優にしてしまえと
飛び道具を出してきたような…感じです。
本音を言うとやはり、黒沢あすか さんで観たかった。
きっと、もっと『エグイ』出来になったに違いない!
こんばんは、父さん
ニ兎社
世田谷パブリックシアター(東京都)
2012/10/26 (金) ~ 2012/11/07 (水)公演終了
満足度★★★★★
男3人芝居をじっくり堪能しました。
最近、SF的設定やファンタジー、海外の古典とかミュージカルなどが多かったので、
久々に日本のオーソドックスなストレートプレイ、3人芝居の普通の話をじっくり堪能しました。
歴史的な役柄が多い平幹二朗さんが演じる父親は、波乱の半生を歩んだ元カリスマ的町工場の経営者。
佐々木さんは、それに憧れながらもバブル崩壊を目の当たりにして反抗する息子。
溝端さんは、町金の取り立て屋でありながら、その環境の中での出世を夢見る、ごく普通の青年。
3人の、探りあいながらの会話を、非常に楽しみました。
平さんは身近な役柄は最近めずらしく、しっかりと元気に、時には飄々と、しかし狡猾さを感じさせて
演じられていてさすがです。
また失敗を繰り返してしまったと悔しがり、しかし息子と絆を確かめる。
溝端淳平さんは、『ウサニ』の主演と後で気づきましたが、そのときも一人、長ゼリフをこなし
感動させられましたが、今回も、芸達者なお二人を向こうに回し、
昔のステレオタイプの取り立て屋とは違う、複雑な心境の若者を演じ、善戦していました。
新・幕末純情伝
RUP
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2012/07/12 (木) ~ 2012/07/22 (日)公演終了
満足度★★★
ヒロインが桐谷美玲では、まだまだ弱い。
ヒロインが桐谷美玲では、まだまだ弱い。
パワーが足りない。
石原さとみや、鈴木杏のときには観れなかったので、比較はできないのですが…。
(特に鈴木杏ちゃんのチケットはあったのに観れんかった;;)
そうはいっても、がんばって居るのはよくわかるのですが、もっと時間、経験を蓄積しないと無理か。
それでも面白く観れるのは…やはりホンの力だろうと、妙に納得してしまった。
ドラマ「SP」で注目された神尾佑は、北区つかこうへい劇団1期生だったんですね。
知らんかった!
ジェーン・エア
松竹
日生劇場(東京都)
2012/10/06 (土) ~ 2012/10/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
日生劇場の舞台上から客席を見れる席!
松たか子さん演じるジェーン・エアが女性として自立した人生を歩み、
彼女の真実の愛をつかむまでを描いた感動作です!
前回2009年初演でも感激しました。
勝気でわがままだったジェーンに神を説く優しいけれども相手には強く出ないヘレン、
神の意志と自分の意志を混同するような身勝手で傲慢に思えたりするシンジュン、
幼少のジェーンに大勢の面前で厳しい言葉を言われ、その傷を何十年も抱えたまま
彼女を許せなかったリード夫人など、ジェーンを取り巻く人々を、
単なる悪役や良い役に終わらせない描き方が印象的でした。
今から、また再演に期待します。
今回は、前回絶対!と決めていた「舞台上の特設席」GET!
舞台を横から見下ろすような位置にあるので、正面向きの芝居のときなど
役者さんの顔が見えなかったりするのですが、それよりもこのプレミアム感!!!
役者さんたちはすぐ間近で演技していて、オケピも席のすぐ横、舞台下にあり、
たまにスピーカーを通さない生演奏の音や歌声が聞こえたり、と大満足です。
何よりも、役者さんに近い視線で、あの『日生劇場』の舞台上からの客席の眺めが最高!
席に登るときに、一瞬、『日生劇場の舞台上に立つ瞬間』も味わえたのです!
笑う巨塔
東京セレソンデラックス
サンシャイン劇場(東京都)
2012/10/03 (水) ~ 2012/10/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
笑って、泣いて、ダンス楽しい!最後なんて残念!
セレソンデラックス最終作!
東京千秋楽!だったので盛り上がり方も最高でした。
私はセレソンは、泣ける作品「くちづけ」しか観ていなかったので、
今回の喜劇、軽演劇のノリに驚きました。
開演前には舞台でサイン大会、じゃんけんプレゼント大会、前説もあり、
その後、ずーっと後では、観客と一緒に踊る時間もあり、と盛りだくさん。
肝心の本篇は、病院を舞台にした、勘違いドタバタコメディーで、笑って最後はホロっとくるタイプ。
ありがちではありながらも面白く、アドリブや無茶ぶりも笑えて、
いかにもという泣かせの場面でも、おおいに泣かされてしまった。
役者では、一番、芦名星さんが飛ばしてる演技というか、勢いがあるというか、
キップが良くてよかった!!(最初のほうではわかりにくかったが…)
ベテラン勢では、アドリブでいじられっぱなしなところが特に可笑しかった金田明夫さん、
しっかりしたコメディ演技の松本明子さん、年増演技の藤吉久美子さんが良かったー。
若手では、喜多陽子さんと井村空美さんがカワイイ系でありながらもとしてイイ。
それにしても、ダンスの時間は楽しかったーっ(>_<)
舞台上で役者さん達も、数人に分かれて何度も踊るのも良かったですねー。
舞台でこんなに楽しかったのは初めて、って言ってもいいくらいにノリが良くて、
これが最後なんて、本当に残念!!!
でも解散公演だから盛り上がったのか?二度とないのか?だったら本当に目茶苦茶残念ですが、
この楽しさは、新劇団でもし復活するならば、是非、継承してほしい!
悼む人
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2012/10/19 (金) ~ 2012/10/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
小西真奈美さんの集中力!! 凄い!
よかった。感動した。泣けた。今年の暫定ベストテン入りです。
まず、演者が全員イイ。
物静かで淡々としたところが良かった向井君。
ふわふわとしていながら時に激しい不思議で複雑な小西真奈美さん。
病を持ちながらも、唯一といってもいい程笑える場面がある伊藤蘭さん。
きつい悪役的な役割から感動的な展開の手塚とおるさん。
観客から一番近い存在で家族の中に居て兄を想う真野恵里菜さん。
特に、小西真奈美さんの集中力!!
複雑な心理、表情、凄みすらある。
PARCO劇場の広い舞台に、5人だけというのも集中できていい。
ただ、映像を使いすぎなのが好きではない。
また、スクリーンの文字が小さく薄く読みにくく、読み終わる前に消えてしまう。
死を扱いながらも、もちろん安易なお涙頂戴ではない。
見ず知らずの他人の死をどう感じるのか。
たとえ血縁者が誰も居なくても、一人ぼっちで死んだとしても、
「悼む人」が悼んでくれるかも知れない。
「悼む人」なら、何を感じて悼んでくれるだろうか。
「あなたは誰に愛され、誰を愛していたでしょう。
どんなことで感謝されたのでしょうか。」
この芝居のキーになる言葉です。
パンフレットが入れられた白い封筒に、
この言葉が大きく書かれていたのも印象的だった。
8月31日~夏休み最後の日~
東宝
帝国劇場(東京都)
2012/10/07 (日) ~ 2012/10/31 (水)公演終了
満足度★★★★
生ユーミン、生歌に合わせて踊る、夢の中の恋人たち
ユーミンの新旧数々のヒット曲の「生歌」にのせて繰り広げられる、切なくて儚い、夢のラブストーリー。
帝国劇場の回り舞台+セリ上がりも活用して(回りながら上下しながら)、ダンサーが6人がワルツのように踊る。
手前から奥に距離を置いて、数枚の巨大な紗の入ったスクリーンが幕のように舞台に下りて、
そこに雪や木の葉が、立体的に映し出される光景も美しい。
パンフレットには、ユーミン自身が本作の物語を語り、使われた歌も部分的に挿入されている
CDが付属していて、後で聞くと観たときの思いが甦ります。
観たときよりも、観た後でいい意味で引きずる作品に時々出会うのですが、
これは、(私の柄ではないのですが、)今思い返してみると、ふわふわと夢のような舞台でした。
私はユーミンより中島みゆきさん派で(ついでに陽水より拓郎)、
本作も「夜会」のユーミン版??くらいに思って、
観たときは結構否定的な感想を持ったのですが
(特に、結局、人の生死で盛り上げることには賛同できない)、
今思うと、上記のような感じなんです。
女のみち2012
ブス会*
ザ・スズナリ(東京都)
2012/10/11 (木) ~ 2012/10/14 (日)公演終了
満足度★★★★★
逞しく生きる女たち。
もっともらしく言うと「AV撮影の舞台裏を通じて、逞しく生きる女の本音を描く。」
ということになるんでしょうが、舞台となる業界がAVだけに、
ここに文字では書けない、あれやこれやをストレートに描いていて、凄かったー!
エロイどころではない、あけすけに演じているから、もちろん普通の演劇なので
下着姿以上の姿では出てこないんですが、それでも見るほうが目のやり場に
困るようなかっこうをしていて、
(最前列に座っといて何を言っているのか、と言われそうですが)
TV放送自粛用語なんかも、バンバン飛び交う。
確かに男には別にそんなになんてことはないのですが、
女性が観ても大丈夫なんでしょうか?
特に最前列にはビニールシートが配られて、「劇中で水が飛ぶので注意…」
というから何の水かと思ったら…ああこれ以上は書けない。
とにかく、よく頑張られましたと言いたい。
再びありていに言うと、子育て、結婚、仕事、立ちまわったり、陰口言ったり、
人間関係とかは、どの業界でも基本は一緒。
特に女は子供を一人で育てたりと、本当に逞しい。
あれこれ、きれいごとを言ってても、子供を食わせにゃならん。
それに尽きるね。
こういうのをもっと観たい!
(ちなみにこの日は、昼はスズナリでAV業界の小演劇、夜は帝国劇場でユーミン。
なんだこの落差は!)
温室
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2012/06/26 (火) ~ 2012/07/16 (月)公演終了
満足度★★
やっぱり不条理劇は苦手です。
とある精神病院でのクリスマスの事件。
高橋一生、小島聖、段田安則、半海一晃…
キャストの顔ぶれが良く、
ひいき俳優さんばかりなので楽しみにしてましたが、
作品のほうは、どうも私には合わなくて。
精神病院というのも、芝居や映画では、よくある舞台。
赤いインテリア、ゆっくり回る舞台、囲み舞台も好きなのですが、
やっぱり不条理劇は苦手です。
ラ・マンチャの男
東宝
帝国劇場(東京都)
2012/08/03 (金) ~ 2012/08/25 (土)公演終了
満足度★★★★★
千秋楽!劇場全体が一体となった最高の公演でした!!
「素晴らしかった!」の一語に尽きます。
3年ぶりの再演、もう前回初めて観てから3年お経ちました。
幸四郎さんの熱演は、ポイントになる部分だけでなく、
ちょっとしたユーモラスな部分も的確で、わかりやすく。
松たか子さんの体当たりの演技、声量も、歌声もいい。
駒田さんもサンチョそのまま、仕える喜びが伝わります。
牢名主役、上條恒彦さんは、宿屋の主人同様に温かい。
(前回観劇時にはご病気で、瑳川哲朗さんでした)
この日は千秋楽!
終盤、名セリフでは拍手が起きて、エンディングに向けて、
舞台上の役者と観客、劇場全体が一体となって、自然と拍手が起き、
劇場内の空気が沸き上がってくるのがわかります。
カーテンコールでは、再び全員による合唱と、
幸四郎さんによる英語歌詞の「見果てぬ夢」が歌われて、
最高の公演でした。
こんなに劇場が一体になって盛り上がったのは、
人生で(おおげさですが)初めてのことでした。
鎌塚氏、すくい上げる
森崎事務所M&Oplays
本多劇場(東京都)
2012/08/09 (木) ~ 2012/08/26 (日)公演終了
満足度★★★★★
とにかく面白く楽しかった!全員キャラが立ってて可笑しくて!
東京千秋楽。
前作より変なシュールさというか微妙な毒気が消えて、
いい意味でよりわかりやすくて、さわやかに笑えて、ノレて、
気持ちよく観終えることができて楽しかった!
とにかく全員キャラクターが立っていてイイ。
三宅さんの執事ははまってて、ごくごく自然。
業界雑誌トップを誇る執事といいながら、
天才的能力があるわけではなく、普通にまじめで、
大事なところでドジを踏むのがかわいらしくて。
それにあこがれる女子力を嫉妬される市川実和子さんも、同じくまじめでかわいらしい。
わがまま令嬢役の満島ひかりさんは、体力勝負で取っ組み合いしたり、
壁にしがみついたり、終始憎まれ口をたたきながらも、やっぱりかわいい。
声がつぶれてしまってたのが残念です。
鎌塚の主人役、田中圭さんも自意識過剰金持ち青年というステレオタイプになりがちなのに、
嫌味がまったくなくて不思議です。
船長に今野浩喜さん、キングオブコメディとはまったく違う面で勝負。
妙に狙っていないのがいい。
六角精児さんはもう余裕ですね。久々に舞台で観れてよかった!
広岡由里子さん+玉置孝匡さん前作コンビは、かなり強引な登場の仕方ですが・・・。
広岡さんは衣装で勝負みたいなところもあって、
PPPPの玉置さんは、巻き込まれ型からうまくいかない策略型に路線変更。
・・・というように一人ずつコメントしたくなるほど、各登場人物がよかった、
愛すべき楽しい雰囲気がよかったということでした。
特に、暴言であばれる満島さん、
女子っぽさいっぱいの市川さん、
さわやか、でもハズシテル田中さんがよかった!
三谷版 『桜の園』
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2012/06/09 (土) ~ 2012/07/08 (日)公演終了
満足度★★★★
三谷版
あのチェーホフの「櫻の園」は、喜劇だったんですね。
(戯曲にちゃんと喜劇と明記されていたということです。)
今回、それとわかるように演出されており、
とっても笑えたし、それだけではなくて、成り上がりの商人たちと
貴族の没落、儚さはちゃんと描かれています。
前説では、青木さやかさんが、ミュージカル仕立てで、チェーホフと、
本作「櫻の園」を笑いを大いに交えながら説明。
これで、私を含めた観客の皆さんの、チェーホフと「櫻の園」に対する
難解なイメージは、一気に吹き飛び、先入観がなくなったように感じました。
こういう細かな配慮(というか、それも演出のうち)は、さすがです。
三谷文楽 「其礼成心中」
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2012/08/11 (土) ~ 2012/08/22 (水)公演終了
満足度★★★★★
「文楽って何?」という私でも面白かった!観てよかった!
「文楽って何?」という私でも面白かった!観てよかった!
何もわからず、三谷さんだけを信じてチケットを買ったわけですが、大正解でした。
文楽の新作は、ほとんど無いらしいのですが、三谷さんのオリジナル書き下ろしの脚本は、
まるで落語の人情噺を観ているようで、笑って泣けて、それでいて、堅苦しくなく、
時折、時事ネタ、今の言葉(「逆ギレ」とか)をはさみながら、
しかし、文楽のセオリーだけは逸脱し過ぎず、砕けすぎずに創られているのは、素晴らしい。
文楽なんて本当に初めて観たのですが(そういう観客が多いと思う)、
三人がかりで操られる、その人形全体で演じられる見事な表情に驚かされながら、
本当に自然に人形の演技を見入ってしまいました。
前説では、「三谷さんの顔をした人形」が登場。
三谷さんの声の録音テープにあわせて、一人の方が操作しながら、
非常口案内の消灯とか、携帯電話の電源とか、いつもの注意事項を、
ギャグをはさみながら説明。
これで一気に客席は和んだという、細かな心遣い(というか、それも演出のうち)は、
さすがです。
(「三谷版 櫻の園」でも同様でしたね。)
物語は・・・
近松門左衛門の「曽根崎心中」が大ヒットし、世の中は一大「心中ブーム」。
(本当に、そうだったらしいです。)
その舞台となった森では、今日も心中志願のカップルが現れて、
「いざ、死なん」と短刀を振りかざす。
が、そのとき、一人のオヤジが止めに入ったのだが・・・。
高き彼物
(公財)可児市文化芸術振興財団
吉祥寺シアター(東京都)
2012/07/04 (水) ~ 2012/07/10 (火)公演終了
満足度★★★★
どうしてもカトケン版と比べてしまうのですが
同じ演目では、主人公の元教師が加藤健一、女教師は小泉今日子でしたが、
それも良かったのですが、やはり二人とも役者としても個性が強かったので(特にキョン2)、
どこかの地方の、とある先生という普通の感じが薄かったように思う。
それに比べると、石丸 謙二郎・金沢映子のお二人は、いかにもどこかの地方の先生っていう感じが出ている。
コピーであった「市井の片隅で、高くまっすぐに生きる。」そのものである。
自分が許せずに教師を辞めた実直さが、自然と伝わってくる。
物語として、長年の誤解が解けていくという展開が泣ける。
登場人物の死などによる安易な泣かせではない、ところがイイ。
主演の石丸謙二郎さんは、2時間ドラマの刑事役でよく観ましたけれど、
それより「世界の車窓から」のナレーションでお馴染みです。
私にとっては、デンライナーのオーナーですが。
しかし、つかこうへいの事務所にスカウトされたなんて、知りませんでした。
落ち着いた自然な演技が良かったです。
大江戸緋鳥808
明治座
明治座(東京都)
2012/08/04 (土) ~ 2012/08/27 (月)公演終了
満足度★★★
宝塚OG3大スター競演!石ノ森章太郎原作作品、初の舞台化!
明治座創業140周年記念興業で、なんと石ノ森章太郎原作作品、初の舞台化!
キャラクター設定以外はオリジナル。
八百八町からとったであろう808が、「サイボーグ009」や「009ノ1」を思わせる。
その脚本は北区つかこうへい劇団の脚本家・演出家、俳優でもある渡辺和徳さん。
演出を同じ明治座・大地さん主演時代劇「女ねずみ小僧~目明しの女房~」や、
『広島に原爆を落とす日』等、近年のつかこうへい作品のプロデュース・演出
を手掛けたる岡村俊一さんが担当。(奥様は藤谷美和子さん!)
つか作品多数出演の山崎銀之丞さんらが脇で出られているので、
山崎さんの名調子の口上や、今の流行を即取り入れたり、最後のレビューなどにその雰囲気が見られます。
大地・湖月・貴城という宝塚OG3大スターに加え宝塚名脇役でOGの未沙のえるさん
共演というヅカ色も加わり、
大地さんの花魁姿に町娘姿(ご本人の黒装束姿はなかったような)、
湖月さんは剣の達人で男装のお姫様、
貴城さんは、おきゃんな町娘という、とても華やかなキャスト。
緋鳥の相手役の絵師、東幹久は水戸黄門の助さん、同じく助さんを演じた、原田龍二も共演。
前述の山崎さんはドジな岡っ引きに、
長屋の住人役で、「HOTEL」「ウルトラマンダイナ」レギュラーの小野寺丈さんも出ています。
(石ノ森章太郎ご子息、ということはやはりあえてパンフには記載がないようです。)
悪い老中役のベテラン青山良彦さんの他の役者にはない風情に、個人的には感動しました。
大地さんの花魁姿に、歌に踊りもにぎやかに華やかに、
殺陣は町人の着物姿中心のため地味で、激しい動きがなかったのは残念です。
その分、湖月さんや他の人に振られています。
明治座公演時代劇なので、もちろんお客さんは年齢層が高め。
キャスティング、アクション、レビュー、ギャグなど、皆が楽しめる手堅い作り。
これで、もっと盛り上がれば…と思うのは贅沢でしょうか??
くじけまみれ
月影番外地
ザ・スズナリ(東京都)
2012/08/03 (金) ~ 2012/08/12 (日)公演終了
満足度★★★★
出演*高田聖子×脚本*福原充則×演出*木野花×ザ・スズナリ 、
高田聖子さんが、毎回、脚本家、演出家に声をかけて結成するユニット「月影番外地」第3弾。
今回も、出演*高田聖子×脚本*福原充則×演出*木野花、おまけに×ザ・スズナリ という豪華タッグ!
1,2弾目も観劇しましたが、シリアス+少し笑いといった感じだったのが、
今回は少し変わって、「小劇場の芝居」×笑い×シュール。
新感線のような荒唐無稽の大活劇ではない、等身大の「さびしくつつましくおとなしい孤独な中年女性」という高田聖子さんの設定は共通。
麻子(高田さん)は、赤羽駅前でティッシュを配って20年、独身、ラジオで革命を叫ぶ海賊放送を聞くことだけが楽しみな女。
ある日、海賊放送の青年(丸山さん)と、偶然、電信柱の上で出会い、二人は恋に落ちる。
青年は、愛する麻子の寂しさを普通に目立たなくするため、他の麻子より幸福な人々に寂しさと孤独を与えるため、
海賊放送の内容は徐々にエスカレート、扇動された住民は暴動をおこしはじめ、「赤羽」は荒れていった…。
執拗に「赤羽」にこだわり、北の「サイタマ」「ニシ・カ・ワグチ」は、まるで未開の北海道のような扱いだったり、とシュールな笑いとペーソスがいっぱいです。
藪原検校
こまつ座
世田谷パブリックシアター(東京都)
2012/06/12 (火) ~ 2012/07/01 (日)公演終了
満足度★★★★
萬斎さんの「早物語」だけでも、すごい。
因果応報、親の因果が子に報い、盲人として生まれ、のし上がった「藪原検校」の一生。
江戸の昔以前から、盲人は存在していたわけですが、どのように生きていたか、
結集し組織化していった事実など、知らないことばかりだったし、そんなこと考えたこともなかった。
また、本当に暗い話のはずが、作り方でこうも変わるものかと。
特に、表現者、野村萬斎さん演じる「早物語」という、語りのリズムが素晴らしい。
しかもその中に、今のものまねまで取り込んで演じるサービス精神!芸人の意地。
ただひたすら母を想い、のし上がった『藪原検校』のあっけない最期まで、見事演じきった。
今気になる女優さんの一人、秋山菜津子さんの萬斎さんとの「手取り足とり」の濡れ場、
大人の童謡と言ったらいいのか、色っぽいはずが、あっけらかんとコミカルで面白い。
また、狂言回し役の浅野和之さんも終始見事。
小日向文世さんは、『藪原検校』とは真反対で、頭脳戦で生き抜ける盲人を対照的に演じる。
三味線風の演奏をこなすギターも素晴らしい。
余談ですが…
パンフレットには、初演時に芝居の中で「『盲』という差別的な言葉の連発」に対する批判からはじまって
NHKでは同様な言葉の制限から、すでに古典落語の放送すら不可能になってきているというのです。
また、数年前の時代劇映画では、盲人が出ているシーンでも「盲」という言葉は一切使われないらしい。
そういう表面上の用語の問題にすげ替えることなく、あった事実は認めたうえで、改善すべきと思うのです。