Dragon Question!
渡辺晃プロデュース
萬劇場(東京都)
2010/01/28 (木) ~ 2010/01/31 (日)公演終了
満足度★★★
結果的には一長一短
チラシやホムペで体感ゲームの仮想現実内でのストーリーであることが明かされていたので、昨年観た2本のみならずそれ以前にも観たことのあるパターンかと思いきや、ゲーム内で現実とリンクしているのは主人公のみという設定なので内容的にはそれらとはかなり異なる感じ。
で、“裏の自分”が対戦相手で、そのイヤな部分が終盤では入れ替わりかけていて、なんて発想が見事。なんだか身につまされる…(爆)
が、「練習ステージ」の部分がやや長く、主題部分に入る(“裏の自分”が登場する)のは半分近く過ぎてからというのがちょっと全体のバランスとしてよろしくないような。(上演時間も125分だし)
さらに、ゲーム内の戦況と現実での容態(主人公は現実界では事故に遭って生死の境をさまよっているのだ)をもっとリンクさせた方が良かったのではあるまいか。せっかくの設定が今一つ活きていないようなのが惜しい。
いや、書いた量からすると批判的な部分が多いが、自分のイヤな部分を直視するという発想(そう言えば99年11月の劇団第三反抗期『うわっ!増えちゃった』もその系統で好きだった)が良くて、結果的には一長一短ってところ
The Stone Age ブライアント『胸に突き刺さった5時43分21秒』
The Stone Age ブライアント
サンモールスタジオ(東京都)
2010/01/27 (水) ~ 2010/01/31 (日)公演終了
満足度★★★
後味の悪さが斬新!(笑)
タイムマシン学校の生徒3人が校長の命を受け、卒業試験に落ち続けている者の合否を確認するために1ヶ月後の世界に送られるが…なSF風学園系物語。
その落ちこぼれが近所にある教会の落ちこぼれシスターとともに逃げ出すのではないか?な心配もさせて結局は無事合格という基本に忠実な結末…と思わせておき、実際の1ヵ月後を見せるエピローグでそれを覆すというオチに驚愕。ありがちなパターンと真逆な後味の悪さが斬新!(笑)
が、終演後に知人からかつて近鉄が優勝できなかった時のことがベースになっていると聞き、大いに納得。(言われてみれば登場人物の名前も当時の選手だし)
また、全身タイツのような迷彩ウエア(履いていた上履きの塗装は出演者がやったそうな)での光学迷彩の表現や、舞台となる公園にある龍をかたどった遊具のデザインなどが◎。
幕末異聞 夢想敗軍記
劇団パラノイア・エイジ
SPACE107(東京都)
2010/01/27 (水) ~ 2010/01/31 (日)公演終了
満足度★★★★
全くのフィクションに説得力を与えて…
元新撰組十番隊組長で彰義隊に加入して上野戦争での負傷がもとで死亡したハズの原田左之助が山形の庄内藩に現れ、永倉新八も彼を追って…という「生き延びてモンゴルに渡りジンギスカンになった義経」的な物語。
そんなわけで全くのフィクションではありながら、史実や伝聞・新聞記事(永倉の得意技であった龍飛剣を若者に教える左之助とか龍馬暗殺加担説、大陸に渡って馬賊になり日清戦争にも参加したという説など)を加えることで説得力を与えるのが見事。
また、表面的には積極的に英語を使う藩士がいたりカートリッジ式の銃弾を使うライフルが登場したりすること、内容的には侍としての生き方が難しくなりつつあると示すことなどで、侍も残っていながらその時代が終わりを告げる頃(設定上は明治元年の晩秋とか)の出来事だというのが読み取れるのも巧い。
さらに「死に様ではなくいかに生きたかである」とする主張も「生きろ!」派として◎。
と、基本的にはシリアスでありつつ、登場人物の大半が話す「庄内ことば」の語感からどことなくユーモラスな雰囲気も漂い、そんなあたりはちょっと『椿三十郎』チックか?
そういえばオープニングで「あんな曲」を流す上に黒装束なこともあって左之助が時々ミフネに見えたりも…(笑)
あと、ひげがないどころか日本髪に和装の成田みわ子を目にすることができたのは貴重。(笑)
悪ノ娘
X-QUEST
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2010/01/27 (水) ~ 2010/01/31 (日)公演終了
満足度★★★★
ズシリとした重量感アリ
原作ものとはいえ、その原作が小説やマンガではなくストーリー性のある歌(複数)ということもあって「トクナガ色」も色濃く出された(何度か上演された『色彩組曲』と近い系統だし)架空のピカレスク系大河歴史もの(やはり中世ヨーロッパ系?)で、ズシリとした重量感アリ。
しかも出演者数35人という大所帯にいつも以上に気合いの入った(笑)衣裳もあり、通常より若干高めとはいえ小劇場系の料金でこれだけのものが観られるのはおトクでは?(これを機に今後の公演がこのレベルの料金にならないことを切に祈る)
出演者と言えば、ATTやASSHも観ていた身にとって往年の「忠臣蔵映画」的な顔合わせ、みたいな?(笑)
また、旗を使ったアクションも◎。(受けるATTメンバーあってのものか?)
で、ラストはどうせならあのまま生き延びた方が「悪(と言ってイイのか?というのは置いといて)は滅びず」な皮肉が利いたのではないか?などと思ったりも…。
ただ、得意の(?)言葉遊びがあまりなかったのはちょっと残念か。
パニ・パニ・パニック
CAP企画
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2010/01/26 (火) ~ 2010/01/31 (日)公演終了
満足度★★★★★
深み・奥行きがさらに増した感じ
阪神大震災で避難所となった朝鮮人学校を中心に描いたもので、前作『人 ~サラン~』(08年2月)で描いた在日をめぐる感情・心情に震災被災者の「いたみ」や親子ネタも絡ませて、物語の深み・奥行きといったものがグッと増した感じ。ちなみに前作の7年前の出来事になるそうで、11月の第3回公演は“「人」三部作 最終章”とのことでそれにも期待。
主な登場人物の紹介となるスケッチ集的ないくつかのシーンの後に地震が起こる導入部、つぶれた家の下から助け出される人や救い出されたものの息絶えていた人などの描写が胸に迫る。
その後は中心部分である避難所での人間模様となり、どちらか一方だけを批判するのでなく、日朝それぞれに偏見があり、簡単に溝を埋めることはできなくても、少しずつでも理解していこうとすればいつかうまく行くのではないか、とするのがイイ。(それだけ問題が大きいというのもあるが)
で、終盤での悠介と父との関係に日朝および南北の関係を重ね合わせた台詞は秀逸。ここは中でも特に素晴らしい。
しかしその後の悠介の姉が語る「つぶれたケーキ」のエピソードでホロリとさせ、そこを何とかのりきったと安心させておいて、父の友人による「悠介が生まれた時の話」で追い討ちをかけるのは卑怯!(笑)
また、性同一性障害のエピソードまで盛り込んだのは欲張りすぎという気持ちと、根底に流れる「生きてゆくこと」というテーマの補強としてあった方が良いという気持ちがせめぎあってフクザツな心境になったのだけれど、しばらく後にその原因が「ここでこのような形で使ってしまうのはもったいない」「このテーマともう1つくらい何かを絡めたら1本の作品ができるのではないか」ということだったと気付いて自ら納得。
あと、クライマックスの蛍光塗料による寄せ書きと共に舞台後方に現われるイルミネーションが「人」になっているというのも◎。
シンクロナイズド・ガロア
ユニークポイント
「劇」小劇場(東京都)
2010/01/26 (火) ~ 2010/01/31 (日)公演終了
満足度★★★
そう来ましたかぁ
紹介文とタイトルから「ガロアの生涯を学生の1人になぞらえて描くのか?」と思っていたらさにあらず、「そう来ましたかぁ」というか、「まんまじゃん!」というか、なスタイルだったのにはニヤリ。
で、例によってガロアの生涯を(往路の電車内から開演直前までの付け焼刃(爆)とはいえ)wikipedia で予習したことが役に立ち、また、安田講堂への放水の図、は目に焼き付いているものの詳しくは知らなかったその発端や経緯を改めて知ることができて「手術台の上のミシンと蝙蝠傘の出会い」的な内容を楽しむ。
それにしてもガロアの生涯を劇中劇で描くとは、ヤられた…(笑)
また、「シンクロナイズ」というところまでいっているかどうかは別としてガロア謀殺と東大紛争終結の黒幕をカブらせるような描き方が上手い。
あと、ダークグレーの装置に式や言葉(当時安田講堂に書かれていたものだとか)をチョークで書きこむ(数式だけなら湯川准教授なんだが…(笑))演出も面白い。
急襲キルフィールド
芝居流通センターデス電所
駅前劇場(東京都)
2010/01/24 (日) ~ 2010/01/26 (火)公演終了
満足度★★★
若干肩透かし気味
七つの露天風呂がある温泉郷の二軒の対立する旅館と宿泊中のアヤしい客を描いた「音楽劇」(と言っていいのか?「時々歌とダンスが入る芝居」にとどめた方がいいのか?(笑))、相変わらず内容は不道徳(爆)ながら、今回はヤケにマイルドな印象。
最終局面をS.E.だけでスキップして一旦結末を見せた後でエンドクレジトバック(J.チェン映画のNGテイクとか)のようなカタチで殺し合いを描写したからか?
これはこれで悪くないのだが、思いっきり不道徳とか血まみれとかを期待していた(爆)分、肩すかし…みたいな?(笑)
一方、電子ピアノ&鍵盤ハーモニカ(←これが一般名称)の生演奏も伴う音楽(歌モノ+インスト)はいつもながら愉快っちゅうか楽しいっちゅうか、満足度高し。
爾汝の社 再来
THE REDFACE
d-倉庫(東京都)
2010/01/20 (水) ~ 2010/01/26 (火)公演終了
満足度★★★★
脚本・演者・キャスティング・演出の相乗効果で観応えアリ
吉原の遊廓「くるり籠」を舞台に12人の遊女と女将が織りなす物語、当日パンフによれば、新宿2丁目のゲイバーの物語を書こうとしていたら江戸時代の吉原が脳内を占拠して結局男性だけで遊女を演じる作品が出来上がり、しかし初演の稽古場を訪れた女優さんたちが演ってみたい!と言ったので今回の男組・女組(&シャッフル版)での再演になったそうで。(フトコロ具合の関係で女組のみ観劇)
各遊女が個性的な上にそのそれぞれにドラマを持たせた脚本とそれを演ずるキャスト陣、さらにはキャスティングとその演者の個性に合わせた(←推測)演出が相俟って観応え十分。それぞれのチカラが存分に発揮されている、な感じ。
女将に怨みを抱く霊によって悲劇が起こるも残った者たちが力強く歩き始める締め方も良く、ちょっと桟敷童子に似た感覚もアリ。
また、途中で命を落とす遊女の霊が終盤の大ピンチの時にみんなを導くなんてあたりも上手いと言うかσ(^-^) 好みと言うかイイ感じ。
さらに、装置の背景には古色蒼然たる屏風が2枚使われていて、美術さんの作品ではなく本当に古いものなんだそうな。これがまたシブくて、芝居をより説得力のあるものにしていたかも。
ただ、音楽を使いすぎるのはいかがなものか? かなりの場において音楽が煩わしく感じてしまう。σ(^-^) の世代にとってはスタンダードな映画音楽で思い入れさえある『ある愛の詩』なんかを使われてしまうと気が散るというのもあるし。
それどころか台詞があるシーンに日本語の歌詞の付いた歌を流すのは台詞の妨げ以外のナニモノでもなく、なんでそんな選曲をしたのか理解に苦しむ。
静寂がコワいのかもしれないが、もっと役者の演技を信頼しても良いのでは?
ロング・ミニッツ-The loop of 7 minutes-
FOSSETTE×feblabo×エビス駅前バー
エビス駅前バー(東京都)
2010/01/22 (金) ~ 2010/01/28 (木)公演終了
満足度★★★
初演と比べて一長一短
カウンター席だけで展開されたDART’Sによる初演とは異なり、中心となる3人を『ゆらぎり』で使った奥のエリアに配置したことで観やすくなった一方、初演の「覗き見」的な感覚が好きだった身にとっては臨場感が減と言おうか「普通の芝居」に近くなってしまったと言おうかなのがちょっとだけ残念。ま、一長一短といったところか。
ゆらぎり【脚本:成島秀和(こゆび侍)×演出:古川貴義(箱庭円舞曲)】
FOSSETTE×feblabo×エビス駅前バー
エビス駅前バー(東京都)
2010/01/22 (金) ~ 2010/01/28 (木)公演終了
満足度★★★★
共感したりおののいたり(爆)
バーでの(基本的には)二人ずつの会話を重ねてゆくスタイル、あるシーンの会話がそのまま次のシーンで相手に伝えている内容であったり回想であったりとほぼシームレスにつながっており、それをスムーズにつなぐための立ち位置もまた絶妙。会場奥のエリアをスタンドバー的に使ったことの勝利、的な。
音楽劇「雨を乞わぬ人」
黒色綺譚カナリア派
ザ・ポケット(東京都)
2010/01/20 (水) ~ 2010/01/24 (日)公演終了
満足度★★★★
今まで見た5作品のうちで一番好きかも
07年8月の『輪廻は斬りつける(再)』からデス電所を観ている身として今回のコラボは「盆と正月」か「カレギュウ」か、的な?(笑)
その歌に関してはハンドマイクを持っての「S感線(あるいはデス電所?)スタイル」あり、演技の途中で不意に(笑)歌い出す「ミュージカルスタイル」ありで、楽曲については元子と慈雨のデュエットナンバーの中間部や甘雨と瑞雨の登場時の歌(これもデュエットだが)なぞデス電所丸出しでありつつ、他は差別化していて…なんてあたりが二重三重の意味で面白い。
内容については土着的で民俗信仰・シャーマニズム的なストーリーが「平成の泉鏡花?」な感覚だし、村の因習に縛られる人々という設定にはたとえば横溝正史作品などと通ずるレトロ感があるし、で好みなタイプ。
また、元子と慈雨が力のないマクマーフィと覚醒しないチーフ・ブロムデン(@『カッコーの巣…』)に見えたりする部分(「逃げなさい!」のトコとか)もあったりして、勝手に関連付けて観るのもまた楽しからずや。(そう言えば、謎を解かない金田一耕助もいたな(笑))
出演者では「ハイテンションな無邪気さ」(笑)を身を以て表現していた牛水里美と憎まれ役としてのイヤらしさ満載の佐藤みゆきが(ともに面識があるということもあってか)特に印象に残る。あ、あと「それって地毛?」な桑原勝行もそうか?(笑)
そんなこんなで、今まで見た5作品のうちで一番好きかも。
バベルノトウ
国道五十八号戦線
サンモールスタジオ(東京都)
2010/01/20 (水) ~ 2010/01/25 (月)公演終了
満足度★★★★
「してヤられたァ!」な快感(笑)アリ
その成分を吸引した者に都合の良い幻覚を見せるが副作用などは全くないという植物「バベルノトウ」をコッソリ栽培していることを先生に見とがめられた中学生(高校生?)たちのストーリーと、彼ら(+α)が薬品会社の研究員となっているストーリーが交互に演じられるというスタイル。
この「研究員」のパートを2度目の「学校」パートで彼らが見ている共通の「トウの中(=幻想・夢)」と観客に錯覚させておき終盤で実は20年後の現実であると明かす手口が巧妙で、それが明かされた時には「してヤられたァ!」な快感(笑)アリ。
また、推理ものの探偵よろしく盲点を指摘し、ネタを明かすのが実は存在しないシキミだというのもスゴい。
カーテンコールにシキミが出てこないばかりでなく、客電が上がると彼の席にスポット(サスペンション?)が当たっているという凝りようはその場で気付いたけれど、探偵役の件については観終わってしばらく後に思い返している時に(やっと)気付いて愕然。(え、フツーはすぐ気付くものなの?(爆))
また、誰でも責任を転嫁するための人物を欲している、なんてメッセージには身に覚えありまくりでドキリ。(笑)
誰ガタメノ剣
シアターキューブリック
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2010/01/20 (水) ~ 2010/01/24 (日)公演終了
満足度★★★
ダイナミックにグレードアップ
08年2月の初演のザ・ポケットに対してステージが広くなった分、ダイナミックにグレードアップ。
今回のツボは元親の正室・菜々が、命を落とした部下の遺族に首を差し出そうとするところ。大名の妻としての器量の大きさというのか貫禄というのか、そういったものがよく表現されていたと思うし、序盤での若き日のおきゃんな感じとの対比という意味でも◎。
しかし、初演を観ていたからイイけれど、あのエスニック風あるいは洋装系の衣裳やメイクから日本の時代モノ(それも信長から秀吉の頃の)だと誰が想像できようか?(笑)
逆にこの脚本を本来の時代劇スタイルで上演したらどうなるんだろう?なんて気もしたりして…。
十三月の男 -メメント・モリ-
無頼組合
テアトルBONBON(東京都)
2010/01/20 (水) ~ 2010/01/24 (日)公演終了
満足度★★★★
和製リュック・ベッソン
感染すると3年以内には必ず死ぬという凍血病が蔓延した近未来、傭兵である主人公は迫害を受ける患者たちの抵抗組織に雇われて爆破テロ計画に加担することになるが…な物語。
一言で表現すれば「和製リュック・ベッソン」、荒廃した近未来の状況は『フィフス・エレメント』を想起させ(世界観的には「装甲騎兵ボトムズ」風でもあるか?)、終盤は『レオン』へのオマージュ、みたいな?(そういえば桐生はG.オールドマンっぽくもあり…)
組織に立ち向かうことになった主人公と組織に残った傭兵仲間が対峙するクライマックスが良く、ハードな決着の後、関係者の「その後」を見せて柔らかく終わるのもイイ感じ。これもまた映画的っちゅうか、本作ってそのまま映画化できそうなほど「映画っぽさ」満載。
あと、元傭兵たちが使う銃がSIG、デザートイーグルなどそれぞれ個性を主張するものなのが「なんちゃってガンマニア」的にも◎。
ウーマンズアイズ
演劇企画集団・楽天団
中野スタジオあくとれ(東京都)
2010/01/15 (金) ~ 2010/01/20 (水)公演終了
満足度★★★
カッチリとしたスクエアな雰囲気
結婚40周年を迎えた夫婦が長男・三男と共にパーティーをするべくハネムーンで泊まったホテルを訪れるが、妻(と息子たち)は勘当状態の次男と夫(父)との復縁を目論んでいて…な物語。
カッチリとしたスクエアな雰囲気がいかにも翻訳戯曲で、普段よく観ているものがカジュアルウエアとすればこちらはフォーマルスーツ、みたいな?
また、ホテルの部屋を再現した装置もリアルなもので、目にした瞬間「ここは俳優座劇場か?」と錯覚しそうになったとかならなかったとか。(笑)
そんな中で繰り広げられる家族5人のドラマ、絵に描いたように厳格で頑固な父と息子たちの会話は折り目正しく…どころか堅苦しささえ感じる。
だもんで日本では成立しないか?と思ったり、あるいは高度成長期の会社経営者の一家(山崎豊子の「華麗なる一族」のような)ならあり得るか?などと思ったり。
いずれにしてもわが身とは遠く離れた世界の出来事(爆)ゆえ共感したりはしないものの、芝居として引き付けるものがありシッカリと観てしまう。(その結果、シリアスな内容と相俟ってマチネは観終わってちょっと疲れたくらいで…(笑))
また、終盤の妻の長台詞に「やはり夫というのはお釈迦さまの掌の上の悟空のようなものなのか?」などとも思う。
で、夫婦役が設定より若く、(少なくとも妻は)とてもアラカンに見えないのでアタマの中でヘンリー・フォンダとキャサリン・ヘプバーンに変換しながら観ていたりも…。(笑)
そういえば、それだけの歳を重ねても可愛らしさというか茶目っ気というか、そういったものがある女性というのも海外っぽいか?(もちろん私見)
ROMEO
激団リジョロ
シアターシャイン(東京都)
2010/01/14 (木) ~ 2010/01/19 (火)公演終了
満足度★★★★
賛否両論の境界線を駆け抜ける
横浜の成り上がり実力者・早川家のパーティーで次女の珠里愛(ジュリア)に一目惚れし恋仲となった在日の盧明生(ノ・ミンサン:通称ロメオ)はまさにロミジュリのような結末を迎え(ここまでがオープニングなのだ)、かろうじて命を取りとめたものの恋人を喪ったショックから魂の抜け殻のようになっており…というところから始まる物語。
そういえばここ4日間で沙翁作品をひねったものが3本も…って集中しすぎでは?(笑)
また、最終的にロメオが自害するということで、時々ある「急死しで心残りのある者が神の計らいにより一定のを貰って現世に蘇る」なパターンのバリエーションという見方もできるかも?
で、内容的には非常に際どい…(笑)。賛否両論のボーダーライン上を時々踏み外しながら(爆)駆け抜ける、な感じ。
ツッコミどころ…というか辻褄合わせに苦しい部分もありつつ(←観ながら脳内で合理的な説明を試みていたり…)、「殺人者は誰か?」なサスペンスも加わり160分の長尺もさほど長くは感じず。
「生きろ!」派として「殺さなくても…」や「死ななくても…」な部分も少なからずあるものの、最終的には「二大勢力の対立が引き起こした悲劇」いう原典のテーマに戻って終わるので、犠牲者を増やすことでよりテーマを強調したと解釈して納得。
また、菅田俊や工藤俊作など東京倶楽部関係者が出演する映画のような雰囲気もアリ。
ハマの陽気な女たち
project ON THE ROCKS
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2010/01/14 (木) ~ 2010/01/17 (日)公演終了
満足度★★★★
きらびやかでおトクな感じ
前回同様沙翁作品の翻案、今回は『ウィンザーの陽気な女房たち』(未見だが wikipedia で予習して臨んだ)を明治初期の横浜で展開させるという。
物語の2つの流れのうちの一方の、両親がそれぞれ娘の相手にと考えている人物が異なり、もちろん娘が想っている相手はそのどちらでもない「第三の男」などという古臭い設定もこうすることによってスンナリ受け入れることができるばかりでなく、シェイクスピアっぽさも漂うのが上手く、フォルスタッフを元・旗本にしたり、一部の人物は原典をもじった日本名にしたりというアレンジも楽しい。
また、ミュージカル風なシーンがあり(←前回もそうだった)、ラストの場も原典の森から仮面舞踏会に変えて全員の歌により華やかに締めくくるのがいかにも「新年の芝居」っちゅうか、「ええモン見せてもろたわ」っちゅうか、きらびやかでおトクな感じ?(笑)
この路線、継続してゆくのかしら? 4大悲劇やロミジュリなんかをやるとしたらどんな設定にするんだろう?
あと、原典はどんな感じなのか、そのうち観てみたいモンだわさ。
さよなら また逢う日まで
ナルペクト
劇場MOMO(東京都)
2010/01/13 (水) ~ 2010/01/17 (日)公演終了
満足度★★★★
アン山田流『レザボア・ドッグス』
かつて犯罪計画を実行に移したものの失敗し負傷者・逮捕者各1名を出したグループが、服役していたメンバーの出所によって再集結、獄中で知り合った者も加えて(ってかソイツの計画・主導で)6億円を積んだ現金輸送車の襲撃を計画するが…という物語。(08年5月のブラジルの初演版は未見)
いわば「アン山田流『レザボア・ドッグス』」、前半は笑える部分も少なからずあってライト・コメディっぽい雰囲気ながら、だんだんとコワさが増して行くという。
その笑いとコワさの取り合わせに『軋み』(08年12月)を思い出すも、こちらの方がコワさが直接的かも。
また、『レザボア…』との対比では、アチラと違ってメンバーの大半が以前からの仲間であるということで、計画を実行に移すまでのパート(そちらの方が長い)でその関係や以前の失敗について語られるところが異なり、そこが日本的?(笑)
で、強奪には成功するもののハプニングがあり、アジトに戻った後で互いの疑心暗鬼と欲目から殺し合いにまで発展するのは「犯罪は割に合わないよ」と諭すようで「極めて道徳的」。(笑)
よって、登場人物の大半が命を落とすのにもかかわらず後味は悪くない、みたいな?(感じ方には個人差があります)
あと、劇中の銃声はS.E.によるもので、銃による違いをキチンと表現していたのに感心。
ただ、一番小柄な女性にパイソン(らしきコルトの大口径リボルバー)を使わせるのはど~よ?(相変わらず拳銃に関してはウルサイσ(^-^) である…(爆))
美しいヒポリタ
世田谷シルク
小劇場 楽園(東京都)
2010/01/13 (水) ~ 2010/01/17 (日)公演終了
満足度★★★★
大変楽しうございました
ネットビジネスを手がける小規模オフィスで社員同士の結婚が決まり、夜には社長の音頭による祝賀飲み会が開かれる…という1日を描いた物語。
ベースはシェイクスピアの『夏の夜の夢』ながら、単なる翻案ではなく翻案したストーリーの中に原典が表出して、さらにその原典を「おしゃアプ(=おしゃべりアプリ)」の中のトラブルとして再度取り込むという、ひとひねりどころか「2回転半ひねり」くらいした構造が面白い。
で、その翻案部分と原典部分を照明で切り替えるとか、ところどころ「3倍速再生」でトバすとかの演出もわかりやすいし、ちょっとテクノ系?なダンスやそれにラップも組み合わせてさらにそこに出てくるコトバを壁に投射するなんてのがカッコイイ。
そんないろんな要素の取り合わせ、他に類を見ない感覚で大変楽しうございました。
小鳥のさえずり
SPPTテエイパーズハウス
銀座みゆき館劇場(東京都)
2010/01/14 (木) ~ 2010/01/17 (日)公演終了
満足度★★★
シナトラ・ナンバーもイイ感じ
2009年の大晦日、留守中の燐家に届いたために預かっていたマロングラッセをちょっとした事情から三女が食べてしまい…という状況から始まる「お馬鹿サスペンスコメディ」。
まずは舞台となる家で飼われているセキセイインコを狂言回し(あるいはストーリーテラー)に使うアイデアが面白い。
カゴの中に実物大の模型があり、その台詞や動作はそのそばにいる役者が担当するというのが独特で、カゴを揺すられると役者も揺れたり、セリフのない時には小鳥っぽく頭を小刻みに動かしていたりするのが愉快。
また、内容的には前述のような出だしから、怪しげ(と言っても犯罪などとはまったくもって無縁)な人物が何人か登場し、家族側にも(マロングラッセを食べたこと以外(笑)に)隠し事をしているような者がいたりして「それって何?」と興味をつないで、実は薄れていた母と娘たちの絆を取り戻させようとする伯母(母にとっては義姉)の策略(←σ(^-^) の弱点パターンだ(笑))だったというのが巧い。
さらに亡くなった父(夫)の見せ方やかすかに交流する部分に堤泰之の『煙が目にしみる』(これがまた大好きなもんで)に似た薫りを感じたりもする。
あと、暗転時(開演直前も含む)に流れるシナトラ・ナンバーもイイ感じ。