満足度★★★
大半の出演者が本人役を演ずる可笑しさ
劇団ヨロタミのメンバーが翌日からの公演に向けて博品館劇場入りすると、すでに Neo Mask が仕込みを終え場当たりをしていて…という円盤ライダーの『仕込んでいこう!』(07年)と似たよく状況から始まる物語、脚本を第1幕はヨロタミ側、第2幕は Neo Mask 側が担当するというのが両劇団ともよく観ている身には魅力な上に、飯田里穂や風見章子まで出演という女優系としてハズせないキャスティング…。
そういう状況から始まるだけに第1幕は大半の出演者が「本人役を演じる」というのが可笑しい。(『仕込んでいこう!』の場合はそれぞれ架空の劇団の劇団員役であって本人役ではなかった)
ヨロタミの「舞台監督係」「座長係」なんてポストは実際のものなのかフィクションなのか?(笑)
で、それぞれがサワリのシーンを演じて騒動の元凶となった制作担当にどちらを上演するか決めて貰い、敗れた側の客に対してはその担当者が誠心誠意謝るということでハナシがまとまりそれぞれ演じるが結局両方の脚本を併せて1本の芝居にすることになる、というのはやはりこのテの状況の定番的な(?)展開ながら、ベテラン女優の一言で安穏な状況が覆されて一同大慌て、というところに劇団BOOGIE★WOOGIE の『BACK from BACK』(02年、06年)もちょっと連想。
そういう展開を経ての第2幕は仕上がった脚本の通し稽古で、劇中の台詞にもあった通り Neo Mask テイスト満載なところにちょっとだけヨロタミのスパイスが利いて、な物語。
未来の死刑囚に対する刑罰として「義のある死」を与えるべく戦乱の世に送るというSF風設定も加えて描く「生き抜いてこの世に存在した証を残す」というテーマ、単品としてもよく出来ており、増補改訂版をいつか上演しても面白いのでは?などと思う。
総じて言えば1人の脚本家が書いた『仕込んでいこう!』の方が1本の芝居としてのまとまりはあったが、こちらは2つの劇団が時には自身を演じながら1つの作品を上演するという面白さアリってところか。