バルブはFB認証者優遇に反対!!の観てきた!クチコミ一覧

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シェアハウス「過ぎたるは、なお」

シェアハウス「過ぎたるは、なお」

渡辺源四郎商店

こまばアゴラ劇場(東京都)

2019/02/08 (金) ~ 2019/02/11 (月)公演終了

満足度★★★

■80分弱■
現代社会に警鐘を鳴らす予見的演劇として興味深く鑑賞したが、波乱要素がたくさん仕込んである割にはおとなしい内容。もっと話を引っかき回して盛り上げることもできたのでは?

ネタバレBOX

確かに、淡々としているほうが不気味さは増すが…。あえてそれを狙った、とも考えられる。
懺悔室、充実の4LDK

懺悔室、充実の4LDK

トリコロールケーキ

浅草九劇(東京都)

2019/02/02 (土) ~ 2019/02/03 (日)公演終了

満足度★★★★

■135分弱■
合同公演とは言いながら、2団体が別々の劇をやり、最後に少しだけセッションする構成かと思いきや、まさかの一本モノ、ほんとに合同公演でやんの。その結果はといえば、両者が綺麗に溶け合うことはなく、トリコロールケーキが地蔵中毒に吸合されていた印象。人を食った作風のナンセンス劇団という点で両者は共通しているものの、話のスケールの大きさ、青臭い文学的熱、風刺的精神、ペシミズムと背中合わせの希望や理想、エグい下ネタなどなど、地蔵中毒はトリコロにない多くのものを持ち合わせており、より濃い口の地蔵中毒が薄味のトリコロを取り込んでしまったのは必然的帰結といえよう。
トリコロ観たさで観劇したので、トリコロ色が薄まったのは残念だが、それでも★★★★をつけたのは、当公演が両団体いずれの公演にもない特徴を備えていたがゆえ。それは合同公演ならではの、役者の頭数の多さ。全員横一列に並んでのユルユルなダンス(めいたもの)があったり、2劇団が合流しないと人手不足で醸し出せない“大勢でバカやってる感”がじつに愉快で、そこに惹きつけられた次第。
合同公演、またやってほしいです。

桜のその薗

桜のその薗

はえぎわ

ザ・スズナリ(東京都)

2019/01/31 (木) ~ 2019/02/06 (水)公演終了

満足度★★★★

■約100分■
私がはえぎわを観るようになったのは、主宰が岸田戯曲賞を獲り定評を得て以後。それ以前は舞台上でハダカになったり、かなりえげつない作風だったと聞くが、結成20周年の節目を迎えて初心に帰ろうと思ったのか、プチ先祖返りしたかのような一作。ハダカこそないものの、近年のはえぎわ作品の中では一番と言っていいほどエグ味が強く、不幸な人々の小さな幸せを淡いタッチで描いたこの数年の諸作品に惹かれる私の趣味には残念ながら合わなかったが、ひと工夫もふた工夫もある劇構造にべらぼうな吸引力があり、最後まで面白く観られました。

ネタバレBOX

はえぎわのパラレルヒストリーを描いたかのような、偽史的演劇作品。はえぎわと違ってすでに解散してバラバラになり、元主宰だけが劇作家として演劇に関わり続けている劇団の、解散後の冷ややかかつ惨い物語が劇団の元女優の視点で描かれるのだが、その女優自身は物語に登場しないという劇構造が面白い効果を生んで、最後まで飽かず観られた。語り部をつとめるその女優に、彼女が出会って間もない女優志望の若い娘をオーバーラップさせる趣向も、作品の妙味を倍加。
花の秘密

花の秘密

公益社団法人日本劇団協議会

赤坂RED/THEATER(東京都)

2019/01/24 (木) ~ 2019/02/03 (日)公演終了

満足度★★★★

■約125分■
●欧米産かと見まごうような、粋なコメディ。でもそれは脚本・演出・演技による味付けの賜物であって、話の筋立て自体はかなりコテコテ、吉本新喜劇だったなw
岩崎う大がじつに可笑しく、澤田美紀さんというかたがなんともなまめかしかったデス♪

『死が二人を分かつまで愛し続けると誓います』 『二度目の蝶々は遠回りして帰る』

『死が二人を分かつまで愛し続けると誓います』 『二度目の蝶々は遠回りして帰る』

ポップンマッシュルームチキン野郎

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2019/01/17 (木) ~ 2019/01/29 (火)公演終了

満足度★★★★★

■『死が二人を分かつまで愛し続けると誓います』鑑賞/約85分■
初演にあたる『黄金のコメディフェスティバル』版を、そのエッセンスを損なうことなく長編化し、より胸に響く劇へと昇華させた好編。初演版に皆無だったシーンの追加には勇気が要ったことだろうが、結果、それら諸シーンは劇をより盛り上げていた。

ネタバレBOX

追加シーンの最たるものは、画家の妻が仕事で関わる画商のくだり。死んで幽霊になった夫が憑依してまで妻に触れることで、憑依でもしない限り触れられない無念が伝わってきたし、画商(その実は画商の姿を借りた亡夫)の求愛を拒む妻の姿からは、いまだ冷めることのない夫への強い想いが伝わってきた。
夫の幽霊仲間に、初演にはいなかった“築地市場の霊”が加わっていたのには笑った。
わたしとわたし、ぼくとぼく

わたしとわたし、ぼくとぼく

劇団うりんこ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2019/01/24 (木) ~ 2019/01/27 (日)公演終了

満足度★★★

■85分弱■
役者が演じる、肉体を持った人物として“あの人”が現れないのは、何か狙いがあってのことか?

ネタバレBOX

同級生の“あの人”はゲイの主人公が小学生時代、(たぶん)初めて好きになった同性。理想的であるべき初恋の相手を舞台上には登場させず、観客の想像にゆだねたくなる気持ちはわかるが、その同級生と主人公がどんな関係にあり、共にどんなことをし、どこに惹かれたのかが描かれないと客としては感情移入できず、劇に没入できない。これでは、LGBTは私にとって観念的な存在のままだ。役者が演じる人物として初恋相手が肉体を持って舞台に現れ、何をされて、または何を言われて主人公がドキドキしたのか、胸がキュンとなったのか、その辺が描かれていれば、ゲイではないが恋愛感情くらいは知っている身、主人公にいくばくかは同情もできただろうし、もっと身を入れて観劇できたのに。
魚座はラッキー、素敵な出会いが待ってるかも。

魚座はラッキー、素敵な出会いが待ってるかも。

あひるなんちゃら関村個人企画

live space anima【2020年4月をもって閉店】(東京都)

2019/01/19 (土) ~ 2019/01/20 (日)公演終了

満足度★★★★

■45分弱■
鈴木朝代さん、とてもいいものを持っている。
初見の女優さんだと思っていたら、過去にKAKUTA『ショッキングなほど煮えたぎれ美しく』でそのお姿を一度見ていたようです…。
さらなるご活躍を期待しています♪

ハッピーな日々

ハッピーな日々

ハチス企画

アトリエ春風舎(東京都)

2019/01/18 (金) ~ 2019/01/27 (日)公演終了

満足度★★★★

■約100分(途中休憩込み)■
この演目を観るのが二度目のせいなのか、演出・演技が優れているせいなのか、その両方なのか、前に双身機関版を観た時よりも内容が腑に落ちた。つっても、わかりづらいくだりはまだまだ多々あったけれど。
今回初見の新訳版は従来訳ほどいかめしくなく親しみやすくて、若い岩井さんがウィニーをややポップに演じることでとっつきやすさが増していた。

ネタバレBOX

この作品って、問わず語りにしゃべり続けるウィニーが“聞き手”を求め続ける劇でもあるのだなあ、と、このハチス版を観て強く感じた。終活演劇と捉えていたけど、それは多面的な本作の一面にすぎないのかもしれない。
『死が二人を分かつまで愛し続けると誓います』 『二度目の蝶々は遠回りして帰る』

『死が二人を分かつまで愛し続けると誓います』 『二度目の蝶々は遠回りして帰る』

ポップンマッシュルームチキン野郎

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2019/01/17 (木) ~ 2019/01/29 (火)公演終了

満足度★★★

■『二度目の蝶々は遠回りして帰る』鑑賞/100分強■
作劇面でも笑いの面でも、もうひと押し。

ネタバレBOX

主人公にとって母親がいかに尊く大切な存在だったか、そして母親と過ごした日々がいかに幸せだったか。そこが描き足りないために、真相が明かされて以後もさほど心が動かなかった。配役ミスも感動に至れなかった一因か? 女優が素敵であればあるほど客は感情移入しやすくなり、母と息子の悲劇はそのぶん心を揺さぶる。今パッと思いついただけだが、たとえば吉田羊のような女優が演じていたら、感動は増したのではないだろうか?
まぁ、客席の9割を占める女性客(いつの間に女性の比率がここまでに!?)にとっては、母親役を誰がやるかはさして重要ではないのかもしれないが。
笑いが少なめなのは、コミカルなシーンが脚本段階で少なめなのも一因だろうが、劇団としての組織力が弱まっているのも理由では? 近年辞めた男優二人がいた頃は、キャスト間の連携がピタゴラスイッチのごとくバシッとキマって思わずゲラゲラ、ってことがよくあったのに。
28時01分

28時01分

演劇屋 モメラス

こまばアゴラ劇場(東京都)

2019/01/14 (月) ~ 2019/01/20 (日)公演終了

満足度★★★

■65分弱■
単なる奇譚。を超えるものには思えなかった。

『英雄』/『運命』

『英雄』/『運命』

多摩美術大学 演劇舞踊デザイン学科

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2019/01/12 (土) ~ 2019/01/14 (月)公演終了

満足度★★★★

■『運命』鑑賞/約85分■
柴幸男作・演出ながら、学生演劇らしい野放図さがあって、こちらは楽しめた。本当に柴作品?ってくらいハチャメチャでした。

『英雄』/『運命』

『英雄』/『運命』

多摩美術大学 演劇舞踊デザイン学科

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2019/01/12 (土) ~ 2019/01/14 (月)公演終了

満足度★★★

■『英雄』鑑賞/120分強■
ケータイ大手3社の争いをあの悲劇に上手く重ねている。でも、ただそれだけって印象。上手さを越えてくる何かがない。

タキシード

タキシード

財団、江本純子

ギャラリーLE DECO(東京都)

2019/01/10 (木) ~ 2019/01/13 (日)公演終了

満足度★★★★

■110分弱■
江本純子ウェブに出ている案内文を意識しながら観たけれど、本編とどうつながるのか、よく分からなかった。でもドタドタと騒がしくてバカらしくて、発狂演技は振りきれていて、楽しいひとときではありました。時事トークは、同じ時代、同じ国に生きているんだという実感を役者さんや他のお客さんと共有できて、いいですね。

AIABO皮果BOOM

AIABO皮果BOOM

ギブミー!くれない

新宿眼科画廊(東京都)

2019/01/05 (土) ~ 2019/01/06 (日)公演終了

満足度★★★★

■75分弱+アフタートーク■
旗揚げ公演にして、おそらくは解散公演。だって、大粒アッコは演劇ビギナー、ひさつねあゆみと億なつきは奔放すぎて、森桃子は素がナイーブそう、要するに、リーダーシップを取れそうなメンバーが一人もいないのだ。しかも、脚本提供者の一人・山西竜矢氏を招いてのアフタートークによれば「全員、我が強い」(山西氏談)上に「喧嘩が絶えなかった」(メンバー談)そう。これで、まとまるわけがない。今回ばかりは「旗揚げ」ということがモチベーションとなってなんとか上演まで漕ぎつけられたかもしれないが、今後はそのモチベーションも失われるわけで、第2回公演の実現は大いに危ぶまれる。
仮に行われるにせよ、“オール自主創作による公演”なんて絶対に目指さないこと!! 今回は岩崎う大、山西竜矢という二人の異才が優れた脚本を書き下ろしてくれた上、演出にも手を貸してくれた(岩崎作品については未確認)からなんとか観るに耐える公演になったが、森桃子、ひさつねあゆみ各氏によるソロパフォーマンスは申し訳程度のストーリーがあるばかりでセリフすらなく口から出るのは絶叫と悲鳴のみというお粗末さ、山西・岩崎作品の幕間に余興的位置づけで演じられたから許されたようなものの、仮に“オール自主創作公演”となり、あの手合いの作品ばかりで公演が埋め尽くされたら、少なくとも私は耐えられない。
そういうわけで、第2回がもしあるのなら、山西・岩崎両氏に匹敵する作家の助力を仰ぐことが必須条件となろう。
いや、可能ならば、引き続き両氏に脚本の寄稿をお願いするのがよいのではないか?
話に笑いを織り込める両氏の作なら楽しんで観られるし、役者としての能力が未知数の大粒氏を除く3氏についてはコメディエンヌとしての資質がはっきり認められるので。
少なくとも私は、このメンツによるシリアス芝居なんて観たくないし、そんなものは他の客も喜ばないだろう。
今回、★★★★を付けたのも、中核に両氏の優れた書き下ろし作品があり、奇想と笑いをフィーチュアしたこの2作品を面白おかしく演じる力がこの座組にあったからである。
岩崎う大氏の短編は、筒井康隆の昔のSF短編にこんな話があってもおかしくないと思えるくらいに奇抜でブラックな発想を“女だけの座組”が生かされるように上手く作品展開した佳編。
山西竜矢氏の短編は奇想にポエジーが加味されて不思議な味わいを醸し、こちらもたいへん面白く観た。
しかし、岩崎氏も山西氏もそれぞれ森桃子、億なつきの盟友であり、知り合いのよしみで格安ないしはノーギャラで脚本を引き受けたに違いないが、仮に条件が悪くともこういう仕事は受けておくべきだなあ。
岩崎氏については、すでに私はその劇団の顧客だが(って2作品しか観てないけど、今後も観続けたいと思っている)、山西氏の存在は当公演をもって初めて知り、主宰するピンク・リバティの7月公演を観ることをすでに決めている。つまり、山西氏はこの団体への脚本提供で客を一人増やしたわけであり、その脚本提供には波及効果があったわけだ。
いや、本当、抜群に面白かったので、増えるお客さんは一人ではきかないだろう。
ついでながら、山西さんは持ち前の明るさと関西人らしいざっくばらんな話術でアフタートークも盛り上げてくださって、人物にも好感を持ちました

ネタバレBOX

山西作品には度肝を抜かれた。「口内夜(こうないよ)」って、どんなアタマをしていたらそんな発想が出てくるのか?
新年工場見学会2019

新年工場見学会2019

五反田団

アトリエヘリコプター(東京都)

2019/01/02 (水) ~ 2019/01/05 (土)公演終了

満足度★★★★

■200分弱(途中休憩込み)■
上演時間3時間を予定しながら、前はもっとオーバーして4時間近くやっていたのに、今回はこのボリュームで収まってしまって、なんだか物足りない感じ。あの過積載感がこのイベントの醍醐味なのに。シアターカンパニーである五反田団主催のイベントなのだし、融通は利かせられるのだから、これまで通りもっと長々とやってくれないものか? 終演後グッタリするぐらいでなきゃ、新年工場見学会を観た気がしない。
とはいえ、最後の最後に登場するポリスキル・ガールズの中に、「今年は不参加」と聞いていた内田慈さんの姿があったのは嬉しいサプライズでした♪

ネタバレBOX

いろんなタイプの演劇の“ニセモノ”をやるのが恒例だったハイバイは、今回、特定の種類の演劇を真似ることはせず、“何がネタ元かはハッキリしないけれど、それでもどこかで観たような演劇”を披露。私の観劇数が少ないせいか、観劇傾向が偏っているせいか、既視感はさほど感じず、“こういうの、あるある”とも思わなかったけれど、気取った感じや勿体ぶった感じがバカバカしく、面白かった。
五反田団の演目は、服のネット通販で成り上がったあの男がモデルの劇。スポンサーだからなのか大手マスコミが叩かないあの思い上がった俗物野郎を思いっきりおちょくってくれて、溜飲が下がりました(笑)。
さらばコスモス

さらばコスモス

世界劇団

こまばアゴラ劇場(東京都)

2018/09/22 (土) ~ 2018/09/24 (月)公演終了

満足度★★★★★

■約75分■
“外からの影響を一切受けず、演劇という表現形態を独自に作り上げ独自に進化させた?”と疑いたくなってしまう、片山さつきが「離れ小島」と呼んで批判された某地の劇団によるガラパゴス的劇作品(とあえて書かせていただきます)。
そう言いたくなるくらい、これまでに日本で観てきたどの演劇にも似ていない。
劇効果を高めるために大ボリュームで音楽を流し、絶叫調のセリフが飛び交い、人間心理の機微、人間関係の綾などといったしゃら臭いものは一切描かれず、音楽に頼ることなくボソボソとした自然な会話のみによって人間関係の機微を浮かび上がらせるシアターカンパニー・青年団とは真逆の作風。
これもあえて青年団の逆をやったわけではなく、やりたいことをやりたいようにやったらたまたまそうなっただけなのに違いない。
劇にはある母娘(おやこ)が出てくるのだが、母は継母が夫の連れ子をいじめるような激しさで実の娘を罵り倒すばかりで、そこには“愛憎相半ばする”といった親子ならではの微妙な心理は微塵もなし。
なぜなら作者が描きたいのは世界開闢にまつわる大きな大きな物語であって、大きな大きなこの世界の構成単位に過ぎない一人一人の人間がどんな思いで日々生きていようが知ったこっちゃないのである。
しかし、小を捨てて大を取った劇世界はたいそう魅力的。マクロな想像力が紡ぎ出すでっかいでっかい作品世界に圧倒された。

ネタバレBOX

被造物であるお父さんが頭を斧で叩き割られてそこから世界が生まれた、との仮説が楽しい世界開闢演劇。その世界にまたお父さんが生まれ、その頭からまた世界が生まれ…という無限ループを想像させる、ウロボロス・サークルのような世界観に惹きつけられた。
高校演劇サミット2018

高校演劇サミット2018

高校演劇サミット

こまばアゴラ劇場(東京都)

2018/12/27 (木) ~ 2018/12/29 (土)公演終了

満足度★★★★

■盛岡市立約50分、世田谷総合65分弱、精華70分弱■
盛岡市立高校『月面、着陸。』に出会えたことがなによりの収穫。他2校の作品にポストドラマ演劇の影響が感じられるのに対し、盛岡市立はそんなプロ演劇界の流行なんてどこ吹く風と、やや冴えない男生徒を主人公に“どこかパッとしないけれど、それでも充分キラキラしている青春期”を嫌味なく描いて清涼。笑いや歌やダンスも交え、親しみやすいドラマに仕立てている。恋、部活など高校生にとって身近な小世界を描く一方、月という大きなものとの接触(?)をも描くことで、劇に奥行きを出している点もいい。ことさら地域色を打ち出さない点にも好感。
地域色をことさら強く打ち出すのはコンクールなどで審査員を務める大人たちへの媚びではないか? 点数稼ぎのためのさもしい小細工ではないか? 私は時々そう考える。だって、生まれ育った土地は地元の高校生にとっては所与でしかなく、そこから離れない限り、郷里の価値なんて分かりっこないだろうに…。
前説によれば、作者は岩手県内にある別の高校の女生徒とのこと。高校生でこれだけのものをものすとは末恐ろしい。
しかし、話は戻るが、プロ演劇高校演劇を問わず、どうして演劇の作り手はこうも流行りに流されやすいのか? 脱ドラマ、シーンの反復、マイクの導入、「再演」から「リクリエーション」への呼び変え……。何かが流行ればすぐに真似して、浅ましいったらない。本作の作者を見習え。

愛犬ポリーの死、そして家族の話

愛犬ポリーの死、そして家族の話

月刊「根本宗子」

本多劇場(東京都)

2018/12/20 (木) ~ 2018/12/31 (月)公演終了

満足度★★★★

■約125分■
一筋縄ではいかない女心、ビミョーすぎて名づけようのない人間心理を描いた、なんともねもしゅーらしい作品。今作は、そのねじれた心理のねじれっぷりがこれまで以上に激しく、そのねじれっぷりを描くために脚本演出両面でいろんなチャレンジが為されているが、それらが実を結ばないまま終わってしまった印象。きたるべき傑作に向けた習作と捉えるべきか?
…というわけで評価は★★★が妥当かと思うが、急遽振られた難役を代役として見事に演じ抜いた藤松祥子の頑張りに免じて、★★★★とします。

ネタバレBOX

両親がいなくなり、飼い犬も死んで、四人姉妹だけになってしまった家族の話。長女次女三女と大なり小なり難を抱えるそれぞれの夫との関係、そして、22歳なのに容姿口調とも幼女のような唯一未婚の引きこもりの四女と年輩売れっ子作家の関係が描かれる。
四女・花がもともと愛読者でツイッターを通じて知り合いになるこの既婚の作家は、世俗的欲求を超克した仙人さながらのたたずまい、話しぶりの裏に中年の淫欲を隠し持つ曲者。言葉巧みに取り入って花の処女を奪い体の関係を結ぶのみならず、花に内緒で片足の悪い三女とも契り、ベッドでの行為によって他方の足まで傷つけ三女を車椅子生活に追い込んでしまう。さらに、娘の存在を隠していたことも発覚し、作家を「お父さんのように慕っていた」花は何よりもこの事実に傷つき、一度は関係を解消。なのに、またすぐ“関係の再開”を求めるのはどういった心理によるものなのか?? この点がセリフとしてもっと的確に表現されていれば、本作の完成度は増したはず。100パー分からせる必要はないけれど、せめて85パーくらいは分からせてくれないと、客はモヤモヤした気分のまま劇場を去ることになる。さまざまな脚本演出上の工夫も、くだんのセリフがうまく表現されてさえいれば、より効果を発揮したと思うのだが…。
せかいのはじめ

せかいのはじめ

無隣館若手自主企画Vol.26 中村企画

アトリエ春風舎(東京都)

2018/12/22 (土) ~ 2018/12/30 (日)公演終了

満足度★★★★

■A鑑賞/90分弱(舞台転換休憩込み■
中村奏太作の一人芝居を、作者含む4人がそれぞれ別キャストを使って演出。とても面白い試み。脚本改変自由というのがミソで、Aで観られる2バージョンもまったく異なる味わいを持ち、観比べる楽しさを満喫。
当パンに【脚本改編度:50%】とある作者演出版が、タイトル通り「せかいのはじめ」を扱いながら、同時に「はじめ」という名の人物の「個人のはじめ」を物語るのに対し、【改編度0~100%】の筑駒演劇部顧問・平田知之版ではとある実在人物の「個人のはじめ」が語られるばかりなのだが、演じ手の山田舜也という人のキャラクターが味わい深く、これはこれで楽しめた。
総じて中村版は「はじめ」の描写で惹きつけ、平田版は「おわり」の描写で惹きつける。
しかし何よりも讃えるべきは原戯曲。作者演出版も【改編度:50%】とあって、原作そのままではないのだろうが、世界開闢と個人の開闢を結びつけた脚本は普遍性に富んで力強く、4人と言わず、もっと多くの演出家による舞台化が期待される。
Bプログラムも楽しみ。

金の犬

金の犬

トリコロールケーキ

新宿眼科画廊(東京都)

2018/12/21 (金) ~ 2018/12/25 (火)公演終了

満足度★★★★

■約70分■
犬橇の話がいちばん可笑しかった。

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