じべ。の観てきた!クチコミ一覧

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新釈 ヴェニスの呆人 2009

新釈 ヴェニスの呆人 2009

コマツ企画

こまばアゴラ劇場(東京都)

2009/08/27 (木) ~ 2009/08/30 (日)公演終了

満足度★★★★

スキゾ型あるいは点的思考演劇
一言で表現すればスキゾ型(対義語は「パラノ型」)あるいは点的思考(対義語は「線的思考」」)演劇、視点がコロコロ変わるというか刻々と対象や表現が変化してゆく様は、あるテーマについて話していながらもある言葉をキッカケに「そういえば…」と方向が変わりなかなか本題に戻らないσ(^-^) にも似て…(爆) こまつ主宰ってば、もしやB型?(笑)
ある女性が刑事を招き入れる場面をプロローグに、以降女性が語る内容が舞台で演じられる…というのはノーマルな(笑)スタイルながら、本作の場合はその演じられる内容に刑事がツッコミを入れたり、女性が演技指導をしたりというメタフィクション、しかもそれがほぼ全編にわたっているというのが実験的。
また、こういうスタイルが長く続くとアクが強すぎると感じそうなところ、85分程度にとどめたのもちょうど良い感じか?
で、終幕直前、開幕時(ってか開場時)から舞台前面で客席と舞台を隔てていた目の粗い「網」が落とされて、登場人物全員がこちらを向いた時には舞台から風が吹いてきたような感覚にとらわれ、急に当事者意識に目覚める。(笑)
これって、公開収録とかドキュメンタリーの取材を野次馬気分で観ていたら、突然マイク(とカメラ)を向けられて「アナタはどう思いますか?」と振られた状況に似ているかも?う~ん、ヤられたぁ!
序盤のシーンでボールが転がり出ないように設置したのかと思っていたら、もっと深い意味があったのね。
そういえば前説も前説らしからぬ寸劇で、そういうところも最近少なくはないものの、ここまで前説らしからぬものはないぞ、みたいな。

聴こえるのは、あの歌だけ

聴こえるのは、あの歌だけ

plAy/diE

d-倉庫(東京都)

2009/08/27 (木) ~ 2009/08/30 (日)公演終了

満足度★★★★

ほとばしる熱いパトス
人口の増加によりマザーコンピューターに選ばれた者は HEAVEN という施設で「処理」され、人類もそのことについて特に疑問を抱いていない、という若干の既視感を伴う「暗い未来」譚、「回答を与える」タイプではなく「問題を提起する」タイプということもあり解釈(深読みや誤読も含む)の余地が大きいのが面白い。
たとえば主人公を追う黒い影たちは死の象徴で実体はないのではないかとか描かれている「未来の人類」は管理されていることに何の疑問も持たない現代の人々にも通ずるのではないかとか観ながらいろいろと想像をふくらませてしまう。
若干粗削りな部分もあったものの、「熱いパトス」が伝わってくるような感もあり、そんなに急がなくても良いので次作もいつか観たい、的な。

【終幕】暗ポップ 【劇団員募集中】

【終幕】暗ポップ 【劇団員募集中】

空間ゼリー

赤坂RED/THEATER(東京都)

2009/08/26 (水) ~ 2009/08/30 (日)公演終了

満足度★★★★

トラブルの起きない『カッコーの巣…』
ある病院の精神科が開設したショートステイ型カウンセリングでの1週間、一言で表現すれば「トラブルの起きない『カッコーの巣の上で』」なオモムキ、「正常と異常」「人と同じということと違うということ」などについて「ワカったような気にさせる」(笑)のは見事。
また、「入院患者」ではなく「参加者」ではあれ、やはり不安定要素を抱えた人物もいるので、いつか悲劇が訪れそうで「腫れ物に触るように」観てしまう。(『カッコー…』症候群か?(笑))
が、結局はそれぞれ「いい人」で、見かけ上は悲劇もなく結末を迎えて一安心。しかし複数の含みを残して幕を下ろすのは上手いと言おうかズルいと言おうか…(笑)
そのために実は1人を治すためにみんな揃って芝居をしていたのでは?などという誤読までしそうになったり、「あの人身事故って?」とか想像をしてしまったり…(爆)
あと、演技面では斎藤ナツ子の次第に変わって行く表情と阿部イズムが時として見せる「イッちゃってる」眼の表現(J列までそれが届くのはスゴい)が特に印象に残る。

バッド・ブッキング×グッド・バッティング

バッド・ブッキング×グッド・バッティング

劇団絵生(えき)

博品館劇場(東京都)

2009/08/25 (火) ~ 2009/08/30 (日)公演終了

満足度★★★

大半の出演者が本人役を演ずる可笑しさ
劇団ヨロタミのメンバーが翌日からの公演に向けて博品館劇場入りすると、すでに Neo Mask が仕込みを終え場当たりをしていて…という円盤ライダーの『仕込んでいこう!』(07年)と似たよく状況から始まる物語、脚本を第1幕はヨロタミ側、第2幕は Neo Mask 側が担当するというのが両劇団ともよく観ている身には魅力な上に、飯田里穂や風見章子まで出演という女優系としてハズせないキャスティング…。
そういう状況から始まるだけに第1幕は大半の出演者が「本人役を演じる」というのが可笑しい。(『仕込んでいこう!』の場合はそれぞれ架空の劇団の劇団員役であって本人役ではなかった)
ヨロタミの「舞台監督係」「座長係」なんてポストは実際のものなのかフィクションなのか?(笑)
で、それぞれがサワリのシーンを演じて騒動の元凶となった制作担当にどちらを上演するか決めて貰い、敗れた側の客に対してはその担当者が誠心誠意謝るということでハナシがまとまりそれぞれ演じるが結局両方の脚本を併せて1本の芝居にすることになる、というのはやはりこのテの状況の定番的な(?)展開ながら、ベテラン女優の一言で安穏な状況が覆されて一同大慌て、というところに劇団BOOGIE★WOOGIE の『BACK from BACK』(02年、06年)もちょっと連想。
そういう展開を経ての第2幕は仕上がった脚本の通し稽古で、劇中の台詞にもあった通り Neo Mask テイスト満載なところにちょっとだけヨロタミのスパイスが利いて、な物語。
未来の死刑囚に対する刑罰として「義のある死」を与えるべく戦乱の世に送るというSF風設定も加えて描く「生き抜いてこの世に存在した証を残す」というテーマ、単品としてもよく出来ており、増補改訂版をいつか上演しても面白いのでは?などと思う。
総じて言えば1人の脚本家が書いた『仕込んでいこう!』の方が1本の芝居としてのまとまりはあったが、こちらは2つの劇団が時には自身を演じながら1つの作品を上演するという面白さアリってところか。

エル・スール~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ~

エル・スール~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ~

トム・プロジェクト

本多劇場(東京都)

2009/08/25 (火) ~ 2009/08/31 (月)公演終了

満足度★★★★

「ヨネクラ文字」にニヤリ
故郷を離れ東京に住んで久しいキヨシが久々に帰省した博多で振り返る昭和32年夏から33年春までの数ヵ月…。
西鉄ライオンズの勝敗に一喜一憂する町で近所のオバちゃん、映画監督に憧れるニイちゃん、在日朝鮮人の少女やヒロポンを打ちながら仕事をする娼婦などに囲まれて育ったキヨシの小学生時代がどこか懐かしく、今は失われてしまったナニカが舞台からあふれ出て来るよう。席が最前列だったので、そのあふれて来る度合いも格別か?(笑)
物質的・環境的には当然現在の方が富んでいるにもかかわらず、本当の豊かさとは何だろうなどと考えさせられたりもして。(あぁ、何たる紋切り型表現!(爆))
昭和33年の早春、相次いで訪れる別れがまた切ない。死別は1人だけとはいえ、それ以外での別れもあれだけ集中すると…キヨシ少年の心中、お察しいたします。
なお、美術がヨネクラカオリで、広い舞台だけにもちろん装置が段ボール製などということはない(笑)ものの、優勝パレードを観る場面での旗に「ヨネクラ文字」を見出してニヤリ。

BLACK COMEDY

BLACK COMEDY

SAME∞LINEプロジェクト

d-倉庫(東京都)

2009/08/19 (水) ~ 2009/08/23 (日)公演終了

満足度★★★

脚本自体に弱点アリ
94年12月に本多劇場で加藤健一事務所による上演を観て以来で詳細はほとんど覚えていないので確証はないが、若干の時事ネタは入れたものの大きくアレンジせず、「翻訳戯曲っぽさ」まで残した演出はむしろ基本に忠実と言えるか?
ただ、演出や役者の責任の範囲外である(プロデューサーの責任ではある?)脚本自体の弱点として、明暗を逆転させて暗闇での出来事を活写するというアイデアに溺れて肝心の本編ストーリーがおろそかになったことは否めず。
たとえばレイ・クーニーなんか同じ設定で書いたら、スポンサーになりそうなバンベルガーが来てからの売り込みに一番重点を置き、ロンドン電力の担当者をバンベルガーと勘違いするところや暗闇の中で勝手に借りた家具を戻そうとするところに次の重点を置いたであろうところ、本作の場合はバンベルガーなんてホンの添え物程度で済ませてしまい、なんだか終わり方が中途半端…。
とはいえ、そんな中で上田郁代の小悪魔っぽさ(ハマリ役気味?)と、下手側の壁にかかっていたボッシュあるいはエルンストあたりを想起させる油絵や仏像、オブジェなど、前衛芸術家の部屋らしさを感じさせる美術が特に印象に残る。
で、この上出来の美術、後で訊いたら佐藤秀樹によるものとのこと、そんな才能も秘めていたのか…。
いずれにしても、今後も機会があればレイ・クーニーの作品群とか、あるいはアイラ・レヴィンの『デス・トラップ』などに挑戦していただきたい。

山茶花~さざんか

山茶花~さざんか

DMF

ザ・ポケット(東京都)

2009/08/19 (水) ~ 2009/08/23 (日)公演終了

満足度★★★

伝奇時代アクション
山犬の化生である「ヤマカ」一族の若者3人が嫁探しのために山を下り里へ行く途中で少女と出会い、共に山賊に捕らえられて裏稼業も営む大商人の屋敷に連れ込まれるが、そこには彼らを利用しようと企てる者や許婚をヤマカに殺されて復讐を誓う者などもいて…という伝奇時代アクション。
登場人物は多いもののグループ毎に整理されて相関関係も分かりやすく、得意の(?)ストリートダンスっぽい動きも取り入れたアクションを随所に挟みながらそれぞれの届く想い・届かぬ想いなども絡めて話を進め、滅びの美学的なものを漂わせながらも最終局面まで見せず美しいイメージシーンで幕を下ろすというラストまで、語り口が巧みなために145分の上演時間もさほど長く感じず。
ただ、冒頭の里に下りる者を選ぶシーンはいわばプロローグなのに全体の中では比率が高くややアタマでっかちな感アリ。そこをもう少しスリムにすれば全体のバランスがもっと良くなったのでは?

天皇ごっこ ~調律の帝国~

天皇ごっこ ~調律の帝国~

劇団再生

Asagaya / Loft A(東京都)

2009/08/21 (金) ~ 2009/08/23 (日)公演終了

満足度★★★★

交響曲のツクリにも似て
新右翼活動家でスパイ粛清事件により投獄され獄中で小説を執筆した見沢知廉を描いたシリーズの最新作、恒例のプレ・パフォーマンス・トークと wikipedia による予習に加えて、ここまでに3作品(+短編1作)を観て手口(笑)がわかっていることもありスンナリと呑み込む。
ストーリーを紡ぐのではなく、原作(未読)や原作と共通するドストエフスキーの「死の家の記録」(←これはプレ・パフォーマンス・トークで知った)の部分部分を読み上げたりするコラージュなども用いて、母との濃密な関係も含めた見沢自身の内面まで表現しようというスタイル、それは複数のテーマやモチーフが表れては消え再現されたり同時に奏されたりしながら1つの大きな流れを作って行く交響曲のツクリにも似て、「あぁ、そういうことかぁ!」と。
スパイ粛清の際に着ていたという皮ジャン(本物)を着た人物が次々に見沢となる手法(ラストでそれを総括する部分まである)とか、時には監獄、時には胎内回帰の象徴のように見える装置、劇団員総出で書き綴った(!)という小道具(しかも消え物ですぜ)など「そう来ましたかぁ」なアイデアもあって観応えも十分、やっぱり芝居ならではの表現ってイイなぁ。

ロミオとジュリエット

ロミオとジュリエット

少年社中

あうるすぽっと(東京都)

2009/08/19 (水) ~ 2009/08/23 (日)公演終了

満足度★★★

むしろオーソドックス
最近では信長や義経、古くは総司が女だった、な芝居があるように、本編はジュリエットが男だったという設定のもと、BL系に走ることもなく(笑)若干コミカルに見せながらもさほどムチャは無くむしろオーソドックスで、その意味では逆に物足りないくらい。
が、ヴェローナの支配権を狙う外敵を創作することによって、冒頭で(有名な)ラストを示しておきながら、最終的には原作とは異なる結末に導くのがトリッキー。しかもハッピーエンド気味だし。(いやしかしやはり長くはもたないのか?)

斬(きらず)

斬(きらず)

こちらKGB

相鉄本多劇場(神奈川県)

2009/08/19 (水) ~ 2009/08/23 (日)公演終了

満足度★★★★

正統派時代劇
ある藩での世継ぎ問題をベースにしつつ、「人斬り新兵衛」の正体は?という謎をタテ軸に、斬ることの無為さ・無残さを横糸として絡めた正統派時代劇。
よく考えると、左手を覆っている人物がもう一人いるワケで、途中でそこに気付くものの、展開が早くてそれについてジックリ考える余裕を与えないのが上手い(ズルいともゆー(笑))。
しかも「人斬り新兵衛は左手の指がない」というのはあくまで風評であって、実際はそうではないというところにまんまとひっかかってしまうσ(^-^) …(笑)
でもって左手の指を失っている玄庵のクライマックスの立ち回りでの刀の使い方にジム・アボットの投球を連想。

レストラン ル・デコ

レストラン ル・デコ

角角ストロガのフ×elePHANTMoon×犬と串

ギャラリーLE DECO(東京都)

2009/08/18 (火) ~ 2009/08/23 (日)公演終了

満足度★★

食傷気味
角角ストロガのフの「食皮俗」はシュールな設定にライトなグロと暴力を組み合わせて初見であった『人間園』と通ずるテイスト。ほわ~んとした天然っぽい人物(失礼!)がこういうものを書くんだぁ、なミスマッチ感が独特。
犬と串(初見)の「ロマンス」もシュール系。「組んだ脚に似た大根」などから想を得たようで「んなワケあるか~い!」的な可笑しさと一抹のブキミさアリ。
elePHANTMoon の「アイノユクエ」は当日パンフにもあるように劇団員が出演していないにもかかわらず、まぎれもなくelePHANTMoon 作品。やはりこれに一番共感したかな。
かくて、テーマが共通ということで全体に統一感はあったものの、どれも味が濃厚と言おうか脂っこいと言おうか、暑いさなかに観るにはちょっとヘヴィー。いわば量は少なめ(3本+転換で100分)ながら味の似たメーンディッシュを3つ続けて出されたようで食傷気味。コース料理の如くオードブルやサラダみたいなものも挟む余裕はなかったのか?
そういえば、デザートもなかったような…

神様はいない(公演終了・ありがとうございました・御感想お待ちしています)

神様はいない(公演終了・ありがとうございました・御感想お待ちしています)

MU

新宿シアターモリエール(東京都)

2009/09/10 (木) ~ 2009/09/13 (日)公演終了

満足度★★★★

80分がアッという間
諸事情により特例的に繰り上げアップ…
 
こちらはシリアスでもう一方の『片想い…』がコミカルと事前に耳にしており、しかもテーマが宗教とテロということで、若干肩に力が入り気味で観始めたら、序盤(に限らないか)に笑える部分があって肩がほぐれたばかりでなく、非常にわかりやすく、80分がアッという間。
また、引き際が見事と言おうか潔いと言おうか、最高潮に達したところでスパッと幕切れになるのも心地好い。語りすぎず、不足もなく、余韻を残して切り上げて強い印象を残す、な感じ。

あと、スタイリッシュな蕎麦屋(台詞に出てくる「リニューアル」によってああ改装されたんでしょうね)の1階店舗部分をメインに、2階にある長女の仕事場も上手に同居させた装置に劇団競泳水着のソレを連想。

ネタバレBOX

で、「神様は信じようが信じまいがかまわない、教団さえ信じていれば」という痛烈な皮肉にニヤリ。
ハセガワ主宰は「特定の宗教をあげて敵に回したくないのでこういう設定にした」とおっしゃっていたけれど、逆にすべての宗教を敵にしたのでは?(笑)
マリー・ド・ブランヴィリエ侯爵夫人

マリー・ド・ブランヴィリエ侯爵夫人

DULL-COLORED POP

新宿シアターモリエール(東京都)

2009/08/14 (金) ~ 2009/08/17 (月)公演終了

満足度★★★

格式の高さまで香ってくるよう
シリアルキラーものと言えども18世紀の「おフランス」の上流社会となるとお上品で、台詞回しやオーダーメイドだという衣装の効果も相俟って格式の高さまで香ってくるよう。
休憩前の70分は、どちらかと言えば淡々と事実を示し、しかし誰かの手によるものとハッキリ示すこともなく、チラシ等で予備知識を入れずに観たら疫病で亡くなる人々を看取る天使のハナシか、と思うくらいで。
それでも真綿で首を絞めるようにごく柔らかく緊張感が昂まって行くのが心地好い。(マゾ気味爆)
また、ラストも深読みあるいは誤読(爆)可能な思わせぶりなもので「もしや…?」という余韻を残すのも巧み。

雨の一瞬前(再演)

雨の一瞬前(再演)

ユニークポイント

ザ・スズナリ(東京都)

2009/08/14 (金) ~ 2009/08/16 (日)公演終了

満足度★★★★

秋葉演出と通ずるような
昭和20年の東京、姉妹だけが残されて休業中の旅館に仲間を集団脱走させた上に雇い主を殺した朝鮮人2人が転げこみ…という状況から始まる静的な85分間、余分な説明を排し凝縮された感覚は SPIRAL MOON の秋葉演出と通ずるような。
舞台で演じられた出来事のみならず、そうなるに至った背景=日本の過ち…というよりも過去の歴史上の侵略者たちの横暴、身勝手さ全般について考えさせられる。
井上ひさしの『きらめく星座』や『闇に咲く花』とはまた違った形で「忘れてはいけない、風化させてはいけないもの」を語り継いで行く作品だけに折ある毎に演を重ねて欲しい。ただ、本作は前述の通り説明的な部分をかなりそぎ落としているだけに、受け取る側(特に若い世代)がそこまで読み取れるかどうかという問題はあるかも?

Sea Man

Sea Man

劇団Spookies

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2009/08/12 (水) ~ 2009/08/16 (日)公演終了

満足度★★

なんだか残念な出来
自分のとるべき道が見えない徳川家茂が、上野彦馬の寫眞館で出会った神父の口利きによって海援隊の訓練に参加して…という実在の人物たちを使った架空の歴史もの。
その大胆な設定や「自分が定まっていない者は写真にも写らない」とする部分などは面白いが、ドタバタコメディ風の部分があったかと思えば戦うことの意義などに関するシリアス気味の部分もあり、あれこれ取り入れてスタンスが定まらないさまはまさに劇中の家茂の如し。
やはりあのアツい幕末を生きた人々とドタバタコメディは相容れないものなのか? なんだか残念な出来。

兄おとうと

兄おとうと

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2009/07/31 (金) ~ 2009/08/16 (日)公演終了

満足度★★★

なんとなくアウェー感アリ
政治学者吉野作造、政治家吉野信次の兄弟それに彼らの妻を中心とした(その4人が固定、あとのいろんな役は2人の役者が兼任)二幕五場、その構成ゆえ、第一幕(三場)が100分、第二幕(二場)が70分とアンバランス…。
しかも樋口一葉、太宰治、吉良上野介などと違ってあまり馴染みのない人物だけになんとなくアウェー感アリ。
また、第一場は作造31歳、信次21歳という設定で、大鷹明良が21歳の役を演ずるというのは芝居のウソとはいえいささかムリが…(笑)

ネタバレBOX

一方、第二幕で説教強盗が押し入ったり、泊まった温泉宿で「やかましい!」と苦情を言いに来た男性と女性が生き別れ状態だった兄妹(=『花よりタンゴ』を連想)だったりというのはは井上ひさしの真骨頂?
ただ、エンディングでせっかく再会した兄妹がその後戦争で命を落とした旨語られるのは後味があまりよろしくない…。反戦メッセージであるにしても「イタチの最後っ屁」みたいなやり方はいかがなものか?
なお、最終場の直後に作造が亡くなるのは歴史的事実であることに加えてwikipediaで予習した身として既知の事実なので問題なし。
ところでメイン・テーマ的に使われる曲がチャップリンの「ティティナ」というのは、作造が鼻ヒゲに山高帽だからか?
幕末のドリ府

幕末のドリ府

演劇配合サプリメンツ

ザ・ポケット(東京都)

2009/08/13 (木) ~ 2009/08/16 (日)公演終了

満足度★★★

ドリフネタが少なかったのはちょっと残念
チラシなどの説明とタイトルから幕末ものにいかりや長介とザ・ドリフターズを合体させたものというのは推測できたものの、その割にはドリフネタが少なかったのはちょっと残念。
入浴シーンで「いい湯だな」を口ずさませたり三味線で「タブー」を奏でたりする小ワザは巧いが肝心の5人の「男芸者」によるコントをもっと盛り込んで欲しかった。(そうすると全体のバランスが崩れるような気もするが)
とはいえ、勝、桂、坂本、西郷、中岡、高杉、新撰組隊士から家茂、慶喜や天璋院、和宮など「幕末オールスターズ」的な人物たちによるパラレルワールドでの「大政奉還秘話」、虚実取り混ぜ面白可笑しく殺陣まで盛り込みバランス良く描いて楽しい。
また、舞台後方に日本地図(蝦夷を除く)を掲げ、その部分部分にピンスポをあてることで舞台上で演じられている場がどこ(京、江戸、長州、薩摩など)での出来事かを示していたのはナイスアイデア。

リカ

リカ

ウエストエンドスタジオ

ウエストエンドスタジオ(東京都)

2009/08/07 (金) ~ 2009/08/16 (日)公演終了

満足度★★★★

女性ストーカーの方がよっぽどコワい
妻子ある会社員が、出会い系掲示板で知り合った相手に携帯番号を伝えたところ、数時間で25回もコールして留守電のワクいっぱいの20件もメッセージを残すという偏執的な女性で…という五十嵐貴久原作(未読)のサイコホラーの舞台化。三池崇史監督で映画化された村上龍の「オーディション」(映画を観てから原作を読んだ)もそうだったように、オトコの側からすると女性ストーカーの方がよっぽどコワい。非力であるがゆえに相手の自由を奪ってから「処理する」んだもの…。
観終えた翌日に原作をパラパラと拾い読みしたら(若干の省略はあろうけれどが)かなり忠実な様子ながら、時系列的に並んでいる原作に対してこちらは主人公が刑事から被害に遭った友人の状況を告げられるところから始まり、そこまでは回想として挟み込む構成。その「友人の状況」がショッキングなので十分に「ツカミはオッケー」。
また、音の使い方が絶妙で、「リカのテーマ」的に使われる音楽は回転が微妙にズレている上に傷の入ったアナログレコードのように同じ部分が何回か繰り返されてから先へ進む部分まであるという凝りよう。これで不安感をより強めるシカケ。
ドアスコープを覗くとそこにリカがいるシーンは、「ドーン」という音と共に下手後方壁(紗幕)の奥にリカの姿が浮かび上がる(←某二人芝居のラストを連想)という演出で、これも「音の力」が大きいし。
さらに、携帯で話している相手の声がもれて聞こえる表現も完全には聞き取れないものの相手の話す調子はわかるという音量なのがリアル。
黒一色の装置も含めて、この会場の特質を活かしたツクリになっていたのは、プロデューサーがここの支配人だからか?

立体文学 『むらさき源氏物語』

立体文学 『むらさき源氏物語』

ストーリーテラーズ

ドーモ・アラベスカ(東京都)

2009/08/12 (水) ~ 2009/08/12 (水)公演終了

満足度★★★★

独自の世界を展開
3月に谷中のギャラリーで上演されたものの再演(一部改訂も?)、瀬戸内寂聴の「女人源氏物語」と田辺聖子の「春のめざめは紫の巻 新・私本源氏」をベースにリーディングと芝居の中間的な独自の世界を展開。(そもそも「リーディング」が朗読に近いものから芝居に近いものまで幅広く指すのでエラく曖昧だが)
今回は前半の瀬戸内パートの「本編内容が古典の授業」という劇中劇スタイルをとりつつも、終盤で授業シーンに戻ってもまだ本編の人物がチラホラするという「胡蝶の夢」的な処理にニヤリ。この「胡蝶の夢」系も好きなパターンなのでついつい頬が緩んでしまう。
もちろん短歌にメロディをつけてミュージカルっぽくするという趣向も面白かった。(しかも伴奏がウクレレとリコーダー、オカリナだし…)
あと、谷中の時に気付かなかったこととして、田辺パートで関西弁を使っており、しばし「田辺聖子らしいなぁ」と思ったものの、考えてみると京が舞台なので関西弁で当然だったのね。
で、開演前と終演後には料理と飲み物も供されてさながらホームパーティーのオモムキ…どころかむしろホームパーティーそのままで、演ずる側と客あるいは客同士の交流の場になるのもここでの公演ならでは。

エモーショナルレイバー

エモーショナルレイバー

ミナモザ

サンモールスタジオ(東京都)

2009/08/06 (木) ~ 2009/08/09 (日)公演終了

満足度★★★★

どんな仕事にも苦労が…(笑)
「組織系」ではない「民間の」(※)振り込め詐欺グループの事務所を舞台とした物語で、どんな仕事にも苦労はあるんですねぇ…ってか、ああいう仕事も普通のオフィスとおんなじじゃん、みたいな。(笑) 
※ という印象を受けたが後からつらつら考えるに抜けようとすると「ゴッホにされる」なんてところはやっぱり「組織」的か?いや「組織」ならそんなナマやさしいモノではないのか?
 
で、「店長」が1週間の売り上げ順位を発表して下位の者を叱るシーンは妙に身につまされる。ああいう時って叱られていない側もシュンとしちゃうんだよねぇ…ってか、何がカナしくて劇場でそんな気持ちを味あわにゃならんのさ!(笑)
また、登場人物それぞれ「あぁ、いるいる」な個性が面白かったが、「エンジェル」の空気を読「ま」ない・&相手がどんな反応でもメゲないというマイペースなキャラは強烈。ああいうのを少しは見習った方がイイか?(爆)
ところでアレはすべて9月中の、つまり1ヶ月に満たない期間の出来事?
連作短編的に短めのエピソードを暗転でつなぐスタイルで、暗転の間に経過した時間は観客の想像に委ねられるワケで、しかし壁に貼ってあるカレンダー(1ヶ月分で1枚のもの)がずっと9月のままだったもんで…。
そこんトコを、壁掛けの日めくりカレンダーで表現すればもっと親切だったのではあるまいか。

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