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serial number(風琴工房改め)
The Fleming House(東京都)
2018/06/21 (木) ~ 2018/07/16 (月)公演終了
満足度★★★★★
serial numberとしての最初の公演は、密度の濃い二人芝居の三連発。
それぞれの世界観がきっちりと立ち上がって、このユニットのこれからが楽しみになった。
『next move』
同じ歳の2人の若者の成長を追いながら、それぞれの人生や将棋への想いが1つの勝負に集約されていく。2人の個性の違いと互いに向けた複雑な感情が鮮やかに描かれ、過ごしてきた日々の確かさが、最後の瞬間の切実さを際立たせた。
『nursery』
翻訳物のような雰囲気をまといながら謎と愛憎の森深く分け入るように進んでいく。
ミステリーめいて真実へとたどる道筋の面白さと、2人の登場人物の関係が揺れ動く様子が魅力的だった。
『ROBOTA』
ロボット技術者である兄と弟の会話を通して、 痛ましい出来事とそれに対してそれぞれが抱く想いが描かれていく。無惨な出来事を振り返りつつ諦めずに説得を続ける弟の言葉によって、兄の消えない痛みが希望へと昇華される瞬間が胸に沁みた。
イヌの仇討あるいは吉良の決断
オペラシアターこんにゃく座
吉祥寺シアター(東京都)
2018/09/14 (金) ~ 2018/09/23 (日)公演終了
満足度★★★★
井上ひさし氏らしい反骨心と批評性に満ちた忠臣蔵を、上村聡史氏の演出が骨太かつスタイリッシュに立ち上げた。
緊迫した状況にユーモアを交えつつ、前半で提示した疑問を後半で収束する展開に引き込まれて、3時間近い上演時間ながら長さを感じさせない作品となった。
冒頭で「板の間に座ると尻が痛くなる」と愚痴をこぼす老人として描かれていた上野介が、気迫に満ちた武士の顔を見せるラストシーンが圧巻であった。
「天守物語」〜夜叉ケ池編2018〜
椿組
花園神社(東京都)
2018/07/11 (水) ~ 2018/07/22 (日)公演終了
満足度★★★★★
野外でテントで当然冷房などなく、しかも補助席詰め詰めの大入り満員だったが、暑さよりも人々の熱気に巻き込まれてあっという間の約2時間。
母を亡くした少年を軸に、天守物語と夜叉ヶ池を重ねていく耽美で幻想的な時間。その美しさの中にユーモアと熱量を感じさせる演出が、野外の雰囲気によく似合った。
終わって夜風に吹かれながら駅へ向かうのも心地よかった。
勧進帳
木ノ下歌舞伎
KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)
2018/03/01 (木) ~ 2018/03/04 (日)公演終了
【東京公演】劇団壱劇屋「独鬼〜hitorioni〜」
壱劇屋
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2018/07/12 (木) ~ 2018/07/17 (火)公演終了
満足度★★★★
台詞なしの殺陣芝居ということでアクションの見せ場はもちろんたっぷりだったけれど、それ以上に孤独な鬼と女の物語が切なくて胸に響いた。
死なない鬼の手に託された赤ん坊が少女から大人へと成長していく姿を、4人の女性が演じ分ける。
人間の時間にしたら、長い長い物語のはずだ。その時間を、寓話……というよりやはり御伽話めいた、あるいはむかし読んだ絵本のような、シンプルな表現と迫力あるアクションで綴っていく。
鬼が幼子と歩む場面や握り飯をほおばる様子など共に過ごした時間が細やかに描かれることで、それぞれの想いに説得力が生じた。
鬼を演じた竹村晋太朗さんが、脚本と演出と殺陣を担当されているのだという。あの素朴な笑顔を浮かべた孤独な鬼の姿を思うと、この人の他の作品も観てみたい気がした。
蛸入道 忘却ノ儀
庭劇団ペニノ
森下スタジオ(東京都)
2018/06/28 (木) ~ 2018/07/01 (日)公演終了
満足度★★★★
そういえば、この前もその前も庭劇団ペニノの美術は圧巻だった。そして今回は圧巻以上だ。
寺、である。八角系の堂内の中心に炉を置いて、それを取り囲むように儀式の場があり、それをまた鳴り物を手にした観客が取り囲む。
堂内に通される前に、リング状に切り抜かれた紙に名前と願い事を書いて壺に入れてきたが、それらの紙が堂内に張り巡らせられている。
例えば誰かに誘われて知らずにその場にきたとしたら、怪しげな信仰宗教の集まりに連れてこられてしまったと信じることだろう。
「蛸」という生き物の奇妙さを、主宰のタニノクロウ氏が語る導入。心臓が3つ、脳が9つあるというその奇妙な生き物が、もし崇拝の対象だったとしたら……。
なるほど、ここに祀られているのは「蛸」なのだ。
現れたキャストが積み上げられた赤い服を(男物も女物も季節感も関係なく)重ねて身につけていく。卒塔婆に似た板が観客の手を渡って堂内の壁にかけられていく。
人々が般若心経に似た経文を唱える。観客にはあらかじめテキストが渡され、頭上のモニターにも経文や教義の進み具合が示される。
炉は熱を発し、音楽と熱気と薬物めいた煙などが五感を刺激しつつ儀式が進む。
儀式の進行と足並みを揃えるように室温は上がり続ける。途中で観客には冷えた水のボトルが配られる。
熱とドラッグに浮かされたように、置いてある水盤の水を胸元にかける女優の熱に浮かされた表情。
水盤は、時に意志あるもののように鳴り響く音に合わせてひとりでに水を跳ね散らす。
美術も光や音も細かい進行も歌や音楽も、それを体現して見せるキャスト陣も、瑕瑾なくその世界を背負って我々を引き込む。
観客の側も進んでその世界に浸るように、入り口で渡された鳴り物を経文に合わせて響かせる。
精密に再現された宗教的なトランス状態。なるほど、奇妙な体験をしてきたなぁ、という実感がある。それでも、これも確かに演劇ではあるのだろう。
面白いものを目撃できた、と思う。
ゲイシャパラソル
あやめ十八番
座・高円寺1(東京都)
2018/06/09 (土) ~ 2018/06/17 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/06/10 (日) 19:30
紅組は初演に近いキャストとなっている。
初演に近いキャストと言いつつ主要な役のひとつである国原大吾役が変更になっていて、初演キャストへの当て書きであろうと思われた勢いのあるキャラクターを花組芝居の美斉津恵友さんが端正さを残しつつ生き生きと演じて魅力的だった。
大森さんの仇吉と美斉津さんの大吾の組み合わせは初演に劣らぬ似合いの組み合わせで、2人のやり取りが切ない愛おしく胸に迫った。
一方墨組は、紅組と同じ脚本なのになるほどこうなるのか、とワクワクしながら拝見した。
仇吉はあやめ十八番の金子さんで、中盤までは紅組と比べて抑え気味の印象だったが、大吾の傘を手にしたとき、花が開くように表情がほころぶ様子が美しかった。
墨組の国原大吾は村上誠基さんで、明るさや勢いに加えて包み込むような大きさがあり、薄幸な少女に読み書きと数を教え、名前と愛情を与える慈しみに満ちた表情と凛と伸ばした背筋に惚れ惚れした。
旧友でありライバルでもある日色大輔と羅 義天(ルオ イーティェン)を、花組芝居の小林大介さんと吉川純広さんが演じた。
紅組の大輔とルオが印象的だっただけに、どうなるのかと思っていたが、やや貫禄ある色悪めいた小林さんとほっそりと美しい吉川さんの組み合わせは紅組とはまた異なる魅力があって目を奪われた。ルオの配下にミヤタユーヤさんを配し、エレガントで麗しい中国人主従となっていた。
ストーリーの面白さとスタイリッシュな演出に加えて、キャストがそれぞれ美しく役にハマって魅力的だった。
それぞれのキャスト、ひとつ1つのセリフや場面に見どころがあり、繰り返し観ても飽きることはない気がした。
ただいま、あきちゃん。
おかわり
ギャラリーしあん(東京都)
2018/06/16 (土) ~ 2018/06/17 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/06/16 (土) 13:30
里帰りした女の子と従姉妹であろうもう1人の女の子との会話劇は、どこか噛み合わないいら立ちを含んだまま、どこへ向かうのか先が見えない道を進んでいく。
部屋中に広げられたいかにも女の子っぽい衣類や小物や手芸用品。奇妙な手紙と誰かの携帯。
お祖母さんの不在。お母さんが到着するまでに、まだ時間がかかりそうだ。居心地の悪さは、それぞれ隠していることがあるから、かもしれない。
炭酸飲料を振ってから渡すようなささいなイジワルと片方なくした大事なイヤリングをペンダントに直して渡す優しさと。
懐かしさというより微妙な違和感や居心地悪さ、それぞれの見栄やかすかな嫉妬、徐々によみがえってくる思い出などの繊細な感情が、じわじわと伝わってきて面白かった。
古い民家は、久しぶりに訪れたお祖母さんの家にぴったりで、そので交わされる会話を覗き見ているような感覚も面白かった。
ツヤマジケン
日本のラジオ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2018/06/05 (火) ~ 2018/06/10 (日)公演終了
満足度★★★★
この劇団らしい仕掛けや企み。ゾワゾワするような独特の緊張感。そして何より登場人物の造形と関係性が物語を牽引し、観る者を引き込む。
予想通り文字で読むよりも容易に登場人物たちの個性や関係性が把握できて、物語の面白味が際立った。
同じ制服を着た同性の集団だからこそ、それぞれに向けた好悪や感情の細やかな動きが伝わってくる。閉塞感と苛立ちの中で煮詰まっていく、女の子たちの愛情とも友情ともつかない曖昧で鮮烈な愛憎が仄暗い空間を満たしていく。
男性陣はそれぞれの役割に徹しつつ、一筋縄ではいかない演技を見せる。いい加減なのにどこか色気のある演劇部顧問。一見平凡だけれど秘密のあるらしい施設職員。
それらすべてを片隅で見守る過去の連続殺人犯。
濃密でシンドい(←褒めてます)約90分だった。
観てきて何日か過ぎたあとも、この舞台のあれこれが折にふれ思い出されてしまったのは、身につまされる部分があったからだろう。
私も、あの子のように空回りしてなおさら人を遠ざけたり、一方的な思い込みで誰かを傷つけたりしているかもしれない。
討つべきモノでなく討ってはいけない何かを討っているかもしれない。
今度は強い強い人に生まれてこよう。できれば美しい人、愛される人に生まれてこよう。
……そんなことを思った。
見よ、飛行機の高く飛べるを
ことのはbox
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2018/02/14 (水) ~ 2018/02/18 (日)公演終了
満足度★★★★
永井愛さんの名作戯曲を、誠実な演出と魅力的なキャストで上演した、なんていうかキリッと背筋を伸ばしたような印象の端正な舞台だった。
同ユニットの前回公演『カミサマの恋』も同様だったが、上質な舞台を作ろうという気概が感じられた。
喜歌劇『天国と地獄』
オペラシアターこんにゃく座
俳優座劇場(東京都)
2018/02/08 (木) ~ 2018/02/18 (日)公演終了
満足度★★★
地上から始まり、天国から地獄へと場面を移しつつ描くどんちゃん騒ぎ。天国の住人たちがプラカードを掲げてジュピターに抗議したり、神々がゾロゾロと地獄へ繰り出したり、蝿に化けたジュピターが人妻を誘惑したり。
色恋や見栄に振り回される身勝手な神々、永遠を誓ったはずがそれぞれ別の相手にうつつを抜かす夫婦、そして無責任なくせに権威ありげに指図する世論というヤツ。
バカバカしくて、でも少し可愛げのある人間の愚かさを馴染みのあるメロディに乗せて描き出す喜歌劇。
ツアー作品と比べるとキャストの人数も多く、セットも大掛かり、衣装やメイクも含め、それぞれのキャラの造形も鮮やかで、目にも耳にも楽しい、華やかなステージだった。
ドレッサー
加藤健一事務所
本多劇場(東京都)
2018/02/23 (金) ~ 2018/03/11 (日)公演終了
満足度★★★★
加納さんのノーマンというのは実はあまりピンとこなかったのだけれど、観始めると逆にあまりにもハマり役という印象で驚いた。
戦争が続く中、老座長の率いる旅の一座がある町で『リア王』を上演しようとするが、突然座長が入院してしまい……。
前半観終わって、休憩時間となった。えっ、もう?と思ったのは、集中して観ていたからだろう。
ウェルメイドという言葉にマイナスのイメージを持つ場合もあるだろうけれど、少なくともこの芝居にはその言葉の持ついい意味でのしたたかさと豊かさを感じさせた。
間違いなく面白い芝居を観せてもらえるであろうという信頼感、と言い換えてもいい。
座長とノーマンの(丁々発止の)膨大なやりとりは圧巻だったが、他のキャストもしっかりと場を支えて、観るものを物語の世界に引き込んでいった。
オケハザマ
流山児★事務所
ザ・スズナリ(東京都)
2018/01/24 (水) ~ 2018/02/04 (日)公演終了
満足度★★★★
義元の観る予知夢(?)と彼がコントローラーを握るゲームとそして現実、細かく重ねられるナンセンスなギャグとシュールな笑い。
夢と現実、ゲーム、過去と現在が入り混じる奇妙な世界観の中で、どこに軸足を置いて観たらいいか途中までつかみ損ねていたけれど、後半の有無を言わさぬ怒涛の勢いに押し流され巻き込まれた。
『LOVE』Chapter2
シンクロ少女
OFF OFFシアター(東京都)
2018/01/29 (月) ~ 2018/01/31 (水)公演終了
満足度★★★★
お互いそれなりにオトナだし恋だって初めてじゃないのに、傷つけたくないし傷つきたくないから言葉が見つからなくなる。思いやりも見栄も打算もそれぞれにあって、ウソではないんだけど素直にもなりきれない。
そんな女たちや男たちが皆ホントに可愛いのは、むき出しの心が見え隠れしているから。ぶっきらぼうのようでいて繊細さがにじみ出る。
そして、えっここで!?というところで幕。3月にchapter3を上演するという。
これは確かに続きが観たくなる。
俺を縛れ!
柿喰う客
本多劇場(東京都)
2018/01/24 (水) ~ 2018/02/04 (日)公演終了
満足度★★★
初演と再演両方に出演されているのは、柿喰う客副代表の七味まゆ味さんだけ、とアフタートークで伺った。その七味さんも初演とはまったく違う役割だ。
最近の柿喰う客のスタイリッシュさや寓話性の高さとはだいぶ印象の異なる舞台だけれど、一方で初演ともずいぶん変わっていた気がする。
少なくとも、初演で客演の方々が演じていたいくつかの主要な役を劇団員が汗だくで演じる姿や初演とは大きく変わったエンディングを観て、現在のこの劇団のあり方の幾分かを感じられた気がした。
この記事を書いているうちに作品の感想からは離れてきてしまったけれど、こうして再演を観て改めて自分がこの作品から受けた影響の大きさを感じたりもした。
TERROR テロ
パルコ+兵庫県立芸術文化センター
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2018/01/16 (火) ~ 2018/01/28 (日)公演終了
満足度★★★★
テロリストにハイジャックされ、7万人の観衆が集まっているスタジアムに突っ込もうとする旅客機を命令に背いて撃ち落としたパイロットが殺人罪に問われている。
我々観客もその裁判に参審員(一般市民から選出され、裁判官とともに評議を行い、事実認定や量刑判断を行う)として参加しているのだ。
事件の様子や背景が人々の言葉によって次第に立体化され、いくつもの視点が加えられていく過程は本当にスリリングであった。
上演時間のうち大半は客席も明るく照らされて、我々もこの物語の一部であると感じさせられた。
そういう枠組の面白さに加えてキャストはそれぞれ素晴らしく、それを観られただけでも行った甲斐があると思えた。
再生ミセスフィクションズ2
Mrs.fictions
北とぴあ ペガサスホール(東京都)
2018/03/15 (木) ~ 2018/03/19 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/03/16 (金) 19:30
一滴のアルコールも摂取していないのにほろ酔いみたいな気分なのは、観てきた舞台が本当に素敵だったから。
再演短編集と言いつつ新作や外部演出家の起用もあって、バラエティに富んだ約95分。4本の短編それぞれにこめられたたくさんの笑いとせつなさと。
明るい未来や幸せな人生とは無縁の人々ばかり登場するのになぜこんな幸せ気持ちになるんだろう。短い物語の一つひとつに「優しさ」と呼ぶには少し切実過ぎる何かが満ちて、惹きつけられる。
iaku演劇作品集
iaku
こまばアゴラ劇場(東京都)
2018/05/16 (水) ~ 2018/05/28 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/05/27 (日) 11:00
『粛々と運針』と『梨の礫の梨』を拝見。
どちらも味わい深く面白かった。
特に『粛々と運針』は、題材・構成・演出・俳優等がとてもよく噛み合って、芝居というものの面白さってこういうことだよなぁ、と思わせられた。
上空に光る
やしゃご
アトリエ春風舎(東京都)
2018/09/13 (木) ~ 2018/09/24 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2018/09/16 (日) 18:00
上手く言えないけど、(ああ、人間がいるなぁ……)と思った。
正解なんかない。それぞれの抱えたものは抱えたままで、それでも生きていくしかないのだ、と。特定の状況を丁重に描きながら、その中に普遍的なものが息づいて、目の前の人々がみな愛しく感じられた。
山の声
オフィスコットーネ
Space早稲田(東京都)
2018/10/26 (金) ~ 2018/10/28 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2018/10/28 (日) 13:00
山に魅せられた男たちを描く濃密な二人芝居。
何よりお二人の演技に圧倒された。彼らの人となりや関わりを伝えていく前半から、緊張感に満ちた後半へとつながっていく構成も見事。
客席は暖かかったのに、指先が凍えるような、吹雪の痛みを肌に感じるような錯覚を覚えた。