タッキーの観てきた!クチコミ一覧

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「羅針盤」

「羅針盤」

劇団龍門

明石スタジオ(東京都)

2015/04/23 (木) ~ 2015/04/26 (日)公演終了

満足度★★★★

自分の心の針は舞台を指した
いろいろな場面で選択を迫られるが、その選択とは...。
一見ハードボイルドな場面もあるが、全体的にはエンターテインメントのような仕上げである。テンポよくて最後まで飽きさせない、その観せる魅力を持った芝居であった。

ネタバレBOX

本公演での選択肢は、そう多く提示されない...それどころか究極の選択である。そぅ、自殺するか否かということ。
舞台セットは、奥に2階相当の高さに鉄道の陸橋が横断的に作られ、前方は事務所(探偵事務所、取立て屋事務所)をイメージしており、事務用の机と椅子が置かれている。また、上手の舞台裏はゲイバーの休憩室として貸しているという設定である。このセットはストーリーの展開をわかり易くしており、その演出効果は良かった。
人生における絶望感...父親からの虐待、ゲイという性癖の将来的悲観、過去の罪悔悟、それらの苦しみからの逃避が自殺という究極の選択へ向かわせる。しかし、人間はそう簡単に死ねないとも描く。ここに人間本質の力強さを観せてくれたようでホッとした。
芝居は”心の針はどこを指す”、の問いに人の優しい心に”光を射した”ようだ。
重たい選択と同時に、警官時代の同僚を裏切ったこと、浮気による夫婦喧嘩の果て、これらは別の意味での選択を迫ったようである。選択にも色々な次元があり、これらのシチュエーションが絡み、事務所に輻輳または錯綜して面白く観せるところは秀逸であった。そしてその脚本・演出を支えたのが、キャスト陣である。多少デフォルメしたキャラ設定ではあるが、その人物の魅力が十分出ていた。
ただ、大声なのか怒鳴り声なのか...感情に応じた発声をしていただけると、なお良かった。
全体を通じて観客に楽しんでもらいたい、そういう思いが感じられる好公演であった。

次回公演も楽しみにしております。
午後の素数

午後の素数

劇団超ダッシ

吉祥寺櫂スタジオ(東京都)

2015/04/24 (金) ~ 2015/04/26 (日)公演終了

満足度★★★

感情移入には... ウルトラチーム観劇
登場人物などで現世にいるのは、人間一人と猫一匹である。それ以外は死神、幽霊、霊猫など、死後(中有)の世界...物語は面白いが、その核となる部分の描き方が弱く、感情移入するまでにはいたらなかった。

舞台セットは上手にバス停留所とベンチ、下手は一段高くなった平舞台に、場面に応じてテーブルと椅子が置かれる。

ネタバレBOX

両親が交通事故死、夫は赴任先(カンボジア)で地雷を踏んで爆死し、相次いで親愛なる人が亡くなり、不幸のどん底にいる未亡人が主人公(神長亜矢香さん)。この主人公は生きる気力を失い自殺を考えている。そこへノルマを達成したい死神が現れ地獄(自殺は罪ということらしい)へ送ろうとする。そこに中有にいる両親、夫がなんとか自殺を阻止しようと死神に交渉もしくは力ずくで対抗する。そこに(霊)猫と両親が助けた猫(事故死の原因はその猫を助けたこと)が絡み、ドタバタ騒動が起きる。主人公を助け(自殺を止め)るような行動は感動する場面であるが、肝心の主人公に自殺しようとする憐憫や切迫した感情が観られなかった。
公演全体は面白いが、その助けたいという気持ちの高まりが伝わってこなかったのは残念であった。

次回公演を期待しております。
ドアを開ければいつも

ドアを開ければいつも

演劇ユニット「みそじん」

atelier.TORIYOU(東京都)

2015/04/25 (土) ~ 2015/05/11 (月)公演終了

満足度★★★★★

大好物な公演…次回が待ち遠しい!
料理屋二階の座敷を舞台に、一方(廊下を挟んだ座敷が観客席)から観るようになる。そぅ、父親が娘たちの様子、考え、思っていることを、こっそり覗いている感覚である。
姉妹のキャラクターがしっかり描き込まれ、その立場・生活状況などが相まって...人物が自然と立ち上がってくる見事な演出・演技であった。そして、姉妹だからこそ言い合える本音...。また観たくなるような心温まる、そんな芝居であった。

ネタバレBOX

姉妹のキャラクターは前述したようにしっかり描かれているが、逆に姉妹だから似ているところ、もしくは距離を置いている父親似のところ、亡くなった母親似のところはどこなのだろう。そんな家族を彷彿させるような光る科白があれば...。
舞台は、たぶん中流階級に育った四姉妹が母親の7回忌法要前夜の数時間に交わされた近況を通して、それぞれが持っている思いを吐露する。それはどの家庭にもありそうな等身大の姿であり、身内だから本音も言える。しかし、発者と受者の微妙なズレ...例えば長女が次女の結婚を心配する件は、次女にしてみれば長女がさっさと結婚して家を出たことへの負い目があるからの発言として受け止める。その緊密な会話が四姉妹それぞれの組み合わせで繰り広げられる。何か重大な事件が起きるわけでもなく、一軒、いや一室で坦々と時間が経過する中での濃密な会話劇...本当に芝居の醍醐味を感じさせてくれた。

次回公演も楽しみにしております。
あくた

あくた

戯曲本舗

プロト・シアター(東京都)

2015/04/23 (木) ~ 2015/04/26 (日)公演終了

満足度★★★

詩的な世界…
公演説明に書かれているような、詩的な世界観を感じた。物語ではあるが、抽象的な表現...自分には難解であった。
本公演の内容に興味があったが、アフタートークに篠原久美子 氏(劇団劇作家代表)が来られるとあり、専門家の見方なりを聞いてみたかった。

さて舞台は白い布で周りを囲み、床にも白布を敷いている。無色な世界が段々と変化していく様を見せる、ということらしい。しかし、最後までその白布を取り去ることなく、ほとんど科白で説明したようで、その意味で”詩的“だと思った。

ネタバレBOX

過去を想起するような内容...その時代の友達、出来事について語る科白は韻を踏むような感じである。少女が主人公であるが、大人へ脱皮する過程において、体とその発する言葉のニュアンスが一致しない。その違和感に戸惑い、苛立ちする様子が、舞台を歩き回る姿になっていたのだろうか。いずれにしても脚本はワークショップ等を経てブラッシュアップしたという。それだけ伝えたい内容を描いたということだろう。しかし、それは初めて芝居を観る、またはエンターテインメント作品に親しんだ観客からすると難しいと思う。その芸術性の高みを目指す芝居と大衆的に観せる芝居の狭間を感じざるを得ない。
自分のような地方出身者からしてみると、地方での観劇機会は東京に比較すると少ないため、「感動する」「楽しかった」など直截的で印象に残る公演で、観客の裾野を広げてほしいような...、観客の受け止め方は千差万別であることも間違いない。

次回公演もがんばって下さい。
谷間にカンパイ!

谷間にカンパイ!

劇団ズッキュン娘

シアター風姿花伝(東京都)

2015/04/22 (水) ~ 2015/04/27 (月)公演終了

満足度★★★★★

人間にカンパイ!
少しエロっぽいタイトルだが、内容はなかなか面白い。女性ならではの視点で描かれた「ズッキュン”娘“」達の色々な思い…そこには、どんな逆境や苦悩があっても笑顔で前向きに生きる。そんな逞しさが明るく楽しく展開する。

ネタバレBOX

主人公(モモコ=アイリさん)は、結婚を期にグラビアアイドルを引退する。これから幸せになるという時に乳癌が見つかり、乳房切除の手術を迫られる。そんな女性にとって大切な...その切ない思いを婚約者にぶちまける。そんな折、婚約者がバイク交通事故で死んでしまう。モモコが試練を乗り越えて力強く生きていこうとする姿がいじらしい。

脚本は女性ならではの嫉妬、妬み、意地悪という暗部から、励まし、愛情、協力という優しい面を観せる。その描き方はコミカルでありながら、絶望の淵から立ち上がる姿が、モデル親友、病院の患者仲間などの支えが観ていてホッとする。
公演全体を包み込むような温かい雰囲気...素晴らしかったです。
気になるほどではないが、ダンスについて一言…藤吉さんと他のメンバーの力量差が明らか。藤吉さんの腰回りのキレ、スピードはずば抜けて素晴らしく、その分目立ってしまった。

次回公演も楽しみにしております。
期期期鱗

期期期鱗

0 LIMIT

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2015/02/13 (金) ~ 2015/02/16 (月)公演終了

満足度★★★★

陽気から狂気へ…
グリーンフェスタ2015参加作品であり、一般審査員としてこの作品を審査させてもらった。その関係で感想は授賞式以前には公表しなかった。
なお、この感想は審査評を「こりっち」用に一部書き直した。
さて公演であるが、わざわざ”寸善尺魔“を思い知らせるような話である。プロローグの明るく快活な少女が、謎の転校生たちの言動・行動によって徐々に人間性が変質していく様が怖い。

ネタバレBOX

最初と最後では、舞台雰囲気が一変し、快活から狂気に転じるギャップに驚き息をのむ。
芝居としての観せ方は秀逸であるが、そのテーマ性なりについては疑問も残った。なぜ無理矢理に人間(それも我が娘)の暗部を抉るような経験をさせるのか、その必要性について理解が出来なかった。
タケルのミコト!【アンケート即日公開】

タケルのミコト!【アンケート即日公開】

劇団バッコスの祭

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2015/02/05 (木) ~ 2015/02/11 (水)公演終了

満足度★★★★

コメディタッチであるが怖い
グリーンフェスタ2015参加作品であり、一般審査員としてこの作品を審査させてもらった。その関係で感想は授賞式以前には公表しなかった。
なお、この感想は審査評を「こりっち」用に一部書き直した。

第一印象は、「レイシズム」を感じさせるような公演であった。
遺伝子操作、出産前の異常認識など、「尊厳」「残酷」の思いの狭間で苦悩する姿がよく現れていた。しかし、命の尊さを命題にしている割には、殺陣で何人殺害したのだろう。芝居である以上、ある程度の観せ方があると思うが、「生命」を問う命題に対する矛盾した行動に違和感を覚えた。
この公演の見所は次の点にあるのでは…。

ネタバレBOX

第一は、生命に対する「尊厳」とそれに対する「冒涜」という、“善・悪”の対立構図を描くことでより分かりやすく芝居を観せたこと。
第二に、難しいテーマに対し、現代的思考からかけ離れた時代設定(古事記)にすることで、固定されたイメージから解き放ち自由にそして幅広く受容できるように工夫していたこと。
そして殺陣などのアクションの魅力を盛り込む。
芝居を観せる力はあったが、テーマ・命題の表現矛盾が魅せる力を削いだて思う。その結果、観客の趣向(好き嫌い)が左右される。

さよならダースヴェイダー

さよならダースヴェイダー

劇団Spookies

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2015/02/26 (木) ~ 2015/03/02 (月)公演終了

満足度★★★★

好公演...初心者お勧めでした
グリーンフェスタ2015参加作品であり、一般審査員としてこの作品を審査した。その関係で感想は授賞式以前に公表しなかった。
なお、この感想は審査評を「こりっち」用へ一部書き直した。

”笑顔の向こうに明日がある”というフレーズに示されるハートフルコメディである。人は何かしら悩みを抱えているが、それを吐露すること、本気で物事に立ち向かう必要がある...という教訓的すぎるところが気になったが、そこは熱い演技力でカバーしたと思う。公演全体は初めて演劇を観る人にも分かり易く、楽しめる内容だった。心的探訪や時空間移動という、芝居ではよく用いられる演出手法ではなく、現実を直視した直球勝負の公演であった。

幕末!天命、投げ売りのクマさん

幕末!天命、投げ売りのクマさん

演劇企画ハッピー圏外

TACCS1179(東京都)

2015/04/17 (金) ~ 2015/04/22 (水)公演終了

満足度★★★★

やはり面白い!
さすが演劇企画ハッピー圏外の公演である、楽しく面白い芝居であった。ただ、前回の時代劇「宵闇よりも速く駈けて」(2014年5月 TACCS1179 俳協ホール)に比べ遊びが多かったと思う。車のハンドルも遊び(余裕)がないと危ないが、それが過ぎると危険であろう。公演でも度が過ぎると白けるが、本公演も序盤はずいぶんと緩い演出であった。しかし、タイトルにある”天命”と坂本竜馬が繋がってくると俄然魅せる芝居へ…

ネタバレBOX

この”天命”、坂本竜馬が受けるのではなく、一介の町飛脚が受けるところが面白い。
さて、飛脚の熊八は、夢と思しき中で浦賀沖にくる黒船来航を予期する。頻繁に近未来の出来事が事実となってくる。この出来事、実は神様からの天命によるもの。初めは神様(内堀優一 氏)の天命であったが、神様の人事異動(その発想もユニーク)になるため、引継ぎで後任の神様(彩島りあな チャン)がその後の天命を啓示(?)してくれる。熊八にはその”力”を活用し世に影響を与える術を知らないことから、坂本竜馬(黒藤結軌 さん)に乞われるまま神様からの天命を投げ売りし出した。ここから歴史書(小説)にあるような竜馬の活躍が描かれる。天命は小出しに伝えられるため、常に竜馬の傍にいなければならず京都、長崎まで呼び出される始末。熊八は愛妻・八重(澤木さやか さん)にも会えなくなり天命伝達の煩わしさも手伝い、途中で天命啓示の伝達を辞めてしまう。その後、竜馬は暗殺されるが、竜馬は死後のことを三通の手紙に託す。その一通は勝海舟×西郷隆盛の会談により江戸戦禍の回避へ繋がる…というハッピー圏外による新(珍)解釈を創り出す。面白い着想とそれを芝居として観せる演出は秀逸である。また、21名のキャストのうち、大半が複数の役柄を担い、最後まで飽きさせない芝居に仕上げるところが凄い。
演技では、ラストシーンの坂本竜馬の死に際…瞬きせず見得を切るような眼力は本当に迫力があった。

なお、序盤の呉服屋・若旦那の八重に対する恋慕な場面から、熊八と八重が結婚する迄が緩いような…。この緩さがラストの迫力ある竜馬暗殺場面との落差を演出して印象付けようとしたのだろうか。

しかし、人間は天命を受けても活用できない者もいれば、人を介してでも世の中に影響や変革を成す者がいる。その気になれるのか、立場が人を変えるのか。そんな形成をしていく姿が描かれていたようで興味深かった。

次回公演も楽しみにしております。
Heavenly Drop ~全ては物語~

Heavenly Drop ~全ては物語~

BIG MOUTH CHICKEN

ブディストホール(東京都)

2015/04/16 (木) ~ 2015/04/21 (火)公演終了

満足度★★★

世界に一輪だけの花…
「世界の平和はたった一輪の花が担っている。 そんな危うい世界の話である」が、その危うい雰囲気が感じられない。逆に本公演のモチーフである「花と華」のイメージが印象強い。キャストには花の名前が付けられ、その花言葉のような性格付がされている。確かに説明にあるようなエンターテイメントファンタジーであったが…。

ネタバレBOX

ストーリー展開にもう少し捻りがあると印象に残ったと思う。あまりにストレートであり、予定調和であることが早い段階で明らかになる。演出としての群舞(ダンス)と殺陣は観応えがあった。またメイクや衣装は花をイメージしたのでろうが、独特な感じである。
演技について、自分が観劇した日は、王様(ニシキギ マンサク役=三井伸介さん)が応援に現れる際、舞台中央の階段で躓き、剣を落としていた。本来なら切られていたであろうが…観せる山場だっただけに残念な演技になった。
公演全体としては、ビジュアル的で華やかであったが、もっと物語に掘り下げがあると良かった。また、ダンスや殺陣は観せていたが、台詞の場面になるとテンポが緩くなっていた。その体現の差が気になった。
せっかくこれだけのキャスト陣と魅せる美術をしているだけに勿体無いなかった。

次回公演を楽しみにしております。
職業「嘘つき」

職業「嘘つき」

Pudding☆Ring

遊空間がざびぃ(東京都)

2015/04/14 (火) ~ 2015/04/19 (日)公演終了

満足度★★★

楽しいが、さらに進化して…
タイトルからして、心魂を揺さぶる内容でないことは、容易に想像がつく。そのかわり、誰にもわかりやすく楽しめる芝居である。
当日パンフに「偽り」は、人の為と書き、その行為には色々あるようなことが記されていたが、やはり「嘘」をつくと虚しいと…。漢字の旁(つくり)遊びはここまで。

しかし、この公演は堂々と嘘(裏)家業をしている。その実態は…。

ネタバレBOX

地元密着の何でも相談、そして犬の散歩まで引き受ける何でも屋を標榜する表家業。その一方、AVの押売り通販、振込詐欺のような悪徳裏家業をしている。そんな事務所に、ほぼ同時期に2件の大金を手に入れる格好の依頼が舞い込む。さらに、その事務所でバイトしたい女子大生の面接、社長の元彼氏が現れ、ドタバタ騒動が起きる。
シチュエーションの妙、キャストのオーバーアクションによる笑い、とにかく観客を楽しませようという演出・演技が観て取れる。
出来れば、ストーリー展開がもう少しスムーズ(2つの依頼の関連付が強引)のようであり、もう一工夫あると面白かったと思う。
また、社長が元警察官で裏家業とは…出来れば、そのあたりの事情を膨らませて、元同僚(巡査部長間近)との関係も説明して欲しかった。
まぁ、あまり細かいことを言っても不粋か。なにしろコメディなのだから、難しく考えず楽しんだほうが得だろう。

次回公演も楽しみにしております。
見ズ溜マリニ映ル青空ハキレイデ。

見ズ溜マリニ映ル青空ハキレイデ。

訳アリ24畳

サブテレニアン(東京都)

2015/04/17 (金) ~ 2015/04/19 (日)公演終了

満足度★★★★

得した感じ…観応えあった
まず、客席反対側に本が平積してあり、作者なる人物がキャスト一人ひとりに本を渡しながら役柄(例えば、軍人、絵本など)を指定する。この段階でインプロかと思った。しかし、実際は異空間による並行展開する物語であり、それは観応えがあった。ただ印象としては教訓的すぎたこと、同じ場面の繰り返しがあるようなので、その場面の必要性についてもう少し説明が欲しかった。そして一番気になったのは…。

ネタバレBOX

物語の進行役が二人いるように感じた。つまり、物語の作者と物語の中の図書(館)がストーリーテラーのようで、現実と本の中(夢幻、幻想)の世界観の区別が曖昧になり、覚醒してから本公演のテーマなり主張にインパクトがなくなった。既に本の中で語られてしまったかのようだ。

本の中での話が前提である。そして、自分は誰か、何をしたいのか、あの日(時)に戻りたい、もっと自由で楽しいことがある、など人間か持っている願望が紡ぎ出される。しかし、隣の芝居は…の喩えのように実際は目の前の幸せを見つめていない、感じていない。そのことを認識しないから過ちをする。
本の中(内容)は変わらず、いつもハッピーエンドである。しかし、本の主人公はいつもと違い、もっと自由を望む。しかし、現実は厳しく本の中が恋しくなる。本を介して、その中の登場人物と読者(現実)の思いの違いが語られる。人間の内面・願望と現実との対比を見事に描き出した公演であった。
総じて若い役者陣であるが熱演であった。ただ台詞について、大声を張り上げているような場面もあり、一考が必要だと思われた(特にSEと被った時など)。

次回公演も楽しみにしております。
よかったら、共倒れ?

よかったら、共倒れ?

涙目キューピー

シアターシャイン(東京都)

2015/04/17 (金) ~ 2015/04/19 (日)公演終了

満足度★★★★

よかったら、友頼れ!
芝居としては、コメディタッチなところもあり大変楽しめた。同時に内容は、現代社会における課題の一面をブラックユーモアにして描いた視点も見逃せない。
女優陣は、下着姿も厭わず熱演していた。そう言えば、主宰の都上々 氏も当日パンフに「もはや菩薩級の存在である…」と最高の謝辞を書いている。小劇場にしては、思い切った舞台設営(観客席減)であったが、観客側からすれば、場面説明を容易に演出できていたと思う。
ただストーリーの流れが…。

ネタバレBOX

小劇場にしては、客席数を減らしてまで花道を作った。変形L字型に舞台は二分割にし、上手は主人公(荻窪えき)の部屋、下手がベットが置かれ、病院や状況によってラブホテルになる。
話は、元市議会議員の主人公が、縁もゆかりもない人の最期を看取る仕事を始める。孤独な人々を看取り続けて行くうちに、その仕事に対する空虚感、罪悪感なるものが芽生えたようだ。また、自身の性癖がレズビアンであることも、教え子との関係で認識し同居するようになる。この仕事と性癖を軸に周りの人々を巻き込み、または運命のように歯車が動きだす。ストーリーは面白いし演出も観せるが、スムーズな展開ではない。何がぎこちない…。無理して男優が女医を演じるとか、オビスポ(丹野薫)が、精神的に壊れていく、などは場当たり的には楽しめ、または別事件を彷彿させるが、主軸にあまり関係ない。段々と主人公の周りから人々がいなくなることは分かるが、強引な感じがした。
内容は実にシュールで考えさせる。
最後に、ラストシーンは観客によって捉え方が違うだろうが、ヤンキー娘を主人公の部屋に住まわせるのは…。上手はヤンキー娘のバカ騒ぎ、下手ば主人公の哀惜。同じ舞台場面の対比にしても余韻が無くなったようで少し残念であった。

次回公演も楽しみにしております。
トーマの頃を過ぎても

トーマの頃を過ぎても

Pal’s Sharer

ザ・ポケット(東京都)

2015/04/15 (水) ~ 2015/04/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

純色から多色化した人生…感動!
1995年に高校生だった少女が大人の女性へ変わって行く過程…悩み、苦しみ、嫉妬、悔悟などを経る姿が感動的である。さしずめ無色透明または白色から銀色へ輝いていく。教師の女性も含め、まだ全員が30歳代である。まだまだ年を重ね輝きを増して金色になるだろう。
登場人物は、教師を含め全員(9名)が女性である。本当に女子高生に見えるし、経験を積んだ大人までを違和感なく演じていた。
そして、話の底流には… 再演を望む声が多いのも頷ける。

ネタバレBOX

この公演の素晴らしいところは、脚本もさることながら、女子高生という多感な時期から女性として輝きが増す30歳代までを、その時期ごとのトピックを交え寄り添うように時が流ているところ。
暗転や衣装を代えるという視覚だけでなく、女性の内面が変化しているような錯覚を覚えさせる。その巧みな演出とキャストの見事な演技の相乗効果。それが最大限に発揮された芝居は、観る者の心を掴んではなさない。

次回公演も楽しみにしております。
さとがえり

さとがえり

えにし

OFF OFFシアター(東京都)

2015/04/15 (水) ~ 2015/04/19 (日)公演終了

満足度★★★★

温かいが、少しドキドキ…
若返えりには憧れるが、手放しで喜べないかもしれない。この公演で映画「ベンジャミン・バトン数奇な人生」(日本公開2009年)を思い出した。そして、悲哀というか怖さを感じたのを覚えている。
本公演でも、ラストシーンは少しドキドキした。

とても温かい気持ちにさせてくれる作品。作は、桑原裕子(KAKUTA)さんで、とても精力的に活動されており、5月には、やはり下北沢のザ・スズナリで公演(代表作品の再演)がひかえている。

さて、この“さとがえり”とは…。

ネタバレBOX

夫の三回忌に夫の郷里に帰ってきた妻…その容姿が自分の実娘(30歳過ぎ?)よりも若くなっていた。子供達はじめ親族の戸惑いがアイロニカルに描かれる。
母親にしてみれば、子供たちは幾つになっても子供である。しかし子供は既に成人し自分の生活や時間を持っている。そこに親と子であっても距離感が生まれている。その微妙なズレの感覚や、親の若い容姿に対する複雑な思いがよく現れていた。
一方、亡夫の故郷に来ているが、やはり親族に馴染めない感じや、その地方の身内意識が距離感を生む。この色々な距離感が時に錯綜し面白い。
公演全体としてはドタバタコメディのような場面もあるが、それだけではなく各登場人物の心情がよく描かれていた。
ラストシーンは、喪服の母親が黒いレースのヴェールをまくり上げる...その顔は眉ペンシルのようなもので皺を描いている。母親としての優しい思いがよく現されており、微笑ましかった。

実は、映画のラストは老人のように生まれて、最後は赤ん坊になってしまう。子供が生まれたが、会った時には同じような年代、父親として認識してもらえなかった。認識されないままの父子でいた期間はほんのひと時であった。そんな悲しい場面を想像し、母親がどう変貌したのかドキドキしたが...お茶目な幕切れにホッとした。

次回公演も楽しみにしております。
愛しきは

愛しきは

劇団 きみのため

テアトルBONBON(東京都)

2015/04/15 (水) ~ 2015/04/19 (日)公演終了

満足度★★★★

微妙な...
1945年7月から1948年頃までの戦中・戦後の動乱期の庶民生活...長屋住まいの名入れ(提灯)職人一家と隣家で大家の画家の日々の暮らしを描いた話。舞台セットは、上手に画家の家(アトリエ風)と下手に職人一家の土間と畳部屋・押入れが作られている。この舞台セットは見事であるが、脚本・演出には...

ネタバレBOX

違和感を覚えた。舞台は上・下手に二分割されているが、ストーリー的にはほとんど絡まない。なぜ同時並行して観せるのか。自分は、どちらの芝居にも集中できず、印象が弱くなった。
まず、上手の画家の日常生活だが、戦中・戦後を通じて生活レベルに大きな変化が見られない。そもそも非常時という雰囲気がなく、坦々と路傍の石を描くだけ。そのうち、画壇の大家の紹介で令嬢(人物画)を描くことになり、淡い恋心が芽生えるという”静”の話。
一方、下手の職人一家は、戦時中は父親も”鬼畜米英”と叫ぶ元気もあったが、敗戦によって押入れに閉じこもる生活へ。今では母親が生活の切り盛りをしている。子供達5人(男3人、女2人)は、長男が戦死、二男が闇商売、三男は共産主義者へ、長女は中学教師と結婚、二女はヌードダンサーになりドサ回り、と各人の道を歩んでいる。この戦後混乱期のドタバタした”動”の話。
この二つの物語はほとんど交わることなく、大家に家賃の差額として食事を届ける、もう一回は父親が自殺しようと家出したが死に切れず...隣家に上がりこむ、という場面のみ。もう少し隣人(大家・店子)関係を膨らませたドラマがほしかった。

次回公演に期待しております。
追憶のアリラン【ご来場ありがとうございました!】

追憶のアリラン【ご来場ありがとうございました!】

劇団チョコレートケーキ

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2015/04/09 (木) ~ 2015/04/19 (日)公演終了

満足度★★★★★

さすがの公演…
当日パンフとは別に、本公演で描かれる当時の状況(年表)や台詞(語句)の説明が書かれた別冊付録が添えられ、正確に伝えようとする姿勢が好ましい。
さて、公演は朝鮮半島を舞台に戦中(1941年)から戦後の朝鮮戦争(1953年頃)という特異な状況下における人間ドラマ。上演するには、現在の国家間情勢を考えると躊躇しそうな題材であるが、そこはしっかり向き合い重厚な作品に仕上げていた。戦争中という極限状態における不条理が丁寧に描かれ、観ている人の心魂に響く。多くの人は、誠実でありたいと願うところだが、その判断基準は時と状況によって異なる。それでも自分の信念を貫けるか…。
「残酷な事実・現実」と「釈明する動機・状況」の溝を埋める術があるのか。過去から現在にも続く怨嗟の連鎖…人間の尊厳、国家間の友好などの美辞麗句は建前だけ。その深い溝を覗きどのように埋めて行くかを考えさせられた。

その舞台は、後方に変形回廊のような階段舞台(時空間差の表現か)、前方に平舞台(床・地面)で、その状況が重層的に描かれる。また、当時の重苦しい雰囲気は、モノトーンの照明や低(重)音響等の技術で素晴らしい効果を上げている。もちろん役者の演技も確か。
本当に素晴らしい公演で感動した。
次回公演も期待しております。

よく喋るマダム達は、パクチーより食えない

よく喋るマダム達は、パクチーより食えない

東京ストーリーテラー

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2015/04/08 (水) ~ 2015/04/14 (火)公演終了

満足度★★★★★

テンポ良く
シアターKASSAIという奥行きのある劇場の特長を活かし、後景・前景の二分割した演出は面白い。舞台奥(後景)には資産家らしい瀟洒な居間、舞台前(前景)下手には探偵事務所の粗末なテーブルと事務椅子2脚…この対比は、人物描写にも生かされ、立ち位置によって主人公(興呂木 参次朗)、その助手(野村純平)と資産家の住人達の立場・振る舞いが印象付けられる。
そしてキャラクターという点では、タイトルにある“マダム=オバちゃん”達が強く、異色になっている。この公演で一番疑問に思っているのが、ほかならぬ、この愛すべき”オバちゃん“達なのだが…

ネタバレBOX

そもそも、この探偵事務所に依頼に来ること。主人公が断れない性格であり、事務所が金銭的に困っていることを承知しているほどの調査能力を備えている。やはり噂話(来来軒)やインターネットの口コミ情報は脅威だ。この調査能力があれば...などと細かいことを言ったら芝居の面白味がない。些細なことはさて置き、この芝居は推理ものであり、その性質上、観客の観る気を逸らさない。そして、登場人物のキャラクターが立っており、自然と笑みがこぼれてくる。そしてテンポに緩急があり、場面に応じた軽快感と人情感が上手く演出されており、観せる芝居になっている。また、この芝居のもう一つの特長として暗転が少ないこと、またはそれを感じさせないスムーズなこと。それゆえ、2時間10分という長時間公演にもかかわらず、最後まで飽きさせない。

今後の公演にも期待しております。
転人

転人

劇団メイカーズ

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2015/04/08 (水) ~ 2015/04/12 (日)公演終了

満足度★★★

もう少し主張の掘り下げがほしい
タイトル「転人」は、アメリカなどのモビリティ社会のイメージ…しかし本公演は、単に仕事が長続きせず、転職を繰り返す情けない男(若者)の話。東京芸術劇場ウエストホールという割と広い舞台にも関わらず、そこにセットされたものは、カウンターとスツール、テーブルとソファ-ベットという可動できるものばかりである。その理由は物語の進展とともに明らかになる。
そして、自分の関心は…

ネタバレBOX

どうして転職ばかり繰り返すのか。主人公の性格なのか、勤め先の環境や状況なのか、という舞台を構成する上での設定が説明されないこと。それが曖昧なまま進展するため、転職することが当たり前で、場面転換しても面白味がない。その場面転換=(薄)暗転が多く、それゆえ可動セットになっている理由であった。この公演には大勢のキャストが出演しているから、配置変えは容易にできるだろうが、観客からすると集中力がそがれる。ワンシーン...例えば主人公とアイドルが千紫万紅の中(舞台中央に花のサークルを作る)で会話するだけで場面転換をする。非効率というか非効果的な場面のように思えた。また場の盛り上げのためか、会員制クラブでの快楽(SM)趣向、それに続くベットシーンなどは、主人公の性癖(本心を曝け出すという伏線か)を表したいのか。いくつかそのような演出が観られ、脇道へ、またテンポが緩慢になったのは残念であった。
序盤から中盤にかけて、間抜け、おっちょこちょいというイメージを持たせたかったようだが、わざとらしく白ける。中盤以降、生きがい(商品開発)が見つかり必死?になる姿へ変貌...少し強引(予定調和)な感じもするが、とりあえずハッピーエンド。
この公演タイトル「転人」は”職”を転じるのではなく、”人間性=気力”へ転じることを表現したかったのだろうか。

次回公演に期待しております。
イン・ザ・ボイス

イン・ザ・ボイス

Media Works Produce

北沢タウンホール(北沢区民会館)(東京都)

2015/04/09 (木) ~ 2015/04/11 (土)公演終了

満足度★★★★

明るく元気な…
現代のインターネットの普及に繋がるような話と思ったが、そこはもっと広範な聴者(リスナー)を通したハートフルストーリーが展開する。ラジオ…それは顔が見えず、声だけで繋がるという心細さや不安さが垣間見える。それを承知の上で、電波を通して”心の家族“を作りたいと願う少女の切実な思いが描かれる。


ネタバレBOX

この物語はラジオという媒体(媒介)を通じて、家族(母親)の虐待から逃避するため、ラジオで”心の家族”を作りたいと訴えた少女の話と、ラジオ局で今ひとつ自信が持てず、その場その日暮らしをしているアナウンサーの成長する話の二重構成になっている。ある種のパラレル関係にある。
さて、ひょんなキッカケでラジオ番組”家族プロジェクト”のアナウンサーを任された女性...人として問題から逃げ出さず、真摯に向き合う姿に共感を覚えるが、その描き方があまりにストレートすぎた。
また、ラジオのリスナーで”心の家族”に立候補した人たちのバックボーンが不鮮明で、なぜこの擬似家族に名乗りを上げたのかが分からない。唯一ハッキリしているのがダンプの運転手ぐらい。この人たちの内、何人かの生い立ちなり現在の状況説明があれば、応募動機に納得感が得られ、共感と少女の嘘による裏切りによる落胆の差にインパクトを与えたと思う。その登場人物の掘り下げ、もしくは抱えてきた問題を浮き彫りに出来ればよかったと思う。演劇屁理屈を言えばツッコミ所が多いと思う。
しかし、明るく元気が出るような芝居であり、印象は悪くはない。
ラジオという放送現場をはじめスポンサー、クライアントの関係については、メディア露出も多い(アイドル)女優も出演していることから、十分承知しているだろう。少なくとも自分は、娯楽性を大切にして観てきた(この点に★1つ追加)。

次回公演も楽しみにしております。

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