はちみつ
こゆび侍
王子小劇場(東京都)
2009/09/23 (水) ~ 2009/09/28 (月)公演終了
満足度★★★★★
面白うて やがて哀しき 恋愛譚
過去に観た2作が(大リーグボール級も含む)変化球だったのに対して今回はド真ん中の剛速球、吟ずれば(笑)「面白うて やがて哀しき 恋愛譚」、序盤は「え、まさかラブコメ!?」なほどに笑いも多く、がしかし、次第に恋愛特有の切な~い感覚が強くなり、身につまされてしまうという…。
裏切られてもまだ相手を信じる「まっすぐな」朔太郎には往年の自分自身を…すみません、ウソです(爆)「かくありたかった自分」を重ねて観ていたりもするから感情移入しすぎてまるで擬似体験、みたいな。
また、メイド喫茶のシーンなぞもともとユーモラスなのに、取材に行っている成島主宰の姿を想像したら、より頬が緩んでしまって…
(後で聞いた話では主宰のみならずキャストも一緒で、全員癒されたとのこと)
あと、映画音楽っぽい曲の使用(実際は映画音楽は1曲だけだそうで)や朔太郎が映研であるという設定もあり、全体的に「映画っぽいなぁ」と思っていたら、本作は映画のシナリオとして書かれていたものを舞台化したとのことで、あぁ、それが一番の原因か、なんてことも。
恋愛ドラマでありながら、劇団競泳水着とはまた趣を異にする1作、面白かったなぁ。
しあわせになりたい
CORNFLAKES
SPACE107(東京都)
2009/09/22 (火) ~ 2009/09/27 (日)公演終了
満足度★★
前半は冗長な感なきにしも非ず
相方が「葉っぱ」で逮捕された(再演なのに何とタイムリーな!)上に妻とも離婚というお笑い芸人・響のファンでもある制作会社の女性ADが彼のドキュメント番組を撮ろうとして…という物語、彼以外にも大なり小なり「ふしあわせ」をかかえた人物がいて、重くはないものの、前半は冗長な感なきにしも非ず。
がしかし、終盤でそれまで複数の不幸に見舞われがらも飄々として受け流しているように見えた響がお守りを見てフト「これ持ってたら幸せになれるかな」ともらし「みんなで買いに行こうよ」と言う場面は白眉。
一見「コイツ、カワイくねぇな」だったのが実は虚勢であると判明し、ガラリと印象が変わるもんなぁ。しかもその後、さらに悲しい出来事も起こるし。
で、番組制作も頓挫し、響の家に同居していた後輩芸人や友人も去るエピローグは、そんなこんなもすべて柔らかく受け止め、「一つの終わりは新たな始まり」的に優しく包み込み、切ないけれどもふんわりと着地する、な感じ。
まぁ、最後の「花」はありがちな上に、少なくともσ(^-^) の席からは開花しているのが見えてしまったのが残念なのだけれども。
また、もう少し前半を整理できるのでは?という気持ちは払拭できず。(だって本編140分ですぜ)
怪説 三億円事件
554(ゴゴヨン)
d-倉庫(東京都)
2009/09/19 (土) ~ 2009/09/23 (水)公演終了
満足度★★★
大胆すぎてヤバい説(笑)
今から40年も前に起き、刑事はもちろん民事の時効もとっくに迎えているという昭和犯罪史上類を見ないアノ事件で、行方知れずになったままの現金の行方をめぐる謎解き系。
なるほど、あちこちに「この作品はフィクションであり…」と断りを入れているワケだ、大胆すぎてヤバい説だわさ。(笑)
府中刑務所で新たな試みをするために集められた囚人たちは全員が心当たりのない事由によって囚われているだけでなく3億円事件に関係のある人物の息子や娘であることが判明し、さらに他にもそんなつながりを持つ者がいて…という設定はいささか強引なれど、「芝居のウソ」としては全く問題がなく、むしろサスペンスとして面白い。
そのあたりを小出しにしながら物語を進め、当時の親たち(子供たちが二役で演ずるのだが、その早替えのアイデアも見事)が絡んでいた事件の真相を見せる終盤はワクワク。そして現金にたどり着いた子供たちが選ぶ処置もサワヤカ。
さらに一件落着かと思わせた後に本当の首謀者(これがヤバい!(笑))を示して終わるなんざなかなかのもの。
墓のフタ(?)が簡単に開きすぎるとか、若干のツッコミどころ・詰めの甘いところなどはあるものの、いつかこのあたりを改訂した完全版を観たいモンです。
FEVER~眺め続けた展望の行方
傑作を遊ぼう。rorian55?
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2009/09/19 (土) ~ 2009/09/27 (日)公演終了
満足度★★★★
ウマい作品を選んだモンだ
オリジナルであるTEAM NACSは今まで苦手意識、というかむしろ喰わず嫌い感(爆)があったので、こりゃあ「お試し」にはちょうどイイ、的な。
幼い頃からの友人たち5人から成るステージパフォーマー集団の幼稚園時代から今にいたるまでのスケッチ集と言うか、ショートコント風のエピソードをメンバーの一人語りやダンスでつなぐスタイル。
いわゆる「戯曲」を上演するのではなく、こういうSHOW的要素のあるものをカバーするというのは珍しい試みだし、しかし「コピー」ではなく「カバー」になっているのがまた見事。
おっと、つい音楽用語…。単なる模倣ではなく、自分なりの解釈で自分のものとして見せている、とでも申しましょうか。(後で訊いたらオリジナルに大きく手を加えたりはしていないんだそうで)
で、「自分たちはこんな道をたどって今ステージに立っており、これからもステージを続けてゆきます」な終わり方は劇団化しての第1回公演ということもあり、その決意表明のようにも感じられて。
また、一人語りをしている現在のメンバーのもとに、その次のシーンからフライングして幼稚園児姿のメンバーが登場したり、あるいは逆に過去のエピソード中で1人残ったメンバーに「いつまでやってるんだ?」なんて別のメンバーがツッコんだり、な構造は好み。
うん、ウマい作品を選んだモンだわさ。
今後も一般的な戯曲はもちろん、こんな風な他者があまりカバーしないものも取り上げていただきたいものです。
たとえば柿喰う客の『恋人としては無理』とか楽園王+の長堀博士作品群とか「他者が演出したら一体どうなるんだろう?」と想像し難いものね。
フェルマータ
LETUBO(ルツボ)
神楽坂die pratze(ディ・プラッツ)(東京都)
2009/09/17 (木) ~ 2009/09/20 (日)公演終了
満足度★★★★
「似て非なるもの」感が面白い
長堀博士の脚本を赤堤ビンケ(未見)の鈴木優之が演出するという企画、藤原主宰が当日パンフで語っていらっしゃる「非日常の原作をもとに日常芝居がやりたい」という今回の狙い、まさにその通り、な感じ。
それは長堀脚本作品にしてはかつてなく写実的な舞台装置からも予測できたように、確かに長堀ワールドではありながら、本人あるいはSPIRAL MOONの秋葉舞滝子による演出とはまた違った…どころか全く違ったと言っても過言ではない仕上がりになっていて、この「似て非なるもの」感が非常に面白い。
さらに長堀風恋愛論にもなっていて、恋愛のかけひきを語る女性がいたり、心変わり(とはちょっと違うか?)による別れの辛さ・切なさが語られていたり、そんなところも面白い。
後から聞いたところによれば、書き下ろしの脚本にかなり演出で手が入ったそうなので、オリジナルの脚本を本人あるいは秋葉演出で観てみたい気もして…。
twelve
劇団6番シード
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2009/09/12 (土) ~ 2009/09/21 (月)公演終了
満足度★★★★
ハードな『ワンダフル・ライフ』
気が付くと12のドアがある部屋に見ず知らずの面々と閉じ込められその日そこに来るまでの記憶がない12人の人々、一方、トラックの横転事故により負傷者が次々に運び込まれる救急救命センター…という状況から始まる物語、タイトルやチラシその他の事前情報から是枝裕和監督の『ワンダフル・ライフ』(99年)や劇団四季の『夢から醒めた夢』系統かと思いきや、一言で表現すれば「ハードな『ワンダフル・ライフ』」あるいは「裏『ワンダフル・ライフ』」といったところ?
そもそもが事故死だし、中には事故現場にいながらも実は絞殺されていたことが判明する者もいるし、それ以外でも違法行為がいくつか絡んでいて、サスペンスフル。(=コレはコレでアリ、どころか面白くて引き込まれる)
また、部屋の中の12人が順にドアをキーとして取り戻す記憶がジグソーパズルのピースのように組み合わさって、やがてそれぞれのつながりも見え始めるスタイル、最後の1ピースがピタリとハマって終わるのかと思ったら、確かにそうではあるけれど、むしろ根気強く並べてきたドミノの牌が様々な模様を描きながら次々と(というよりは一気に?)倒れて行くような感覚でワクワク。
そうして迎える結末は哀しみの中にちょとだけハートフルな部分があり、その配分が絶妙。
さらに「半円」以上「C」未満の上部照明(序盤の赤色灯も美しい)やフレームのみで表現した(それでも30kgあるそうな)ドアなど舞台美術もまた宣し。
極めて美しいお世辞
箱庭円舞曲
OFF OFFシアター(東京都)
2009/09/11 (金) ~ 2009/09/22 (火)公演終了
満足度★★★★★
奥行き・立体感も増して
美容院のスタッフルームで美容院スタッフ&関係者(客も含む)が織り成すドラマ、いつもながらの(内部を知らない者からすれば)実際にそんな会話がなされているのでは?と、盗み聞き・覗き見しているような感覚にとらわれるほどのリアリティ(それぞれ話し方に特徴があるのもまたリアル)に加えて、今回は何人かの特異な(笑)あるいはデフォルメされたキャラも配して奥行きと言おうか立体感と言おうか、そういったものも増した感じ。
また、欠点のない人間はいないと言おうか優れたところもダメなところも併せ持つキャラたち(アバウトに見える「総代表」が美容師たちの長所と短所をキチンと把握していたりとか、腕のいい美容師が客扱いは苦手で自分の価値観を押し付けるタイプだったりとか)によるドラマで、特定の「主人公」という存在がなくストーリーの中心となる人物が複数いるのも共感するところ。
いや、それだと微妙に違うな。
秀でた主人公が結局全部解決しちゃったりすると、スカッとするかもしれない一方でどうも置いて行かれたというか、かなわないなぁというか、ウソ臭いというか(←こうなるとヒガミだね(爆))、なところ、そうならないのがまたリアル、みたいな?
time
円盤ライダー
@quos(東京都)
2009/08/27 (木) ~ 2009/09/13 (日)公演終了
満足度★★★★
お得意の「現地芝居」
学生時代からの友人2人が脱サラして始めたバーの開店から閉店までの2年間を実際のカフェバー内で演じるという、お得意(?)の「現地芝居」、ここでの前回は観逃したのでこの店は初。広さから言えば Gallery LE DECO くらいか? そこにビリヤード台やダーツの的(って呼称するのか?)、レーシングカーのサーキットなどがある「おサレなカヘバー」。
内容的にはプロローグとして閉店の「その日」を見せてから開店前に遡り、いくつかのポイントをたどりながら冒頭の時点に達してそのほんのちょっと先まで行って終わる構造だけに「2年間で閉店」というのはわかっており、ホロ苦~い感覚。
それを(一部誇張されたキャラもいるものの)基本的にはほぼ等身大の登場人物たちが演じているので共感するというよりはダメなところが妙に身につまされたりもして、時々胸の古傷がチクチク…(爆)
いや、サナトリウム症候群っぽいところは古傷どころか現状のわが身そのままか?(更爆)
また、一見すると正反対のような2人の主人公、実は根底にあるモノは共通なのでは?と思ったり。学生時代に一緒にサークルを立ち上げたということもあるが、なんだか観ていてよく似ているように思えて。
作・演出の四方田祐輔は今回初参加とのことながら、なかなかイイ感じ。
白と黒とその泡と
KENプロデュース
池袋GEKIBA(東京都)
2009/09/09 (水) ~ 2009/09/13 (日)公演終了
満足度★★★
鈴班のみ観劇
父親が亡くなり、三男が同居していた実家に次男夫婦、長女、叔父、祖父などが集まった通夜の日の昼から翌日の昼前までを描いた「どこか懐かしいホームコメディ」で、「天城越え」に重ね録りした遺言テープとかロックな読経(名場面!)で笑わせておき、辞世の歌の謎解きを経て家族愛で締めくくる構成が手堅く、毛利元就の「三本の矢」など途中でヒントとして出して遺言の鍵である「父が一番喜ぶこと」の正解を観客に読ませる匙加減も巧み。
Contagion
SORAism company
SPACE107(東京都)
2009/09/11 (金) ~ 2009/09/13 (日)公演終了
満足度★★★★
単なるコメディではない独特の面白さ
「ヴァンパイアウィルス」によりヴァンパイア化した人々を隔離する一般人禁制の山寺で何やら不穏な動きがあるとの情報により、機関のエージェント2人が潜入捜査をすることになるが、奪われた金を探すヤクザ、観光客、占い師、学生なども現れ、成り行き上全員の宿泊を許さざるを得なくなり…という状況から始まる物語。
ヴァンパイア化といってもいわゆる「吸血鬼」のようなモンスターではなくほとんど一般人と変わらないのでホラーとは無縁で、むしろ全体はコミカル。
しかし「不穏な動き」をめぐるサスペンスから殺陣・アクションにダンス(題材が題材だけにMJトリビュートもあり)まで取り揃え、それらをバランス良く配合することによって、単なるコメディではない独特の面白さを出しているのがイイ。
また、穴吹一郎は登場シーンを筆頭としたコミカルな味やラストでの全体のまとめ方などさすが。
さよならノーチラス号
演劇集団キャラメルボックス
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2009/08/27 (木) ~ 2009/09/13 (日)公演終了
満足度★★★
ジワジワと思い出す感覚
初演時にかなりひきこまれて思い入れが深い一方、11年も前なので記憶が風化しているという状態で観たら、観ながら「あぁ、そうだった」と次第に記憶が蘇ってくる、的な。
キャストについても事前にはサブリナ以外は全く覚えていなかったものの、観ながら何人かは衣装やメイクから「そういえば…」的に思い出す。このジワジワと思い出す感覚はちょっと快感。
他にキャスト関連ではクロムモリブデンのお二方もすっかり溶け込んでしっかりキャラメル系キャラになっており…(笑)
片想い撲滅倶楽部(公演終了・ありがとうございました・御感想お待ちしています)
MU
新宿シアターモリエール(東京都)
2009/09/10 (木) ~ 2009/09/13 (日)公演終了
満足度★★★★
なるほど、表裏一体
とある結婚相談所にワケありで入った新人は、以前「亀戸の母」と呼ばれカリスマ視されていた「縁結びの神」で…というところから始まる、恋愛下手で見えない「ナニカ」にすがってでも成就させたい人々(『神様…』のつい宗教にすがってしまう人々と一脈通ずる)を描いたコメディ。
そういえばここまでコメディタッチのものってσ(^-^) が観始めてから3度目にして初めてかも?
そのためか客席も妙におとなしく「ココ、笑うトコでしょ?」と戸惑うことも少なからずアリ。ま、σ(^-^) はそんなことはお構いなしに吹き出したり笑ったりしていたのだが…。
また、赤い糸を最後に見せるのも愉快。
なるほど、文字通り表裏一体、一見対照的なのに奥深いところで繋がっていて、交互上演だとそれがよくわかる感じ。個人的には観る順もこれでヨカッタかな、と。
真久部卓の生活
モンキーworks
アトリエフォンテーヌ(東京都)
2009/09/10 (木) ~ 2009/09/13 (日)公演終了
満足度★★★★
四大悲劇リミックス
タイトルおよびチラシ等の説明から概略はわかっていたので、当日パンフの人物相関図を見てニヤリ。沙翁の四大悲劇の主要人物をうまく組み合わせて1つにまとめているんだもの。
当然本編もそれら4作を再構築…というよりはリミックスしてつないでおり、しかも三女デリアは父である王から放逐されるし、オジェロの妻は不貞をはたらいているし、羽村は王である父を殺した男に復讐するし、予言通りに王となった真久部はまさかそんなことが起こることはない(「森が動く」ではないが)と思われた予言が当たって王座を追われるし、と各作品のポイントはシッカリ押さえているという。
そんなワケで四大悲劇を知っていればいるだけ楽しめるシカケ。
今まで観た塩塚晃平作品はどうも苦手だったけれど、これはむしろ好み。
ただ、登場人物の名前が日本人風の漢字のもの(真久部、羽村、伴など)と洋風の仮名書きのもの(オジェロ、デリア、リルなど)が混在だったのは惜しい。どちらかに(漢字の方が面白いだろうな)統一すれば良かったのに。
あと、チラシあった近松はいずこへ? せっかく主要4作品をwikipediaで予習して行ったのに…(笑)
にぎやかフラワー
春の日ボタン
「劇」小劇場(東京都)
2009/09/09 (水) ~ 2009/09/13 (日)公演終了
満足度★★★★★
今回はラブコメ
今回はラブコメで、一話完結のエピソードがそれぞれどこかでリンクしている構造は同様ながら、より緻密になり第五話に向けて各編で巧妙に伏線を張っているという…。
しかもそれがバレバレの伏線でなく、各編の中ではちゃんとネタ(笑)として機能している上に最終話でドミノ倒しの如く次々に開花して「あぁ、伏線でもあったんだ!」みたいな。
終盤でのなかなか肝心なことが言えず、お膳立てを整えられての「いざ」という時でも「ここまで言ったんだから後は察してくれよ」な男心(これも草食系の一派か?)なども非常によくわかり…どころか共感してしまい、古傷がうずくような気もして…(爆)
装置は蝶番でつながれた開閉できる板で作られており、エピソードが変わる度に本をめくるように転換するのだが、第二話での屋上の手すり、どうするんだ?と思っていたら飛び出す絵本的なシカケでたたまれて「あ、そうか!」と。(←手すりが出現する時に気付けよ!(笑))
長ぐつのロミオ
昭和芸能舎
SPACE107(東京都)
2009/09/02 (水) ~ 2009/09/09 (水)公演終了
満足度★★★
「ネオ人情もの」
バブル真っ盛りの80年代前半、築地の場内外の人々に六本木のディスコをからめて描いた「ネオ人情もの」、当時の流行を身を以て体験した世代なので出来事やヒット曲など「あぁ、あれはあの頃だったのね」と再認識したりしつつ楽しむ。
また、そんな時代設定でありながらも六本木再開発や築地移転などイマに通ずるネタも入っているところが巧み。
さらに終盤の夏祭りシーンなぞ昭和の映画(『駅前シリーズ』とか)のラストを想起させて、改名効果か? いや、「新宿芸能社」時代も同系統だったので、内容に名称を合わせたんでしょうがね。
あと、ディスコのショータイムで見覚えのある衣装(夏に相鉄本多劇場で見た音域毎のレベルインジケータが蛍光塗料も使って胸にプリントしてあるTシャツと赤いLEDでデコられた大型アイシールドの付いたヘルメット)が出てきてニヤリ。
アマガエル
発条ロールシアター
タイニイアリス(東京都)
2009/09/03 (木) ~ 2009/09/06 (日)公演終了
満足度★★★
今まであまり観たことのないタイプ
公園で知り合ったスーツの男、浪人生、ジョガー、ホームレスたちの前に「伝説の浮浪者」を探しているという少女が現れ…という状況から始まる物語、比較的日常に近い状況から思いもよらぬSFチックなスケールの大きなもの(「トンデモ系」ともゆー(笑))に変貌する展開に nomade second の『シンクロニシティ』(98年)を連想したりもする。
が、その地底人(!)のシークエンスが実は…というドンデン返しがあるのがアチラと異なり、さらに現実と連動しているのは上手い。
今まであまり観たことのないタイプだし、95分という上演時間もちょうどイイし、次回にも期待。
THE DEEP ~深き淵にて~
ネオゼネレイター・プロジェクト
「劇」小劇場(東京都)
2009/09/02 (水) ~ 2009/09/06 (日)公演終了
満足度★★★★★
懐かしいったらありゃあしない
7週間前に消息を絶った海洋探査船を捜索していたサルベージ船が当該船を発見したが、34人いたはずの乗組員の姿は見えず…という状況から始まるSFホラー。
劇中に「そんなB級ホラーみたいな話、あるワケないでしょう」なんて台詞が出てくるし、チラシでも宣言している通り、B級SFホラーのド真ん中、かつて東京12チャンネル(当時)の木曜洋画劇場などで観た作品群のニオイがプンプン、そこにゾンビものの香りもちょっぴり加味されて懐かしいったらありゃあしない。
で、あちこち「お約束」的な部分があり、そんな中で「それは今は聞かないでおこう、帰りの船で聞かせてくれ」などというのは「死亡フラグ」を下ろしたな、とニヤリ。が、考えようによっては死亡フラグを立てたことにもなるんだな。「それさえ口にしなければ帰りの船で聞くことができただろうに…」なんて。
また、もともとコメディリリーフ的なキャラがいる上に終盤で笑いが増えるのが独特で、最終場で暗転明けに「侵略者(侵食者?)」の弱点である赤外線を「被害者」たちが自身であてているの図が可笑しくも哀しい。
さらに海が深くなるにつれて届く光の波長が減ってゆくという劇中の説明をふまえたラストの照明の変化も見事。
海洋探査船の船室(と言うよりは船倉に近い?)を再現した装置もよくできており、登場人物の大半が開場前から初登場シーンまでの間は舞台(装置)上方の空間で待機というのがまたスゴい。
キツネの嫁入り 他短編
小櫃川桃郎太一座
atelier SENTIO(東京都)
2009/09/04 (金) ~ 2009/09/06 (日)公演終了
満足度★★★★
まさに「ネオ大衆演劇」
短編2本(約45分)の後、10分の中入り、そして「キツネの嫁入り」(約65分)という構成。
使用曲が昭和の歌謡ポップスで、冒頭や劇中に歌うシーンがあったりするのも含めてまさに「ネオ大衆演劇」、以下、各編個別に…。
「怪談!饅頭怖い」
落語のアレを怪談仕立てにしたのではなく、地獄の亡者である主人公がある理由から饅頭が苦手という設定の新作落語風一人芝居。その語り口から「まんま落語で演ってもイイのでは?」と思っていたら、小道具なども出てきて「あ、そういうことなのね」と納得。また、「ハイテク精霊馬」なんて発想も楽しい。
「道具屋」
こちらは古典落語の立体化。桂九雀の「噺劇(しんげき)」(2月)、劇團旅藝人+イエロー・ドロップスの「知新笑新」(6月)に続いて今年3度目の立体落語、やはり落語側からのアプローチ(噺劇)より芝居側からのアプローチ(本作・知新笑新)の方が題材の選択、下げの処理など上手のような気がするが、10月13・14日の噺劇では挽回なるか?
また、菊池美里の「いかにも与太郎」な表現が秀逸。
「キツネの嫁入り」
前半では歌舞伎幕(?)で隠されていた障子戸が装置として登場。それだけの装置なのにもかかわらず、複数の場所を表現できたりするのが芝居の面白いところ。
前半2編からの雰囲気に加えて、衣装が全て和装(前半2編もそうなんだが)ということもあって、どこか懐かしい昔話的な空気が漂い「日本の芝居」を満喫。
悪趣味
柿喰う客
シアタートラム(東京都)
2009/09/04 (金) ~ 2009/09/13 (日)公演終了
満足度★★★★
乱痴気っっ!!!
公演期間中2ステージだけの全キャストシャッフルという暴挙(笑)、初日を観ながら&観た後に「この人はあの役かな」「この役はあの人かな」などいくつかしていた予想はことごとく外れ、しかし「そう来ましたか!?」「そのテがあったか!」な面白さアリ…っちゅうか「うわっ、ヤラれたぁ!」の方が正直だな。
で、本来のキャスト(以下「本来版」と表記:内部では「ホンチキ」と呼称されている模様)と比べて反則気味(笑)なものから逆におとなしくなったものまで振れ幅が大きく、その意味で本来版は無難にまとめた(←あくまで比較論)感じ?
リスカへの「ブス!」発言とかカッパの棲家が「箱庭」とかにちょっと無理がある一方、狩奈なんか「柿200%」と言おうか「普段より長く回しております」状態で面白く(本来版は柿150%くらい?もちろんハマっていて面白い:念のため)、さらに没ネタをとりいれたりムチャ振りが少なからずあったり(ゆえに5分長い)するのも楽しい。
初日に「乱痴気のキャスト、また変えよう」などという発言も聞こえたので、恒例のアフタートークで訊いてみたら、配役は8月下旬に発表したものの、その後台本もちょくちょく変わり、本来版の稽古にほぼかかりきりとなり、結局乱痴気は通し稽古1回だけだったとのこと。が、各自が本来版キャストへのダメ出しを自分のものとして吸収していたこともあり、その通しでほぼオッケーだったというのはスゴい。
しかも実際のステージも完成度が高く、1回だけ出のタイミングがズレた程度。でも、そのハプニングもまた乱痴気ならではというか、ある意味お祭り騒ぎ的な公演として十分にアリでしょ、みたいな…(笑) え、優しすぎだって?
悪趣味
柿喰う客
シアタートラム(東京都)
2009/09/04 (金) ~ 2009/09/13 (日)公演終了
満足度★★★★
まずは本来版
後から振り返ると古典的な、どころかベタと言っても過言ではない和風ホラーで、たとえば「見つかった**が実は…」なんてのも常套手段なのに、あの独特の「柿節」とでも言うべき台詞回しとスピード感、リズム(ひと括りにして言えば「グルーヴ感」とか?(笑))にグイグイ引っ張られてそんなところまで思いを巡らせている余裕がない、的な。
しかも、「乱痴気」公演ではどの役を誰が演るんだろうなんて余計なことまで考えてしまうのでなおさら…。(すっかり術中にハマっていたワケだ)
また、スプラッタ系ホラー映画であればクライマックスになるであろう「大惨劇」を見せずにその直前でとどめ、すべての発端となったシーンをかぶせてから惨劇後(らしい)の様子で締めくくるのも演劇的で◎。