リタルダンド 公演情報 キューブ「リタルダンド」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    若年性アルツハイマーを題材に
    扱った作品はこれまでに数多く舞台化しているが、定番どおりの内容だった。だから物語としての斬新さは薄く終盤の展開も想像通り。むしろ、妻が夫に対する献身ぶりが濃厚な分、作品としては昭和だ。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    音楽雑誌の編集長(吉田鋼太郎)のアルツハイマーっぷりの演技が光る。目の前で演じられる彼の演技はまさに、アルツハイマー患者そのもので、その演技力だけでも評価の星は上がるというものだ。意気盛んだった編集長とその妻はワケありの新婚一年目。夫は部下の女性と不倫をしていたが、新婚早々、夫の記憶が壊れはじめる。

    屈折した妻の兄、父親の再婚を許さない前妻との息子、編集部の人たちとの微妙な人間関係を描写しながら記憶を失いつつある夫は紙に日付とメモを書きとめ貼ってゆく。

    こんなふうに、その日の行動を紙に貼るという行為は映画でも舞台でもこの種の戯曲の定番中のアイテムだ。

    少し奇異に感じたのはここでの登場人物があまりにも良い人たちばかりだ。悪い人は一人も居ない。だから主人公が呆けても誰も彼から離れることはしないでずっと面倒を見続けるのだ。現実にこういった風景を見たことがない。職場の人間は大抵、見切りを付けて離れるし、家族だって止む無く施設に入れざるを得ないのが現実ってもんだ。新婚一年目の妻に限っては妻の名前も忘れられ、前妻の「めぐみ」と呼ばれる。それでもマリアのように献身的に看護し、やっと終盤で夫は現妻の名前を思い出すのだ。妻役の一路真輝の秀逸な演技力も素敵だった。

    妻がこぼすセリフ「私を産んでくれた人が骨になっちゃったの」に感動して号泣してしまった。今回はアルツハイマーになってしまった主人公ではなく、どちらかというと、その家族や関係する人々にスポットを当てた舞台だったように思う。

    幕後、深々と挨拶するベテラン役者に混じって、浅く腰を折っただけで早々立ち去ろうとする投げやりな高橋由美子の本質も見えた舞台だった。流石は高橋。中々、ヤルジャン!

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    2011/07/17 12:07

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