ムサ×コジ【ご来場ありがとうございました!】
X-QUEST
THEATRE1010 ミニシアター(東京都)
2011/07/21 (木) ~ 2011/07/24 (日)公演終了
満足度★★★★★
イチバン!
今までのX-QUESTの舞台で確実にトップだと思う。照明、音響、舞台構成とも素晴らしい。そして、トクナガの本、演出、ともに秀逸だった。市川~、ダイエットして戻ってこ~~い!!
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
序盤、武蔵と小次郎が真剣に戦おうとする中、セカンド武蔵とセカンド小次郎が登場する。彼らはそれぞれの影だ。つまり、俺はお前でお前は俺ってやつだ。笑
この展開で大爆笑してしまう。格闘アニメで、影が登場したのは確か、「北斗の拳」だったような気がする。
更に、サード、フォースとそれぞれの影キャラクターも登場し、主役のムサコジより、彼らの闇の声(つぶやき)がめっさ、煩い。笑
もう、このシーンで割れんばかりの爆笑があり会場を沸かせる。殆ど少年ジャンプの世界感だ。やがて戦いが始ると銀のニョイ棒を振る効果音と一緒に8人のキャラクター達の超人的なアクションが観られるのだから、ワクワクドッキドッキなのだ。
こう書いてしまうと物語性なんてないんじゃないかと誤解されそうだが、巌流島で一騎打ちの筋立てはきっちり描写してあるのだから、舞台構成のレベルは高い。更に舞台上で繰り広げられるバトルコメディはフォークダンス・オクラホマミキサーを軸にヒップホップにアレンジし、踊るように斬り合いと立ち廻りをやって見せるのだから壮絶にしてコミカルだ!笑
今回、特に素晴らしいと感じたのは舞台上に配置させるキャラクター達の立ち居地だ。踊りながら、格闘しながらきっちりと計算された位置に収まるその場面を観ると鳥肌が立つほどゾクゾクしてしまう。こういった仕掛けはトクナガの天才的なところだが、思うに、トクナガは舞台を横からではなく、天から透けて見えるんじゃないかと疑ってしまうほどの才の持ち主だ。
だから想像するに、舞台を上から観るとリングの上で踊ってるコマは流線的な円を描いてメリーゴーランドのように回ってるに違いないのだ。今回、武蔵役の塩崎こうせいがあまりにも素晴らしい。まるで「ドラゴンボール」の猿を観てるようだった。笑
そうして舞台で表現される小細工やコネタやセリフがこれまた絶妙なのだ。自由奔放なアドリブも楽しかった。格闘シーンの殆どが銀のニョイ棒を使っていたが、これに照明が当たると闇夜に輝くいくつもの光の乱舞が美しい芸術でもあった。格闘アクションでも、コメディでも魅せた。大満足な舞台だった。次回も観たい。
【公演終了!次回公演は12月!!ザムザ阿佐谷!!】鋼鉄の処女
劇団鋼鉄村松
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2011/07/22 (金) ~ 2011/07/24 (日)公演終了
満足度★★
学芸会を観ているよう
たぶんきっとコメディ。しかしコメディとして観たなら弱すぎる。ストーリー重視とするなら演技力がイマイチ。年間の観劇数が多い分、しかも案外、いい芝居を観る機会に恵まれている分、どっちつかずな芝居には辛口になってしまうのでご容赦を。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
ジャンヌダルクの物語を半ば忠実に表現していたものの、青髭を登場させた事で、コミカルにせざるを得なかったのだろうか。序盤から衣装、キャストらのコミカルな動きを観て、やれやれ・・(^^;)状態。
舞台をチェス版に見立てると、その上でちょこまかと動くキャラクターはまるでチェスのよう。チェスには当然のごとくキングやクイーンが存在し、傭兵も居てるのだから、チェスゲームにはもってこいの物語だ。
この劇団は数年前にも一度観ているが、きっとこういったコメディ的な演出で突っ走るのだろうな、と思う。何故って過去の作品と描写が全く変わってないからだ。当然のことながら好き嫌いの好みは分かれると思うが、ワタクシは途中で退出したかった位、だらけた。
それでも、そこそこ笑える箇所はあって、それだけが望みだった。
玄朴と長英
ピーチャム・カンパニー
ART SPOT LADO(東京都)
2011/07/23 (土) ~ 2011/07/30 (土)公演終了
満足度★★★★
拍手がなりやまない
深層心理をえぐるような濃密な二人芝居だった。幕後、会場から拍手が鳴り止まないので八重柏泰士が手で制したほどの素晴らしい舞台。
伊東玄朴と高野長英の二人が真山青果の筆によって議論を戦わせる緊密な対話劇。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
1845年(弘化2)3月末、江戸・御徒町の蘭学医・伊東玄朴の家を、火災のため伝馬町の獄を一時釈放となった旧友高野長英が訪れる。長英は帰郷するための旅費を貸せと迫るが、玄朴は拒む。理想家肌で激情に駆られ尊大な長英と、現実家肌で冷静な玄朴との対立は、蛮社の獄や渡辺崋山の死をめぐってさらに深まり、喧嘩のすえに長英は金を借りずに去っていく。しかし玄朴は「俺の心の底の底まで入ってきて心を苦しめるが、それで同時に一粒の寂しい種を置いていく奴なんだ・・。」と長英を思いやる玄朴の友情は変わらない。
金を借りる側の長英が半ば威張って強引に暴力的に「金を貸せ!」とのたまい、金が借りられない状況に陥ると今度は母親をダシに泣き落とし作戦で借りようとする傲慢さに思わず笑った。一方で長英の自分の思い通りに吹く笛に踊らされまいと、頑なに断る玄朴の情景が哀れだった。
観劇前に本を読んだことが効を奏して解りやすく楽しかった。性格対比な2人の対立はある意味、恋人同士の争いにも似た会話の攻撃があって、面白かった。
「イキザマ」
RISU PRODUCE
シアター711(東京都)
2011/07/22 (金) ~ 2011/07/31 (日)公演終了
満足度★★★★
レスラーのイキザマ
黄金プロレスを舞台に、その世界に生きる男たちの葛藤を描写した舞台。
浜谷康幸は「獏天フィルム演劇企画部」でよく観ていた役者だ。彼はアクションに相応しい身体つきをしているが今回もそのたくましい身体を武器に秀逸に演じていた。お馴染みの役者を数々の舞台で拝見できるのはこの上もなく嬉しいことなのだ。笑いの殆どは松本がかっさらう。彼の書く笑いは本当に絶妙で可笑しい。会場のここそこで笑いの渦が起こる。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
黄金プロレスではそこそこ強靭なプロレスラーが所属していたが、新たにプロレスラーを募集することにした。やってきたのは何とも使えそうにない軟弱な輩たちだった。その中に38歳の見込みのありそうな身体つきの大村がいたが、38歳という年齢はレスラーにとって致命的な年齢だったのだ。
しかし、黄金プロレスの社長らは彼らをレスラーとして一人前になるまで面倒をみようと決意する。しかし、大村は7年前から若年性アルツハイマーにかかっていたのを秘密にしたまま特訓する毎日が続いたのだった。
大村はこの病気を知りながら、プロテストに受けにきたのだが、そう決めるまでには自分の中で絶望やら恐怖心など様々な葛藤があったが、ある時期、自分をみつめ直すことで心を解放することが出来たのだった。そうして最後に遣り残したことは何か、と自問自答したとき、少年時代に祖母と一緒にTVで観たプロレスだったのだ。レスラーになりたい。そう熱望しここにやってきたのだ。
それぞれのレスラーが命を懸けて人としてのイキザマをリングの上から伝える物語だ。
キャストらはこの舞台の為に身体を鍛えたのだろうか?舞台上に張ったリング上での練習シーンがさまになっており、また、幕後の松本の挨拶のグダグダ感も人間らしくて素敵だった。次回も観たい。
だめのすけ、バスに乗る。
映像・舞台企画集団ハルベリー
Geki地下Liberty(東京都)
2011/07/20 (水) ~ 2011/07/24 (日)公演終了
満足度★★★
昭和のテキスト
ストーリーもギャグも昭和。昭和が悪いというのではないが、ギャグに関しては古いと笑えないのだ。オープニングの出だしで、「をを~、やるな!!」と感じたものの本編はぐちゃぐちゃ。しかしエンディングでこれまた美しい光景に。幕後、いずみよしはるがデヴィ夫人と被災地にボランティアに行った話が本編よりも感動した。物や金よりも人手が足りないとのこと。被災地での暮らしを芝居にすればいいものを・・。それにしてもデヴィ夫人のボランティアって何をしたのだろうか・・?
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
だめのすけ3人を立派な俳優にすべくバスガイドの研修に送り込んだ芸能事務所。ここで彼らは研修どころか彼女を作ってしまうわけだが、物語の主軸がぶれて、研修よりもバスガイド達のコネタやだめのすけ3人のコネタ三昧になっていた。
全体的に緩くグダグダなコメディなのだが、太田愛子役の関麻衣のコネタには笑ったし、下着姿で登場する展開にも笑った。関が後ろの方に引っ込んでも目で追っていたら、後ろでもその表情はかんなり可笑しくて、面白いキャラクターだなと、関心してしまった。
舞台上に何度か登場するおとうさんと天国の番人のキャラクターはちょっと引いた。この場面こそが昭和のテキストなのだが、もうちょっとセリフで笑わせるセンスが欲しい。何も考えず、緩いコメディを観たい方にはお勧めの舞台だ。そこそこ楽しめて、そこそこ笑える。
ゆすり
アル☆カンパニー
ザ・スズナリ(東京都)
2011/07/21 (木) ~ 2011/07/26 (火)公演終了
満足度★★★★
禁じられた恋
顔面神経痛のきみこ役を演じた井上加奈子が、顔面をヒクヒクさせるさまは流石。平田満は終演後、舞台挨拶をされたが、その話し方に人柄が滲み出ていて好感を得た。全体的に三人の演技力にソツはないが、日頃から小劇団の役者らの秀逸な演技力を目にしてるせいか、小劇団役者らと演技レベルに大差はない。むしろ、彼らより小劇団の優秀な役者らの方が上手い!と感じた。そう感じるという事は、ワタクシ自身が日頃から良い芝居を観ているということなのだが・・。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
長谷川きみこの部屋を舞台に30年ぶりに安藤が訪れたことから始る人間模様。
安藤はかつて長谷川アパートで暮らしていた。自分の窓からきみこの部屋が見えるのをいいことに、時々覗いて、きみこの様子を伺っていたのだった。そんなある日、安藤はベッドできみことその兄が愛し合っている光景を見てしまう。
一方で兄ときみこは近親相姦の構図に罪の意識を感じて、苦悩した挙句、きみこの双子の妹・くみこを作りあげ、くみこと兄が愛し合ったかのように思い込んでしまう。そうすることによって、明日からちゃんと兄妹で居られるんだ、と。
しかし、きみこは兄との過ちを「世界の終わり」と題した日記に書き込んでいたのだった。
こうしてきみこは全てを記憶から消し去って何事もなかったように結婚し、やがて離婚し兄は独身のまま時は流れる。そんなある日、30年ぶりに父親の葬儀に訪れた安藤から、兄は妹との過ちをネタに自分に300万円を投資してくれと、強請られる。未だにきみこを愛している兄はこの強請りをきみこに知られまいと努力をするのだが、きみこは過去の出来事をすっかり思い出してしまうのだった。自分の身代わりに立てたくみこという存在そのものも・・。
兄と妹の運命に揺さぶられた愛を起点に強請りをする安藤の人生をも炙り出す舞台だった。サスペンス的な要素の強い物語りで構成もしっかり。どちらかというと大衆向きな演劇だ。
黒椿 ~Japanesque Vampire~
タンバリンステージ
あうるすぽっと(東京都)
2011/07/16 (土) ~ 2011/07/24 (日)公演終了
満足度★★★
恋愛版ヴァンパイア
舞台はパフォーマンスミュージカルといった感覚。意外に和泉元彌,が舞台上ではきっちりと映える。着物の着こなしも流石に綺麗だった。その着こなしが乱れるのが本人は許せないらしく本番中でもその乱れを直しているところをみると、やはり、躾なのだろうか・・。アフタートークでも流暢にしゃべりまくりまるで、コロッケのよう・・(^^;)
世の中が節電ブームなのに空調が寒過ぎ!
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
芝居の物語性では満たされない舞台だが、視覚的には美しい舞台だったと思う。キャストらの衣装が美しいばかりか、しっかりと舞台上では絵になっており、前田希美の立ち姿などは本当に美しく一枚の日本画から抜け出てきたようなシーンだった。
江戸の町を舞台に、ヴァンパイヤに家族を殺された神楽が復讐の為にヴァンパイヤ狩りを始める。しかし、煉獄というヴァンパイヤと知らず知らずのうちに恋に落ちてしまった神楽。一方で、その昔、神楽の弟・小太郎はヴァンパイヤの凶夜に殺されそうになるも、生きたい一心で凶夜に乗り移ってしまったのだった。
凶夜が小太郎と知らずに愛する神楽の為に煉獄は凶夜を成敗しようとするも、戦いの最中で凶夜が小太郎だと悟った神楽は凶夜を庇って煉獄を刺してしまう。抗う事が出来ない運命に動かされた恋愛版ヴァンパイヤ。
舞台はコミカルなシーンも多く、また和泉元彌のアドリブも多かったようで案外、楽しめた。ただ舞台上で繰り広げられる情景はエンタメとして中途半端な気がした。その理由は演技力でしっかり見せる舞台ではなくショー的なパフォーマンスの色が濃かったぶん、歌と演技力の下手なキャストも居たりして、満たされなかったからだ。
個人的に役者の演技力を重視するワタクシには今一つ、足りなかった。
バンカラ
劇団スパイスガーデン
ブディストホール(東京都)
2011/07/19 (火) ~ 2011/07/24 (日)公演終了
満足度★★★★★
熱風!バンカラ!!
応援団を舞台に男たちの友情を描いた青春群像劇。作演出の及川自身の実話がもとになっている芝居だけあって応援団歌や振り付けなどリアルそのものだった。男くささ爆発の中に笑いあり、涙ありのエンタメ性の高い舞台だ。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
東北地方に古くから伝わる伝統のバンカラ応援団。肩まで伸ばした髪。生やし放題の髭。ボロボロの制服に身を包み、マントを羽織り高下駄を履いて町を練り歩く。
高校時代、こんな応援団に入るきっかけになった5人のそれぞれの理由やその後、正式に応援団になるまでの養成期間を経て、めでたく龍が丘高校の応援団として活動していた時代を表現する。
やがて高校を卒業し、それぞれが社会に出てバラバラになったとき、ノボルは、かつての親友・イワキの死を知る。そこで、ノボルは18歳の夜の団室で「僕は将来、バンカラ応援団の映画を撮る」と言い、彼は「バンカラ応援団の小説を書く」と言った。「お互い東京に出て、共に物語りに関る仕事をしよう。」こんな風にイワキと約束を交わした事を思い出すのだった。
高校時代とその後の時代を交錯させながら描いた物語は青春そのもので、観ていて、清清しい気持ちになれた。キャストらは唾を吐きまくり、汗を散舞させながらの熱演で、応援団のタクトもきっちり綺麗に振り切られていて、美しい光景だった。シゴキに耐えて、乗り越えた者だけが応援団になれる情景も、最後の高校生活をただ応援に捧げ、恋もせず禁じられた生活も、まるごと青春で微笑ましく力強かった。
物語には、笑いも随所に仕掛けてあり、まさに、笑いと涙と漢の舞台だった。
「死ぬまでの間は全力で生きてやろうじゃねぇか、めちゃくちゃ遊んで、めちゃくちゃ仕事して、めちゃくちゃ悩んでめちゃくちゃ笑って・・。今時そんな生き方は格好悪いのかもしれないが、折角生かされてんのにもったいねぇじゃん。」と作家の及川。
案外、舞台に関ってるキャストらや裏方のほうが熱く生きてるのかもしれない。
そんな風に感じた舞台。元気を貰える。
今を生きる為に頑張ろうっと!!
『ダンパチ9』『愛してると誓うだけじゃ幸せにはなれない』
ショーGEKI
「劇」小劇場(東京都)
2011/07/14 (木) ~ 2011/07/24 (日)公演終了
満足度★★★★★
「ダンパチ9」
まるで怒涛の攻撃!
いあいあ素晴らしい短編コメディ!エネルギッシュな舞台もさることながら観客がノリに乗ってお祭り騒ぎだった。そんな会場の雰囲気に押されて役者らもエキサイティングで絶好調だった。ものすっごく楽しくて笑い転げて喉が痛くなった。笑
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
いったいどこまでがアドリブでどこまでが台本なのか解らないほどのパラダイスさ。役者が笑いを堪えてる場面をみて、「ああ、アドリブなんだな・・」と納得するほど。
「合体人間ゴマカズン」では、あまりのバカバカしさに笑い転げ、一方で「人間ドッグ」の鈴木と~るちゃんにハマリまくり大爆笑する。今年のダンパチ9は今までのダンパチの中でダントツだと思う。観客もノリまくって舞台と一体化してしまったのも功を奏した。つくづく、観客主導型演劇だと感じた。つまり観客が役者を盛り上げてしまう格好だ。
そういった温かい観客に触発されて役者もノリまくりアドリブ連発公演が成功してしまうのだった。相変わらず七枝実の漢っぷりが素敵だ。
やっぱ来年も観なければ!ってか見逃せない。
『ダンパチ9』『愛してると誓うだけじゃ幸せにはなれない』
ショーGEKI
「劇」小劇場(東京都)
2011/07/14 (木) ~ 2011/07/24 (日)公演終了
満足度★★★
ブライダルに恋する
オレンジプランナーズという結婚式のプランを提供する会社に訪れたカップルと社員らの狂想曲!笑
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
舞台はオレンジプランナーズの事務所。ここに3組の結婚予定者が現われる。1組は相手の男が結婚詐欺師と知りながら結婚までの夢を買う女。1組は有り余る金で億式を挙げようとするも相手の男が破産して無一文になってしまった女。1組はヤクザと結婚しようと意を決して訪れた二人。
これらの3組の結婚式というイベントの主役である、女性の幸せに応える為にオレンジプランナーズの社員は、貪欲に彼女らの幸せを満たす為に、そのプランを追求するのだが、この様子がベタでバカバカしいコメディに徹する。あまりにもベタ過ぎて大衆向けではあるが、毎回観ているせいか、キャスタらの登場になんとなく嬉しくなってしまうのだ。
そうして何を隠そう、このプランナーズの社員らは×1ながら未だに結婚に夢見る乙女達で、その描写は現実から大幅に離れて幻想と妄想の世界に陥り、彼女達自身がその気になってしまう。笑
東海林さやかの彼の破産を知らされ、劇場で結婚式を挙げることを提案する彼女らは、「これほど格安で挙げられ、かつ、ゴージャスに見える挙式はない。更に入場料を取れば予算は大幅に減る」と言う。なんだか、どこかで聞いたような話だが、劇団関係者らの結婚式は劇場で、が増えそうだ。
バカバカしくも緩い芝居。
『若い兄嫁(仮)』
青年団若手自主企画 vol.50 二反田やまゆう企画
アトリエ春風舎(東京都)
2011/07/14 (木) ~ 2011/07/18 (月)公演終了
満足度★★★★
めちゃんこオモチロイ
寸劇の短編集が6編。個人的に「旅館」は笑えなかったものの、他の5編が絶妙に面白い。豊満な胸をあらわにしたやまゆうのパイオツがお見事!かみ合わないナンセンスコメディだ。そのセリフのインパクトは「はえぎわ」のソレに似ている。
仲間内の客のさくら的な笑いにドン引きした。こういう客は一般客を引かせてしまうのだ。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
静かな演劇
役者を指導する立場の岡部が意気揚々と「静かな寸劇」の思想をぶちかますも、役者らにハブられて結婚式にも招待されない。それを知った岡部の心の動揺っぷりが面白い。
バスの寸劇
バス内のアナウンスのあげ足とりから物語は始まり、乗り合わせた歯科医院のドクターの不倫が妻にばれたものの、地球の環境を理由に正当化してしまう言葉の転換がお見事!
犬の寸劇
他人から預かった犬に散歩の途中で逃げられてしまった夫婦が犬の持ち主に、その対応を詰られるも、夫は犬語が解ると言い張り、結局薬局、夫婦の方は何の落ち度もなかったかのように持ち主に思わせてしまう巧妙さが面白い。どうでもいいような、「雨の日は犬が臭い」などと手榴弾も放つ。笑
夏の寸劇
夏の風物詩といえば「西瓜割り」だが、これをネタに役者が遊ぶような嗜好。観ていて終盤にぐだぐだになる結末も楽しい。
兄嫁
今回の出演者である女優のパイオツを外見から判断すると、やはりここは山本裕子以外の適役はいないだろうと感じる。笑
この寸劇はギリギリのラインで豊満な胸を夫の兄弟に見せる場面から始る兄嫁が「兄嫁たるもの義理の兄弟にもその身を捧げる」なんつって、何を勘違いしてるのか、その想いから、家族全員、みな兄弟!みたいに落ちてゆくさまを描写する。山本裕子の身悶えるシーンで何故か笑ってしまった。笑
どの寸劇も、ナンセンスとかみ合わないセリフで笑わせる台本だ。こういった巧みな言葉の羅列が好きなワタクシとしては、充分に楽しく豊な時間を過ごすことが出来た。相変わらず二反田幸平の言い知れぬ存在感が素敵だ。今回の岡部たかしのキャラクターも面白かった。山本には次回も露出して欲しいと、切に願う。笑
次回も観たい。
ボクジョと自衛漢
山猫と紅葉
中野スタジオあくとれ(東京都)
2011/07/15 (金) ~ 2011/07/18 (月)公演終了
満足度★★★★★
傷を負った二人
セットが素晴らしい。典型的な日本の居間を作ってあり、このセットを見ただけで、これから始る芝居の期待が高まるというもの。そしてそれは期待どおり。初見の劇団だったがとっても得した気分で帰れた。とにもかくにも、それぞれのキャラクターの立ち上がりが絶妙で役者の演技力にも大満足な舞台だった。特に井上役の大谷幸広の演技力が抜群だ。大西養鶏場を舞台に繰り広げられる人情劇。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
かつて、養鶏所が大きな負債を抱えたときに加奈の父親は家族を捨てて失踪してしまう。その後、母親は無理をして働き、過労で倒れ亡き人となってしまう。残された加奈は現在の大西養鶏場のオーナーだが、過去の経緯から男嫌いになってしまう。そんな加奈を支えるいとこの紀美、紀美の友人の律、加奈の同級生の留亜だったが、過去のトラウマから逃げ出せず喘ぎ自分の殻に閉じこもったままの弱い女だった。
そんな現況から逃げ出したい加奈は自分の仕事と家を捨てて東京行きを決めてしまう。そんな折、市の職員の世話で元陸上自衛隊員の井上が大西養鶏場に働きにやってきたのだったが彼も加奈と同じように心に傷を負っていた。
加奈が、自分の思い通りにいかない。と嘆き泣くシーンはまるでガキそのもので、到底、大人の女性には見えないのだが、割に自分の殻に閉じこもるタイプの人間は多かれ少なかれ、その精神はガキだ。しかしこういったガキ精神も周りの人々の努力と容認さで加奈の闇を溶かしていくのだが、辛いことと向き合う克服の仕方を同じように闇を持った井上から教わるという、ごくごくシンプルな設定だ。
しかし、キャストらの演技力とその絶妙さで泣く場面でこちらも泣かされ、傷を負った人間の魂をその演技力で見せ付けた井上にも泣かされた。そして彼らを支える人たちの崇高な魂も垣間見た。
序盤、卵かけごはんを食べるシーンでは、かつて観た「弘前劇場『夜のプラタナス』」の舞台シーンと重なり、つくづく芝居って目に焼きついたワン1シーンは忘れられないものだと、しみじみ思う。
そして終盤、加奈が心の傷を克服してみんなで、うこっけいの卵を食するシーンがあるのだが、卵がうこっけいではなかったので、そこが残念だった。
全体的にきっちりとそれぞれの役割を演じて魅了していたと感じる。養鶏場が舞台というのも面白い設定だったし、鶏のうんちくも知らないことばかりで、その環境も楽しめた。
お勧めの舞台だ。
リタルダンド
キューブ
PARCO劇場(東京都)
2011/07/15 (金) ~ 2011/07/31 (日)公演終了
満足度★★★★
若年性アルツハイマーを題材に
扱った作品はこれまでに数多く舞台化しているが、定番どおりの内容だった。だから物語としての斬新さは薄く終盤の展開も想像通り。むしろ、妻が夫に対する献身ぶりが濃厚な分、作品としては昭和だ。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
音楽雑誌の編集長(吉田鋼太郎)のアルツハイマーっぷりの演技が光る。目の前で演じられる彼の演技はまさに、アルツハイマー患者そのもので、その演技力だけでも評価の星は上がるというものだ。意気盛んだった編集長とその妻はワケありの新婚一年目。夫は部下の女性と不倫をしていたが、新婚早々、夫の記憶が壊れはじめる。
屈折した妻の兄、父親の再婚を許さない前妻との息子、編集部の人たちとの微妙な人間関係を描写しながら記憶を失いつつある夫は紙に日付とメモを書きとめ貼ってゆく。
こんなふうに、その日の行動を紙に貼るという行為は映画でも舞台でもこの種の戯曲の定番中のアイテムだ。
少し奇異に感じたのはここでの登場人物があまりにも良い人たちばかりだ。悪い人は一人も居ない。だから主人公が呆けても誰も彼から離れることはしないでずっと面倒を見続けるのだ。現実にこういった風景を見たことがない。職場の人間は大抵、見切りを付けて離れるし、家族だって止む無く施設に入れざるを得ないのが現実ってもんだ。新婚一年目の妻に限っては妻の名前も忘れられ、前妻の「めぐみ」と呼ばれる。それでもマリアのように献身的に看護し、やっと終盤で夫は現妻の名前を思い出すのだ。妻役の一路真輝の秀逸な演技力も素敵だった。
妻がこぼすセリフ「私を産んでくれた人が骨になっちゃったの」に感動して号泣してしまった。今回はアルツハイマーになってしまった主人公ではなく、どちらかというと、その家族や関係する人々にスポットを当てた舞台だったように思う。
幕後、深々と挨拶するベテラン役者に混じって、浅く腰を折っただけで早々立ち去ろうとする投げやりな高橋由美子の本質も見えた舞台だった。流石は高橋。中々、ヤルジャン!
櫻の園
TUFF STUFF
相鉄本多劇場(神奈川県)
2011/07/13 (水) ~ 2011/07/18 (月)公演終了
満足度★★★★
神奈川まで行った甲斐がありました
開演時間前30分位から既に本編の序盤的に芝居は始っており、演劇部教師・里見先生が演劇部の演技指導をしているシーンから観たのだが、この演技がみな自然でびっくりしたほど。また指導が終わり、高校2年生らが掃除をサボり戯れる場面はリアルだった。これから観に行く方は少し早めに会場入りされると楽しめる。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
高校の創立記念式典では、毎年演劇部によって、アントンチェーホフ作「桜の園」が上演されるならわしとなっていた。この物語は演劇部の女子校生と教師が奏でる部室での情景と、本番当日、幕が開くまでを綴った物語だ。
高校演劇をこよなく愛するワタクシとしては、この演劇は好みのストライクど真ん中で終盤、不覚にも落涙したが、女子高校生特有の不安定な思春期をごくごく自然に描写した舞台だった。女子校にありがちな同性に恋焦がれるさまや、一人の生徒の不祥事によって「桜の園」の上演を中止されそうになるさま、熱血先生で生徒思いの里見先生が教員室での出来事などを巧妙に描写していたと思う。
彼女らの「桜の園」の上演は一回きりの最後の舞台だ。悲喜こもごも上演中止に追い込まれそうになりながら、部員らの人間模様を巧みに演出し涙を誘う。最終的にめでたく上演されることになり、生徒らは喜んで舞台に挑むのだ。そうして「桜の園」の最後の練習風景を見せるのだが、ここでの演技は今までと打って変わって学芸会レベルだ。そう・・、この演出も「高校生の演劇」を演じた結果だ。
こうして本番の幕開けは桜吹雪の舞い散る中、彼女らの「桜の園」は始るのだ。この最後の場面はとにかく美しい。大きな一枚の絵画だ。やがて彼女らがこの女子校を卒業しても、それでも桜は毎年同じように咲いて同じように散るのだ。変わらず、同じように・・。
ごんべい 江戸版/平成版
ゲキバカ
吉祥寺シアター(東京都)
2011/07/14 (木) ~ 2011/07/24 (日)公演終了
満足度★★★
「平成版」を観た
東京芸術劇場 小ホール2で上演された過去の作品「ごんべい」を観ているので今回は平成版を選んだが、明らかに過去の作品、つまり今回の江戸版のほうが良いと感じた。あの時はセットの造りこみが東京芸術劇場 小ホール2の広さと合っていたのだ。更に狭い舞台で怒涛のごとくキャストらが登場しお祭り騒ぎのような楽しみがあった。ストーリー自体も平成版より江戸版のほうが好みだった。
ネタバレBOX
相変わらず序盤の映像と音響、その後の「ゲキバカ」総出演人らの登場の絵図らはまるでアニメ「男組」らの蒼々たるメンツが立ってるような描写でこの演出は流石に上手い。だからこれから始る物語はやけに壮大なイメージさえ与えられてしまうが、全体的に舞台上で演じられる芝居はこじんまりしていた。
そう感じたのは勉太郎とすいーつの二人っきりで広い舞台上を演じる場面が多く、空間が目立ちすぎて間の抜けた感じがしたからだ。更にダイナモ学園を支配する岩鬼らの暴力シーンの場面では、まんまアニメの中の世界感で、(いあ、ワタクシ、決してアニメは嫌いではない。むしろ好きなのだが・・・)学園の暴力(これ自体が世界が狭い)と地球を滅ぼすイメージがあまりにもかけ離れていて、どうやってこの物語を締めくくるのかが心配になったほどだった。
物語は今から30年後のたぬき型アンドロイド・ごんべいが地球を破壊するという使命を持って地球までやってきた。しかし地球で友達になった勉太郎とすいーつと関わりあううちに人間の心が芽生えてくるのだった。ごんべいは命令どおり学園の人間を殺戮するのだが、これ以上出来ないと自らの死の選択をする。死の灰が降る街での物語り。
このたぬき型アンドロイドのキャラクターが実にきゃわいい。たぶん男性ならこういったキャラクターは一家に一台欲しいのだとも思う。平成版でのお勧めはこのキャラクターだ。しかし、どちらか迷ってる方はニギニギしい江戸版のほうをお勧めしたい。
本日が平成版の初日だったけれど、たぶん後半には完成度も増して良くなると思う。
『広島に原爆を落とす日』
ポムカンパニー
遊空間がざびぃ(東京都)
2011/07/15 (金) ~ 2011/07/18 (月)公演終了
満足度★★★★
ニイタカヤマノボレ
実はつかこうへいのこの作品を読んだことはない。未読だが実に良く練られた脚本でその世界にすんなりと入れた。キャストらは皆、熱演。特に主人公・犬子恨一郎(松木円宏)の凛とした演技と重宗(あンな邦祐)の威圧感のある演技力が素晴らしかった。
舞台セットはない。しかし衣装がちゃんとしてると全く違和感なくその情景が空想できるので充分に楽しめた。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
物語は広島への原爆投下を主題にしたフィクションだが、主人公の犬子恨一郎は強制労働として日本につれてこられた。彼は滅ぼされた朝鮮王朝の末裔だ。日本軍に所属し、日本への忠誠を誓った彼は、やがて真珠湾を奇襲し、大和を沈没するよう、追い込まれて行く。朝鮮民族の悲哀と恨みを象徴するような存在として描かれているが、結局は異邦人として利用され、最後にはアメリカにも利用されることになる。唯一の真実は恋人の百合子であるが、最後には、百合子だけが、信じられる唯一のものだったと気付かされる。そして彼は、最後の出撃に飛び立つ時に百合子に世界最強の告白をする。
「もし私が悪魔でなく人間であるなら、必ずや原爆投下ボタンを押した指先から私のからだは腐りはじめ、私の心に巻かれた自爆装置は、四十万広島市民の呪いとうめき声によってそのスイッチが作動し、私の五臓六腑は肉片となって飛び散ることでありましょう。そして私の魂は、遥か彼方、宇宙の塵となって、けっして許されることなく幾千万年もの時を旅することでありましょう。漆黒の闇を旅する意識体の孤独を癒すものは、かつて愛されたことがあるという記憶だけなのです。かつて愛したことがあるという記憶だけなのです。その宇宙のやさしさだけが、漂う孤独な魂の唯一の光明なのであります。私は何ら恐れてはおりません。何ら恐れることはないのであります」
いやはや、こんな告白されたなら大抵の女性はイチコロなのだ。笑
幼き日に結婚を誓った恨一郎と百合子。太平洋戦争によって引き裂かれた二人は、その約束を守るためならどんなものでも犠牲にした。そして広島に原爆が落ちた瞬間、二人は永遠の愛で結ばれたのだ。この物語は「愛」の強さ、美しさを描いた作品だと感じるが、フィクションとはいえ、原爆投下という人類史上初めての「悪魔に近づく」暴挙を、米国が直接手を下させたのは、なんと強制労働で日本に連れてこられた朝鮮人なのだ。そのドラマチックなまでの展開の数々や衝撃のエンディングはやはり舞台向けな作品なのだ。
つかの原文を読んでないので、松木がどのようにスパイスを加え、どの箇所を削ぎ落としたかは知る由もないが、原爆で犠牲になった人たちの霊がこの物語を貢いでいく、という設定は劇中劇のような感覚になったが、個人的にこの部分はいらないな・・と感じた。
要するにストレートパンチでも充分にイケル舞台なのだ。公演時間2時間20分というのもちょっと長いような気がする。無駄な部分を剃り落とす作業が甘かったような気もするがそれでも充分に満足した舞台だった。
それにしても・・あンな邦祐のふんどし姿のなんと素敵なことよ。笑
次回も観たい。いあ、ふんどしではなくポムカンパニーの作品を!
南池袋怪談(無事終演しました。ありがとうございます!)
[DISH]プロデュース
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2011/07/14 (木) ~ 2011/07/17 (日)公演終了
満足度★★★★
怪談コメディ
入口に置かれた井戸は磯川家の公演で使われたもので、見た途端、笑えた。ついでにそこに入って写真を撮ってる輩もいたりして怪談というより、のっけからのどかな風景。笑
物語はリーディングと芝居とのコラボ。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
序盤、リーディングから始ったので、芝居と思い込んで来たワタクシは「失敗したな・・」と内心、思ってしまった。ところがこのリーディングよりも転換の繋ぎのようなショート芝居が絶妙におもちろい。最初のリーディングの後に、オバケ(幽霊というよりもこの表現の方がしっくりくる)達が登場し、それは明らかにアニメの中のオバケ達なのだが、これらは観ているだけでオモチロ可笑しいのであった。
しかし、寸劇の後、折角のオバケキャラクター達はこの先、彼らの登場はなく、ちょっと残念な気がした。どうせならその衣装をフルに活用して他の場面でもコメディとして笑わせて欲しかったのだ。
さて肝心の物語だが、珠緒役の玄順有利子のキャラクターは仰け反るほど笑えたし、「ナイスコール」の新人看護師役の佐竹リサにもぶっとぶほど笑えた。寸劇のような短編だ。あまり手ごわい恐さはない。どちらかというとサスペンス的なホラーとホラーコメディが交錯する世界だ。「本当は恐いグリム童話」のような描写もしながら、終わってみればコメディだったような感覚だ。
だからホラーとしてではなくホラーコメディとして突っ走ったほうが成功するような気がする。そのくらい、ワタクシにとっては緩く楽しい時間を過ごすことが出来た。
ペール・ギュント
SUNBEAM MUSICAL KITCHEN
ザ☆キッチンNAKANO(東京都)
2011/07/12 (火) ~ 2011/07/17 (日)公演終了
満足度★★★★
ババリました(^^;)
家に帰れないかと思って終盤にはソワソワしちゃったよ(^^:)
リーディングだから公演時間90分くらいかな・・と考えたのが甘かった。なんと休憩時間15分込みで3時間の長丁場。だから19時開演でも22時になっちゃう。こういった3時間公演の場合、先に教えてくれないとダメだよね。週末に観に行くべきだった。
舞台は普通のリーディングではない。音楽と半分芝居がかった、リーディング劇。全ての役者の演技力は秀逸でまったく欠点はない。役者の感情移入が激しくちゃんと泣く場面で涙していた。ビルの6Fでの観劇は新宿の夜景も芝居に計算されており、やはり夜の観劇がお勧め。事前に公演時間を知らされてなかった為、-1とした。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
ペールは20歳。母親のオーゼと一緒に暮らしていたがペールは、王様になる、皇帝になると大きな事ばかり言うほら吹きで、仕事もせず喧嘩ばかりしていた。ある日ペールはイングリッドという娘の結婚式に、呼ばれてもいないのに出かけていきます。そこで、美しく、清楚で、手には讃美歌を持った可憐な少女、ソルヴェイグに惹かれ恋をします。
その時ペールは花婿から花嫁のイングリッドがこの結婚を嫌がって、蔵に閉じ篭ってしまったと告げられます。何とかしてくれよ、と花婿に泣き付かれたペールは何と!花嫁イングリッドをかかえ、険しい崖を登っていくではありませんか!
「花嫁奪略だ!」「ペールを殺せ!」村中は大騒ぎになってしまいます。
一夜明け、すっかりイングリッドに飽きたペールはイングリを捨ててしまいますが村中が、村一番の富豪の娘を略奪したペールを探し、山々からは「ペールを殺せ」という声が聞こえ、ペールはそのまま山の奥深くに逃げ込む羽目になってしまいました。
逃げ惑う中、ペールは一人の緑色の服を着た少女に出会います。彼女こそがドブレの国の王女、魔王の国の娘だったのです。ペールは彼女に結婚を申し込み、ドブレ王国を我が物にしようとし、魔王に会うため、魔の国・ドブレ王国に行く事になったのでした。
そしてペールは魔王の宮殿で、魔王とその手下の不気味なトロル達の前での結婚条件に驚き、魔王の国から逃げ出そうとしますが、興奮したトロル達に追い詰められ、あと一歩で殺される!という所で教会の鐘が鳴り、トロルの国もろとも消え失せ、ペールは一命を取り留めたのでした。
未だ追われる身のペールは山の中に雨風をしのぐ小さな小屋を作ります。するとある日その汚い山小屋にソルヴェイグが現れたのです。彼女は家も家族も捨て、愛するペールの元に来たのでした。ペールは喜びでいっぱいになり、穢れなきソールヴェイを王女の様に大切に、小屋に招き入れます。
しかしそこに、魔王の娘が赤ん坊と一緒に現れます。魔王の娘は、その子はペールの子、もしソルヴェイグと結婚するならトロルの魔法を使ってでも邪魔してやる!と脅します。ペールはソルヴェイグを守る為、そして穢れ無きソルヴェイグにふさわしい自分自身を見つける事が出来るまで、旅に出かけます。これがペールの自分探しの旅です。
ソルヴェイグには「取ってくるものがあるから、ここで待っていてくれ」と言い残して世界中を駆け巡る冒険に出かけるのでした。
ペールは母オーゼの家に向かいました。ずっと姿をくらましていたペールの無事を見て、母は安心しますが、彼女自身、臨終の時を迎えようとしていたのです。死を恐れる母に、ペールは最後の優しい空想話で、彼女を穏やかに神の元に導きます。ペールの腕の中でオーセは静かに眠る様に息を引き取ったのでした。ここから本格的なペールの自分探しの旅の始まりです。
時は流れ50歳になったペールはモロッコの西海岸にいました。彼は怪しげな商売で大金を儲けるも全財産を船に積んで地中海航海の真っ最中に航海を共にした4人の客人にペールの全財産を持ち逃げされてしまうのです。
無一文になったペールは砂漠をさまよいます。ある時、ほら穴の前で盗賊の宝石や武器、豪華な衣装を見付け、運が向いてきたとばかりその盗品を丸ごと頂き、今度は予言者になりすまします。
ベドウィン族の酋長の所で、大予言者としてもてなされるペールでしたが、その祝いの席で酋長の娘アニトラに出会い、すっかり彼女の魅力に夢中になったペールは、アニトラにせがまれるまま、宝石や貴金属を次々彼女に渡します。ついにアニトラはペールの財産が積まれた馬ごと盗む事に成功し、又もやペールは一文無しになるのです。
ペールはその後エジプトにも行き、メムノン像やスフィンクスも訪れます。スフィンクスで出会った男に連れられ、彼はカイロの精神病院で皇帝として迎え入れられたりもします。
こうして各国を廻り奔放に旅を続けたペールも、すっかり白髪交じりの老人になりました。今や金を掘り当て、充分な財産を得たペールは、故郷ノルウェーに帰るべく船に乗っていました。しかし、ペールの乗った船は激しい嵐に掴まり、沈んでしまいます。どうにかボートに掴まったペール。一緒にしがみついてきたコックを蹴落とし、自分だけ故郷に辿り着いたのでした。
故郷で、ペールは皮肉交じりに自分の人生を振り返りながら、行く当てもなく森を彷徨う内、見覚えある山小屋を発見します。小屋からは何と!!ソールヴェイがペールを待ち続け歌う声が聞こえるではありませんか!ペールはたちまち自分の人生を後悔し、そこから逃げ出します。
ペールの前に、死神の使者であるボタン職人と名乗る男がペールの前に現れます。
ペールの人生は出来損ないで、天国にも地獄にも行けない為、柄杓に入れて溶かしてくる様に言い遣ってきたと言います。
自分の人生とは一体何だったのか?答えを見つけるまで待ってくれ、とペールは嘆願し、すがる様に、道行く人に問いますが、誰もが、ペールの人生の無意味を気付かせただけでした。
疲れ果てたペールが辿り着いた所は、あの山小屋でした。ソルヴェイグは、ずっと待っていてくれたのです。彼女はペールがいつも自分の信仰の中、希望の中、愛の中に存在していた、と言い、ペールを優しく包みます。助けを求め、彼女の膝に顔を隠したペールは、ソルヴェイグのその言葉に救われたのです。
ソルヴェイグは静かに子守唄を歌い始め、ペールは彼女の膝の中で静かに息をひきとったのでした。
・・・っとまあ、こんなに場面転換の多い戯曲なので芝居での表現が難しくリーディング向きな物語なのだ。キャストらはきっちり豊かな表情で演じていたので直にその世界に入り込むことが出来た。場面転換が目まぐるしい分、スピーディーな会話でコミカルに表現していくので、3時間まったく飽きずに堪能出来た。そして奇想天外なファンタジー性抜群の物語に重なるように美しい女性陣のキャストらが目の前で、時には色気ムンムン娼婦のように、時には清楚な美しさを引き出しながら熱演していたので視覚的にも楽しめる。
またペール・ギュント役の石母田史朗が出ずっぱりな舞台だったがひじょうに素晴らしい演技力だった。またこの舞台を補佐的に盛り上げた生音楽と生歌も功を奏していた。灯を巧みに操った演出も絶妙で全体的に美しい舞台だったと思う。ここで衣装にも手を抜かなければ完璧だったと思う。
1999年の夏休み
青蛾館
こまばアゴラ劇場(東京都)
2011/07/10 (日) ~ 2011/07/13 (水)公演終了
満足度★★★★
永遠の夏休み
「青蛾館」の舞台はノスタルジックでアングラ的な妖しい描写が好みだ。今回も人生の中で最も光り輝く少年時代のエネルギーを陽と影を操りながら表現していた。好みのど真ん中だった。悠・薫役の清水ゆりの演技が実にいい。反してアガッテいたのか則夫役の神田正美の演技があまりにもぎこちない。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
物語は1999年の夏休み、寮に残された三人、和彦と直人、則夫の元に自殺したはずの悠が現われたことから始るが、悠は自分は薫だと言い張る。これには訳があり、和彦に恋焦がれていた悠だったが、和彦に容赦なく振られた挙句、失踪してしまったのだった。悠は薫となって和彦の前に現われちょっと悪戯をしてやろうと考えて、悠と正反対の性格の薫となって和彦を自分に振り向かせる為の演技をする。
一方、父親の死後、人を愛し愛されることが恐い和彦は人を寄せ付けないようにしていたが、いつのまにか薫に惹かれてしまう。和彦の親友・直人は和彦に対して親友以上の感情を持ち、留年してまでも和彦と一緒に居たいと願う。
この物語りで目を見張るのが随所で吐かれる美しいセリフの数々だ。悠が和彦に出した繊細な恋文は傷つきやすく不安な少年時代の心そのものだ。だから少年たちの夜会に迷い込んだような錯覚に囚われる。早く大人になりたいと願う一方でこのまま、少年のままで居たいという迷いは思春期特有の迷いだが、同時に母親への強い恋慕へのしこりも表現する。
やがて薫は自分は悠だったと和彦に白状しながら波の藻屑となって消えてしまうのだが、この時に、「子供の時間は一番素晴らしいから子供のまま死んで、また子供に生まれ変わろうよ。そして子供のまま、また死んで、また子供に生まれ変わろう。」と和彦を誘い込むも、直人が和彦を助けるのだった。
直人も、和彦も、薫と同じようにこの夏休みが永久に続けばいい。と思うのだった。
素晴らしい!!相変わらずの野口の怪しげな母親とフランス人形のようなアコーディオン演奏の高橋、点滅の幻想的な白い泡の精。これらは絶妙に舞台を飾り、ワタクシを夜の舞踏会に招いていた。あの少年時代の終わりなき夏休みは彼らの中でずっと続いているのだ。
次回も観たい。
愛情爆心地はボクのココ
ぬいぐるみハンター
王子小劇場(東京都)
2011/07/07 (木) ~ 2011/07/18 (月)公演終了
満足度★★★
がちゃがちゃ
今までのようなポップでパラダイスな感覚は少ない。全体的に物語が散漫してしまっていた。 神戸アキコのギャグネタも前半はスベッテ後半にきっちりと・・。ストリートチルドレンの生き様を描くならセットはもうちょっとスラム的でも良かったような。
以下はネタばれBOXにて。。
ネタバレBOX
とある夫婦が離婚したことによって図らずもストリートチルドレンになってしまった兄弟の情景を描いた作品。今回のチルドレンはなんだか子供らしくないセリフと仕草だ。
二人の兄弟は血のつながりのあった4人家族の崩壊から、家なし子らの集合体の仲間になり、ここで暮らさざるを得なくなる。
しかしここにはそれなりの愛があって他人同士が築く家族だった。子供たちにはそれぞれの役割があり、摩擦しながらも元気に生きているのだけれど、「路地裏で、排気ガス吹き込むビルとビルの隙間で、真っ暗でワクワクするマンホールの下で」という説明の割にはセットがそういった環境のセットではないのだ。だから観ていて違和感があった。
また物語はパパ、ママのその後を描写しながら海猫シティーランドという、ねずみーランドのミッキーのパクリのようなキャラクターを登場させながら笑いを取ろうとするのだけれど、イマイチ、インパクトが弱い。右手がアフリカ象のサンタナの登場にははっきり言ってドン引きしてしまったが、神戸アキコの「焼き豚・・って言われた~泣き」辺りから会場に笑いが起こる。
しかし全体的にストリートチルドレンの生き様の描写が弱く終わってみればしまりのない舞台だった。終盤に神戸アキコがブラジャー姿で登場するが中々のバディで上半身は太っていない。着太りするのだろうか?笑