じべ。の観てきた!クチコミ一覧

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天使の涙・・・

天使の涙・・・

projectDREAMER

シアター711(東京都)

2009/12/03 (木) ~ 2009/12/16 (水)公演終了

満足度★★★

「東京バンドワゴン」に通ずるニオイ
アラハン(=around 半世紀)の骨董屋主人とその親類から成る趣味の「フォークグループ」(男女3人組)が老人ホーム慰問クリスマスLIVEのリハーサルをしている、なオープニングに導かれる物語。
そういう設定なので劇中に歌が入るのが自然と言おうか当然と言おうか、唐突な感などあろうハズもなく…。
そこに骨董屋を訪ねて来た娘や主人の息子などもからませたストーリーは従来の IOH とはちょっと異なる系統ながら時にユーモラスでわかりやすく、これはこれでアリな感じで、ちょうど第2弾を読んでいる最中の小路幸也の「東京バンドワゴン」シリーズと共通するニオイも感ずる。
で、急に態度の変わるキャラが複数いるのは「キレやすい最近の若者」的な表現か?(笑)

【AchiTION!Q&A】

【AchiTION!Q&A】

シネマ系スパイスコメディAchiTION!

しもきた空間リバティ(東京都)

2009/12/04 (金) ~ 2009/12/06 (日)公演終了

満足度★★★★

謎を残して終わるのがニクい
『5/5』『WS』に続く短編オムニバスの第3弾、今回は各編とも劇中で疑問が提示されて終盤でその解答が明かされるスタイル。
であると同時に、最後の1編でそれまでのエピソードをまとめるという、往年の深夜ドラマ「ハートにS」(それまでのエピソード何篇かの主要登場人物が別の形で顔をあわせるのはマンスリースペシャル的か)型の構造。こういうの、好きなんだよなぁ。
さらに、各エピソードは基本的にコミカルな中、ラスト1編のみ「その中に1人嘘つきがいるので、その嘘つきを射殺した者が解放される」(ありゃ、劇団Bの『R』みたいだ)というサスペンス系で、しかも一応解決はするものの、捨て台詞の如く謎を残して終わるのがニクい。

月いづる邦

月いづる邦

La Compagnie An

座・高円寺1(東京都)

2009/12/03 (木) ~ 2009/12/07 (月)公演終了

満足度★★★★

「考えるのではなく感じる」のが心地好い
かつて Egg-Man とアゴラで観た『祈りのあとに ~RESONANCES~』と同様、音楽とジェストダンスが対等にぶつかり合う…というよりも融合して創り上げるパフォーマンス、今回は使うステージのみならず、語られるテーマも大幅スケールアップ、な感じ。
母の想い、母への想いからヒト(個人・人類とも)の来し方、行く末など、哲学的とも言える内容だけに抽象的な表現がよく似合い、当日パンフに概要説明はあるものの受け取り方・解釈は観た側それぞれで千差万別かも。
その「考えるのではなく感じる」のが何とも心地好く、M.C.エッシャーの「メタモルフォーゼ」のようにシームレスで次々と変容して行く流れにひたすら身を任せる…。
また、広い壁面をスクリーンのように使い、床ギリギリに設置した照明で演者の影を投影するのも時として幻想のように見えて効果的。
さらに秘話満載のポスト・パフォーマンス・トーク(「面白くない」とか「下手」とかを具体的な団体名を出して語らなくても…(笑)>マキノ、巻上両氏)も、出てくるネタがほとんどわかるだけに楽しかったなぁ。

相沢さん家の結婚式

相沢さん家の結婚式

波天南人

テアトルBONBON(東京都)

2009/12/02 (水) ~ 2009/12/06 (日)公演終了

満足度★★★★

三段構えのツクリが巧み
早くに妻を亡くし、男手一つで育てた三姉妹の三女の挙式当日、長女は離れて一人暮らし、次女は既に嫁ぎ、ということもあってか父親は親族控室で「早すぎないか?」「延期できないか?」と往生際の悪いことを言っており…という状況から始まるハートウォーミングコメディ。
実際の控室を覗き見しているようにリアルな前半、複数の隠し事がいつ発覚するかハラハラさせるとともに笑わせる中盤、家族のつながり、あたたかさが強調される終盤と三段構えのツクリが巧みで、その内容も含めてテッパンな仕上がり。
ただ、ガンコな父親像がちょっと古風あるいは類型的かも? いや、やはり娘が嫁ぐ日の父親の気持ちは今も昔も変わらない普遍的なものなのか?
それにしても、三女の妊娠を式が終わるまで隠そうとしてのとっさのウソ、という王道パターン、大好きなのでもちろんウェルカムではあるのだが、ここ4日間で3度目なのでいずれこの3本の設定を混同してしまうかも…(爆)

抗菌バスターZ3 チェンジ

抗菌バスターZ3 チェンジ

ACファクトリー

シアターサンモール(東京都)

2009/12/03 (木) ~ 2009/12/06 (日)公演終了

満足度★★★★

何でもやってちょうだい!
病人の体内に「ミクロの決死圏」よろしくミクロ化された隊員が入り、擬人化された(笑)菌や病原体と戦うというアクションコメディシリーズの第3弾、ライバル会社のバスターを登場させた続編から2年、今回は薬効成分という「物質」を擬人化するなんて「反則ワザ」を使用。
がしかし、これが面白いので、もう「何でもやってちょうだい!」状態?(笑)
「CATS」のキャラのようなTイガーBーム(塗り薬じゃんかさ!)、「見るからに」な青・黄・銀の風邪薬や銭湯でお馴染みの頭痛薬、チープなGンダム(爆)のような胃腸薬など、欽ちゃんの仮装大賞(←劇中台詞にもあった)もどきの「薬品」たちの衣裳のアイデアも愉快。
いや、衣裳だけでなく某頭痛薬の「半分は優しさでできている」なネタも上手かったっけ。ネタと言えばアニメネタも今回は多くて、それにもウケる。
他にストロボとS.E.を使った「なんちゃってバク転」とかエフェドリンの幻想シーンなんかは舞台表現の面白さを引き出しており、前日に西口で観た芝居の演出家に爪の垢を煎じて呑ませたいくらい…(爆)
で、一件落着の後にはシリーズ第4作の予告もあり……実現するのはまた2年経ってからか。

トナカイブルース

トナカイブルース

GENKI Produce

笹塚ファクトリー(東京都)

2009/12/01 (火) ~ 2009/12/06 (日)公演終了

満足度★★★★

菅野臣太朗マジック?
経営難で身売りがほぼ確実な幼稚園、大切な交渉の日に園長が姿をくらまし、その長男も逃げ腰なところに三女のカレが結婚の許可を得ようと訪れるわ、10年前に家出した次男は帰って来るわ、あげくの果ては行方をくらましたサンタを探しにトナカイまで(!)来るわ…というコメディ。
サンタクロースが実在し、しかも人間に姿を変えたトナカイが探しに来るなどというトンデモ系(笑)な設定ながら、ヘンにリアリティがある…とまではいかないにしても、芝居のウソとして十分に納得できてしまうのは菅野臣太朗マジックか?
また、三女のカレに関するその場しのぎや勘違いはコメディの王道だし、情けなかった長男は終幕近くにはちゃんと成長(?)しているだけでなく、ずっと隠れたり顔を隠したりだった次男をキチンと見抜いているという家族の絆まで描いているし、手堅いと言うかソツ無いと言うか、やっぱり巧い。

奇々怪々

奇々怪々

カートエンターテイメント

SPACE107(東京都)

2009/12/02 (水) ~ 2009/12/06 (日)公演終了

満足度★★

出だしの2つの汚点が惜しい
安永8年、酒呑童子の首を埋めたとされる首塚もある京都付近の山中、深夜に雷雨を避けるために廃屋に1人また1人と集まる旅人たち。そこには妖しい老婆が出没するなど怪異現象が起こり…という物語。
まず冒頭の殺陣でS.E.に頼りすぎ、というか音量が大きすぎ(もちろん使用頻度もクドいほど)で興醒め。音を大きくすれば迫力が出るものと勘違いしていのではないか?と思ってしまうくらい。(本当に勘違いしていたりして…(爆))
続いての廃屋場面(以降ここがメインとなる)の序盤は盆を回しすぎ。中と外の様子を交互に見せたいらしく、回す回す…。(染之助・染太郎かよ)
映画のカット割りを意識したのかもしれないが、それとは違って盆を回すのには時間がかかることを忘れてないか?みたいな。
それも見せる必要性が薄い(外の様子は声だけでも十分な)場面にも回すし、そこ以外の見せることが必要なシーンであっても盆を使わない舞台表現なりの別の方法があるだろうに…。
1度だけとはいえ、止めずに360°回したりもしたし(ここなんてホントに外の様子は声だけで足りるのに何で回すの?状態)、結局アタマだけで5~6回転させたんじゃないか?そんなに盆を回したかったのか?(呆)
そんなワケで1年少々前の「クライマックスシーンの大半を映像上映で表現する」という舞台表現の可能性を自ら放棄あるいは否定した愚行には及ばないにせよ少なくともσ(^-^) の好みではない演出をまた見せられるのか?と不安が増大したものの、そこ以降はノーマルで一安心。
旅人の中には冒頭(メインパートの2年前)の強盗事件で失明しながらも仇討ちすべく賊を探している武士などもいて、怪異現象(ホラーではない)を彩りとして使ったサスペンスの様相。
強盗事件の真相が二転三転しながら明かされる後半と、もののけも力を貸して(!)の捕縛劇、さらにその後にまだあるドンデン返しや大岡裁き的な結末など、そんなところがよくできているだけに、本当に出だしの2つの汚点(暴言?)が惜しい。

シャッフル・ルーム

シャッフル・ルーム

東京おいっす!

「劇」小劇場(東京都)

2009/12/01 (火) ~ 2009/12/06 (日)公演終了

満足度★★★★

あの作品のあのシカケ
独身を装いたい女性と同じマンションに住み妻帯者を装いたい元カレとの利害が一致して、1~2時間だけ互いの部屋を交換するが予想外の出来事や思わぬ訪問者があり、とっさに誤魔化そうとするが…という王道コメディ。
脚本家は当日パンフに曰く、某作家の戯曲を読んで「いつか同じことがしたい」と思ったそうで、そのことを「創り手にあるまじき想い」としているが、「あの作品のあのシカケ」を使うためにこういう設定を創造したことでもうそれは十分オリジナリティがあると言えるし、この種の作品の定番と言える嘘や思い違い、勘違いと偶然の一致の数々はもちろん模倣などではなくよく計算され練られているし、という「インスパイアされた作品」であり、クーニー親子に代表されるファルス(笑劇)として上出来。
各キャラ(及びその演技)もそれぞれ良く、中でも報知機設置業者の美濃部とプロデューサーの一之瀬が特に印象に残る。
また、美濃部が「うまいこと」を言う度に柝の音を入れるのは愉快。

11月戦争とその後の6ヶ月

11月戦争とその後の6ヶ月

アロッタファジャイナ

ギャラリーLE DECO(東京都)

2009/11/23 (月) ~ 2009/11/29 (日)公演終了

満足度★★★★

11月戦争とその後の6ヶ月
空軍(!)や聞いたこともないような隣国(笑)がある「もう1つの日本」での『感染列島』+恋愛モノ的な物語。
暗転なしの、映像用語で言えば「ワイプ」のような場転や鍋を食卓に運んだ後に一瞬の暗転があり、それが明けると食後、という表現など、シーンの切り方に潔さがあり、その鋭い切れ味は「名刀松枝」(笑) な感じ?
それと、照明といえば照明を落としてのSEXシーンも面白かったなぁ。
で、ラストには「マッチ売りの少女」(もちろん別役実ではなく原典の方)を連想。
あのオチが気に入らない観客にはハッピーエンドととれないこともないのが巧いっちゅうか、ズルいっちゅうか…(笑)

11月戦争とその後の6ヶ月

11月戦争とその後の6ヶ月

アロッタファジャイナ

ギャラリーLE DECO(東京都)

2009/11/23 (月) ~ 2009/11/29 (日)公演終了

満足度★★★

王国
かつての学生運動の闘士という部分に先日のタカハ劇団『モロトフカクテル』なども思い出す。その元闘士の起こす「新たなる闘争」(?)、ワク組みはガッシリしてそれなりに緊張感もあるが、どこか既視感と「借り物」のような感があり今ひとつのめりこめず

11月戦争とその後の6ヶ月

11月戦争とその後の6ヶ月

アロッタファジャイナ

ギャラリーLE DECO(東京都)

2009/11/23 (月) ~ 2009/11/29 (日)公演終了

満足度★★★★

影のあるオンナ
本人曰く「97%フィクション」で描くナカヤマミチコの半生記。文字通り「影」を使う演出やリーディング能力を身に付けるまでとその後を分けた構成などがユニークで、連作ショートコントのようなテンポの良さも相俟って楽しい。また、登場人物によるナレーションの口調の一部に『わたしは真悟』のそれと共通のものを感じたりもして。

梅津さんの穴を埋める

梅津さんの穴を埋める

H・R企画

東京アポロシアター(東京都)

2009/11/28 (土) ~ 2009/11/29 (日)公演終了

満足度★★★★

ワンシチュエーション&リアルタイムのコメディ
1人暮らしの母のもとに息子と2人の娘(+α)が集まったその日、皆が食卓についたまま老朽化した床が崩壊、ではなく崩落、いや陥没(←劇中表現より:ただしウロ覚え)して全員が身動きのとれない状況となり…というワンシチュエーション&リアルタイムのコメディ。
突然のトラブルに見舞われて、救いの手をさしのべてくれる誰かが近くを通るのを待ちながらいろいろ話をしているうちに隠し事が次々と明らかになるコミカルな前半と、家族あるいは愛し合う2人の絆が確認される後半との対比が鮮やかな脚本(かつて演劇集団円のために書き下ろされたそうな)に加えて、いかにもそれらしい家族やリフォーム屋の演技もイイ。
中でも劇団6番シードの椎名亜音嬢は初の老け役ながらその口調による表現力の巧みさに白髪交じりのヘアに老眼鏡という見かけも加わって、設定上どう若くても50前後、最近の傾向からすればアラカンもありうるという3人の子供を送り出した母親役を好演。
さらに陥没した床などをそれらしく表現した装置も○。

オールド・フランケンシュタイン

オールド・フランケンシュタイン

あぁルナティックシアター

小劇場 楽園(東京都)

2009/11/25 (水) ~ 2009/11/29 (日)公演終了

満足度★★★★

さすが唐沢俊一
フランケンシュタイン博士が亡くなったが、その遺体は何者かによって持ち去られ…という状況から始まりつつも、ホラーでもサスペンスでもなく基本的にはコメディ。がしかし、
・'50年代のホラー映画のようなオープニングクレジット(音楽も含む)
・ひたすらベタなギャグ
・筆頭相続人だとばかり思われていた博士の孫娘が実は弁護士だったというドンデン返し
・「人は誰でも不完全であり、互に補完し合ってこそ完全になれる」という「坂本金八かっっ!!!」な教訓臭い(笑)結末
という複数の要素のコラボレーションとなっており、その取り合わせとバランスが上手い。
芝居の作・演出は初めてとのことながらさすが唐沢俊一、前説とカメオ的出演までこなして多才だなぁ…。

最後の料理人

最後の料理人

味わい堂々

OFF OFFシアター(東京都)

2009/11/26 (木) ~ 2009/11/30 (月)公演終了

満足度★★★

突拍子のなさは若干軽減?
作った料理を食べた人が皆幸せになるという都市伝説系料理人「おかあさん」ではないかと思われる女性がやっている喫茶店の常連となった作家(ライター?)が観察するその店と客たちの様子…な物語。
ちょっとシュールかつややブラックという持ち味はそのままながら、過去3回の本公演に比べると突拍子のなさ(笑)が若干軽減された感じ。
やっぱり下北沢進出ということで手堅くまとめたのかしら?
が、夢落ちのようでそうでもなく、どこまでが現実なのか多層構造で煙に巻くようなのは岸野ワールドっちゅうか味わいワールドっちゅうか、その真骨頂かも。(笑)

我が名はレギオン

我が名はレギオン

演劇実験室∴紅王国

ザ・ポケット(東京都)

2009/11/26 (木) ~ 2009/11/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

本格犯罪サスペンス系人間ドラマ
広域重要指定事件第126号「連続女性切断殺人事件(通称・使徒事件)」の特命第四班による捜査とその指揮を執る管理官の家族を描いており、今までに観た3作品が現代版泉鏡花あるいはレトロSF的な一種古風な風味だったのに対して、本作は本格犯罪サスペンス系の人間ドラマ、な趣き。
まず「ガツン」と来て後から「ズシン」と来る重量級でありながらもストーリー展開とその語り口によって休憩なし160分(!)の上演時間も「ここから先が長いのかな?」と思っているうちに「え、この流れだともうすぐ終わりだよね!?」となり、事実終わってしまう、な感じ。(体感的には2時間ないくらい)
開場時から「狂ったダイアモンド(Shine On You Crazy Diamond)」冒頭のような音が流れており、舞台上では「シ者(←ダブルミーニング)」たちが携帯をいじっているという状態。プログレも好きな身としてはここでもうワクワク、もとから高い期待値がさらに上昇。
そうこうして開演時刻になると謎の赤い服の女性に導かれるようにシ者たちが一点を見たところで暗転、特命班の指揮を執る管理官の家庭をザッと見せてからその翌朝の特命班顔合わせならびに早速の会議シーンとなり、ここでごく自然に事件の内容が示されるというスマートな出だし。
以降、特命班の捜査(会議と取調べ)を中心に管理官の家庭も見せつつ進行、2人いる犯人それぞれの事情(?)も含めてありきたりのコトバながら「現代社会の病巣を描く」、みたいな。
捕まった「第二の使徒」は自分の前にもう1人いた、という意味ではなく「使徒は大勢いる」と言うし、2人の使徒は本来の意味の「確信犯」だし、被害者たちも清廉潔白ではないし、改めて現代社会は病んでいるなぁ、と…。
最後に判明する「第一の使徒」の正体は予想通りどころか見え見えながら、そもそも真犯人捜しのミステリーではないし、それ以上に人間ドラマとして観応えがあるので全く問題なし。
それどころか、「死にたい」と言っていた第一の使徒に対してプロファイラーが「貴方が貴方を許せるまで……そんな風に生きてください。」と締めくくることにツボを突かれる(「トドメをさされる」の方が的確か?)。
そんなこんなで、緊張感が終始途切れることなく、無駄な部分も全くなく、オープニングからエンディングまで引きつけられっ放しの充実した160分、大変満足。

欲望貴族

欲望貴族

角角ストロガのフ

王子小劇場(東京都)

2009/11/26 (木) ~ 2009/11/30 (月)公演終了

満足度★★★

初見であった『人間園』同様…
…複数の場所が同居する装置が見事で、かつブラックなのに可笑しさも同居しているのがナンとも不思議な感覚。
今回は2つの家族のリビングダイニングを共有させておりドアだけが違うのが特に面白く、両家とも朝食にテンプラが出るシーンなぞテンプラが盛られた大皿まで共通という…(@_@)
他に三男が告発しようとリバース機構に出頭した時に兄たちの声が空間を飛び越えて聞こえる部分もこの装置ならではだし。
それにしても復讐の機会を窺ってずっとストーカーまがいの行為をして「彼」を助けてからさらに10年以上も待っていた油沢家の母の執念深さには舌を巻く。女性作家が書いているだけにより説得力を感じたりもして(笑)。

ビッグバン貴族

ビッグバン貴族

宇宙食堂

SPACE107(東京都)

2009/11/26 (木) ~ 2009/11/29 (日)公演終了

満足度★★★

未来版裏かぐや姫
いわば「未来版裏かぐや姫」あるいは「新・かぐや姫前日譚」、登場人物が30人くらいいて主人公も1人や2人ではなくグループなため、各人物紹介的な前半はやや散漫な印象。
後半まで観ると「なるほど、ああやって協力し合うことになる面々をシッカリ紹介していたのね」と納得できるものの、前半の段階ではエピソードの羅列っぽく見えてしまう。
そんな人物たちが1つの目的に向かって結束して行く後半は「うまく行くのか?」なサスペンスもあり、ハラハラドキドキな展開になるのにもったいない…。
前半をもうちょっとスリムにして、ストーリー全体の行方を早めに提示すれば(クライマックスの一部を最初に見せておくとか)もっとスッキリしたろうに。
一方、かぐや姫伝説を事実的なものとして「月の古事記」にその記載があるとするのは面白い。つまりそんな大昔から月に人類が移住していたってワケだ。
また、前作といい本作といい、得意の(?)無重力空間での表現がないのがちょっと残念ながら、本作はオープニングに月面での重力が少なめな表現があったりしたのでそれなりに満足。しかし次回あたりでまた宇宙空間も見せてくれないかしらん?

ベイビーフェイス

ベイビーフェイス

鈴舟

シアターサンモール(東京都)

2009/11/24 (火) ~ 2009/11/29 (日)公演終了

満足度★★★★

鈴舟ド真ん中
地方都市で酒屋を営み今は長男に店を任せている老夫婦が次男・三男・長女夫婦を呼び寄せた1日の騒動(と後日譚)を描いた「大家族系ホームコメディ」、別の言い方をすれば昭和40年代のホームドラマ、あるいはリアルタイプ「サザエさん」的な?
鈴舟(鈴置洋孝プロデュース時代を含む)ド真ん中と言おうか、家族愛に弱い身としてはまるで十字砲火を浴びているような…(笑)
冒頭の母の「永年連れ添っていると、自信に充ち溢れるようで怖がられることもあるほどの夫の声の中に優しさや弱気な部分も聞きとれる」(大意)なんてナレーションからもうホロリ。
以降は笑いの中に家族愛がたっぷり織り込まれており、「雨降って地固まる」的な孫娘の「できちゃった婚」騒動の落とし方もお約束気味とはいえ、逆に言えば定番・定石なワケで手堅くトドメ、みたいな。
ただ、熟年離婚でないことは判明する(ってか序盤から見え見え)ものの、その真相と結末はちょっぴりビター。
が、あの「遺言」によって湿っぽくならずに終わらせるのはやはり巧いと言うべきか。
あと、女性陣対男性陣が対立する構図に北野ひろしの『結婚契約破棄宣言』(93年)も思い出したり…
さらにタイトルに「コドモの顔」「プロレスの善玉」両方の意味が込められていることにも感心。

おるがん選集秋編

おるがん選集秋編

風琴工房

ギャラリー日月(東京都)

2009/11/21 (土) ~ 2009/11/29 (日)公演終了

満足度★★★★

いかにも「文學」+ややトリッキー
劇団員が選んだ文学作品を戯曲化するという試みで40~50分の中編2本立て。
横光利一の「春は馬車に乗って」は病に伏した妻と看病する夫の二人芝居で、いかにも「文學」な感じ。そのちょっと古風な雰囲気がまた住宅街の中にあり周りは民家のみな上にここ自体もひたすら民家で木製の窓枠をはじめとしたツクリが昭和中期(?)な洋間というこの会場にピタリとマッチして…。
しかし、夫が開け放った窓(←装置ではなくリアル)から外(←もちろんリアル)に出たり(そういえば「4の話」第2話にも窓から人が…なんて部分があったな)、その後に本物のアンコウ、エビ、アジが登場したりするとは誰が予想しえようか?
そんな演出もありつつ、病気のためにわがままになっている妻を大きく包み込むような夫の姿が優しくてステキ。
10分の休憩を挟んでの鷺沢萌の「痩せた背中」はややトリッキー。
いくつかの時、いくつかの場所がシームレスに演じられるので最初はちょっと戸惑ったものの、そのシカケが見えてきてからは芝居というものの面白さあるいは脚本・演出の巧みさを堪能。
実は最初に時空を飛び越えて亮司の部屋になった時はそれを飲み込めず戸惑い、しかし次の小学生時代の回想に移った時に「あぁ、そういうスタイルか」と納得。回想シーンの挟み方が本当に上手い。
で、こちらにも食事場面に秋刀魚の塩焼きの実物が出てきて、その香りが美味そうだったなぁ…

4の話

4の話

FRAMEPLOTS

タイニイアリス(東京都)

2009/11/18 (水) ~ 2009/11/24 (火)公演終了

満足度★★★

悪趣味なほどブラック
男女半々の4人グループがバーで顔を合わせるところから始まる3話のオムニバス、その4人(&マスター)の人物設定とファーストシーン、それに「4」…いや「死」にまつわるストーリーというのが共通で、あとは各作家がそのルールに則って書いた、というスタイル。
各話が終わるとマスターが片付けて何事もなかったかのように(連作ではないので当然なんだが)同じファーストシーンから再びスタートすることに漱石の「夢十夜」を連想。あるいはRPGでゲームオーバーになった後リセットしてまた始める、みたいな?
その内容はテーマがテーマだけに各話とも悪趣味なほどブラックながら、後味がメチャ悪い第2話と「マタンゴかっっ!!!」(笑)な第3話は好み。決して他人には勧められないけれども…(爆)
ちなみに目当ての新谷真弓と芳賀優里亜、事前情報からはこういうスタイルとわからなかったのでオムニバスだけに違うエピソードに出演してスレ違いかも、と思っていたら、メインの5人のうちの2人だったので共演をたっぷり観ることができたのはラッキー。

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