白魔来るーハクマキタルー 公演情報 ラビット番長「白魔来るーハクマキタルー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2024/09/28 (土) 18:00

    この作品は2015年3月に初演されたものだが、コアな観劇ファンからは評価が高かったものの、一般の観客からはその残虐性に戸惑いがあがっていたものだ。大正時代に北海道で起こった熊害(ゆうがい)事件として有名なものには「三毛別羆事件」や「石狩沼田幌新事件」などあるが、この作品は日本史上最悪の熊害といわれる前者をモデルにしている。昨年来、熊が人間を襲う事件が頻繁に報じられ、その意味では初演時よりも観客に身近に迫ってくる感があるだろう。

    (以下、ネタバレBOXにて…)

    ネタバレBOX

    暗闇に吹き荒ぶ風の音に獣の声のようなものが混じっている。三味線の音。若い男が2人、女が2人、衰弱しきった様子で休んでいる。と、そっと近づく黒い影…出だしから不気味な雰囲気が横溢している。影はこの小屋に住んでいる老人で、暖かい鍋を持ってきたのだ。水は貴重だからと、洗ってもいない汚れた茶碗に注がれる。若者はスキー帰りに渋滞を避けようと脇道に入ったら、吹雪に巻き込まれ道を見失ったのだった。老人はこの電気もない小屋に冬の間だけ来るのだという。そして老人がその訳を語り始める…。

    大正の初期、開拓しただけ自分の土地になるという話に惹かれて、貞夫一家(貞夫夫婦、その子供の兄妹、貞夫の両親)がこの北海道の村に移住してくる。村長の大本や銀次をはじめとした村の面々は馬も持たぬ極貧の貞夫一家に馬を買ってやるなど、心から歓迎し、貞夫一家もすぐに彼らと馴染むようになる。が、そんな中で銀次の母親と娘が行方不明になる。そして…。
    白魔とは大雪による災害だが、この作品では大雪で食物がなくなった巨大な羆が村を襲ってくる。この羆は最初に女を食べたために、人間の女だけが食物と思い、女しか襲わない。

    ラビット番長といえば、ここ数年は将棋・草野球・介護を3本柱としているが、この作品はそれらとは全く路線を異にする陰惨な舞台で、血しぶきや熊が人間を喰う咀嚼音など、目や耳を覆いたくなる場面が多い。
    ただそれは人間の眼からみて残虐なだけで、獣にしてみれば空腹を満たした結果にすぎない。単にグロでそうした場面を創っているのではなく、「羆と人間とどっちが侵略者だ」というテーマを明確に打ち出すための手段ともいえよう。

    そして、それらの一見グロテスクな表現の底には開拓民たちの人間ドラマが流れている。殊にロシア人に犯されたアイヌの女性が産んだマタギの平吉の差別され続けてきた人生など胸が痛む。その平吉が“白魔の子”として処分されようとした赤ん坊を引き取って村を去るのだが、そこで終わらせずに、さらに衝撃的なラストを準備して、ラビット番長の実力が遺憾なく発揮された観応えのある重厚な作品となっている。ハッピーエンドではなく、肌を泡立たせるこのラストも際立って秀逸だ。

    個人的には今回の池袋演劇祭の大賞最右翼だと思う。

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    2024/10/02 04:50

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  • ご観劇ありがとうございました。
    レビューもとても励みになります

    2024/10/02 14:41

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