MINoの観てきた!クチコミ一覧

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白魔来るーハクマキタルー

白魔来るーハクマキタルー

ラビット番長

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2024/09/26 (木) ~ 2024/09/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/09/28 (土) 18:00

この作品は2015年3月に初演されたものだが、コアな観劇ファンからは評価が高かったものの、一般の観客からはその残虐性に戸惑いがあがっていたものだ。大正時代に北海道で起こった熊害(ゆうがい)事件として有名なものには「三毛別羆事件」や「石狩沼田幌新事件」などあるが、この作品は日本史上最悪の熊害といわれる前者をモデルにしている。昨年来、熊が人間を襲う事件が頻繁に報じられ、その意味では初演時よりも観客に身近に迫ってくる感があるだろう。

(以下、ネタバレBOXにて…)

ネタバレBOX

暗闇に吹き荒ぶ風の音に獣の声のようなものが混じっている。三味線の音。若い男が2人、女が2人、衰弱しきった様子で休んでいる。と、そっと近づく黒い影…出だしから不気味な雰囲気が横溢している。影はこの小屋に住んでいる老人で、暖かい鍋を持ってきたのだ。水は貴重だからと、洗ってもいない汚れた茶碗に注がれる。若者はスキー帰りに渋滞を避けようと脇道に入ったら、吹雪に巻き込まれ道を見失ったのだった。老人はこの電気もない小屋に冬の間だけ来るのだという。そして老人がその訳を語り始める…。

大正の初期、開拓しただけ自分の土地になるという話に惹かれて、貞夫一家(貞夫夫婦、その子供の兄妹、貞夫の両親)がこの北海道の村に移住してくる。村長の大本や銀次をはじめとした村の面々は馬も持たぬ極貧の貞夫一家に馬を買ってやるなど、心から歓迎し、貞夫一家もすぐに彼らと馴染むようになる。が、そんな中で銀次の母親と娘が行方不明になる。そして…。
白魔とは大雪による災害だが、この作品では大雪で食物がなくなった巨大な羆が村を襲ってくる。この羆は最初に女を食べたために、人間の女だけが食物と思い、女しか襲わない。

ラビット番長といえば、ここ数年は将棋・草野球・介護を3本柱としているが、この作品はそれらとは全く路線を異にする陰惨な舞台で、血しぶきや熊が人間を喰う咀嚼音など、目や耳を覆いたくなる場面が多い。
ただそれは人間の眼からみて残虐なだけで、獣にしてみれば空腹を満たした結果にすぎない。単にグロでそうした場面を創っているのではなく、「羆と人間とどっちが侵略者だ」というテーマを明確に打ち出すための手段ともいえよう。

そして、それらの一見グロテスクな表現の底には開拓民たちの人間ドラマが流れている。殊にロシア人に犯されたアイヌの女性が産んだマタギの平吉の差別され続けてきた人生など胸が痛む。その平吉が“白魔の子”として処分されようとした赤ん坊を引き取って村を去るのだが、そこで終わらせずに、さらに衝撃的なラストを準備して、ラビット番長の実力が遺憾なく発揮された観応えのある重厚な作品となっている。ハッピーエンドではなく、肌を泡立たせるこのラストも際立って秀逸だ。

個人的には今回の池袋演劇祭の大賞最右翼だと思う。
るつぼ

るつぼ

演劇ユニット King's Men (キングスメン)

座・高円寺2(東京都)

2024/09/25 (水) ~ 2024/09/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

鑑賞日2024/09/25 (水) 18:30

CoRichの説明によれば、ベテランから若手まで多彩な実力派俳優が勢ぞろいしての度肝を抜く勢いのある舞台とのことだった。で、期待も大きく初日を観劇。
が、まるで期待外れ。演出もダメなら、役者もダメ。アーサー・ミラーの台詞・物語が少しも響いてこない。上演時間2時間半が無駄に終わってしまった。「エンディングは、席を立てないほどの衝撃」とのことだったが、違った意味での衝撃的な舞台だった。

15人の出演者(27役)でまあまあと思えるのはエリザベスとアビゲイルという核となる女性を2役ともこなした絵里(W演出の一人である篁エリらしい)とメアリーを演じた山本麻祐くらい。
あとは素人に毛が生えかけたか、生えもしないレベルでしかない。よくもまあ実力派俳優が勢ぞろいなどと言えたものだ。
殊にひどいのは副総督であり裁判官を演じた中島史朗。台詞を全く覚えておらず、紙(宣誓供述書や死刑囚名簿など)や白手袋、小さな紙片に台詞を書いて、それを読むのに必死な有様で、台詞を発する時に相手の顔を見ずにそうしたカンペにばかり目を向けて(当然下向きや、ひどい時は後ろ向きで)ただ大声を発しているだけ。台詞を言っていない時もほとんどカンペしか見ずに、次にどこで自分が台詞を言わねばならないのかばかり気にしている。そんな有様では、登場人物の人間性や感情などをきちんと表現できるはずもない。
他の役者も台詞をやりとりする際の間があわず、会話が噛み合っていないし、滑舌も悪い。
あと子役もひどい。序盤で気を失って、このまま死ぬんじゃないかと周りの大人が騒いでいるのに、当の本人は倒れたまま首を動かしてずっと辺りをキョロキョロ見回している。その他の場面でもまるで遊んでいるかのようで、傍に居る大人の役者はそれが気になって仕方のない様子。

衣装にも多少違和感があるが、主人公であるジョンを演じる平澤智之(W演出のもう一人である平澤トモユキ)がNEW YORKと大きくプリントされたラルフ・ローレンのTシャツなのが最悪。なぜ白無地のものにしなかったのか。しかも劇中ずっと裸足だった。裸足である必然性などどこにもないのに……。
おまけに、背景として舞台奥に泰西の名画が映し出されるのだが、途中でPCの画面そのまま(全画像の一覧)が映し出されて、それがかなりの長時間そのままの状態での演技。ますます白けてしまった。

演技力のない座組でやるのであれば理想を高く設定せず、まずはそれなりの戯曲を選ぶべきだろう。どんなに優れた戯曲だろうと、それを読み込み、表現する演出家や役者陣が揃わなければ作品世界を伝えることなどできはしない。

魚雷モグラ’24

魚雷モグラ’24

ウラダイコク

みらい館大明ブックカフェ特設ステージ(東京都)

2024/08/02 (金) ~ 2024/08/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2024/08/04 (日) 17:00

みらい館大明という施設は初めてなので、地図やGoogleマップを頼りに向かったのだが、やはり最後のところで迷ってしまった。どうやら廃校となった小学校の校舎を利用した施設で、地域有志で構成された特定非営利活動法人が管理運営しているらしい。

舞台となるのは1945年(昭和20年)8月の長崎。地下トンネルに設けられた兵器製造工場に女子学徒たちが集められ前線で戦う兵隊さんに送るため魚雷製造を強いられていた。この女子学生たちの日常がグループ同士の対立を軸にして、原爆投下の直後まで描かれていく。上演時間80分。

物語としてはまあまあなのだが、開演と同時に気になったことがある。
女子学生は全員が下着が透けてみえるほど薄手の白いブラウス(それぞれがおしゃれなデザイン)に黒のスラックス、しかも全員がブラウスの裾をスラックスの上に出している(班長役の男もワイシャツをズボンの上に出している)。当時はこんなことはありえない。まずブラウスやワイシャツの裾はスラックスの中に入れなければならない。女子のブラウスだって厚手の木綿製で、胸には住所と氏名、血液型を書いた名札(当然ながら油性ペンはなかったので墨文字)が縫い付けられていたはずだ。
まあモンペまで用意しろとまでは言わないが、当時の悲惨さをリーディングではなく演劇としてみせようとするのなら、その程度は気をつけるべきだろう。あと、女子学生の髪などに赤いリボンもおかしい。昭和20年の8月という逼迫した状況下で、そんなことしていたら非国民扱いされるのがオチだ。

それほどお金がかかる訳でもないこの程度のことに手を抜いていたら、それが作品全体に響いてしまうのだ。
演じる若者たちに当時のことを伝えるのだって中途半端になりかねない。
「せからしか!」と言われるかもしれないが、敢えての苦言を。

かなかぬち

かなかぬち

椿組

新宿花園神社境内特設ステージ(東京都)

2024/07/10 (水) ~ 2024/07/23 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/07/11 (木) 19:00

外波山文明率いる椿組がその前身であるはみだし劇場の頃から毎年行ない、夏の風物詩ともなっていた花園神社野外劇の39年の歴史に幕を下ろす作品「かなかぬち 〜ちちのみの父はいまさず〜」の2夜目を観た。
この作品は戦後生まれで初めての芥川賞作家・中上健次が33歳だった1979年に、同年齢で意気投合した外波山のために書き下ろした中上唯一の戯曲だという。この作品をもって花園神社野外劇の終止符としようとするのは、やはり外波山の思い入れの強さだろう。

(以下ネタバレboxにて)

ネタバレBOX

大テントの下、時折緊急車両のサイレンの音が響き渡る中で展開される物語の舞台は南北朝の時代の南朝・吉野からさらに山深く入った熊野の山中。かなかぬちと呼ばれる男が率いる盗賊団とかなかぬち以上に恐れられているその女房、母を訪ねて旅をしながら彷徨う幼い姉弟、流浪の芸能集団(その中にはかなかぬちを仇と狙う花若も紛れている)、三人の婆、落武者とその従者などが入り乱れて物語は展開していく。
そしてそこに加わるのは両眼が金色で全身白く長い毛で覆われた巨大な獅子。この獅子が口を開けた時の舌がやけにリアルだった。

松明(たいまつ)や篝火(かがりび)といった野外劇だからこそできる火を使った演出や、ラストの宙乗りなどの大仕掛け、旅芸人一座の劇中劇や神楽など観どころ満載で、2時間弱を満喫。

ただ敢えて難を言えば、三婆や落武者とその従者といった登場人物は物語の展開上はそれほど意味をもっておらず、ただ観客の意識を混乱させることにも繋がっていたようで、ここらは整理した方がわかりやすかったかもしれない。

なお、終演後には外波山筆による「さらば花園!!」の大垂れ幕が下がり、演技スペースにブルーシートを敷いての「毎日打上げ」も復活し(参加費無料。ただし翌日のためにカンパするのが礼儀かと…)、楽しい一夜となった。
未体験の人は一度は観ておいた方がいい。

因みに私自身がこの花園神社野外劇で最も思い出深いのはちょうど10年前に今回と同じく山本亨と松本紀保が主演した「廃墟の鯨」(作・演出:東憲司)だ。

39年間、本当におつかれさまでした。
二十一時、宝来館

二十一時、宝来館

On7

オメガ東京(東京都)

2024/06/26 (水) ~ 2024/06/30 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/06/28 (金) 20:00

On7とは5つの老舗劇団(青年座・文学座・俳優座・演劇集団円・テアトル・エコー)に所属する同世代の中堅女優7人による演劇ユニットで、2013年2月に始動。
ただ今回は青年座3人+テアトル・エコーの計4人による公演なので、miniOn7となっている。Miniとはいえ、On7としては「七祭〜ナナフェス〜」以来3年ぶりの公演だ。その公演は竹田モモコ作の幡多弁(高知県西部の方言)での会話劇「二十一時、宝来館」。

灰皿役は客演の男優2人を交えたトリプルキャストになっているのだが、やはりここはOn7メンバーのみで上演されるヴァージョンで鑑賞。最前列の桟敷席(背もたれ無しのベンチ席)で。

(以下、ネタバレBOXで…)

ネタバレBOX

取り壊しが決まったホテル「宝来館」で五年ぶりに行われている高校の同窓会。全館禁煙となり喫煙室には上部をラップで巻かれ「使用禁止」と大書された赤い円柱形の灰皿が置かれている。
ここにやってきた3人の同級生(女性)それぞれの情念と思惑とが絡み合い、そこに灰皿も加わっての騒動が。
演じるのが老舗劇団に所属する女優だけに演技力に富むのみならず、この3+1のキャラクター設定が絶妙で、時には笑い、一旦宴会場へ行ってワイン片手に酔って戻ってきたゆかり(尾身美詞)とちぐさ(安藤瞳)が一瞬睨み合う場面の凍り付いたような空気感に背筋が冷たくなり、わずか60分の作品ながら観応えは充分。
殊にラストに灰皿が「続き、見れる~!」と喜色満面で口にする一言が効いている。本当に続きが観たくなってくる。

因みに当初発表されていた配役ではOn7メンバー4人のみのヴァージョンでは灰皿役は宮山知衣だったのだが、稽古が進む中で小暮智美に変更されたのだったが、これは正解だったろう。冒頭から小暮の思わぬコメディエンヌぶりが発揮され、表情や動きが活き活きとしていた。
ワーニャ伯父さん×母がいた書斎

ワーニャ伯父さん×母がいた書斎

S.H.Produce

阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)

2024/06/19 (水) ~ 2024/06/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2024/06/21 (金) 19:00

久々のアルシェで、Bチームを鑑賞。

チェーホフの「ワーニャ伯父さん」と林将平による「母がいた書斎」の2本を朗読劇で。
舞台前面に4本のスタンドマイク、そこから2mほど奥の50cmほど高く作られたところに2本のスタンドマイク。演者はこの6本のマイクの間を行き来しながら朗読する。

朗読劇の楽しさは、身体表現がない分、登場人物の感情や仕草をいろいろと想像できる点にあるのではないかと思っている。が、この公演では(2本ともに)それができなかった。なにせ表現があまりにも類型的で、かつ大声でわめきたてる場面が多く、想像の余地をなくしてしまう。
例えば「怒る」にしてもいくつもの怒り方の表現があるだろう。それが全て大声で怒鳴るだけなのだ。これでは感情の押し売りに近い。
類型的な表現であるために底が浅く、情緒に乏しい。義弟の提案に、自身を犠牲にして務めてきた永年の苦労が無になったワーニャの哀しさや苦しみなど全く迫ってもこない。

役者が熱演すればするほど心が離れていく、残念な舞台だった。

阿呆ノ記

阿呆ノ記

劇団桟敷童子

すみだパークシアター倉(東京都)

2024/06/04 (火) ~ 2024/06/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/06/04 (火) 19:00

今公演は4ステージ予約していたが、まずは初日を鑑賞。

やはり桟敷童子の公演はどんなに期待して行ってもそれを軽々と超えてしまう! 
今回の作品は、前説の若手がハケた瞬間にのけぞらんばかりのホラー感で心を掴まれ、あとは終演までグイグイと引きずり込まれる一方だ。

客演の音無美紀子の圧倒的な存在感、劇団員では三村晃弘が従来とは全く違う役どころを熱演して舞台の厚みを増し、全ての出演者が主宰・東憲司 が描き出す舞台世界と一体化している。
それにしても大手忍は美しくなったなぁ。最初に登場した時には思わずハッとしてしまった。

「大地揺れ!紅燃ゆる!」というチラシのキャッチコピーは決して大げさな表現ではない。こんなスゴイ舞台が小劇場演劇の料金も高くなっている現在においても4,000円(平日の夜公演。それ以外でも4,500円)で観れるというは驚愕の一言。

今年はまだ80本強の観劇しかできていないが、まぎれもなく現時点での今年最高の作品だ。

(以下、ネタバレBOXにて…)

ネタバレBOX

ところで、客席に入ってまずは舞台際の天井を確認して「お、今回は紙吹雪があるなぁ」と思い、舞台が多少高く作られているのを見て、2016年末の「モグラ…月夜跡隠し伝…」を観ている私は、ラストはもしや…と思っていたのだがやはりそうだったものの、舞台が分割されていて、よりダイナミックなものとなっていた。
第壱部「綺譚 逢浄土桜心中」第弐部「DREAM-NeoJapanesque」

第壱部「綺譚 逢浄土桜心中」第弐部「DREAM-NeoJapanesque」

想組〜こころぐみ〜

小劇場メルシアーク神楽坂(東京都)

2024/06/01 (土) ~ 2024/06/02 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/06/01 (土) 13:00

第5回公演となっているが、拠点を福岡から東京に移した矢先にコロナ禍に見舞われて活動ができず、東京での公演はこれが最初だという

主宰の大和零河という名前、どっかで見たと考え続けていたのだが、舞台を観て思い出した。BMI25オーバー達が踊って痩せようという1日限定の発表会イベント「脂肪遊戯」の振付担当者としてカーテンコールで紹介されたのだった。

劇+レビュー・ショーという宝塚のような構成。

第一部は歌舞伎の名作「桜姫東文章」をベースにした「綺譚 逢浄土桜心中」。CoRichの「観たい!」で浄瑠璃風と書いているメンバーもいたが、四代目鶴屋南北などの作によるれっきとした歌舞伎である。
驚いたのはこの複雑な筋立ての物語を桜姫・権助・清玄という3人の登場人物だけで、しかも75分という時間のわかりやすい作品に仕立て上げていたこと。衣装も素晴らしく、台詞廻しも宝塚調。殊に権助役の仲井和るながいい。昨年2月に木ノ下歌舞伎が上演した「桜姫東文章」よりもずっと良かった。木ノ下歌舞伎のチケットは7千円もしたのに、こちらはレビュー・ショー付きでその半額だ。

ただ残念だったのは劇中で始終デジカメのシャッター音が響いていたこと。スタッフとしてのカメラウーマンは4列目(最後列)の通路脇に陣取っていたが、静かな場面でもお構いなしにシャッターをきっている。こんな狭い空間だと事前にわかっていたはず。どうしてシャッター音のしないカメラを用意しなかったのか。もしくはゲネプロの時に撮影するとか、客の集中力を途切れさせない方法はいくらでもあるだろうに。

第2部は第1部の3人にさらに3人が加わっての1時間のレビュー・ショー。
ステージが小さいことも影響はしていると思えるものの、新たに加わった3人の技術的レベルはいまひとつの感もあり。
殊にさくらはちょっとヒロスエっぽい感じで、メイク次第で美女にもイケメンにもなりそうで、スタイルもよく、足もよく上がるのだが、振付を覚えていない風な自信なさげな様子が散見されたのが残念。
東京バレエ団の元芸術監督のK氏が福岡のバレエ団の指導に招かれて生徒たちのレッスンをする場に、私はK氏のお招きで拝見したことがある。その時驚いたのは、K氏はバレエシューズを履かない素足で爪先立ち(足の指の腹で立つのではなく、まさしく爪先で立って)苦も無くスピンを連続してみせたのだが、その折にK氏が生徒たちに最後に言った言葉を記しておきたい。「自信を持ちなさい。自信のないものを観せるのはお客さんに対して失礼だし、観せられるお客さんが可哀そうだ。」

ハナコトバ -朗- for spring

ハナコトバ -朗- for spring

Daisy times produce

アトリエファンファーレ東新宿(東京都)

2024/04/10 (水) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2024/04/14 (日) 17:00

植野祐美がプロデュースする企画団体のリーディング公演。ダブルキャストのBチームを観劇。

受付でチケットと一緒に番号札を渡される。何かと思えばブロマイドなどの物販の整理券で、開演前に番号順で舞台前に呼び出されるようになっている。要するに客は出演する女優陣のファンばかりで、写真などを購入することが前提とされているらしい。これまた若いカワイイ女優を集めてその物販で儲けようとする公演なのかと、開演前から舞台に対する期待が薄れていく。

加賀地方のコンビニもないような片田舎の村を舞台とした「青春カルペディエム」と「魔女のお茶会」の2本立てで、上演時間は1時間25分。

(以下、ネタバレBOXにて…)

ネタバレBOX

「青春カルペディエム」ではまず地の文を読む三井ゆかが素晴らしく、聴き惚れてしまった。
が、それもこのエピソードの主人公・森宮咲胡が登場するなり台無しに。高校3年生という設定なのだが、声質やしゃべり方がアニメのキャラクターそのもので、高校3年生どころか中学生か小学校高学年としか思えない。

それは後半の「魔女のお茶会」でも同様で、舞台となる喫茶店の店長(植野祐美)がこれまたドタバタギャグのアニメそのもの。
アニメを見下す訳では決してないが、今回の内容のような朗読劇であればまずは実写版のドラマのような演出が望ましいだろう。折角のいいホンがキャラクター設定のために薄っぺらくなってしまっている。

それに咲胡(さきこ)だの卯咲(うさぎ)だのと名前に難しい読みで漢字を充ててみても、耳で聞くだけではそれはわからない。うさぎなど前半のエピソードのあとでは兎かせいぜい平仮名でしか思い浮かばないだろう。

前半の咲胡と兎との会話や、前半から後半へ移る際の「東京から戻って二十年、私は“魔女”になった」という一文が、最後の解離性同一性障害という説明で活きてくるのは見事ではあったが…。
BEAT PARADOX presents BASKET vol.4

BEAT PARADOX presents BASKET vol.4

BEAT PARADOX

パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)

2024/04/04 (木) ~ 2024/04/07 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2024/04/07 (日) 17:00

「ひとつぶひとひらひとかけら」を観劇。

この作品は、ハグハグ共和国によって2019年の3月末に琵琶湖畔にある滋賀里劇場プレ・オープニング公演として2日間3ステージのみ上演され、翌々年東京でも再演されたものだ。無論私はその双方を観ている。
ただ、今回の上演にあたっては、BEAT PARADOX(テアトル・アカデミーの受講者)向けに1時間強と本来の1/2ほどの長さに書き換えられている。

(以下、ネタバレBOXにて…)

ネタバレBOX

若手&新人メンバー芝居と謳っていたので、てっきり若者中心の座組かと思っていたら、いきなり高齢の女性群(セクハラといわれるかもしれないが、所謂おばさま世代)が登場したのでびっくり。
しかも最初に登場した女性はその最初の台詞をトチってしまう有様(「もういい~か~い」という遠くからの問いかけに「もう…」と言いかけて、あわてて「ま~だだよ~」と言い直していた。
その後5人が加わり、教員同士のレクレーションについての協議が始まる。この部分は本来の「ひとつぶひとひらひとかけら」にはなく、全く別のハグハグ共和国の作品。メンバーの高齢者用に付け加えたものだろうが、この部分と後半の「ひとつぶひとひらひとかけら」との繋がりがわからない。小石と「虐待されていた妹と私は草むらに隠れ、その隙間から空を見ていた」という台詞、そしてその女性教師と「ひとつぶひとひらひとかけら」に出てくる女子高生の苗字が同じことからこの2人が姉妹なのか、と推測するのみ。それ以外には前半と後半に全く繋がりがないからメンバーの年代構成に合わせて2つの作品を無理やりくっつけたという感じしかしない。

本体の「ひとつぶひとひらひとかけら」も同様にメンバー構成上やむをえなかったのだろうが、子役が多数登場し、まあそれなりに上手いのだが、一様に活舌が悪い。
時間を司る3人の女神にしても過去と現在が小学生の子役で、未来だけが高校生と思しき役者、とバランスが悪い。過去<現在<未来の順に背が高い配役としてはいるが、登場時には一番子供っぽい口調の未来を3人の中では一番年長の役者が演じるというのはどうにも…。もっともこの役はハグハグ共和国版では今回リーディング助手を務めている生粋万鈴が演じていたのだから、前半と後半の切替など難しい役ではあるのだが…。

この「ひとつぶひとひらひとかけら」本体部も大幅に書き換えられており、役者陣のスキルもあって(熱意は感じられるものの)物語としての深みが減じられてしまった。
良くも悪くも発表会レベル。
将棋無双・第30番 ~神局のヴァンパイア~

将棋無双・第30番 ~神局のヴァンパイア~

E-Stage Topia

上野ストアハウス(東京都)

2024/04/10 (水) ~ 2024/04/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2024/04/10 (水) 19:00

この団体の公演は一昨年1月の江戸川崇(カラスカ)作・演出による「東京卍メロス」を観ただけであるが、今回の公演は黒薔薇少女地獄の太田守信が作・演出。
タイトルの「将棋無双・第30番」からこのシリーズ30作目かとも思えるが、「将棋無双」は七世名人三代伊藤宗看による詰将棋100番を纏め江戸幕府に献上された作品集のことであり、これらの詰将棋はなかなかその解答本が見つからなかったため、「詰むや詰まざるや」と言われたそうだが、中でも第30番は神局と称されているという。従ってその神局という第30番をモチーフにした物語ということだろう。

上野ストアハウスのさして広くもないロビーに入って、出演者の写真やトレーディングカードを購入するために、中高年の男たちが列をなしているのを見てイヤ~な気になった。若いカワイイ女優を集めてその物販で儲けようとする公演では、その内容の薄さに散々失望させられているからだ。その最たるものは高取英晩年期の月蝕歌劇団だ。

(以下、ネタバレBOXにて…)

ネタバレBOX

舞台奥には教会のような十字架をモチーフとした巨大なステンドグラス、そこに開場時からパイプオルガンが響き渡り、ゴシックロマンに溢れたムードが漂う。

が、冒頭で「ねえねえ、おばあちゃん。今日もお話を聞かせて。おばあちゃんの若い頃のお話」と子供たちがお話をねだる祖母がメイクも声も若いままであり、ここで「ええ~ッ」となってしまう。要するにかわいいままの姿を見せることで、ファンを満足させようとの浅はかな目論見なのだろう。

そもそも、まだ世界が一枚の、9×9=81マスの盤面だと信じられていた時代って、どんな世界なんだよ。
その世界で神に背き仇を為す存在・吸血鬼との戦いが繰り広げられ、それは舞台床面に設置された巨大な将棋盤の上で登場人物たちが自身の駒を置いて詰将棋と重ね合わせられるのだが、これがよくわからない。
駒の動きにも何らかの意味を持たせているのだろうが、もともと「詰むや詰まざるや」と言われた第30番が基なのだから、将棋がわからない者には尚更のこと難解でしかない。ラビット番長が上演している将棋シリーズとは大違いだ。

これなら無理に将棋を持ち込まなくとも、人間対ヴァンパイアの戦いをゴシックロマンで彩って物語にした方がどんなにか良かったろう。奇を衒いすぎ。
達磨さんは転ばない

達磨さんは転ばない

劇団龍門

シアターシャイン(東京都)

2024/05/15 (水) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/05/18 (土) 18:00

この公演2度目の観劇。
こみいった内容の作品だが、ストーリーがわかった上で再見するのは、どこにどういう伏線が張られていたのかじっくり観る楽しみがある。

(以下、ネタバレBOXにて…)

ネタバレBOX

達磨が言う「中途半端なハラスメント」や、刑事がオーディション参加者らにぶつける言葉の端々、自分の名前から始まる終盤の達磨の悲痛なモノローグなど、村手の思いがビンビン伝わってくる。
15年前の飲酒運転で夫婦をひき殺して刑務所に入っていた男が、自分を恨み続けているその夫婦の息子に対して「許してくれ」ではなく、「どうか俺を一生恨んでくれ」と言ってひたすらに頭を下げるのが胸に迫る。

シリアスな場面だけでなく、無論ユーモラスなシーンも挟み込まれている。達磨から指で胸をツンツンされる度に刑事の顔が強面からだらしない笑顔に変わる瞬間の可愛らしさや、プロデューサーや助監督がマンボウになって登場する(私はウルトラマンの怪獣ジャミラを思い出してしまったが)など、張り詰めた緊張感を和らげてくれる。
こうした作劇の上手さが随所にみてとれる。

それにしてもこの客席数の劇場で公演を続けるのは、運営的にはかなり苦しいだろう。内容のいい作品ばかりということに加え、その点でも頭が下がる。
達磨さんは転ばない

達磨さんは転ばない

劇団龍門

シアターシャイン(東京都)

2024/05/15 (水) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/05/15 (水) 19:00

初日を鑑賞したが、やはり村手龍太の描く舞台世界は(いい意味で)一癖も二癖も、と、そう思わせる作品だった。

(以下、ネタバレBOXにて…)

ネタバレBOX

映画監督の金本達磨(女性)が5年ぶりの新作制作にあたり、スタッフやスポンサー等には相談もせず、独断でキャスト募集オーディションをSNSで告知した。スポンサーはこれでは金を出せないと騒ぐし、マスコミも密かに探りを入れている様子にプロデューサーや助監督は対応に走り回る。
一方、選考されオーディションに集まったのは演技経験もなく、心に闇を抱えた8人の男女。そこで達磨は参加者たち応募書類に書かれていた彼らの経歴をほのめかしながら、それぞれが己を曝け出すことを要求する。刑事だという男も顔をみせ、達磨と思わせぶりにやりとりしている。

劇中でも事実と真実の違いについて説明がなされるが、まさにどこまでが事実で、どこからが虚構かはっきりさせない展開が続く。そしてラストでのどんでん返しで、またさらにどこまでが事実なのか観客を煙に巻く。

達磨役の上田愛がこのトンデモキャラクターを存在感たっぷりに演じている。
刑事と思しき村手龍太やプロデューサー役として久々の舞台出演となった中村公隆は勿論のこと、ムショ帰りの男を演じた朝廣亮二(この役を以前龍門に客演した役者に演らせるとしたら和興あたりか…)など、年配の男優の演技は厚みが違う。若手役者もこうした演技を観ながら成長していくんだなあと実感した。
天の秤

天の秤

風雷紡

小劇場 楽園(東京都)

2024/03/29 (金) ~ 2024/03/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2024/03/31 (日) 17:00

昨年の初演時に千穐楽での観劇を予定していたのだが、コロナ禍で楽前日と楽日だけが中止となり、観ることができなかった作品。
劇団としても出演者やスタッフにしても無事着陸できなかった無念が残っていたのだろう。幸いに7ケ月半を置いて再演となったが、私も懲りずに(笑)今回も千穐楽を予約。

大阪万博が開幕して2週間後の1970年3月31日、JA8315号機(愛称「よど号」)は羽田から板付(現在の福岡空港)へ向けて、普段どおり運航されていたが、赤軍派を名乗るグループによってハイジャックされた。これが日本初のハイジャック事件、いわゆるよど号事件である。
実は赤軍派が使用した日本刀・拳銃・爆弾などは、すべておもちゃや模造品であったことが後に判明しているし、まだ飛行機での旅行が珍しかった時代であり、当初の予定日の搭乗時刻にメンバーが遅刻して延期されたことなど、今から考えるとお粗末な事件ともいえるが、当時高校1年生だった私には緊迫したTVニュースの画面に釘付けだった記憶がある。犯人グループの「われわれは明日のジョーである」という声明も話題になった。

(以下、ネタバレBOXにて…)

ネタバレBOX

離陸前の機内アナウンスを模した前説から物語が始まる。

主な舞台はよど号の操縦室。ここでの機長や副操縦士と犯人グループの田宮とのやりとりが太い幹となり、ここにスチュワーデス(まだ当時はCAやFAなどという無味乾燥な言葉は使われていなかった)や対策本部の状況等が枝葉として重ねられていく。
操縦室には当然航空機関士も居たはずだが、ハイジャック後すぐに拘束され犯人グループとの交渉にもタッチできなかったため、劇中には登場していない。

劇中で犯人からスチュワーデスの一人が「カラマーゾフの兄弟」を借りて、それによって左翼思想に共鳴を覚えていく場面があるが、実際に「カラマーゾフの兄弟」を借りて読んだのは当時は聖路加国際病院内科医長の日野原重明だった。

金浦国際空港では山村新治郎運輸政務次官が人質の身代わりになって搭乗して北朝鮮へ行ったことで男を挙げたが、これが自らすすんで人質になったのではないことや、運輸大臣の橋本登美三郎と中曽根康弘とのまるで他人事のような電話のやりとりなど、当時は知られていなかったエピソードも盛り込まれている。
また、機長がその後女性問題でJALを追われることになったこと、山村が精神疾患を患っていた次女により刺殺されたことなどもそれをうかがわせる会話を劇中にさりげなく織り込んでいる。
このように、吉水恭子の脚本はよど号事件に関わるさまざまな事柄を要領よく採り入れて、人間ドラマとしても厚みのある内容に仕立て上げている。

因みにタイトルとなっている「天の秤」は「剣なき秤は無力、秤なき剣は暴力」という言葉とともに剣と天秤を持つ正義の女神が司法、裁判の公正さを表す象徴・シンボルとされていることによるものだ。

まさに息つく暇も与えない2時間弱だった。
鬼啖

鬼啖

troupe▲antLion

東日本橋A-Garage(東京都)

2024/05/09 (木) ~ 2024/05/13 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/05/11 (土) 12:00

かつて芸術集団れんこんきすたで上演された奥村千里による衝撃の二人芝居。

まず思ったことは奥村千里の戯曲は濱野和貴の尽力によりこのtroupe▲antLionで上演を引き継がれているが、やはり素晴らしい作品が多い。それだけに主宰だった中川朝子の不実によってれんこんきすたが解散せざるをえなかったことが無念でならない。
なにしろ奥村は作者としては日本劇作家協会の新人戯曲賞で最終審査に残った6人のうちの一人だった(対象作「Gloria」は審査員の坂手洋二や渡辺えり子の評価は大きかったが、実際には上演されていたにも関わらず「これって上演するの無理でしょう」という理不尽な理由で受賞を逃したのだった)し、演出家としても日本演出者協会の若手演出家コンクールで一次審査を通っていたのだ(二次審査が「木立によせて」となり、これは演者の力不足が大きかった)。

閑話休題、トリプルキャストの内のAチーム(町田恵理子&小松崎めぐみ)を鑑賞。定刻に開演。上演時間80分。
ただ12時開演(11時半開場)に間に合わせるにはかなり早く自宅を出ねばならず、朝食抜きで出たために、入場後のポップコーン食べ放題が有難かった(笑)。

(以下、ネタバレBOXにて…)

ネタバレBOX

山間の村で捉えられた人を喰らう鬼とそれを折伏して欲しいと頼まれた旅の尼僧との息詰まる会話劇。その対決の中で明かされる尼僧の過去を通じて、念と業と罪と祈りとを深く考えさせた。

最初に尼僧(町田)と縛られている鬼女(小松崎)とが対峙する時に、鬼女が多少身を引き気味に感じられ、その分村人や人間に対する恨みの念が弱いように思えたのだったが、終盤でそれが活きてきた。

小松崎のメイクは大きな傷や腫れあがった右目など村人から痛めつけられた様が痛々しいが、それに反して歯が真っ白なのが気になった。歯をもっと汚すべきだった。
れんこんきすたでの上演時は亀甲縛りにするために専門の緊縛師に習いに行ったとのことで、終演後も簡単には解けないようにされていたが、今回はそこまでのことはなく軽く縛っただけだったようだ。

それにしても町田の尼僧姿の美しいことといったら。高貴ささえ湛えて、まさに後光が指しているようだった。
それだけに武家の娘だった時に許婚を女中に奪われた悔しさを語るときの悲痛さが痛々しく伝わってきた。
因みに茣蓙のところで草履を脱ぐ仕草がとても良かったのは川田ももによる所作指導の賜物か。

緊迫した濃密な空気感に満ちた舞台だった。
ナマリの銅像

ナマリの銅像

劇団身体ゲンゴロウ

新宿スターフィールド(東京都)

2024/03/27 (水) ~ 2024/03/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/03/27 (水) 19:00

重い年貢にあえぐ農民の不満のはけ口としてのパチンコ屋での煽り放送を担当していたバイトの若者を天草四郎とすることで、彼の言葉が神の言葉として受け入れられる過程を描き、島原の乱の裏側に迫った意欲作。
着想の巧みさが物語の展開と見事にマッチし、そこにパチンコ屋で落ちている玉を拾って聖像を造る孤児を絡ませて、息詰まる舞台を創り上げていた。

ミュージカル版 『五色ロケットえんぴつ』〜気がつけば恋の話〜

ミュージカル版 『五色ロケットえんぴつ』〜気がつけば恋の話〜

劇団帰燕

高円寺K'sスタジオ【本館】(東京都)

2024/04/04 (木) ~ 2024/04/07 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

鑑賞日2024/04/04 (木) 19:30

4チームでの公演のうちのBチームを観劇。

初めての劇場。客席最前列にはソファが置かれている。
開場時から演技スペース面に5人の出演者全員が並び、客席と雑談を交わしている。客席を温める意味合いはあろうが、一方で声の大きな客との会話がうるさく感じられもする。一長一短だろう。

劇場版ポケモン等の脚本家・園田英樹が主宰し、旗揚げ公演に先立ってのプレ公演の第1弾という。

(以下、ネタバレBOXにて…)

ネタバレBOX

スランプで落ち込んでいる少女漫画家マツリをアシスタントや幼馴染たちが盛り上げようと奮闘するというコメディだが、まずストーリーが安直。
コメディと謳いつつも、笑える場面は2つだけ。それも衣装の見た目で笑わせるといった手合いのもので、ギャグのセンスも古すぎる(例えば暗闇で女声の「ああ~ん、そこ」なんていう台詞が流れ、明転すると男が女の肩をもんでいる、といった具合だ。それって使い古された昭和のギャグだよ)。

歌も歌詞がメロディにのっておらず、そのためか、どの出演者も下手にしか聞こえないし、ダンスだって決して上手いというレベルでもない。演技力もイマイチ。

脚本・歌・ダンス・演技力のいずれをとっても客をよべるレベルにはない残念な公演だった。
長谷川圭一事件簿 ~Episode Zero~

長谷川圭一事件簿 ~Episode Zero~

劇団Cheminèe

エリア543(東京都)

2024/02/23 (金) ~ 2024/02/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

鑑賞日2024/02/23 (金) 18:00

前夜の東久留米に引き続いて、この上井草駅も降りるのは初めて。当然この劇場も初めてなのだが、客席ひな段の前後が比較的高く作られていて、観やすい。

この劇団、主宰の西条萌が高校生の時に旗揚げし、コロナ禍で4年ぶりの公演だという。

セットはこの小さな空間にしてはきちんと造られている。

ただ、はっきり言って役者の演技レベルが低すぎる。
特に主人公の探偵・長谷川圭一を演じた役者がひどい。終始ヘラヘラ笑っているような表情で舞台の雰囲気をぶち壊しかねないひどさだが、他の役者陣も押しなべて低レベルなので、なんとかバランスがとれている状態。役者全員が学芸会レベルでしかない。

これで(上演時間1時間にも関わらず)3千円とろうなどとは烏滸がましいにも程がある。
準備期間が十分にとれず、これでは人様に観せるレベルに達しないとして、初日の数日前に公演中止を決めた団体も知っているだけに、尚更その感を強くする。

ストーリーも謎が謎を呼ぶといった手合いのものではなく、お手軽そのもの。このCoRichの作品説明には「初めから終わりまで一瞬も見逃せない」と書かれているが、羊頭狗肉も甚だしい。

ライブショー「ザ・アイドル-THE IDOL-」

ライブショー「ザ・アイドル-THE IDOL-」

WizArt

Cafe JINDO(東京都)

2024/02/22 (木) ~ 2024/02/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

鑑賞日2024/02/22 (木) 19:30

団体名のWizArt はWizard(魔法使い)とWith Artをもじったものだろう。が、その舞台には魔法にかけられたように魅入られるものでも、芸術的に優れたものでもなかった。
ダブルキャストの空チームを鑑賞。

(以下、ネタバレBOXにて…)

ネタバレBOX

舞台はとあるアイドルオーディションの最終選考に臨む6人の控室。女子大生・主婦・オネェ・トランスジェンダー・元人気アイドルの娘に元キャバ嬢のグラビアアイドルといった異色の面々…だが、こういう面々から選抜してどういうアイドルグループを作ろうというのか、その意図は全く説明されない。要するに物語設定を面白くするだけの顔ぶれであって、その必然性がないのだ。

前半は彼女(?)らの抱える複雑な事情が自己紹介の形で語られ、後半はその最終選考、そして結成されたアイドルグループのデビューのライブショーという構成なのだが、最終選考やライブショーでも彼女らが難関を勝ち抜いてきた実力の持ち主とは到底思えない。そもそも最終選考の場でもナツキ役のステルスにゃんこなんて口パクだし…。

最近はTV地上波でもアイドルのオーデションや女優のオーディション番組が放送されている。それを少し観るだけでも、この舞台がいかにお手軽に作られているかがよくわかる。

役者の演技レベルは、オネェのトオル役の清水忠とハル役の森藤拓海がかろうじて水準点といったところ。
サロメ

サロメ

獣の仕業

シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京都)

2024/02/23 (金) ~ 2024/02/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

鑑賞日2024/02/25 (日) 18:00

オスカー・ワイルドの「サロメ」は昨年7月にすみだパークシアター倉で上演された無名塾の公演(演出:江間直子)も観ており、その舞台も素晴らしかったが、今回の獣の仕業による公演はそれを上回る濃密で、まさに一瞬も目を離せない、息を詰めて観入る舞台だった。

まず驚いたのが森鴎外の翻訳を使用していることだ。鴎外がこの作品を翻訳していたことなど全く知らなかったのだが、調べてみると鴎外のものが本邦初の翻訳なのだという。
そして劇場が〔シアターバビロンの流れのほとりにて〕だ。サロメの舞台となっている土地とも重なり、まさにうってつけだ。ただ、最寄駅からの距離が遠いのが難点だが、2,500円というチケット代を考えれば多少のことは…、と思いつつも冷たい雨が降っているとなればやはり辛い(笑)。

この公演の完成度の高さは、一にも二にもサロメを演じた雑賀玲衣の圧倒的な演技によることは誰も口を挟めないだろう。ただそれが素晴らしすぎるが故に作品全体としては多少の減点要素ともなるのだが…(それで★5つにできなかった。後述)

【後日、詳しく追記予定です】

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