急襲キルフィールド
芝居流通センターデス電所
駅前劇場(東京都)
2010/01/24 (日) ~ 2010/01/26 (火)公演終了
満足度★★★
若干肩透かし気味
七つの露天風呂がある温泉郷の二軒の対立する旅館と宿泊中のアヤしい客を描いた「音楽劇」(と言っていいのか?「時々歌とダンスが入る芝居」にとどめた方がいいのか?(笑))、相変わらず内容は不道徳(爆)ながら、今回はヤケにマイルドな印象。
最終局面をS.E.だけでスキップして一旦結末を見せた後でエンドクレジトバック(J.チェン映画のNGテイクとか)のようなカタチで殺し合いを描写したからか?
これはこれで悪くないのだが、思いっきり不道徳とか血まみれとかを期待していた(爆)分、肩すかし…みたいな?(笑)
一方、電子ピアノ&鍵盤ハーモニカ(←これが一般名称)の生演奏も伴う音楽(歌モノ+インスト)はいつもながら愉快っちゅうか楽しいっちゅうか、満足度高し。
爾汝の社 再来
THE REDFACE
d-倉庫(東京都)
2010/01/20 (水) ~ 2010/01/26 (火)公演終了
満足度★★★★
脚本・演者・キャスティング・演出の相乗効果で観応えアリ
吉原の遊廓「くるり籠」を舞台に12人の遊女と女将が織りなす物語、当日パンフによれば、新宿2丁目のゲイバーの物語を書こうとしていたら江戸時代の吉原が脳内を占拠して結局男性だけで遊女を演じる作品が出来上がり、しかし初演の稽古場を訪れた女優さんたちが演ってみたい!と言ったので今回の男組・女組(&シャッフル版)での再演になったそうで。(フトコロ具合の関係で女組のみ観劇)
各遊女が個性的な上にそのそれぞれにドラマを持たせた脚本とそれを演ずるキャスト陣、さらにはキャスティングとその演者の個性に合わせた(←推測)演出が相俟って観応え十分。それぞれのチカラが存分に発揮されている、な感じ。
女将に怨みを抱く霊によって悲劇が起こるも残った者たちが力強く歩き始める締め方も良く、ちょっと桟敷童子に似た感覚もアリ。
また、途中で命を落とす遊女の霊が終盤の大ピンチの時にみんなを導くなんてあたりも上手いと言うかσ(^-^) 好みと言うかイイ感じ。
さらに、装置の背景には古色蒼然たる屏風が2枚使われていて、美術さんの作品ではなく本当に古いものなんだそうな。これがまたシブくて、芝居をより説得力のあるものにしていたかも。
ただ、音楽を使いすぎるのはいかがなものか? かなりの場において音楽が煩わしく感じてしまう。σ(^-^) の世代にとってはスタンダードな映画音楽で思い入れさえある『ある愛の詩』なんかを使われてしまうと気が散るというのもあるし。
それどころか台詞があるシーンに日本語の歌詞の付いた歌を流すのは台詞の妨げ以外のナニモノでもなく、なんでそんな選曲をしたのか理解に苦しむ。
静寂がコワいのかもしれないが、もっと役者の演技を信頼しても良いのでは?
ロング・ミニッツ-The loop of 7 minutes-
FOSSETTE×feblabo×エビス駅前バー
エビス駅前バー(東京都)
2010/01/22 (金) ~ 2010/01/28 (木)公演終了
満足度★★★
初演と比べて一長一短
カウンター席だけで展開されたDART’Sによる初演とは異なり、中心となる3人を『ゆらぎり』で使った奥のエリアに配置したことで観やすくなった一方、初演の「覗き見」的な感覚が好きだった身にとっては臨場感が減と言おうか「普通の芝居」に近くなってしまったと言おうかなのがちょっとだけ残念。ま、一長一短といったところか。
ゆらぎり【脚本:成島秀和(こゆび侍)×演出:古川貴義(箱庭円舞曲)】
FOSSETTE×feblabo×エビス駅前バー
エビス駅前バー(東京都)
2010/01/22 (金) ~ 2010/01/28 (木)公演終了
満足度★★★★
共感したりおののいたり(爆)
バーでの(基本的には)二人ずつの会話を重ねてゆくスタイル、あるシーンの会話がそのまま次のシーンで相手に伝えている内容であったり回想であったりとほぼシームレスにつながっており、それをスムーズにつなぐための立ち位置もまた絶妙。会場奥のエリアをスタンドバー的に使ったことの勝利、的な。
音楽劇「雨を乞わぬ人」
黒色綺譚カナリア派
ザ・ポケット(東京都)
2010/01/20 (水) ~ 2010/01/24 (日)公演終了
満足度★★★★
今まで見た5作品のうちで一番好きかも
07年8月の『輪廻は斬りつける(再)』からデス電所を観ている身として今回のコラボは「盆と正月」か「カレギュウ」か、的な?(笑)
その歌に関してはハンドマイクを持っての「S感線(あるいはデス電所?)スタイル」あり、演技の途中で不意に(笑)歌い出す「ミュージカルスタイル」ありで、楽曲については元子と慈雨のデュエットナンバーの中間部や甘雨と瑞雨の登場時の歌(これもデュエットだが)なぞデス電所丸出しでありつつ、他は差別化していて…なんてあたりが二重三重の意味で面白い。
内容については土着的で民俗信仰・シャーマニズム的なストーリーが「平成の泉鏡花?」な感覚だし、村の因習に縛られる人々という設定にはたとえば横溝正史作品などと通ずるレトロ感があるし、で好みなタイプ。
また、元子と慈雨が力のないマクマーフィと覚醒しないチーフ・ブロムデン(@『カッコーの巣…』)に見えたりする部分(「逃げなさい!」のトコとか)もあったりして、勝手に関連付けて観るのもまた楽しからずや。(そう言えば、謎を解かない金田一耕助もいたな(笑))
出演者では「ハイテンションな無邪気さ」(笑)を身を以て表現していた牛水里美と憎まれ役としてのイヤらしさ満載の佐藤みゆきが(ともに面識があるということもあってか)特に印象に残る。あ、あと「それって地毛?」な桑原勝行もそうか?(笑)
そんなこんなで、今まで見た5作品のうちで一番好きかも。
バベルノトウ
国道五十八号戦線
サンモールスタジオ(東京都)
2010/01/20 (水) ~ 2010/01/25 (月)公演終了
満足度★★★★
「してヤられたァ!」な快感(笑)アリ
その成分を吸引した者に都合の良い幻覚を見せるが副作用などは全くないという植物「バベルノトウ」をコッソリ栽培していることを先生に見とがめられた中学生(高校生?)たちのストーリーと、彼ら(+α)が薬品会社の研究員となっているストーリーが交互に演じられるというスタイル。
この「研究員」のパートを2度目の「学校」パートで彼らが見ている共通の「トウの中(=幻想・夢)」と観客に錯覚させておき終盤で実は20年後の現実であると明かす手口が巧妙で、それが明かされた時には「してヤられたァ!」な快感(笑)アリ。
また、推理ものの探偵よろしく盲点を指摘し、ネタを明かすのが実は存在しないシキミだというのもスゴい。
カーテンコールにシキミが出てこないばかりでなく、客電が上がると彼の席にスポット(サスペンション?)が当たっているという凝りようはその場で気付いたけれど、探偵役の件については観終わってしばらく後に思い返している時に(やっと)気付いて愕然。(え、フツーはすぐ気付くものなの?(爆))
また、誰でも責任を転嫁するための人物を欲している、なんてメッセージには身に覚えありまくりでドキリ。(笑)
誰ガタメノ剣
シアターキューブリック
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2010/01/20 (水) ~ 2010/01/24 (日)公演終了
満足度★★★
ダイナミックにグレードアップ
08年2月の初演のザ・ポケットに対してステージが広くなった分、ダイナミックにグレードアップ。
今回のツボは元親の正室・菜々が、命を落とした部下の遺族に首を差し出そうとするところ。大名の妻としての器量の大きさというのか貫禄というのか、そういったものがよく表現されていたと思うし、序盤での若き日のおきゃんな感じとの対比という意味でも◎。
しかし、初演を観ていたからイイけれど、あのエスニック風あるいは洋装系の衣裳やメイクから日本の時代モノ(それも信長から秀吉の頃の)だと誰が想像できようか?(笑)
逆にこの脚本を本来の時代劇スタイルで上演したらどうなるんだろう?なんて気もしたりして…。
十三月の男 -メメント・モリ-
無頼組合
テアトルBONBON(東京都)
2010/01/20 (水) ~ 2010/01/24 (日)公演終了
満足度★★★★
和製リュック・ベッソン
感染すると3年以内には必ず死ぬという凍血病が蔓延した近未来、傭兵である主人公は迫害を受ける患者たちの抵抗組織に雇われて爆破テロ計画に加担することになるが…な物語。
一言で表現すれば「和製リュック・ベッソン」、荒廃した近未来の状況は『フィフス・エレメント』を想起させ(世界観的には「装甲騎兵ボトムズ」風でもあるか?)、終盤は『レオン』へのオマージュ、みたいな?(そういえば桐生はG.オールドマンっぽくもあり…)
組織に立ち向かうことになった主人公と組織に残った傭兵仲間が対峙するクライマックスが良く、ハードな決着の後、関係者の「その後」を見せて柔らかく終わるのもイイ感じ。これもまた映画的っちゅうか、本作ってそのまま映画化できそうなほど「映画っぽさ」満載。
あと、元傭兵たちが使う銃がSIG、デザートイーグルなどそれぞれ個性を主張するものなのが「なんちゃってガンマニア」的にも◎。
ウーマンズアイズ
演劇企画集団・楽天団
中野スタジオあくとれ(東京都)
2010/01/15 (金) ~ 2010/01/20 (水)公演終了
満足度★★★
カッチリとしたスクエアな雰囲気
結婚40周年を迎えた夫婦が長男・三男と共にパーティーをするべくハネムーンで泊まったホテルを訪れるが、妻(と息子たち)は勘当状態の次男と夫(父)との復縁を目論んでいて…な物語。
カッチリとしたスクエアな雰囲気がいかにも翻訳戯曲で、普段よく観ているものがカジュアルウエアとすればこちらはフォーマルスーツ、みたいな?
また、ホテルの部屋を再現した装置もリアルなもので、目にした瞬間「ここは俳優座劇場か?」と錯覚しそうになったとかならなかったとか。(笑)
そんな中で繰り広げられる家族5人のドラマ、絵に描いたように厳格で頑固な父と息子たちの会話は折り目正しく…どころか堅苦しささえ感じる。
だもんで日本では成立しないか?と思ったり、あるいは高度成長期の会社経営者の一家(山崎豊子の「華麗なる一族」のような)ならあり得るか?などと思ったり。
いずれにしてもわが身とは遠く離れた世界の出来事(爆)ゆえ共感したりはしないものの、芝居として引き付けるものがありシッカリと観てしまう。(その結果、シリアスな内容と相俟ってマチネは観終わってちょっと疲れたくらいで…(笑))
また、終盤の妻の長台詞に「やはり夫というのはお釈迦さまの掌の上の悟空のようなものなのか?」などとも思う。
で、夫婦役が設定より若く、(少なくとも妻は)とてもアラカンに見えないのでアタマの中でヘンリー・フォンダとキャサリン・ヘプバーンに変換しながら観ていたりも…。(笑)
そういえば、それだけの歳を重ねても可愛らしさというか茶目っ気というか、そういったものがある女性というのも海外っぽいか?(もちろん私見)
ROMEO
激団リジョロ
シアターシャイン(東京都)
2010/01/14 (木) ~ 2010/01/19 (火)公演終了
満足度★★★★
賛否両論の境界線を駆け抜ける
横浜の成り上がり実力者・早川家のパーティーで次女の珠里愛(ジュリア)に一目惚れし恋仲となった在日の盧明生(ノ・ミンサン:通称ロメオ)はまさにロミジュリのような結末を迎え(ここまでがオープニングなのだ)、かろうじて命を取りとめたものの恋人を喪ったショックから魂の抜け殻のようになっており…というところから始まる物語。
そういえばここ4日間で沙翁作品をひねったものが3本も…って集中しすぎでは?(笑)
また、最終的にロメオが自害するということで、時々ある「急死しで心残りのある者が神の計らいにより一定のを貰って現世に蘇る」なパターンのバリエーションという見方もできるかも?
で、内容的には非常に際どい…(笑)。賛否両論のボーダーライン上を時々踏み外しながら(爆)駆け抜ける、な感じ。
ツッコミどころ…というか辻褄合わせに苦しい部分もありつつ(←観ながら脳内で合理的な説明を試みていたり…)、「殺人者は誰か?」なサスペンスも加わり160分の長尺もさほど長くは感じず。
「生きろ!」派として「殺さなくても…」や「死ななくても…」な部分も少なからずあるものの、最終的には「二大勢力の対立が引き起こした悲劇」いう原典のテーマに戻って終わるので、犠牲者を増やすことでよりテーマを強調したと解釈して納得。
また、菅田俊や工藤俊作など東京倶楽部関係者が出演する映画のような雰囲気もアリ。
ハマの陽気な女たち
project ON THE ROCKS
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2010/01/14 (木) ~ 2010/01/17 (日)公演終了
満足度★★★★
きらびやかでおトクな感じ
前回同様沙翁作品の翻案、今回は『ウィンザーの陽気な女房たち』(未見だが wikipedia で予習して臨んだ)を明治初期の横浜で展開させるという。
物語の2つの流れのうちの一方の、両親がそれぞれ娘の相手にと考えている人物が異なり、もちろん娘が想っている相手はそのどちらでもない「第三の男」などという古臭い設定もこうすることによってスンナリ受け入れることができるばかりでなく、シェイクスピアっぽさも漂うのが上手く、フォルスタッフを元・旗本にしたり、一部の人物は原典をもじった日本名にしたりというアレンジも楽しい。
また、ミュージカル風なシーンがあり(←前回もそうだった)、ラストの場も原典の森から仮面舞踏会に変えて全員の歌により華やかに締めくくるのがいかにも「新年の芝居」っちゅうか、「ええモン見せてもろたわ」っちゅうか、きらびやかでおトクな感じ?(笑)
この路線、継続してゆくのかしら? 4大悲劇やロミジュリなんかをやるとしたらどんな設定にするんだろう?
あと、原典はどんな感じなのか、そのうち観てみたいモンだわさ。
さよなら また逢う日まで
ナルペクト
劇場MOMO(東京都)
2010/01/13 (水) ~ 2010/01/17 (日)公演終了
満足度★★★★
アン山田流『レザボア・ドッグス』
かつて犯罪計画を実行に移したものの失敗し負傷者・逮捕者各1名を出したグループが、服役していたメンバーの出所によって再集結、獄中で知り合った者も加えて(ってかソイツの計画・主導で)6億円を積んだ現金輸送車の襲撃を計画するが…という物語。(08年5月のブラジルの初演版は未見)
いわば「アン山田流『レザボア・ドッグス』」、前半は笑える部分も少なからずあってライト・コメディっぽい雰囲気ながら、だんだんとコワさが増して行くという。
その笑いとコワさの取り合わせに『軋み』(08年12月)を思い出すも、こちらの方がコワさが直接的かも。
また、『レザボア…』との対比では、アチラと違ってメンバーの大半が以前からの仲間であるということで、計画を実行に移すまでのパート(そちらの方が長い)でその関係や以前の失敗について語られるところが異なり、そこが日本的?(笑)
で、強奪には成功するもののハプニングがあり、アジトに戻った後で互いの疑心暗鬼と欲目から殺し合いにまで発展するのは「犯罪は割に合わないよ」と諭すようで「極めて道徳的」。(笑)
よって、登場人物の大半が命を落とすのにもかかわらず後味は悪くない、みたいな?(感じ方には個人差があります)
あと、劇中の銃声はS.E.によるもので、銃による違いをキチンと表現していたのに感心。
ただ、一番小柄な女性にパイソン(らしきコルトの大口径リボルバー)を使わせるのはど~よ?(相変わらず拳銃に関してはウルサイσ(^-^) である…(爆))
美しいヒポリタ
世田谷シルク
小劇場 楽園(東京都)
2010/01/13 (水) ~ 2010/01/17 (日)公演終了
満足度★★★★
大変楽しうございました
ネットビジネスを手がける小規模オフィスで社員同士の結婚が決まり、夜には社長の音頭による祝賀飲み会が開かれる…という1日を描いた物語。
ベースはシェイクスピアの『夏の夜の夢』ながら、単なる翻案ではなく翻案したストーリーの中に原典が表出して、さらにその原典を「おしゃアプ(=おしゃべりアプリ)」の中のトラブルとして再度取り込むという、ひとひねりどころか「2回転半ひねり」くらいした構造が面白い。
で、その翻案部分と原典部分を照明で切り替えるとか、ところどころ「3倍速再生」でトバすとかの演出もわかりやすいし、ちょっとテクノ系?なダンスやそれにラップも組み合わせてさらにそこに出てくるコトバを壁に投射するなんてのがカッコイイ。
そんないろんな要素の取り合わせ、他に類を見ない感覚で大変楽しうございました。
小鳥のさえずり
SPPTテエイパーズハウス
銀座みゆき館劇場(東京都)
2010/01/14 (木) ~ 2010/01/17 (日)公演終了
満足度★★★
シナトラ・ナンバーもイイ感じ
2009年の大晦日、留守中の燐家に届いたために預かっていたマロングラッセをちょっとした事情から三女が食べてしまい…という状況から始まる「お馬鹿サスペンスコメディ」。
まずは舞台となる家で飼われているセキセイインコを狂言回し(あるいはストーリーテラー)に使うアイデアが面白い。
カゴの中に実物大の模型があり、その台詞や動作はそのそばにいる役者が担当するというのが独特で、カゴを揺すられると役者も揺れたり、セリフのない時には小鳥っぽく頭を小刻みに動かしていたりするのが愉快。
また、内容的には前述のような出だしから、怪しげ(と言っても犯罪などとはまったくもって無縁)な人物が何人か登場し、家族側にも(マロングラッセを食べたこと以外(笑)に)隠し事をしているような者がいたりして「それって何?」と興味をつないで、実は薄れていた母と娘たちの絆を取り戻させようとする伯母(母にとっては義姉)の策略(←σ(^-^) の弱点パターンだ(笑))だったというのが巧い。
さらに亡くなった父(夫)の見せ方やかすかに交流する部分に堤泰之の『煙が目にしみる』(これがまた大好きなもんで)に似た薫りを感じたりもする。
あと、暗転時(開演直前も含む)に流れるシナトラ・ナンバーもイイ感じ。
僕らの声の届かない場所
ろばの葉文庫
The Art Complex Center of Tokyo(東京都)
2010/01/12 (火) ~ 2010/01/17 (日)公演終了
満足度★★★★
芸術へのそれぞれ想いがより際立って
08年夏の空想組曲によるオリジナル版と比べて人員的にも時間的にもコンパクト(後で聞いた話によると台本の頁数は増えたそうな)になり、しかも笑える部分が増えたことにより、芸術に対するそれぞれの想いがより際立った感じ?
凝った装置のオリジナルに対してこちらは割とシンプルということも含めてその印象に既視感的なものがあったのは、コロブチカの『証明』とダルカラの『プルーフ』の時と似ていたからなのね…。
でもって、その時にしても今回にしても、内容がより迫って来たように感じられたのは、演出の違いだけではなく1度観ていたからという要素も多分にあるワケなんだが…(笑)
また、オリジナル版の自分のレビューを読むまで省略された部分に気付かなかったのは、改訂の巧さに加えてσ(^-^) の記憶能力の衰えによるものも少なからずあると思われ…(自爆)
あと、劇中では「絵画に対する」想いや才能ではあるものの、内容的には芸術全般に拡大解釈できるワケで、演ずる側も身につまされたりするのかしら?などとも思ったり…(大きなお世話?(笑))
いずれにしても、古典的な作品ではなく、こういった最近の作品を新たに仕立て上げるという企画も面白いので今後のトレンド(の1つ)になったらイイなぁ。
黒いインクの輝き
ブルドッキングヘッドロック
サンモールスタジオ(東京都)
2010/01/07 (木) ~ 2010/01/18 (月)公演終了
満足度★★★★
抜群の安定感
北関東にある売れっ子女流マンガ家の自宅兼仕事場で、打ち合わせを始めようにも肝心のセンセイの行方がわからず、アシスタントたちや編集者(+α)が彼女を待っている一夜(+回想シーン)に垣間見える人間関係…な物語。
全体の印象はジックリ基礎固めをしたシッカリした土台の上にガッシリ建てられた堅牢な建物の如く抜群の安定感あり。
邸内の3つの部屋をうまく組み合わせた装置の中で描かれる時折ドス黒いものが噴出する「女の園」、各人物もそれぞれ個性が際立って存在感があり観応え十分、的な。
また、回想シーンとのクロスのさせ方も巧みで、5年前や10年前の場面ではちょっとした違いだけなのにちゃんとその期間分若返っているのも見事。
さらに、センセイの状況を明示せず、しかし推測させるに十分なヒントを与えて各人の想像に委ねて終わるのも余韻が残って面白い。(賛否あるかもしれんが…)
こりゃあ次回以降にも期待だな。
女魂女力其の壱しじみちゃん
カミナリフラッシュバックス
新宿ゴールデン街劇場(東京都)
2010/01/07 (木) ~ 2010/01/10 (日)公演終了
満足度★★★★
メビウスの環かクラインの壷か…
内容説明を読み始めて主演のしじみの紹介かと思いきや終りまで読んだら芝居内容だったことから予期した通り「実録系」で、当日パンフによればそれもかなり事実に近いとのこと。
確かに冒頭の家族揃っての夕食シーンでの昭和どころか明治大正のような(笑)頑固オヤジからもうリアリティあり。なんだかその場の気まずい空気まで伝わってくるようで。
その意味では中盤以降、家族の一員がAV女優になったことを知った家族のオドロキや戸惑いなども「あぁ、そうなんだろうなぁ」であり説得力十分。
なんたって本人の経験談を基にしているばかりではなく、本人役を当人が演じているんだからそれもそのハズ?
セミ・ドキュメンタリー(というよりは「セミ・フィクション」の方が的確か?)として事実の重みがたっぷりのっている、みたいな。
さらに終盤でのしじみによるAV引退の弁はまんま事実であろうし、彼女の進もうとする方向を否定するAV監督の言葉が現実では覆されているという、舞台上の過去と演じられている現在の関係が面白く…どころかそのつながり具合がメビウスの環の表と裏かクラインの壷の外側と内側の如くシームレスにつながっているように感じてゾクゾク。
それに加えて舞台から降りて夜の街(マチネでは当然昼の街なんだが)に去るしじみとそれを追うカメラに「持田茜なんていないんだよ」と台詞がカブるラストの切れ味鋭いことと言ったら! これでトドメを刺された…というよりはダメ押しな感じ。
事前に目に入った情報には「感動」「泣けた」などの文字があったので家族モノに弱い身として泣けるかと思っていたらそうではなかったけれど、言葉では語れないようなフシギな感覚を味わったってところ。
【無事終演!】LOOKING FOR A RAINBOW【公演写真多数UP!】
劇団宇宙キャンパス
吉祥寺シアター(東京都)
2010/01/07 (木) ~ 2010/01/10 (日)公演終了
満足度★★★★
結成十周年の総括と決意表明
「定番どころかテッパンな学園青春もの」で、「弱小グループが次第に仲間を増やしながらコトに当たろうとするストーリー」を通して、「芝居に対する想いを語る」、とσ(^-^) の好み、あるいは弱点(笑)を3つも盛り込んだツクリとあっちゃあタマラン。
しかもそこで語られる芝居への想いは結成十周年の総括と今後への決意表明でもあるというのが巧い。
また、中盤でヤンキーっぽい女子が、それまで小バカにしていた芝居の面白さに気付き、演技できるコを素直に「スゴい」と認めるところなんか王道なのだけれど、芝居を絡めているのがイイ。
さらに、公演中止の決定が下された後の3年生2人のオトナの対応が、その心中も伝わって来てホロリとさせるんだよなぁ。
夢見る乙女じゃいられない
たすいち
王子小劇場(東京都)
2010/01/07 (木) ~ 2010/01/11 (月)公演終了
満足度★★★★★
アイデアが良く構成が鮮やか
過去3度連載を打ち切られた女流マンガ家が、出版社の事情から「ストーリーキング」に輝いた女性を原作者に迎えて4度目の連載に背水の陣で取り組むことになり、滑り出しは好調だったが…という物語。
まずはマンガ界内も芝居で演じ、しかも同人誌版(←コレがメチャ可笑しい)までアリというアイデアで見せ、中盤はそのマンガ界に現実界の人物が取り込まれてみんなで助けに行くという展開で引き込み、しかしすべては引っ込み思案のマンガ家の夢想という大どんでん返しを経てハッピーエンドに導く構造が鮮やかで、
・ヤンスタの『マンガ大戦』かっっ!!!
・昨年春に流行った「夢あるいは精神世界の中系」かっっ!!!
・『ラ・マンチャの男』かっっ!!!
などとツッコミながら観るのもまた楽しからずや。(笑)
で、各論的には以下の部分に感心。
・オープニングタイトルの前にマンガ家が連載している作品内容を思いっきりベタな芝居で演じて「マンガ界内も演じて見せる」ことを示す(そういえば装置の一部はマンガのコマにも見える)
・原作者とマンガ家が主人公のキャラについて相談している時に、その主人公が後方に現れて各キャラを演じる
・終盤の殺陣で肝心の部分を番傘で隠し、傘を下ろすと…な見せ方をする
・本編のクライマックスで主人公が目覚める(あるいは自覚する)シーンにマンガ界内のクライマックスも重ねて見せる
・タイトルにも付いている「夢」というコトバの二種類の意味を併せて使う
ということで、前回公演から1ヶ月余という短期間での公演も個人的には気に入る。
光る河
てがみ座
「劇」小劇場(東京都)
2010/01/06 (水) ~ 2010/01/11 (月)公演終了
満足度★★★
新ジャンルへの挑戦には好感
台風による土砂降りの雨の中、放送局の経理課勤務の夫が帰宅すると暗い家の中で呆然としていた妻が「人を轢き殺した」と言い、一方、河川敷ではホームレスの老人と発達障害の少女がブルーシートハウスに戻らず…という状況から始まる物語。
前回が4Bの鉛筆を使ってフリーハンドで「描いた」のに対して今回はロットリングと定規で「製図した」ような印象。
それはそれで構わないのだが、第1場のショッキングな妻の告白に続く第2場で登場するTVクルーがコミカルすぎてその落差の大さから「ここ、笑うトコ?」と戸惑ってしまうし、さらにそのクルーの取材に一介の経理マンが同行するのは強引で無理があるのが残念…ということで出鼻をくじかれた感じ?
また、群像劇でありながら「少女を殺した犯人は誰か?」という部分に気を取られてしまい(←σ(^-^) だけかもしれんが)、犯人逮捕の後で主題が提示される頃には観疲れてしまっている(全体で125分あるし)というのも惜しい。
どうせならTVクルーをところどころでコメディリリーフ的に使うとかして息抜きをしておけばイイのに…。
前回は4日程度で書けたのが今回は2ヶ月もかかったというハナシを終演後に伺って「さもありなん」な感もアリ。が、新ジャンルへの挑戦ということには好感。
一方、基本的には同じながら様々な場として見せることのできる装置は前回に引き続き見事。
開演前に見た時は「なるほど川べりのハナシなのね」と思ったが、冒頭から予想外の使い方をするし、手前にあるパーツがサンダーバードの秘密基地みたい(喩えが古いねどーも)だし……それにしても蝶番とローラーを使うのが好きねぇ。(笑)