満足度★★★★
■盛岡市立約50分、世田谷総合65分弱、精華70分弱■
盛岡市立高校『月面、着陸。』に出会えたことがなによりの収穫。他2校の作品にポストドラマ演劇の影響が感じられるのに対し、盛岡市立はそんなプロ演劇界の流行なんてどこ吹く風と、やや冴えない男生徒を主人公に“どこかパッとしないけれど、それでも充分キラキラしている青春期”を嫌味なく描いて清涼。笑いや歌やダンスも交え、親しみやすいドラマに仕立てている。恋、部活など高校生にとって身近な小世界を描く一方、月という大きなものとの接触(?)をも描くことで、劇に奥行きを出している点もいい。ことさら地域色を打ち出さない点にも好感。
地域色をことさら強く打ち出すのはコンクールなどで審査員を務める大人たちへの媚びではないか? 点数稼ぎのためのさもしい小細工ではないか? 私は時々そう考える。だって、生まれ育った土地は地元の高校生にとっては所与でしかなく、そこから離れない限り、郷里の価値なんて分かりっこないだろうに…。
前説によれば、作者は岩手県内にある別の高校の女生徒とのこと。高校生でこれだけのものをものすとは末恐ろしい。
しかし、話は戻るが、プロ演劇高校演劇を問わず、どうして演劇の作り手はこうも流行りに流されやすいのか? 脱ドラマ、シーンの反復、マイクの導入、「再演」から「リクリエーション」への呼び変え……。何かが流行ればすぐに真似して、浅ましいったらない。本作の作者を見習え。