満足度★★★★
萬斎さんの「早物語」だけでも、すごい。
因果応報、親の因果が子に報い、盲人として生まれ、のし上がった「藪原検校」の一生。
江戸の昔以前から、盲人は存在していたわけですが、どのように生きていたか、
結集し組織化していった事実など、知らないことばかりだったし、そんなこと考えたこともなかった。
また、本当に暗い話のはずが、作り方でこうも変わるものかと。
特に、表現者、野村萬斎さん演じる「早物語」という、語りのリズムが素晴らしい。
しかもその中に、今のものまねまで取り込んで演じるサービス精神!芸人の意地。
ただひたすら母を想い、のし上がった『藪原検校』のあっけない最期まで、見事演じきった。
今気になる女優さんの一人、秋山菜津子さんの萬斎さんとの「手取り足とり」の濡れ場、
大人の童謡と言ったらいいのか、色っぽいはずが、あっけらかんとコミカルで面白い。
また、狂言回し役の浅野和之さんも終始見事。
小日向文世さんは、『藪原検校』とは真反対で、頭脳戦で生き抜ける盲人を対照的に演じる。
三味線風の演奏をこなすギターも素晴らしい。
余談ですが…
パンフレットには、初演時に芝居の中で「『盲』という差別的な言葉の連発」に対する批判からはじまって
NHKでは同様な言葉の制限から、すでに古典落語の放送すら不可能になってきているというのです。
また、数年前の時代劇映画では、盲人が出ているシーンでも「盲」という言葉は一切使われないらしい。
そういう表面上の用語の問題にすげ替えることなく、あった事実は認めたうえで、改善すべきと思うのです。