かなかぬち 公演情報 椿組「かなかぬち」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2024/07/11 (木) 19:00

    外波山文明率いる椿組がその前身であるはみだし劇場の頃から毎年行ない、夏の風物詩ともなっていた花園神社野外劇の39年の歴史に幕を下ろす作品「かなかぬち 〜ちちのみの父はいまさず〜」の2夜目を観た。
    この作品は戦後生まれで初めての芥川賞作家・中上健次が33歳だった1979年に、同年齢で意気投合した外波山のために書き下ろした中上唯一の戯曲だという。この作品をもって花園神社野外劇の終止符としようとするのは、やはり外波山の思い入れの強さだろう。

    (以下ネタバレboxにて)

    ネタバレBOX

    大テントの下、時折緊急車両のサイレンの音が響き渡る中で展開される物語の舞台は南北朝の時代の南朝・吉野からさらに山深く入った熊野の山中。かなかぬちと呼ばれる男が率いる盗賊団とかなかぬち以上に恐れられているその女房、母を訪ねて旅をしながら彷徨う幼い姉弟、流浪の芸能集団(その中にはかなかぬちを仇と狙う花若も紛れている)、三人の婆、落武者とその従者などが入り乱れて物語は展開していく。
    そしてそこに加わるのは両眼が金色で全身白く長い毛で覆われた巨大な獅子。この獅子が口を開けた時の舌がやけにリアルだった。

    松明(たいまつ)や篝火(かがりび)といった野外劇だからこそできる火を使った演出や、ラストの宙乗りなどの大仕掛け、旅芸人一座の劇中劇や神楽など観どころ満載で、2時間弱を満喫。

    ただ敢えて難を言えば、三婆や落武者とその従者といった登場人物は物語の展開上はそれほど意味をもっておらず、ただ観客の意識を混乱させることにも繋がっていたようで、ここらは整理した方がわかりやすかったかもしれない。

    なお、終演後には外波山筆による「さらば花園!!」の大垂れ幕が下がり、演技スペースにブルーシートを敷いての「毎日打上げ」も復活し(参加費無料。ただし翌日のためにカンパするのが礼儀かと…)、楽しい一夜となった。
    未体験の人は一度は観ておいた方がいい。

    因みに私自身がこの花園神社野外劇で最も思い出深いのはちょうど10年前に今回と同じく山本亨と松本紀保が主演した「廃墟の鯨」(作・演出:東憲司)だ。

    39年間、本当におつかれさまでした。

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    2024/07/16 16:40

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