1999年の夏休み 公演情報 青蛾館「1999年の夏休み」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    永遠の夏休み
    「青蛾館」の舞台はノスタルジックでアングラ的な妖しい描写が好みだ。今回も人生の中で最も光り輝く少年時代のエネルギーを陽と影を操りながら表現していた。好みのど真ん中だった。悠・薫役の清水ゆりの演技が実にいい。反してアガッテいたのか則夫役の神田正美の演技があまりにもぎこちない。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    物語は1999年の夏休み、寮に残された三人、和彦と直人、則夫の元に自殺したはずの悠が現われたことから始るが、悠は自分は薫だと言い張る。これには訳があり、和彦に恋焦がれていた悠だったが、和彦に容赦なく振られた挙句、失踪してしまったのだった。悠は薫となって和彦の前に現われちょっと悪戯をしてやろうと考えて、悠と正反対の性格の薫となって和彦を自分に振り向かせる為の演技をする。

    一方、父親の死後、人を愛し愛されることが恐い和彦は人を寄せ付けないようにしていたが、いつのまにか薫に惹かれてしまう。和彦の親友・直人は和彦に対して親友以上の感情を持ち、留年してまでも和彦と一緒に居たいと願う。

    この物語りで目を見張るのが随所で吐かれる美しいセリフの数々だ。悠が和彦に出した繊細な恋文は傷つきやすく不安な少年時代の心そのものだ。だから少年たちの夜会に迷い込んだような錯覚に囚われる。早く大人になりたいと願う一方でこのまま、少年のままで居たいという迷いは思春期特有の迷いだが、同時に母親への強い恋慕へのしこりも表現する。

    やがて薫は自分は悠だったと和彦に白状しながら波の藻屑となって消えてしまうのだが、この時に、「子供の時間は一番素晴らしいから子供のまま死んで、また子供に生まれ変わろうよ。そして子供のまま、また死んで、また子供に生まれ変わろう。」と和彦を誘い込むも、直人が和彦を助けるのだった。

    直人も、和彦も、薫と同じようにこの夏休みが永久に続けばいい。と思うのだった。

    素晴らしい!!相変わらずの野口の怪しげな母親とフランス人形のようなアコーディオン演奏の高橋、点滅の幻想的な白い泡の精。これらは絶妙に舞台を飾り、ワタクシを夜の舞踏会に招いていた。あの少年時代の終わりなき夏休みは彼らの中でずっと続いているのだ。

    次回も観たい。

    0

    2011/07/12 18:39

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大